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【レビュー】話題のプラモデル「ゴーストメック コフィンズ」完全解析!コトブキヤ×新川洋司の最新到達点

 数々の先駆的なメカニック/ギアデザインを考案し続け、国内外に大きな影響を与えているクリエイターである新川洋司氏による密造兵器群“ゴーストメック”が、KOJIMA PRODUCTIONSのゲーム「DEATH STRANDING 2」で発表されたことで、SFメカデザインの現在を示すマイルストーンとしても注目を集めています。そして、これまで精力的に新川氏のデザインをプラスチックモデルキット化してきたコトブキヤから、“コフィンズ”がリリースされました。

 本機は、劇中に複数のモデルが登場するゴーストメックの中でも、特にそのフォルムやムービーシーンでの活躍も印象的な大型機体です。キットは全高18cm(1/20スケール)というボリュームになっており、SFメカデザイン・新川洋司氏によるフォルムとディテールの”最新形態”が余す所なく立体化されています。ハイディテールな機体イメージに反して、パーツ数は非常に少なくまとめられており、その組み易さから現在のプラスチックモデル製造技術の進化を体感することもできるキットでした。

 まず、キットの成形色が絶妙な色味で設計されています。無塗装でもしっかりとデザインと劇中イメージをユーザーに立体で追体験してもらいたいという開発陣の意図が感じられ、箱を開封した瞬間に嬉しくなるポイントです。

 組み立て説明書は通常形態の本機がクローズアップされています。過酷な劇中世界で運用される機体であり、デス・ストランディング世界の重要な物質である“タール”との関連も強い本機ならではのテクスチャーに富んだウェザリング塗装も可能であるという示唆が感じられます。説明書を開くと、冒頭には機体設定と共に新川氏のデザイン画も収録されていました!ゲームだけでなくSFメカニックファンも意識した構成は、組み立てへのテンションをさらに高めてくれます。

 一見すると複雑に見える関節部ですが、ここも最適かつシンプルなパーツ構成。シリンダーなどがまるで動くかのような彫刻となっています。実際には伸縮したりしない分、可動させる際にも安心感のある剛性を実現しています。

 本機のディテールの中で、1/20というスケール感をフィギュア無しでも感じさせてくれるのが、胸部に配された同スケールの人間大腕部です。士郎正宗作品における「アップルシード」のランドメイトに代表されるデザインから、日本における複腕構成メカの系譜が始まっているというのが個人的な認識なのですが、他のメカデザインと一線を画しているポイントがここにあります。

 腕だけではなく、現用兵士を彷彿とされるタクティカルベストが装備されていることで、一見すると人間の上半身が埋め込まれているように見えるという視覚的インパクトは、人間と同様の装備を運用可能という合理性や、“らしさ“というリアリティの組み込み方として秀逸かつ、縮尺/スケールにおける人間のサイズ感を認識させる非常に有効な機能です。この腕部とタクティカルベストを再現したパーツも、一体成形や極力少ないパーツによって構成されています。パーツにはモールシステムを彷彿とさせるベストのモールドもしっかり入っており、把持するライフルと合わせてコトブキヤオリジナルコンテンツ「ヘキサギア」の ガバナーにおいて培われたノウハウの厚みを感じさせてくれます。待機状態、構え状態がそれぞれワンセットづつ入っているのも嬉しいです。

 機体名の由来ともなっている背面にマウントされる棺桶型ユニットも、外装の大きなパーツ分割の中にしっかりとディテールが詰め込まれていました。

 工業製品を感じさせる角の丸みなど、新川デザインにおける真骨頂がひとつのパーツとして実体化されています。加えて、棺桶ユニットの内殻もしっかりと再現されているのも注目ポイントです。

 組み上がった状態では開閉しない仕様であっても、しっかりと蓋部分は別分割とすることで劇中シーンを再現したいファンモデラーへの余白も設けてくれています。上述の成形色の絶妙さがここでも発揮されており、棺桶ユニットが組み上がった際の量感とプラスチックプロダクトの美しさを感じることができる最高にテンションが上がるポイントでもあります。

 獰猛な肉食獣を連想させる四脚形態へとモードチェンジするコフィンズでは、尻尾にあたるケーブルを再現するためのリード線が付属しています。

 程よい強度で任意の形状を作ることができる事から、通常形態で立たせる際のサポートとしても機能します。組み立てて行くと訪れる胴体、棺桶ユニット、そして尻尾ケーブルを接続した際の一体感がたまりません。

 頭部も多色成形が活かされた構成となっています。曲面部には現実の無人航空機を思わせる広い面を設けつつ、人間の頭部を延長したようなフォルムの先に配された顔を思わせるディテールの密度感という緩急は、SF映画の金字塔「エイリアン」においてH・R・ギーガーが発表したクリーチャーデザインへのオマージュも感じさせます。

 ムチっとした量感に溢れつつ、生物的なフォルムに散りばめられた工業製品的なディテール、脚部だけでもひと目で新川デザインであることが分かります。通常形態における上半身のボリュームを支えるべく、固定する部分とスイングできる部分がバランス良く組み合わされた程よい嵌合によって、任意のポージングを確実に取らせることが可能となっています。

 近接戦闘用アーム(ブレード)は差し替え無しで収納→展開することができます。ここでも適度な嵌合によって、アームを任意の角度で保持することができるので、通常形態、四脚形態問わずポージングの選択肢を広げてくれます。

 強力な威力を誇るカイラル粒子方砲、量産型ゴーストメックの中でも大型機である本機が装備可能な兵装であり、棺桶ユニットの左右どちらのハードポイントにも取り付けられるように対応したパーツが用意され、砲身も差し替えで長短2本が付属しています。

 各部位を楽しみながら、気づけばあっという間に組み上がっていました。説明書でも言及されているように、接着剤の使用が推奨されるのは胸部の人間大腕における手先の部分だけであり、他は接着剤を使わなくても十分な剛性と嵌合になっています。この、剛性と嵌合も相まって、組み上がった後にまず驚くのは、通常形態時にリード線による尻尾ケーブルによるサポートが無くても自立可能な重心設計となっている点です。それぞれの脚部は面では無く、点で立つデザインとなっているため、棺桶ユニットや付属する複数の兵装も考慮すればサポートは必須と思っていたところ、これは最後の驚きポイントでした。

 もちろん、ポージングのスタイルや長期間のディスプレイとしては、尻尾ケーブルやベースを使用する必要はありますが、プロダクトとしてのクオリティの高さを立ち姿からも感じさせてくれました。こうした点からも、モデラーとしても広く知られ、時には模型誌作例も手がける新川氏による平面やモニターの向こう側だけに留まらない、立体化/プロダクト化された際のことも想定された妙技が現れています。

 また、2024年の『ホビージャパンエクストラ 特集:新川洋司ARTS & CRAFTS』内の巻頭インタビューにも収録されているように、「Ma.K.(マシーネンクリーガー)」に代表される造形作家・イラストレーターである横山宏氏からの影響という言及も合わせると、また一層興味深く見る事ができるのではないでしょうか。本キットのスケールである1/20と言えば、現在はカーモデルだけでなく、マシーネンクリーガーの標準スケールとしても広く認知されています。アーティストによる模型誌発のオリジナル造形作品がプラスチックモデルになるという現象の先駆けとなったマシーネンクリーガーと、これに対する新川氏の強いリスペクトが反映されたクリエイター同士の繋がりも感じさせるスケール設定です。

 また、本機はゲーム劇中でも非常にフレキシブルに稼働し、迅速に四脚形態にモードチェンジする設定や演技を実現するという条件に則した広い可動域が確保されています。この原則をクリアしつつ、主人公と対峙する凶悪かつ唯一無二の個性的なビジュアルという要素を併存させるべく、生物感のあるフォルムと量感のある棺桶型ユニットを合わせるという発想は、国内外からクリーチャーマスターと評される韮沢靖氏へのオマージュも感じられてさらにグッときてしまいます。このように、人気ゲームタイトルに登場する敵メカニックというだけでなく、日本で連綿と受け継がれてきたSFメカ・クリーチャーデザインの系譜という視点から、今この瞬間も世界へと発信を続けるクリエイターの力を垣間見ることのできる特筆すべきキットでした。

 このように、本キットはデス・ストランディングのファンモデラーだけでなく、SFメカ系のキャラクターモデルが好きな方からプラスチックモデルに初めてチャレンジしてみようという方まで広く手に取っていただきたいキットです!さらに、SFメカのイラストを練習したいという方は、直にそのフォルムに触れ、組み立てるというアクションを通したインプットにもなりますし、描画する際のモチーフとしても活用できます。

 先日の『第63回全日本模型ホビーショー』のコトブキヤブースでは、さっそくコフィンズの派生機である“コマンダー”のキット化が発表されました。加えて『東京ゲームショウ2025』に続いて公開され話題沸騰の大スケールアクションフィギュアからも目が離せません。さらなるキット、プロダクト展開への期待を胸にコフィンズを組み立て終わったのも束の間、気づくと2機目を追加配備していたのでした。

 SFメカデザインとプラスチックモデルプロダクトの現在を同時に目撃することのできる2025年最良のキャラクターモデルキットのひとつを皆さんも是非体感してください!!

大森 記詩のプロフィール

大森 記詩

1990年生。彫刻家。美術大学在籍中から模型誌作例や作図などに携わる。現在は作家活動と並行しながら主に筆塗り作例を担当。合わせてミキシングビルド/キットバッシングによるSFメカニックを月刊ホビージャパンを中心に発表している。

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