
タミヤのキット化がきっかけで、巡りめくってその戦車の現存個体を守れたというイイ話からはじめたい。
大戦時にフィンランド軍が開発した突撃砲BT-42、そのキット解説を執筆した斎木伸生氏が「フィンランドのパロラ戦車博物館の今」とタミヤニュース(‘17年 No.574)で緊急レポートされていた。その記事を要約すると「タミヤのプラモで広く存在を知られたBT-42。後のアニメ映画の人気により日本人ファンらがパロラ戦車博物館へ聖地巡礼するように。そのBT-42が屋外展示ゆえに朽ちてゆく一方だったのを、シェルター(屋根)増設で保護しようと同博物館が資金集めでクラウドファンディングを開始。初動で日本からの寄付が多く寄せられたことにより、自国でもようやく注目されてシェルター増設が実現した」というイイ話……。知らなかった!
継続高校のBT-42といえば「天下のクリスティー式、なめるなよー!」と履帯パージからの転輪高速走行が見せ所のひとつ。キットではそれを実現する特徴的な駆動系が再現されている。写真ではサスペンションを上下させているが、位置決めピンで固定する事になる。それでもサスペンションの稼働をイメージできる真実味あるディテールだ。なお、クリスティー式サスペンションについては話が長くなるのでWikipediaとかで調べてもらえたらと。興味深いエピソードが満載なので是非。

BT-42は「鹵獲したソ連のBT-7が沢山あるので、英国にいっぱい貰った大砲を載せて戦車とする」という、物資の乏しいフィンランドが工夫してやりくりしたDIY的エピソードに彩られている。タミヤはBT-42を発売する前年、2010年にソ連の快速戦車BT-7をキット化しており、BT-42の車体はBT-7の流用なのでプラモでもその史実をなぞることになる。自動車のようなステアリング機構を再現したパーツがあったり、転輪もタイヤボリュームとパターンがあるので装甲車プラモのような趣もある。そんな雰囲気でも履帯を装着できてしまう面白い戦車だ。

特徴的というか、フィンランドの個性というべき砲塔のディテールにはこだわりを感じた。「英国砲を載せる都合で元の丸い砲塔に四角い箱を切って貼りました」というのが容易に見て取れる。エッジングパーツで再現されている部位とか「実物がペラペラの鉄板なんだろうな……」と、突貫DIY仕事をしないといけない当時の事情に思いを馳せられる。前面左右の縦3連のスタッズ? が別パーツになっていてタミヤのこだわりを感じた。実車はスゴく尖っているから? 確かにこの一手でこの細かな円錐がしっかり主張するようになっている。

直線と曲線の統一性のなさ、快速戦車なのに頭でっかちで高重心のフォルム、独自の機構を満載したゆえに不等配置になってしまっている転輪など、過渡期というか「間に合せの機械」だけが持ち合わせる独自の愛おしさがBT-42には詰まっている。それと『北欧空戦史』を読んだから見えてきた一連があって、ようやく知覚できた味わいという話でもある。

ガルパン劇場版を観にいった2015年、この「天下のクリスティー式」がいっさい刺さらなかった自分。今ではこのBT-42を手にしてニコニコしている。プラモデルなっているということは、メーカーが読み取ったイイ話、物語が必ず潜んでいるということか。まだ知らぬワンダーに満ちているのだな、プラモデルの世界には。