みずほ・三井住友・三菱UFJ…メガバンクが駆使するAI、問い直す「銀行員の価値」
AI(人工知能)の普及が銀行員の意義を問い直している。メガバンクはAIが目標達成に向けて自律的に行動する「AIエージェント」などの導入を積極化している。狙いの一つは“AIを使いこなすのは当たり前”との意識を社内に浸透させることだ。一方でAIに代替されない銀行員の価値とは何か。各社が解を探っている。(江上佑美子)
みずほフィナンシャルグループ(FG)は全社員がAIを日常的に使いこなす文化の醸成を目指す。8月に開いた社内イベントで藤井達人執行役員デジタル戦略部部長は「任せられる仕事はAIに任せ、人間は新たな価値創造に集中する時代になる。AIを脅威ではなく飛躍のチャンスだと捉える文化を育てないといけない」と強調した。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は25年度までの中期経営計画で8000億円のデジタル投資枠を設け、次期中計までの合計で500億円を生成AIに投じる方針だ。法人向けAIエージェント関連の開発、導入支援を手がける会社をシンガポールに新設し、「AIで合理化するだけではなく、新たな価値を提供したい」(磯和啓雄執行役専務)と意気込む。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)はAI活用を26年度までの中計の柱に据える。スタートアップのサカナAI(東京都港区)と連携し、社内外文書の作成プロセスの自動化などに取り組んでいる。
AIの普及によって銀行員は不要になるのか。こうした懸念に対し「AIに仕事を奪われるということではない。AIと一緒に新しい価値を創造していく」(藤井みずほFG執行役員)との意識浸透に力を注ぐ。
「AIはものすごい勢いで人間の仕事の領域に入ってきている。しかし提案書を全てAIに作らせ、それをそのまま説明することにお客さまは価値を感じてくれるだろうか」―。1日の内定式で、みずほFGの人見誠執行役常務グループ最高人事責任者(CHRO)はこう問いかけた。「お客さまは何に価値を感じるのか。その人が経験の中で培った自分らしい軸と、相手の思いをくみ取る人間らしさではないか」と語った。
ある銀行幹部は「若手から『本部で企画に携わりたい』といった声を聞くが、こうした業務はAIエージェントに代替される可能性がある。支店などで地道に客先を訪問し、顧客の表情からニーズを察する、といった仕事こそが重要になる」とAI共存時代の銀行員の価値を説く。
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