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エスコンフィールド・ららアリーナ東京ベイ…地域で存在感増す「大規模アリーナ」、まるっと紹介

エスコンフィールド・ららアリーナ東京ベイ…地域で存在感増す「大規模アリーナ」、まるっと紹介

エスコンフィールドは晴天時には屋根が開き日差しを取り込むことが可能だ

全国各地でアリーナやスタジアムの新設が活況だ。プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」の人気上昇や、2026年秋開幕の新リーグ「Bプレミア」の参加条件の一つに座席数5000以上のアリーナ整備があることが背景にある。また、プロスポーツチームの新拠点としてだけでなく、ライブ・コンサートなどの開催や地域密着のイベントにより、試合のない日も楽しめる施設が増えている。運営に携わる企業がアリーナなどを中核に周辺の再開発を進め、地域活性化が期待できるケースも出てきた。地域経済の起爆剤になり得るアリーナ新設の動きを伝える。(特別取材班)

エスコンフィールドHOKKAIDO/地域全体がボールパーク

全国各地のアリーナ・スタジアム建設、周辺との一体開発の先行事例となったのが、プロ野球、北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」だ。ファイターズが東京から札幌市に本拠地を移転したのは04年。19年後の23年、札幌市の隣町、北広島市に収容人数3万5000人のエスコンフィールドを開業し、本拠を移した。日本で初めて地域全体をボールパークとしてとらえ、推進する計画を打ち出した。野球場(スタジアム)を核に、宿泊、レクリエーション施設、マンション、公園などの各種施設を網羅し、いずれも「北海道」を色濃く反映させる試みだ。

施設全体の敷地面積はおよそ32ヘクタールの広さがある。人口196万人の札幌市、新千歳空港がある千歳市のどちらにも鉄道を使えば20―30分で行ける中間点に位置する。球団はこれを地の利と考え、北広島市への移転を決定した。

球場は20年春に着工し、23年1月に完成。コロナ禍のさなかに工事は進み、これとともに野球にとどまらない各種の施設整備も進んだ。例えば敷地内にはドッグランを設け、クラフトビールを味わうことができるレストランをオープンした。これらが球団のみで進むのではなく、地元企業と一緒に作り上げることで、当初からの理念である「共同創造空間」を具現化させた。

球団の思惑は的中。初年度の来場者目標300万人は開業から半年間でクリアした。ファイターズの試合がなくても楽しめる、いわゆる「行楽地化」が着々と浸透した証だ。

北広島市の発表によれば、計画が決まった18年以降、初年度が終わった23年までに北広島市での住宅とアパートの新築は1000棟近くに上ったほか、人口の社会増が500人、雇用・ボランティアも4000人に達した。今後も大型ホテル新設や大学の移転などの計画がめじろ押しとなっている。

こうした好調ぶりは現在も続いている。24年の来場者数は418万人に上ったほか、28年以降の早い時期に700万人を超えると推測されている。さらに球団の2軍の本拠地が現在の千葉県鎌ケ谷市から北海道に移転する計画もあり、札幌市、恵庭市、江別市、千歳市、苫小牧市の5市が移転先に立候補している。こちらは30年の移転・開業を目指すと言われており、現在も激しい綱引きを繰り広げている。

28年にはJR北海道による新駅「北海道ボールパーク駅(仮称)」の開業も控える。三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめた経済波及効果は、北広島市のみで年間500億円以上、北海道全体でみると1000億円を超えると試算されている。

ららアリーナ東京ベイ/大規模再開発と連動

千葉県船橋市では24年に三井不動産とMIXIが1万人を収容できる多目的アリーナ「ららアリーナ東京ベイ」を開業。Bリーグの強豪、千葉ジェッツの本拠地として活用されている。

立地するJR南船橋駅周辺では、大規模再開発が進行中だ。23年に同駅直結の商業施設「三井ショッピングパーク ららテラスTOKYO―BAY」が開業。25年10月には「三井ショッピングパークららぽーとTOKYO―BAY」北館の1期建て替え工事が完了した。2期の工事は28年度の完了を目指しており、屋内型スタジアムコートなどを新設する計画。総店舗数は約600店舗となる見込みだ。

駅前周辺の開発も進む。南船橋駅南口の市有地約4・5ヘクタールの敷地内に、三井不動産などが開発主体となって芝生の広場やマンション、特別養護老人ホームなどが整備された。26年7月には船橋市の児童相談所も敷地内に設置される予定で、官民連携のまちづくりが加速している。

愛知・IGアリーナ/新たな“エンタメ体験”

愛知県では「IGアリーナ」(名古屋市北区)が25年7月に本格開業した。最大収容人員は、旧施設の愛知県体育館の2倍超の1万7000人。開業後、プロスポーツの試合や海外アーティストなどの音楽ライブが多数開催されている。

開業の背景にあるのは、大規模イベントへの対応力向上だ。26年9―10月にはアジア・アジアパラ競技大会の開催を控える中、従来は国際基準に応じた大規模施設が不足していた。また、全国的なコンサートなどの開催場所として名古屋が外される「名古屋飛ばし」の問題もあった。

愛知県体育館の後継として25年7月に本格開業した「IGアリーナ」

こうした中開業したIGアリーナは、巨大セットにも対応できる高さ30メートルの天井高で、最新鋭の映像・音響設備を備える。ファウンディングパートナーのNTTドコモが高速通信環境を整備し、次世代光通信基盤「IOWN(アイオン)」を用いた遠隔地との連携など、新たなエンタメ体験も想定する。

一方、課題として挙がるのが、興行前後の地域の回遊性向上だ。興行に合わせ周辺施設を訪れる来訪者が増えれば、地域の活性化につながる。

そこで中部電力やドコモ、IGアリーナ運営会社の愛知国際アリーナ(同)は、IGアリーナを起点とした共創プログラム「IGNAS(イグナス)」を始めた。各社が保有する施設や技術も有効活用し、来訪者の体験価値を高めるアイデアを企業から募る。

例えばデータ活用の許可が前提となるが、来訪者がIGアリーナでドコモの決済サービスを利用し、興行後にある飲食店でも決済していた場合、移動先の事業者と連携することで、興行後の思い出を語り合い体験価値を高められるという。施設の建設だけで終わらせず、人を呼び込む施策が地域の発展に重要となりそうだ。

GLIONアリーナ神戸/民設民営、好スタート切る

神戸市では25年4月に中央区の新港第2突堤再開発事業として「GLIONアリーナ神戸」が開業した。1万1000人を収容できるアリーナと隣接する公園「TOTTEIパーク」は海に囲まれ、開放感のある神戸の空気を感じられる。

神戸市が三宮や元町の南側のウオーターフロント再開発事業として公募し、NTT都市開発、NTTドコモ、スマートバリューによる企業コンソーシアムが優先交渉権を得た民設民営のアリーナプロジェクトだ。アリーナでは音楽コンサートやBリーグの神戸ストークスのホームゲームなどを開き、公園でも学生の音楽バンドフェスやクリスマスマーケットなどさまざまなイベントを開催する。

GLIONアリーナ神戸は海に囲まれ、開放感のある神戸の空気を感じられる

初年度は年間200万―300万人を集客する当初目標には届かない見通しだが、スマートバリューとNTTドコモが共同出資するアリーナ運営会社One Bright KOBE(ワンブライトコウベ、神戸市中央区)は「開業初年度であり、今後に向けた改善点もあるが、まずは順調なスタートが切れた」とする。同社の渋谷順社長は「認知度も高まっており、26年以降の予約状況を見ると、年間スケジュールの8割を埋めることもできそう」と手応えを語る。

渋谷社長は今後、コンサートなどの興行が首都圏に集中する可能性も考慮し、「地域に根差したイベントなどの自主コンテンツを作り、興行や集客のノウハウを身に付けることが必要になる」と分析。すでに大物ミュージシャンを集めた音楽イベントなどの自主興行も開いている。

アリーナ周辺では他の再開発も進む見通しで、地域全体の集客効果も高まる期待がある。スマートバリューのデジタル技術を生かしてチケット発行や決済、人流などのデータを連携し、アリーナを生かして交流人口を増やし、消費増につなげるなど地域全体の活性化につなげる絵を描いている。

福岡アリーナ/Bリーグプレミア参入

福岡県では健康食品の通信販売などのやずや(福岡市南区)が、福岡市東区に約6000人を収容できる福岡アリーナ(仮称)を建設する。29年3月開業予定で、同社が支援するBリーグのライジングゼファー福岡の試合をはじめ、地域イベントや展示会開催にも対応できるようにする。26年秋開幕の新リーグ「Bプレミア」に参入するため、建設を決めた。売り上げや入場者数のほか、28―29年シーズンに座席数5000以上のホームアリーナで臨むことが新リーグ加入の審査基準となっている。

5日に開館する「福岡武道館」

福岡アリーナは博多湾の埋め立て地で高層マンションなどの建設が進む「福岡アイランドシティ」に建設予定。ホテルや保育園などもあり、都市機能が充実してきているエリアだ。21年には福岡市中心部とつながる高速道路が開通するなど、交通の利便性も向上している。

やずやは福岡アリーナ周辺の複合施設開発にも携わってきた。福岡アリーナがもたらす集客効果によって周辺を含めた一帯の盛り上がりも期待される。

福岡市博多区では、5日に「福岡武道館」がリニューアルオープンする。地下1階、地上4階建てで、地下鉄などの公共交通機関でアクセスしやすい立地。1000人以上の観覧席を設けた柔道場や弓道場など武道関連の施設に加えて、750平方メートルほどの体育館も整備した。

福岡県の服部誠太郎知事は「県民が多様なスポーツに活用できる機能も持たせた」と胸を張る。福岡県警が訓練に利用するほか、スポーツ振興の新たな拠点として、隣接する福岡市民体育館とも協力しながら運用する考えだ。

長崎スタジアムシティ・SAGAアリーナ/プロスポーツで地方創生

長崎県では新スタジアムが地域での存在感を高めている。長崎市中心部で24年に開業した複合施設「長崎スタジアムシティ」は、サッカーJリーグのV・ファーレン長崎のスタジアムや、Bリーグの長崎ヴェルカのホームアリーナをはじめ、ホテルや商業施設、オフィス棟を擁する。

通信販売のジャパネットたかた(長崎県佐世保市)などをグループに持つジャパネットホールディングス(HD、同)が事業主となり、1000億円規模の総事業費を投じて完成させた。同HDはスポーツ・地域創生に取り組む拠点とする。

長崎スタジアムシティは産学連携のハブ機能も持つ。長崎大学はオフィススペースの1フロアをサテライトキャンパス「長崎大学テクノロジーイノベーションキャンパス(NUTIC)」として活用。情報データ科学部の学生らが企業との研究開発や連携を通じた社会課題解決に挑む。

SAGAアリーナ周辺では佐賀県立大の開学構想も進む

24年に国民体育大会(国体)から改称後初となる国民スポーツ大会(国スポ)「SAGA2024」を開催した佐賀県では、国スポ開催に伴い多目的アリーナ「SAGAアリーナ」(佐賀市)を行政主導で23年に開業した。

バスケットボールとバレーボールの地元プロスポーツチームが拠点にしている。開業後はスポーツの試合だけではなく、音楽ライブやeスポーツ大会も開催してきた。

SAGAアリーナ周辺では、若者の大学進学に伴う県外流出を防ぐため、佐賀県立大学を29年に開学する構想が進行中。国スポに向けてSAGAアリーナと同時開業した複合体育施設「SAGAサンライズパーク」など周辺施設が充実しており、体育館などの施設の建設費用削減効果を見込む。

日刊工業新聞 2026年01月01日

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