1/4の営業を終え、1/9の夜まで少し長めの一人旅に出ています。
前から気になっていた本屋や喫茶店、建築を巡りつつ、鉄道に乗り、途中下車を繰り返す旅です。
移動しながら、目に入る景色や些細な出来事に刺激されて、そのたびに頭の中ではさまざまな考えが立ち上がっては消えていきます。
これは、フェリーを降りた翌日、列車と街を行き来しながら過ごした一日の記録です。
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7:15
部屋に備え付けのアラームがどでかい音を立てて起こしてくれた。強烈な眠気に抗いながら、3度目のスヌーズでなんとか体を起こす。今起きなければ、昨日計画した全ての行程が台無しになってしまうので必死である。
7:30
元々素泊まりで予約していたのだが、ホテルの朝食券を買うことにする。
昨晩部屋に入ってから近所のカフェを検索してみたが、早朝から営業しているところがなく、スターバックスはあるものの、あまり旅行中に行く気もしなかったため。元々朝食をベースブレッドで済ますつもりだったが、きちんとしたご飯を食べようと決めたというのは昨日の日記の通りである。
いざフロントで朝食券を買いたいと言うと、1700円ですと言われた。高〜い。しかし自分にはもう後がないので買うことにする。
朝食会場に行き、席に座るとまもなく和定食が運ばれてきた。
おかずがたくさんあって嬉しい朝食だ。
朝食をいただきながら、この部屋の室温について考えていた。自分の店の喫茶室がどうも暖まりにくいことを最近ずっと悩んでいて、灯油ストーブの買い替えを検討している。今のストーブは小さいかもしれない。
古い建物ということもあり、足元がやや冷えがちで、そのためにブランケットや湯たんぽなどの貸し出しを始めたのだが、そもそもの室温をもう少し上げた方が良いのだろうと思っている。
それにしても、自分はどうも室温に対する感覚が疎いように感じる。直感でわからないというか。
人から「寒い?」と聞かれるとまず「寒いとは何か…」と考えてしまう。難しくないですか、寒いとか暑いとか。寒いとは、首筋が冷えることなのか、足が冷たいことなのか。一体どのような状態を感じていれば寒いと言えるのか。例えば足が冷たいといった現象は元々自分がここまで来る過程で起こったことなので現在の室温とは関係ないのではとか…とまあ色んなことを考えてしまう。なので基本的には「大丈夫です」と答えるようにしている。他の人の反応を観察していると、そのように言う人が多いから。その点、数字でわかることは明快で有り難い。例えば室温が10度であれば明らかに寒いと言える。そういう数値でわかることに安心してしまうから、お菓子作りが好きなんだと思う。あれは計量の正確さが大事にされるから。
そんなことを考えていたらいつのまにかご飯を食べ終えていた。1700円の朝食の味が思い出せない。あほすぎる。一人でご飯を食べているといつもこうだ。思考が遥か遠くに行ってしまって目の前のことに集中できない。本当に勿体無い。お昼ご飯の時は今度こそ目の前のご飯に集中しよう。

8:15
部屋に戻り、昨日残しておいたくるみ餅を2個食べる。美味しい。食堂から持ってきたコーヒーを飲む。普通だ。
そういえば、昨晩は眠るまで体の奥に船の揺れの名残のような感覚があったが、今はすっかり消えていることに気づく。真っ直ぐ立っているのに、どこか体の中心が揺れているような感じがあった。特段、船酔いはしなかったのだが、このように自分で体を揺らすことで、船体の揺れに適応していたのかもしれない。波の流れと同じリズムで体を動かす、一体化することで適応していくような。そんなことを考えながら歯を磨く。
それからpodcastを聴く。お化粧する時はいつもpodcastを聴いている。手が塞がっている状態でも情報に触れていたいため。
podcastはニッチなテーマについて深掘りしていくような番組が多く、聞き応えがあって楽しい。この習慣を始めてもう5年になる。確実に自分の知識の幅を広げてくれている気がする。身についているかはさておき、自分の中に単語が溜まっていって、いつでも引ける辞書のようなものにまとまっている感覚は確かにある。
今日は「超相対性理論」を聴く。毎回ゲストを呼んで、あるテーマについて3人で話をしていくという番組だ。今回のテーマは「贈与的な経済はいかに可能か?」だった。テーマからしてワクワクする。
資本主義経済下で贈与行為の合理性について説明しようとすると、対概念である交換行為のような概念を持ち出さざるを得なくなる、つまり本質的な説明から外れていってしまう、といった話が印象に残った。

9:00
準備が整ったので駅へ。まずは券売機で青春18きっぷを購入。3日間のもの。
青春18きっぷは2024年度冬季から、3日間連続か5日間連続のどちらかを選択するように変更となった。つまり1日ずつの使用はできなくなった。また、一枚の切符を複数人でシェアすることもできなくなった。これは随分と改悪だ!と言われたけれど、北海道から18きっぷを1日で使うようなことはまずないし、シェアするような友達もいないので、自分としては特に問題なかった。

9:20
北陸本線新快速(湖西線経由姫路行) に乗車。車両はサハ223-2081。モーターを持たないので、走行音は静かで揺れも少ない。転換クロスシートで旅情も感じつつ、車窓から野坂岳を望む。

9:36
近江塩津駅に到着。滋賀県長浜市に所在する滋賀県最北端の駅。一日の乗降客数は260人ほど。
ここで30分ほどの待ち時間があるので、一旦駅から出て駅前を散歩することに。
風情のある駅舎を出ると、昔ながらの日本家屋が立ち並ぶ住宅街に出た。二叉路になっていたので、どちらの方向も見てみて、より家が多そうな右の道に進む。
道の両側に家屋が立ち並ぶ。みんな木造2階建てだ。玄関はガラガラっと開けるような引き戸で、扉の上にはしめ飾り。どこの家もきちんと飾っていて、伝統を重んじる地域なのだなと思う。家を囲む石垣も長年の風雨に耐えた風情がある。中には苔むした大きな石をいくつも並べた住宅もある。
うーん。やはり乗り鉄は途中下車して駅前を散歩するのが楽しい。地元では巡り会えない光景に出会えるし、徒歩だからゆっくり考えながら見ることができる。一時ここの住人になった気分で歩くのも楽しい。

9:55
駅に戻り、待合室に座る。テーブルの上に駅ノートがあったので、せっかくなので書き込みをする。
「北海道からフェリーで敦賀まで来て、そこから鉄道でここに来ました!街並みが地元と全然違いました!」
小学生みたいな感想になってしまった。
10:06
北陸本線新快速(米原経由姫路行) に乗車。車両はクモハ224-8。加速時のモーター音が心地よい。瓦屋根の家々が立ち並ぶ。本州に来たなと言う感じ(ざっくり)。
10:50
米原に到着し、同車両がそのまま琵琶湖線新快速(米原経由姫路行) になる。
途中、滋賀県を中心としたスーパーマーケットチェーン「AL PLAZA」を見つけたので、一応写真を撮っておく。

11:33
大津駅到着。
ホームを降りると、「北緯35度線モニュメントはこちら」といった看板があったので、見てみることにした。また階段を登り、別のホーム(1番ホーム)に移動する。
ホームの端まで歩くと、オレンジ色の切れ込みが入ったコンクリートの四角柱の上に水色の球が乗ったモニュメントが現れた。モニュメント自体に感動は特になかったが、地球規模で区切りの良い地点にいるという気持ちよさは確かに感じた。その後はお手洗いに立ち寄った。個室に鍵が上下に2つあるので何かと思ったら、ベビーシートに座る赤ちゃんが鍵を開けてしまうので、赤ちゃんの手が届かない上の方にも鍵をかけられるようにする、ということらしい。私には子供がいないけれど、こうした気遣いの形があるということだけでも知識として知っていると、他にも応用できるというか、気遣いの幅が広がるような気がしている。

11:50
行ってみたかったお店の1軒目。大津のgururiさんに到着。昨年の夏に、この店を営むご夫妻が私の店に来てくれたことをきっかけに知ったお店だ。そのご夫妻は札幌出身らしく、夏休みを利用して帰省していたらしい。その時にInstagramで知った当店を訪ねてきてくれた。お会計時に、実は大津でこういうお店をやっていて、と名刺をいただいた。後でInstagramも見て「絶対行きたい!」と思っていた。それで今回の旅を計画したと言っても過言ではない。

店内に入ると、11:30のオープンなのに私が入った時点で満席になった。人気カフェだ。デミグラスソースのハンバーグ、食後に季節のチーズタルトとホットコーヒーを注文。
その後、店内のあちこちにある本棚を眺める。
佐藤雅彦『新しい分かり方』、鈴木康広『まばたきとはばたき』など、新しい物の見方を見せてくれる本が気になった。うちの喫茶室にも欲しい。
まもなく、デミグラスソースハンバーグがやってきた。一口目から美味し〜!とニコニコしてしまう。お肉の旨みがギュッと詰まったハンバーグに甘みのあるデミグラスソースが合う。付け合わせのマッシュポテトも嬉しい。サラダのにんじんドレッシングもさっぱりしていて美味しい。ペロリと完食してしまった。
店内を眺める。木材をふんだんに使ったナチュラルな雰囲気。そこにテーブルの足に使われたアイアンと、ホーローの黒いランプシェード、プラスチックの黒いバスケットが空間のバランスを保っている。
それから雑貨の配置も素敵だ。統一感のある雑貨がそれぞれまとまりを作り、まとまり毎にちょこんちょこんと置かれている。
カウンター席の目線の高さには小さなガラスブロックがはめられており、外部からの視界を遮りつつ、柔らかな光を取り込んでいる。これがあることで、外部の目を気にすることなく安心して座っていられる。
音楽もゆったりした空気感をプラスするようなスローな曲で、ボリュームもちょうどよく、居心地がいい。お手洗いにも細かな気遣いがあり、マウスウォッシュがあったり、トイレットペーパーの位置もちょうどよく、全てが心地よく整えられている。
ふと、インテリアコーディネートと絵を描くことはどこか似ているのではないかと思う。キャンバスに近づいたり、離れたりしながら、置くべき場所に絵の具を置いていくあの感じ。あくまで素人目線の自論だけれども。

ケーキをいただく。ショコラチーズタルトに自家製ベリーソースを添えたケーキ。こちらもとても美味しい。すごい。
チョコレートにチーズケーキ要素を添えることができるのかというのは新鮮な発見だった。
どちらかというとサッパリ目なチーズケーキと、濃厚系なチョコレートケーキは、正反対のものだと思っていた。これを融合できるなんて。食感も柔らかく、口の中でゆっくり溶ける感じがさらに美味しさをプラスしている。ベリーソースも甘すぎず爽やかでピッタリ。コーヒーにも合う。何をいただいても美味しいし、何より静かで居心地が良い。なんというか、店内を満たす空気が綺麗な感じがする。
お会計時に「札幌から来ましたノマドブックスです」と言うと、「え!ノマドさんですか!」と反応してくれて、嬉しくなって「来ちゃいました〜」などと言っていた。遠く離れているけれど、こうした関係性があるって温かくていいなと思う。ホクホクした気持ちで大津駅に戻る。途中の坂が険しくて辛かった。

13:04
大津駅から琵琶湖線新快速(姫路行) に乗る。車両を見忘れたが、おそらくサハ223系だろう。クロスシートが嬉しい。
京都に到着し、そのまま同車がJR京都線新快速(姫路行) となる。長岡京駅を過ぎたあたりで山の方に阪急電鉄が走っていくのが見えた。臙脂色の優雅な車体だ。
それから、どこの駅付近かは忘れたけれど、京都の住宅地のゆるい下り坂を、青いジャージを着た男子学生が自転車に二人乗りしていて、その光景が眩しいほどに青春のワンシーンだった。13:43に新大阪駅に到着。5分遅れらしく、その後接続予定だったおおさか東線に乗れず。次発に乗ることにする。
13:56
おおさか東線(久宝寺行) に乗車。モハ221系。
ホームでテキトーに立っていたので、自分の後ろに人が並んでいるのを見て不安になる。が、車両が入線してきて、きちんと自分の目の前でドアが開いたから安心した。
スマートウォッチで次降りる駅までの乗車時間、15分をはかる。乗り過ごし防止のため。
以前、電車に乗りながら文章を書くのに夢中になって、羽田空港に行くはずがなぜか横浜に辿り着いたことがあるので、それ以来、この習慣が身についた。
14:13
放出(はなてん)駅で向かいのホームに乗り換え。かわいい名前だ。
JR東西線・学研都市線区間快速(同志社前行)、クハ206系に乗る。
それにしても京都や大阪に入ってから家同士があまりに近くて驚く。ベタな恋愛ドラマで、家が隣同士で、自分の部屋の窓を開けると好きな子の部屋の窓が目の前にあり、お互い窓を開けて、そこでおしゃべりするというものがあるが、あれを見てずっと「いやいやw」と思っていた。が、この距離なら普通に会話できるだろうなと納得してしまった。窓同士の距離が20センチくらいだから。
14:41
松井山手駅に到着。先ほどの遅れで、予定していたバスに乗れなかったのでタクシーで目的のカフェに行くことにする。次発のバスに乗るとほとんど滞在できず、せっかくここまで来たのにもったいないと思ったため。
駅前に停車していたタクシーに乗るとおじいさんに「どこまで?」と聞かれ「楠葉野田(くずはのだ)1丁目までお願いします」と答えると「クザァ?」と言われたので「くずはのだです」と答えると「ナタァ?」と言われ、困ってしまった。すると「あんたナビできるやろ?」と言われたので「ナビします!」と言った。道案内苦手なのに。25分ほど走ってなんとか到着。最後「ここで止めてください」と言うと「どこぉ?」と返されて「ここでお願いします!」などとやり取りしている間にメーターが100円上がって、若干ムカッとしたのはご愛嬌だ。
15:05
大阪は枚方市、本の読めるカフェfloatさん着。Instagramで見て、こういう店づくりがしたいなぁと憧れを募らせていたお店だった。
店内に入ると大きな机が中央に置かれ、4席ずつ向かい合わせに座る格好になっている。椅子は、ハンス・ウェゲナーの名作椅子「Yチェア」のような見た目だ。椅子の高さとテーブルの高さがちょうど良いバランス。
メニューを見ると、1月のチーズケーキ3種類を全ていただけるセットがあったのでこれにした。合わせてコーヒーも注文する。
待っている間に、テーブルの上に置かれていた平野沙季子『生まれた時からアルデンテ』を手に取った。このお店の店主さんが表紙にメモを貼っていて、そこに「わたしも学生時代にケーキ屋さんにいくたび食日記を書いていました」と書いてある。その言葉に惹かれて読んでみたのだが、面白い…!!夢中になって読んでしまう。料理への愛憎詰まった言葉が濁流のように流れ込んでくる。こんなに一つの料理に対して言葉を尽くして、というか、あの手この手を使って表現することができるのか、と感嘆した。例えば、「パンケーキは食感の食べ物だから、大雑把に言って、はんぺんと同ジャンル」という一文で笑いそうになり、鼻から変な息が漏れた。それから、良いお店とは何かという文脈で「ストーリーに矛盾がない」という話には共感するところがたくさんあった。民家のようなお店で、店主のおばあちゃんが出てきて、そこで5000円のイタリアンのコースとか出てきたら動揺するでしょう?…確かに。
読みながら、お店を構成する要素にすべて矛盾がない=その空間に違和感なく没入できる=充実した来店経験ができる=高い満足度、という方程式が成り立つのではないかなどと考える。

間も無くしてチーズケーキがやってきた。左から柚子、ずんだ、黒胡麻のチーズケーキ。まず柚子は、酸味の強い滑らかなレアチーズに柚子の甘酸っぱいソースが最高の組み合わせ。個人的に酸味の強いレアチーズケーキが好きなので、こちらは自分の好みにどストライクな味だった。
それから、ずんだ。濃厚なレアチーズケーキに後からずんだのホッとする甘さが追いついてくる感じ。この時間差のある甘さのコラボが新鮮で美味しかった。
そして黒胡麻。チーズケーキらしい酸味はほとんど感じない、黒胡麻の優しい甘みをたっぷり味わえた。土台に黒胡麻と、小豆も入っていて嬉しい組み合わせ。
どれも美味しい。先ほどの本を読みながら、ケーキとコーヒーをいただいて至福の時間だった。
そして何より空間設計がやはり好きだと思った。構成はシンプル。グレーのタイル床、大きな木のテーブル、木の椅子、白い壁には抽象画が2点、窓に白いレースのカーテン、ペンダントライトも小ぶりで、シェードはガラス製。空間に要素を足しすぎない。色数を減らした、シンプルで洗練されたデザイン。一つ一つの家具が良いものを使っているので、無理に足し合わせる必要がないのだ。少ないものを品よく並べることで、上質な空間が作られている。
お会計時に店員さんから「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれて、これは作る流れかな?と思い、「あ、実は札幌から来てるので」と口走ってしまった。自分のことを話すつもりはなかったのだが、ここまで話してしまったので、言葉を続けた。
「実は私も札幌で本が読めるカフェをやっていて、こちらのお店をInstagramで見つけて気になっていたんです。それで来てしまいました。すごく素敵でした」
すると店員さんが驚いた様子で「そうなんですね!今日は店主が休みなんですけど、きっと話したら喜ぶと思います!お店のお名前聞いてもいいですか?」と返してくれた。せっかくなので、NOMAD BOOKSと言うんですと伝えた。店員さんは「店主に伝えておきますね!」と微笑んでくれた。良い時間だった。
それからバス停までは全力で走った。ギリギリだったので。

16:22
くずはモールバス停留所から山手31線に乗って松井山手駅へ向かう。
駅に着くと、運転手さんが「へいお待ちー松井山手ですー」と言っていて、お寿司屋さん以外で「へいお待ち」が聞けると思っていなかった。
16:53
JR東西線・学研都市線快速(篠山口行)に乗車。ひたすらこの日記を書く。時折車窓を眺めては、家同士が近すぎるなと思う。
17:19
放出駅にておおさか東線(大阪行)に乗り換え。ホームの反対側なので乗り換えもらくらく。帰宅時間だからか、車内が混雑してきた。
17:35
新大阪駅で下車。
エスカレーターに乗ったのだが、横2列の右側に立ってしまい、ああ歩かないといけないなと焦ったのだけど、ここは関西だから、左側が歩く方だった。エスカレーターで歩きたくないからちょうど良かった。歩きたくないのに、後ろから急かされて歩くのはいやだなと日頃から思っている。いかなる勢力にも急かされたくない。
その後はお手洗いに行ったのだが、列ができていた。前に4、5歳くらいの、髪の毛をツインテールに結んだ女の子がいた。自分が小学生の頃、母に髪を結ってもらいながら「うさぎさん(ツインテール)、いつまでできるかなあ」と言われたことを思い出す。その時に、髪型には年齢制限があるのかと、幼心に思った。そんな些細な一言で、人は自分の中にある基準のようなものを身につけていくのかもしれない。でも、大人になった私は、何歳になっても好きな髪型や格好をすればいいと思っている。成長の過程でどのような常識を身につけたとしても、そこから自分なりの意見を見出すことはできるはずだ。そして、そこに良し悪しといった評価は挟みたくない。
それから、お手洗いの個室に入ると、正面に「落書きはイタズラではありません、犯罪です」と書かれた張り紙があった。それを見て、言葉によって問題が矮小化されてしまうことってたくさんあるよなと考える。だからこそ、言葉は注意深く使わなくてはならない…そんなことを考えながら手を洗い、それにしても自分はあらゆるところから刺激を受けて、考えを巡らせているなぁなどと思う。そして、自分を突き動かすのは、ルールでも、マナーでも、人からの目線でも評価でもなく、内なる美学だなと気づく。そうだ、美学だ。自分はこうありたいという精神的な美への希求と、自分はこうありたくないという醜悪さへの危機感。
そんなことを考えながら歩いていると、本屋さんにたどり着いた。今はどんな本が売れているのかと平積みになった表紙を眺めていると、「〇〇な人は〇〇をする」とか「〇〇が9割」とか、ある価値観を押し付けるようなタイトルで溢れていて息苦しくなる。「こんな人間になれ、それ以外は間違っている」と言われているような気さえしてくる。私は、間違っても失敗してもいいから、自分が経験して、そこから得た学びを頼りに生きていきたい。何よりも納得することが自分にとっては大切なんだと思う。あくまで私は、だけど。
我ながら今日は妙に殊勝な事を考えているなと思いつつホームを向かうと、人でごった返していた。あーあ。混雑を見ただけで疲弊してしまいそうになる。が、せっかくスケジュールを立てたので乗ることにする。

18:05
JR京都線新快速(長浜行) に乗車。京都駅からは、琵琶湖線新快速(長浜行) になって、この列車で米原を目指す。京都駅でたくさんの人が降りたので、なんとか座ることができた。
19:35
米原駅で東海道本線新快速(豊橋行)に乗り換え。今夜の夕食をどこでいただくかGoogleマップを見つつ検討する。眠い。

20:22
岐阜駅到着。今晩はこちらで宿泊することにする。
駅前には金ピカの織田信長公の像があった。写真を撮ると、思いがけず信長公が目からビームを出しているような写真が撮れてしまった。

その後、先ほど見つけた「カルトン」というカフェで夕食をとろうと思って向かったのだけど、なんと今日は休業していた!残念。急遽、近くのカフェを検索し直すと「Barista & Dining NoMark」というお店を見つける。店内の雰囲気がオシャレな感じ。早速行ってみることにする。
お店はビルの地下にあった。ドアを開けると、モダンな印象の店内。カウンター席に通される。メニューを見ているとスタッフの男性が声をかけてくれた。「今日寒かったですね~お水、白湯に変えることもできますのでおっしゃってくださいね」寒い日に白湯を出すオプションもあるっていいなと思った。それからアーリオオーリオとカフェラテを注文。

スタッフの男性が「お仕事帰りですか?」と声をかけてくれたので「実は旅行で来ていまして」と話を続ける。それから、話の流れで札幌で本屋と喫茶のお店をしていること、久しぶりに長い休みをとって各地を巡っていることなどを話した。スタッフの男性は同い年だった。お店のコンセプトだとか、どうしてお店を開いたのだとか、色々なことを話す。チェーンではない個人店は店主の個性が大切だという話で、彼がお店を開いてから話し方を変えたという話をしていたのが印象的だった。この店に来たいと思ってもらえるような話し方。自分もお店での話し方、声音などは意識している部分だったので、その点に共通点があって嬉しかった。自分がやっていることがなんだか肯定されたような気分になる。帰り際にレジで「実は無料でコーヒーのサービスをやってるんですよ。ホットとアイスどちらにされますか?」と聞かれて、驚いた。どうやらコーヒーをいただけるらしい。ホットコーヒーをいただくことにする。彼が「お酒飲んだ後ってコーヒーで落ち着きたくなりませんか?自分がそうなんすよね」と言っていて、それはすごくわかると思った。前職でも飲み会の後に一人でカフェに行き、コーヒーを飲みながら日記を書くなどをよくしていたから。「楽しかったし、美味しかったです~」と言って店を出る。カップに入った温かいコーヒーが冷えた手を温めてくれた。岐阜駅の前でイルミネーションをしていて、そのキラキラと共にコーヒーの写真を撮った。思いがけず、楽しい夜だった。
