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プラモの祭典、キッズの楽園/静岡ホビーショーの「キッズデー」で見た景色。

 静岡ホビーショーは例年、水曜日に始まって日曜日に終わる。水木が業者日と呼ばれる問屋や小売店、関連企業で行われるビジネスデー。土日がファンが集う一般公開日だ。そしてその間に挟まれる金曜日は「キッズデー」と称して静岡の地場産業として地元の子供たちにアピールする、いわば社会科見学デーなんだな!ホビーショー会場がカラフルな児童帽で会場が埋め尽くされるワチャワチャした空間になる一日。今回は地元のニュースでチラリと紹介される程度の扱いのこの一日を「今の子供たちには僕らの趣味をどんな反応を示しているんだろう?」という視点で紹介したい。

 まず会場に入るべく屋外スペースを歩いたそばから面白かったのは、実車化されたタミヤのランチボックスの展示。運転席への乗車体験もできるスタイルの展示なのだけど、これに喜んでいたのが保育園の御一行(!)。そんな小さな子供も招待しているのか!実車とつながれてシャレで引っ張りっこしているR/Cとワイルドミニ四駆のランチボックスにべったりな小さい子と、実車の運転席試乗する大きな子の対比がほほえましい。

 タミヤはなかなか硬派な社会科見学を用意していて、新製品の1/24ホンダ・プレリュードの紹介を通してスケールモデルの「縮尺」の概念を説明していた。こういう場では子供の興味に寄せた何かを用意できるかに腐心しがちな中で自社の伝統的な取り組みを真っ向勝負でぶつけて来る。さすが……。

 各メーカーの組み立て体験も盛況。グッドスマイルカンパニーのモルカー組み立て体験。こういうところで「子供の興味を引く自社製品を持っているのか/そしてそれは体験会として適切な時間で組めるのか?」が重要になってくるな…もしかしたらこの先「キッズデーを意識した製品」というのも出てくるかもしれないな……。


 ビーバーコーポレーションの恐竜塗り体験。ガシガシ塗ってスタッフがガンガンドライヤーで乾かして回転率をあげる。たくさんの子に体験してもらう。体験会を眺めることで「こんな商品もあったのか」ってなったりしたよね。この恐竜…後でチェックしなきゃ。

 完成品が主力商材だと思っていたエスワンフォーもクッピーラムネフィギュア塗装体験会をやっていて、女の子たちがかなり真剣塗っていたのが新鮮でした。グッピーラムネ、確かに現役だが…彼女たちの目にはどういう存在としてとらえられているんだろう。真剣でした。自分で色を塗れるって面白いことなんだよね。

 ガイアノーツはコスプレのおねーさんが塗装指南。カオス…と思ってるのは写真撮ってる自分だけ。キッズめっちゃ素直に楽しんでる。敷かれた新聞紙がいい味出しているな。最近は新聞とらない家も増えたから「養生材としての新聞紙」を見る機会も減ったよね……。

 体験は別に何かが完成しなくても普段使わないような道具を使った作業そのものでもいいというところがあって、クレオスのエアブラシ体験はその筆頭。プラスプーンにメタリック塗料を塗って「キラキラしてるw」ってニュータイプになってスプーンを持ち帰るのもキッズデー恒例の景色になってしまったな。

 ちなみにキッズデーを一日見学してみた体感的(自分は数字的なデータは全く持っていないからね)な人気一番はKATO。鉄道模型という高額商品をメイン商材として扱うKATOがなぜ?
 ジオラマ製作マテリアルで「地面から生えた木」を作る体験会が爆裂に人気。列に並んで1工程ずつ進む。板に糊を塗って……。

 シュコシュコシュコ…って不思議な道具でハラハラと草パウダーををふりかけ……。

 幹を立てて、糊を塗って、また草パウダーで葉をつけていく……。

 「すごーい!」「本物みたーい!」めっちゃ喜んで掌に出来上がった「木のジオラマ」をのせて次の「面白そうなもの」を探して会場を歩き回る光景が会場を埋め尽くしていたんだな。カワイイ。


 童友社の変わり種トイラジコンも子供に人気のブース。飛びつく子供にバンバンコントローラーを渡して、渡された子供も説明も何も聞かずにガチャガチャ動かしながら操作とアクションを読み解く。やんちゃな操作を受け入れられるトイラジコンならではだね。


 社会科見学としてのプラモデルには「地場産業」というアプローチのほかに「図工」の要素が入ってくるところ。「まずは接着剤も道具も使わない簡単なところから始めていきましょう」もあれば、「接着剤や道具も上手に使えるようになっていきましょう」という向きの体験もある。タミヤが組み立て体験に配っているその場で成形機から生産される出来立てほやほやの恐竜は、いつものグレーと違って今年は白いプラスチック。「ここで接着して組んだら塗装体験しているところで塗っていってね…」というメッセージなのかもしれない。

 小学生向けの組み立て体験のお手伝いに中高生が駆り出されていた。プラモデルが「誰でも説明書通りにすれば組める」ものであるなら、小さな子供が躓く程度の箇所はお兄さんお姉さんが手伝えば何とかしてあげられるはずだ!というスタンス。事前に教え方のレクチャーみたいなものはあると思うけれど「プラモデルを社会科見学的な勉強の場にする」取り組みとしてとても面白いなと思った。

 全米よ、コレが静岡ホビーショーキッズデーだ!

 15時を回るころには小学生団体は帰路につき、17時までが中高生の見学タイムとなる。先ほどまで小学生が並んで座っていた作業机に中高生が座る。メーカーの担当の解説も落ち着いて話の聞ける歳の人間に対するソレに変化する。もちろん、この歳になれば面倒な実地学習くらいに捉える子も増えてくるだろうけれど、それはそれ。学校の社会科見学ってそういうものだしね。

 どうか「たまにはやってみるかプラモデル、なかなか面白かったし」くらいの温度感で心の隅に置いておくきっかけになってくれたらとてもウレシイ。

 この15時を境に中高生向けモードへの切り替わりで笑ってしまったのがBANDAI SPIRITSの「ウンコスルディズ」。ついさっきまで小学生向けに机を並べて「ピカチュウの組み立て体験会」をしていたのに…
…。

 いまは中高生に向かって「いろんなウンコを作るアソビでーす!」って実演している。中高生くらいになると、この本来小学生男子の無邪気さに向けて開発されたであろうウンコ企画も「子供っぽい頃に喜んじゃう遊び、ワハハ!」なんて年相応の落ち着きを持った面白がり方。だって横に女子もいるもんな!
 

 小学生の多い時間帯に推していたら会場がウンコを連呼する小学生で溢れていたかもしれない。PTAから激おこされたかもしれないし、これを見た後に集団催眠のようにウンコしかしゃべれなくなった小学生を相手にしなきゃならない他のメーカーから顰蹙を買ったかもしれない。かといって持ち出す意味もない態度でにひっそりと展示するわけにもいかない…新製品だし…というような、企画として抱えてしまった(かもしれない)アンビバレンツな問題に直面している現場を目の当たりにした気分だよ(笑)。

 模型ファンとして一般日に訪れる立場からしたら以外に思える景色がたくさんあって、木製模型のウッディジョーの展示に足を止める子供が多いのも印象的。引率の先生もマニアックな乗り物や最近のアニメのキャラクターよりずっと解説しやすい「教科書に出てくる」モチーフだから。「同じ授業を過ごしている中で覚えるアイコン」だしね歴史的建築物は。


 こちらはエアロベースで出会った風景。「今の子供はそんな渋いもの興味ないよね」とか僕ら模型ファンは模型趣味に対する子供たちの評価を低く見積りがちなきらいがあるのだけれど、対峙する機会さえあれば少なからず興味を持ってもらえるものだし、質問だって飛び出す。その時に「どうだい面白いだろう?」と説明を返していける場としてのキッズデーってやっぱりすごく意義深いモノなんだなぁと感心してしまったよ。
 キッズデーという取り組みもかれこれ4年目。ぜひこれからも続けてほしい。続けていけるプラモデル業界でありますように。



HIROFUMIXのプロフィール

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

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