プロダクトビジョンが機能しないとき
本記事はコネヒト Advent Calendar 2025の25日目のエントリーになります。
こんにちは。ママリというプロダクトの責任者をやっている@itoshoです。M-1を観て、ママリも漫才のネタに登場するくらい有名なプロダクトにしていきたいと思いました。
さて、アドベントカレンダーも最終日ということで、きょうのテーマは3年前につくったコネヒトのプロダクトビジョンが誕生した後のアフターストーリーです🎅
こういった類の話は、打ち上げ花火のように最初は広く情報が発信されることが多いですが、その後どうなったかはあまり語られません。「プロダクトビジョンができました。めでたしめでだし。」という話にも、もちろん価値はありますが、本当に知りたいのは、その「めでだしめでだしの後」なんだよなと思うことが多いので、まずは自分から発信してみようという試みです。
結論、いまは掲げていない
もったいぶってもしょうがないので、結論から言うと、当時立ち上げたプロダクトビジョンは現在掲げていません。よりストレートに言うと、意思を持って旗を降ろしたというよりは徐々に形骸化していった結果、掲げなくなりました。
もちろん、掲げて良かったこともある(これについては後述)のですが、当初の目的からすると、上手くいかなかったと考えています。
一方で、プロダクトの方向性を決めるには抽象度が高く、社員全員の自律的な意思決定を促したり、その意思決定を自然にアラインメントさせたりするには、コーポレートビジョンだけでは不十分だと感じていました。
なぜ、上手くいかなかったか?
振り返ってみると、大きく3つの理由があったと考えています。
理由①会社やプロダクトの規模に対して、標語が多い
これは会社のMVVリニューアルのインタビューでも少し触れているのですが、ここ数年プロダクトビジョンをはじめ全社的な標語的なものが増えており(そもそも、プロダクトビジョンは標語ではないと思っていますが)、それゆえに浸透と活用が上手くできませんでした。
当時のコネヒトは、70〜80人の組織規模でマルチプロダクトではなく、ほぼ単一のプロダクトしか持っていない状況でした。その中で、会社のMVVや行動指針、ママリのブランドステートメント、技術戦略としてのTech Vision、半期ごとのOKRに加えて、プロダクトビジョンが存在していました。
また、多いだけでなく、それぞれの要素間の繋がりが弱かったことも浸透が上手くできなかった要因かなと感じています。ちなみに、この課題に関しては、会社のMVVリニューアルをした際に一定クリアできたので、今だとまた違う結果になるかもしれません。
理由②スコープが広く、結局抽象度が高いままだった

当時掲げていた「未来の可能性が増え、家族の幸せが連鎖する」というプロダクトビジョンはいまみても優れたビジョンだと思っていますが、当初の目的のひとつであった意思決定の軸になっていたかで言うと、そういった役割はあまり果たせませんでした。
これはプロダクトビジョンのスコープが新規プロダクトを含めたコネヒトのプロダクト全体としていたこともあり、コーポレートビジョンよりは抽象度を下げたつもりでいたのですが、個別のプロダクトであるママリのプロダクトマネジメントにおいてはまだまだ抽象度が高かったのかなと思います。
特にママリは10年以上続くプロダクトであり、様々なコンテキストを抱えているので、意思決定の軸であることを重視するなら、良くも悪くももっと解釈のブレが少ないビジョンにしてもよかったかもしれません。
ちなみに、スコープをプロダクト全体としたのは、プロダクトごとにビジョンをつくると上述の標語的なものの乱立がより加速するなと思っていたのですが、そこのトレードオフの考えも今思うとどっちにつかずな意思決定になっていたなという反省があります。
理由③掲げ続ける胆力がなかった
振り返るとこれが一番大きかったと感じていますが、目まぐるしく変わる事業環境の中で、プロダクトビジョンを発信、戦略に反映し続けることができなかったことも大きかったです。
この3年間で、自分の役割がプロダクトからより経営的なレイヤーになっていた時期もあり、そこで上手く継承できなかったのも反省ポイントのひとつです。もちろん、プロダクトビジョンを掲げずとも、事業やプロダクトが成長していれば問題はないと思いますし、この3年間で着実に成長できたこともたくさんあります。
ただ、ifの話でより良いプロダクトビジョンとそれに紐づいた戦略があれば、もっと非連続にプロダクトを伸ばせたのではないか?それこそ、M-1のネタに登場するくらいママリの知名度が上がっていたのではないか?という問いもありますし、逆に機能しなくなってきたときに、スパッと降ろす意思決定をすれば良かったのかもしれません。
では、どうすれば良かったか?
後出しジャンケンでこうしたほうが良かったは何とでも言えるので、どちらかと言うと、次やるとしたらどうするかに重きを置いて話します。
まず、最初にママリというプロダクトに絞ってやるべきでした。これは上述の理由②に通じるのですが、やはり歴史のあるプロダクトなので、その歴史やコンテキストを純度高く内包できるプロダクトビジョンにしないと意思決定や戦略策定の軸にはなりづらいと考えています。
もっと言うと、ママリのプロダクトと一口に言っても、アプリ(App)やWebなどに細分化できるので「アプリのプロダクトビジョン」のようにもっとスコープ狭めていったほうが実効性のあるものになるだろうなと思っています。

次に、必ずしも全社浸透を目指す必要はなかったと感じています。プロダクトビジョンのスコープが広かったこともあるのですが、当時の会社規模ならプロダクトビジョンをコネヒトメンバー全員が暗唱できるくらい浸透させるべき、浸透させないと行動がアラインメントされないという囚われがあったように思います。
もちろん、それが理想ではあるのですが、全社浸透ありきになっていたことで浸透施策が総花的なアプローチになり、プロダクトビジョンへの熱量が分散してしまっていました。また、このプロダクトビジョンを社外に発信することで採用力を強化したいとも思っていたので、それもその状況に拍車をかけていたかもしれません。
今なら、プロダクト責任者である僕とプロダクトマネージャー陣の共通ゴールや共通言語としてプロダクトビジョンを設定して、まずプロダクトマネージャーがそれに熱狂できる状況をつくることに腐心したほうがいいなと考えています。一人でも熱狂できる人がいれば、自然とその熱量が組織に伝播し、結果的に全社浸透にしていくと思います。ただ、そう思えるのはコネヒトという会社がそういった形質が強い会社といった側面もありますが。
そして、最後はやや元も子もないことを言うのですが、別にプロダクトビジョンじゃなくても良かったかもと最近は思っています。というのも、今年度からママリアプリではコンセプト的なものをつくって、それを下地に戦略や施策をつくっているのですが、一定それで施策のアラインメントができている手応えがあります。
コンセプトはプロダクトビジョンよりも短いフレーズなので、プロダクトマネージャーとの普段の会話でも頻度高く登場するようになりましたし、CTO時代につくったConnehito Tech Visionもアフターテックカンパニーという言葉が社内でアフテクという言葉が流通したからこそTech Visionが前に進んだと思っているので、キャッチーさにはこだわったほうがいいんだろうなと感じています。
一方で、平時はコンセプトだけでも比較的迷いなく施策を進められますが、プロダクトの方針を大きく変えたり、進化させたりしようとすると当然コンセプトだけだと不十分だと思っているので、コンセプトに加えて、Dos and don'ts(特に後者)のようなものがないと判断に困るだろうなと思っていますが、逆にそれがあればプロダクトビジョンは不要なのかもしれません。
プロダクトビジョンをつくって良かったこともある
ここまでプロダクトビジョンをつくって、上手くいかなかった話を中心にお届けしましたが、全部が失敗だったかと言うとそうではありません。
例えば、プロダクトビジョンをつくるプロセスはとても良かったです。プロダクトマネージャー間での議論で共通認識をつくることができたと思います。逆に言うと、こういう議論をプロダクトビジョンをつくるときだけではなく、定期的にやっていく必要があると感じています。
また、いまは掲げていませんが、それでも当時プロダクトビジョンから戦略までつくりあげたことは今も血肉になっており、自分の中では立ち返る場所というか戦略を考える発射台になっているので、上手くいかなったことを含めて学びがたくさんありました。
ちなみに、誤解なきように補足しておくと、プロダクトの会社であるならば、プロダクトビジョン的なものはないより絶対あったほうがいいと考えています。
ナラティブという言葉が持ち上げられて久しいですが、やはり生成AIの時代において、ナラティブが持つ力は対顧客に対しても、対メンバーに対しても競合との違いを生む力だと感じており、そして、そのナラティブの起点はやはりプロダクトビジョンという北極星だと僕は信じています。
もうそっちの側の人ではないが株式会社の経営者の仕事は究極的には株価をあげること。そのためには売上最大経費最小利益極大を愚直にやるしかない。MVVとかをやっても株価が上がらないと空振りな取り組みになってしまう。
— 宮坂 (@miyasaka) September 24, 2024
でも、これらは無駄というわけではない。…
ママリ20周年に向けて、やっていくう!
この話をしたのは、プロダクトマネージャーから「改めて、ママリのプロダクトビジョンがあったほうがよいのでないか?」という話を受けたからなのですが、前回プロダクトビジョンを立ち上げたときから3年が経ち、改めてプロダクトの価値を再定義し、ママリ20周年という次の大きな節目の第一歩を踏み出していきたいと考えています。
ですので、いわゆる教科書的な定義のプロダクトビジョンになるかは別として、来年は早期にママリの次の北極星を定めることをやっていくぞ!という宣言をしてアドベントカレンダーを締めくくります(Publicに宣言することでやらざるを得なくするスタイル)。
それでは、よいお年を👋
