鳴かぬなら〇〇ホトトギス 〜三英傑を映す一句〜

はじめに

「鳴かぬなら〇〇ホトトギス」という句をご存じでしょうか。
織田信長豊臣秀吉徳川家康の三英傑を象徴する句として有名ですが、実は本人たちが詠んだわけではありません。後世に作られた寓話的な表現であり、江戸時代に広まったといわれています。

短い一句で性格を言い表したこの句は、いまも教育や歴史談義で語られる定番のエピソードです。


誰が作ったの?

「鳴かぬならホトトギス」の句は、江戸時代に庶民や知識人のあいだで作られたと考えられています。
作者は特定されていませんが、三英傑の人物像を比喩的に表現する「ことば遊び」のなかで定着しました。

当時は寺子屋教育や講談などで、人物を「一句で表す」ことが広く親しまれており、その流れの中で生まれたとされています。


三英傑と「ホトトギス」の句

🔥 織田信長「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス
比叡山焼き討ちや長島一向一揆殲滅など、徹底的な強硬策。
合理的と判断した場合は、どう思われようと気にしない。必要とあれば容赦なく排除する苛烈さのイメージが「殺してしまえ」に重なります。

🤹 豊臣秀吉「鳴かぬなら 鳴かせてみよう ホトトギス
墨俣一夜城の奇策、中国大返し備中高松城の水攻めなど、前例のない戦略で勝利。
さらに「草履を温める」逸話のように人心掌握にも長けていました。
柔軟な知恵と工夫で「鳴かせてみよう」とする姿が表現されています。

🐢 徳川家康「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス
今川の人質時代に耐え、信長との同盟、秀吉への従属を通じて勢力を温存。
武田信玄上杉謙信・信長・秀吉ら強者が退場するまで生き延び、最後に天下を取った。
「鳴くまで待とう」は忍耐と持久力の象徴です。


コラム:ホトトギスってどんな鳥?

 

   左:ホトトギス 右:ウグイス


ここで少し寄り道を。
ホトトギスはウグイスみたいなもので、鳴き声は「ホーホケキョ」と私は思っていましたが、実は全くの別物です。

  • ホトトギスカッコウの仲間。夏に渡来する鳥。鳴き声は「テッペンカケタカ」と聞こえる。

  • ウグイス:春告鳥として有名。「ホーホケキョ」と鳴く。


なぜホトトギスなのか?

  1. 和歌や俳句で人気の鳥
    ホトトギスは、古来より和歌や俳句に多く詠まれました。
    平安時代から「夏を告げる鳥」として親しまれ、万葉集古今和歌集にも登場。
    文学的に「特別な鳥」とされてきました。

  2. 鳴き声の印象
    鳴き声が「テッペンカケタカ」と強く繰り返すため印象に残りやすい。
    「鳴く・鳴かぬ」を題材にするにはぴったりの鳥でした。

  3. 季節感と寓話性
    ウグイスは春、ホトトギスは夏。
    四季を重んじる日本文化では「夏=ホトトギス」が定番。
    戦国武将を鳥に例えるとき、すでに文学で「特別な存在」だったホトトギスが選ばれました。

  4. 語呂の良さ
    五文字でリズムが良く、「鳴かぬなら〇〇ホトトギス」という形に自然に収まります。
    「ホ」「ト」「ト」「ギ」「ス」と子音が多く、耳に残りやすい。
    四文字の「ウグイス」「カッコウ」では語感が弱く、印象に残りにくいのです。


おわりに

「鳴かぬなら〇〇ホトトギス」は、

  • 信長=苛烈な決断力

  • 秀吉=工夫と人心掌握

  • 家康=忍耐と時を待つ力

を端的に表現した寓話です。

短い一句ながら、歴史のエピソードや日本文化の奥行きを感じられる表現。
ちょっとした会話の話題にもなる豆知識として、覚えておくと楽しいですよ。