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教員の研究時間50%以上確保…文科省有識者会議、科学再興へまとめた提言の全容

教員の研究時間50%以上確保…文科省有識者会議、科学再興へまとめた提言の全容

文科省

次期基本計画に盛り込み、20大学超え目標

文部科学省の有識者会議が科学の再興に向けて提言をまとめた。教員の研究時間割合が50%以上となる大学を20校以上に増やすという野心的な目標を掲げた。現在は全国平均が32%と低迷している。実現にはトップ大学だけでなく中位層の底上げが必要になる。文科省は内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)に提言を報告し、科学技術の次期基本計画に施策を盛り込む。(小寺貴之)

「基礎研究や学術研究の国際的優位性を取り戻す」―。松本洋平文科相は提言の目的をこう説明する。

文科省は2026年から5年間の第7期科学技術・イノベーション基本計画に施策を打ち込むために有識者提言をまとめた。施策に加え、目標も設定している。

例えば新興融合領域の開拓を促すために若手を中心に挑戦的な研究課題数を2倍に増やす。24年度は約6500件のため30年度末までに1万3000件とする。また国際性を高めるために日本人研究者の海外派遣目標を累計3万人とした。23年度は3623人のため、1・6倍に増やす。

また研究活動へのAI活用を促し、総論文数に対するAI関連論文比率を世界10位から5位に引き上げる。日本は現在7・4%。米国の9・5%を目指す。同時に研究設備の共用化を進めて共用化率を倍増させる。現在は約20%のため、10年かけて40%に高める。AI活用や設備共用化は研究活動の効率を高めると期待されている。特に若手研究者への恩恵が大きい。自分のラボを立ち上げる際に、共用設備を使えると費用を抑えられる。

さらに研究開発をマネジメントするリサーチ・アドミニストレーター(URA)などの人材を配置し研究者が研究に打ち込める環境を整える。教員の研究時間割合が50%以上の大学を20校以上に増やす。もともと国立大学の法人化前の02年は同46・5%だった。法人化後の人員削減で教員が研究に使える時間が減り、23年には32・2%まで低迷している。

国際卓越研究大学に選ばれた東北大学は、現状30%台のため25年かけて50%に引き上げる。目標を20校以上と設定したため85大学ある国立大の2割強が研究時間50%を目指すことになる。中位大学への支援は限られた予算で当該大学の強みとなる研究領域を伸ばす施策が中心だったが、大学経営自体を立て直す施策が必要になる。

有識者会議は実現に向けて投資の抜本的拡充が必要と指摘する。さらに文科省だけでなく、さまざまな府省庁や民間からの大幅な投資拡大が重要と強調する。松本文科相は「関係府省と連携し科学技術関連施策を全力で推進していく」と力を込める。予算獲得のための目標になっていないか注視する必要がある。

日刊工業新聞 2025年11月27日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
研究時間割合は卓越大候補の京都大学も計画開始10年目に45%を掲げていて現在が35.8%なので30年時点では40%程度になります。30年度末までに50%以上の大学を20校以上というのは相当困難なのではないかと思います。既存の教育業務などを減らさずに33%から50%に増やすにはフルタイム換算で研究者数・時間を2倍に増やす計算になります。卓越大以上の目標を掲げて施策や投資を押し進める。卓越大だけでなく、中位大学にも広げる。この意図はわかるものの、本当に実現可能なのか。実現不可能な目標と現場に受け止められると、他の目標も形骸化しかねないので調整が入るかもしれません。入らなかったら、ことあるごとに「2倍に増やすんですよね?」と聞きましょう。あれは有識者の提言だからと逃げられないようにしないといけません。

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