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「信頼できる人が作ってくれていそうだ」と思える幸せ/マスターグレード クラスターガンダム


▲向かって左が93年発売の旧キット。90年代って比較的新しいと思っていたけどもう30年前なんだね…。

 プレミアムバンダイ限定ガンプラのクラスターガンダムを手にできた。ガンダムの中では映像作品のない少しマイナーな部類なのだけど、小学生の頃に心を惹かれた「自分の世代の」ガンダムだから今回のMGブランドでのリニューアルは素直に嬉しかった。同時に「とても不安」という感情も抱えて手にできるのを待っていた。自分を含め、ガンプラに巨大な感情を抱いている人は少なくないと思うのだけど、特に自分の好きな(それでいてマイナーな)モチーフが高級グレードでリニューアルともなれば、その結果が全然自分の気に入らないモノであったとしたらどうしよう?というヤツだ。

プレミアムバンダイ MG 1/100 F90 IIIY クラスターガンダム

 旧キット(同じモチーフでリニューアル版が出たとき、”古い方”をこう呼ぶ)は武器や防具のデザインの意図をひととおり再現してはいるのだけれど、全てが現在最適とされる構造に至る過渡期の製品だ。可動させると不用意にパーツが傾いたり武器を構える保持力も足りない。そういうところはもう当然のごとくリニューアル版はクリヤーしてくれる。その点はもう「ガンプラ新製品」なら必ずこなしてくれるだろうと言う信頼があるし、実際今回も満足だった。ここから先は自分の巨大感情にキットが答えてくれているかという話で、究極的に個人としてガンプラを評価するときそこにしか興味がないとさえ言える。贅沢な話だ。ガンプラってそんな幾多の巨大感情と対峙し続けてるコンテンツなんだな。

 ガンプラはモチーフのガンダムに「絶対的な本物が存在しない」から、リニューアルのたびに製品の都合で変形とか可動ギミック、デコレーションとしての表面モールドに至るまで「アレンジ」していくことが珍しくない。アレンジによって元の設定からどんどん変化していくのを嫌う人たちもいる。自分は比較的肯定派で、アレンジによって設定と劇中描写の矛盾が解消されたりするのを面白く好意的に見ているし、改造するときもそういうアレンジを考えて盛り込んでいくのが楽しいのだと考えている。

 だから今回はバズーカ2本装備に対してバズーカラックが1セットしか用意されていなかったのが2セット対応になったりするんじゃないか?とかそういうアレンジを期待してたんだけど、スルーされた。ここは元設定が堅持されたというべきだな。自分が勝手に期待していたトコなので。バスーカラックは元の設定どおりにオシリに1セット。バズーカ砲身から固定用のジョイント用の板がせり出すようになって保持力の高い着脱ができる……のが気に食わない(!)。砲身の中心に食い込むジョイントが埋まってる? HAHAHAまってくれよリアルじゃない……などと思うものの些細なことだ。改造すればいい。そんなときのために腕を磨いているんじゃないか。キットはそんなふうに思えるトータルでの仕上がり良さを備えていてくれた。

 なんてったって顔の造形が素晴らしかった。この頃の大河原先生の描く顔は独特なバランスのものが多くて、中でもクラスターガンダムの下膨れ気味の顔はどの程度がパースでどの程度が形状として末広がりになる塩梅なのか判断が難しい。旧キットの造形もかなり設定画を読み取ろうとした形跡がうかがえる。でもまぁ、ちょっとうまく処理しきれてないとは当時から思っていて、ヘルメットだけ残して全く別のガンダムの顔を埋め込んで「ハンサムになった!」って改造をしたりもしたけれどソレはソレ。
 キットとしてリニューアルするなら別のガンダムの設計データを適当にあてがって小顔にして「イマ風になった!」なんて手抜きはしてほしくない。先述の通り色々と今風にアレンジやチューニングする事自体は必要だと思っているので他の箇所に取り残されて、頭と顔だけ「設定画そっくりそのまま」なんてのも本意じゃない……。って気分にちゃんと答えてくれた造形だったので心底驚いた。「すごい、クラスターガンダムらしい顔のカッコよさってこんなカンジだったのか!」ってね。

 実際に届いた製品を手にしたら、また許しがたい別のアラが見えてきて憤慨しちゃうんじゃないかと心配したけれど杞憂だった。ちゃんと僕の好きなクラスターガンダムに向き合ってくれる人が開発している感触がある!そう思えるプラモだったというのが嬉しかった。
 最近プラモデルを買っても作らないでしまいこみがちだった自分なのに、これは届いてすぐ組み立てた。組み上がったら当時の資料を引きずり出してニヤニヤする。最高の出来でもう思い残すことがない……なんてサラサラ思っちゃいない。こんなに褒めちぎってもやりたいことはなくならない。むしろ「ソレはソレ。自分はこう仕上げたい、ココは別の解釈を思いついたので改造したい」そういう気分があふれてくる。そういう気分で満たされるためには「俺と同じトコにこだわってる人が作ってくれているな!」と思える箇所があるってのが大事なんだと気づかされたよ。

 僕の好きなプラモを開発してくれる人がいる。こんなに嬉しいことはない。

HIROFUMIXのプロフィール

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

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