“根回し“なくゼロベース、学術会議「新法人」詳細設計が始まった
日本学術会議の法人化に向けて詳細設計が始まった。新法人の組織やガバナンス(統治)、活動について2025年度内に方針を固め、26年8月の臨時総会までに内部規則などを策定し承認する。10カ月の期間はあるが、全体で話し合える総会は1度しかない。新法人に求められる外部資金の獲得策は原則やガイドラインをまとめるにとどまり、資金集めは新法人の会員に委ねられる見込みだ。(小寺貴之)
「11月に総会や会長・副会長、事務局。12月には部の構成や会長候補者選考などと検討事項が多く、時間はあまりない」―。学術会議の光石衛会長は10月末に開かれた総会で会員に検討スケジュールを説明した。検討事項は中期活動計画や年度計画、自己点検評価、内部監査など16項目。これを法人化準備委員会と分科会、作業部会の四つの会議体で検討する。学術会議での検討とは別に政府が決める政令案や内閣府令案を随時検討し、新法人の会員候補者の選考委員会も動いている。
総会で会員に示されたのは検討事項とスケジュールなどに限られ、論点や政府との検討内容は具体性に乏しかった。そのためゼロベースの議論になった。自己資金検討作業部会の構成員からは「構成員になったものの、何をいつ検討するのかまったく分からない。具体的に分かるのはいつか」と見通しを聞かれている。
月に1度か2度の会議で各事項が決まったとされる懸念から「政府の審議会のように参加者には自由にしゃべらせるが、事務局が用意した案がそのまま通るのではないか」と問う声もあった。光石会長は「臨時総会で否決されればすべてやり直しになる。検討状況は随時、会員に説明していく」とする。
総会前に検討事項の論点を会員と共有し、意見分布を整理してから議論に臨むということができていない。そのため対立点や課題の解決策を検討する前の議論百出の状態で総会の2日間が終わる。これは霞が関の“根回し”に当たる機能が学術会議ではほぼ働いていないためだ。会員間で話し合うためのメーリングリスト作成が、総会の場で繰り返し要望されている。
法人化の利点としては外部資金獲得が可能になり、財政面での独立性を確保できるとされている。ただ寄付集めは難しく、利益相反のリスクをはらむ。そもそも学術会議が望んだ項目ではない。
そこで作業部会では外部資金を受け取る際の原則やガイドライン作成を中心とする。具体策は新法人で寄付集め専門のファンドレイザーを雇用してから戦略や計画を策定することになる。三枝信子副会長は「財源のベースは国からの予算であり、それを大きく超える資金獲得は予定していない」と説明する。
いずれも日本のナショナルアカデミーや学術界の将来を左右する項目だ。本来は政府と学術会議だけでなく、各分野の学協会や会員を送り出す大学、研究機関などと協議する必要があった。その時間や仕組み整えるのは困難な状況だ。政府は世界最高のナショナルアカデミーを掲げて法人化を決めた。新法人は組織や財源など、いびつな形でスタートする可能性がある。時間をかけてでも修正していく必要がある。