
実機写真をボックスアートにしたハセガワのMU-2Aは「地味な飛行機」という言い方をしてしまえばわりとそうかもしれない。箱の写真だけでわかるごくごく短い脚と、ハシゴがなくても乗り降りできそうな低い位置にくる胴体、とってつけたような鼻先。実機の写真だと「本当にこんなのがいます」っていう現実の面白みを突きつけられる。

調べてみると半世紀以上前からある古いキットなのだけど、パーツにはメリハリが効いていて好印象。ピノキオの鼻先のように増設されたドップラーレーダーまで一体で左右に割られた胴体部品。表面のモールド処理はドアや車輪庫扉等の開閉するハッチはエッジを丸めた凹線、パネルラインやリベットは凸での表現。横に並んだ細かいアンテナの一部は一見、丸棒状に見えるけれど触ってみると翼断面のフィン形状になっているのがわかる。

翼もフラップ等の実際に大きく動く部分を今の飛行機プラモと変わらない動翼表現としての太めの凹線にしてほかのパネルラインは極細の凸線での処理。古さの象徴のように語られる凸線モールドもテロっとツヤのある質感とあいまって箱の写真で見た雰囲気そのままに部品になっているなという印象で悪くない。むしろ古さを感じるのはランナーのA/B/Cや部品番号といった表記箇所で、とにかく番号が見づらい。

部品の合いは時代なりで、大まかな外形はきれいに閉じる。問題は左右分割の胴体内に閉じるコックピットにのりしろが存在しないといっていい状態で、自分は前輪収納庫の裏の平面から適当なプラバンを伸ばして支持した。他に着陸脚の開閉扉ものりしろが不明瞭で説明書に書かれている以上の工夫を要求してくる箇所だった。

組み進めてみるとこの飛行機は表面に飛び出してくる膨らみや突起が多くて意外なほど武骨な印象。スライドドア上下のレールや張り出した観測窓、腹部に並んだ涙滴状膨らみ、直径1ミリにも満たない細さで部品化されたアンテナやピトー管。面白いところでは正面キャノピーにワイパーが彫刻されている。ランナー状態で見た時よりずっと「濃い味」に仕上がっていく。

着陸脚は最新キットのようなシャープさはないものの、リリース当時にはこのキットのセールスポイントだったんじゃないかと思う。左右の主脚はとにかく細い線の集合した形状で、扉からはみ出して前方のスリットに埋まるように収納される展開用のシリンダーにつないで3点支持になることで強度が出る。

胴体からちょこっと出る程度の短い脚なのだけど、開口部より大きなタイヤがついている。「なにそれ?」と思ったら、離陸して収納するときには後方のハッチが追加で開いてタイヤをしまえるくらい開口してから脚をしまってまた閉じる……という手順を踏む機構なのだ。組みあがってみると細かいアンテナ類からくる密度感もさることながらキャノピー/四角窓/ドーム状観測窓/尾灯と効果的に並んだクリヤーパーツが映える。

自分がこのキットを組んでみて一番面白かったのはデカールだな。自衛隊の飛行機だから「危険空気吸入口」ってインテークに貼ってあったりするのは戦闘機でも見たことあるんだけれどこの機体には「ふむな」ってひらがなのマーキングがある。それも結構たくさん。

ふむなふむなふむな…まるで呪文のよう。自衛隊でも戦闘機だと英語で「NO STEP」って表記されるのを見てるので不思議。他にもプロペラの回転平面を示す「プロペラ」って書かれた赤ラインがある。この赤線の延長上にプロペラが回転しているぞ!超危ないぞ!っていうのも組み立てた機体に貼るとプロペラとの位置関係も一目瞭然で説得力高い(怖い)。日本語マーキングの面白さを満喫できるよ。