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「色の魔術師」と呼ばれる福島の時計ブランドが投入、「自動巻き腕時計」で表現したこと

「色の魔術師」と呼ばれる福島の時計ブランドが投入、「自動巻き腕時計」で表現したこと

自動巻き腕時計「Odaka」に新色3本を追加

フクシマウォッチカンパニー(福島県南相馬市、平岡雅康代表取締役)は、南相馬市小高(おだか)区に拠点を構える腕時計メーカー。国内外の愛用者から「色の魔術師」と呼ばれるほど独特の色彩表現が持ち味だ。このほどクラシックな自動巻き腕時計「Odaka」シリーズに、グレー、オレンジ、パープルの新色3本を追加した。東日本大震災からの復興を経て歩みを続ける「小高区の人々の営みを色で表現した」(フクシマウォッチカンパニー)としている。

新色のグレーは長旅を終えたサケがふるさとに戻る姿をイメージした。かつて南相馬市の川では毎年多くのサケが遡上(そじょう)し、町の風物詩だった。サケの静かで力強い流れをグレーの文字板に込めた。震災後、避難区域となった小高区にも、最近は少しずつ人々が帰り、暮らしが再び育まれている。サケの遡上と人々の歩みを重ね合わせ、「希望を帯びたグレーに表現した」(同)。

オレンジは小高区の家々の庭先に、代々大切にされてきた柿の木が多く見受けられたことを踏まえ、明るさとぬくもりを再現した。パープルは震災で酪農を断念した地元農家が帰郷し、今では一念発起してブドウ栽培とワインづくりを手がけていることに着想を得て、「再生と挑戦の色を宿した」(同)。

フクシマウォッチカンパニーは、長年にわたり時計業界で仕事経験を積んだ平岡代表取締役が震災のボランティアで関わった福島県に魅了され、埼玉県から南相馬市に移住。福島を腕時計産業が盛んなスイスのジュネーブに匹敵する場所にすることを目指し、国産の機械式時計ブランドとして立ち上げた。

震災から10年以上が経ち、人が戻り始めた小高区の現在の人口はおよそ3800人(震災前は約1万2000人)。同区は再び人々が息づく場所になった。地元の生活の中に潜む色を拾い上げ、「装う人の記憶とそっと重なる腕時計を生み出す」(同社)会社としてフクシマウォッチカンパニーは地域とともに時を刻む。

日刊工業新聞 2025年12月12日

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