「風力発電」さらなる一歩踏み出す、“殻破る”老舗の新戦略
顧客探し、FIPで売る
風力発電事業者がさらなる成長へ新しい一歩を踏み出している。再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)にとどまることなく、市場価格連動型制度(FIP)への転換、太陽光発電など他の再生エネ電源や蓄電池との融合、需給調整力も兼ね備えるアグリゲーターへの進出、そして沖合に展開する国内最大級の洋上ウインドファーム誕生など大きな動きが相次ぐ。同市場で老舗とも呼ばれる企業の戦略をそれぞれの現場で追った。
山の中腹まで多くの風車タワーが目に入る青森県六ケ所村に、また新たな風力発電所が誕生した。コスモエコパワー(東京都品川区)が古い発電所を建て替え「新むつ小川原ウィンドファーム」として7月に商業運転を始めた。出力4300キロワットの風車8基で構成。3枚の翼が回転する円の直径は120メートル、高さは最大145メートルと周囲に比べてもその大きさが際立つ。タワー直下に立つと風を切る音の迫力に圧倒される。
7月下旬に現地で行われた安全祈願祭にはアマゾンウェブサービスジャパンの首脳も駆けつけ、前途を祝した。コスモエコパワーは昨年、米アマゾンとコーポレートPPA(電力販売契約)を結び、この発電所からカーボンフリーの電力と環境価値を20年間、提供する。「今までは発電のみの事業者だった。これからは需給調整や販売までサプライチェーン全体でやる時代」。コスモエコパワーの平塚隆介電力事業戦略部長がこう強調するように、風力専業で最古参の同社も今、過渡期を迎えている。
目下、戦略的にFIPへの移行を推進中。FITからの転換を含め4発電所でアマゾンなど6社(グループ内は除く)とコーポレートPPA契約を結ぶ。新むつ小川原は2003年からFITで20年間稼働した「旧むつ小川原」を更新し“卒FIT”すると同時に「自分たちで顧客を探し、FIPで売る」(平塚部長)という新しい事業モデルの第1号でもある。
現在も水面下で脱炭素電源と環境価値を求める顧客との交渉を進めている。さらに「顧客は風力の電気だけ欲しいわけではない」(同)として太陽光の電力調達にも参入。6月にエネグローバル(茨城県つくば市)、日本ベネックス(長崎県諫早市)と相次ぎFIPでコーポレートPPA契約を締結。需給調整業務なども行い、コスモグループ内の電力小売り会社に卸すアグリゲーターにも進出した。
FIPでの電力販売事業は売りっぱなしで済むFITとは異なり、発電量を細かく予測して広域機関に提出する必要がある上、インバランスの調整・精算など業務が煩雑。電気が余ったり不足したりした際は市場で売買して調整する手間もある。「特に中小事業者は大変。販売面でも小規模事業だと与信の問題もある。そこを我々がお手伝いしたい」と意欲を見せる。同時に発電所の立地自治体や住民もメリットを享受できる“地産地消”モデルの構築にも乗り出している。