過去最高1599万人に、個人株主の存在感増す
個人株主の存在感が増している。日本証券業協会や東京証券取引所などによると、2024年度末の個人株主数(名寄せ人数)は前年比4・8%増の1599万人で、過去最高を更新。1人当たりの保有銘柄も増えている。上場企業は株主優待制度の新設などで取り込みを図る。足元では証券口座乗っ取り事件に冷や水を浴びせられた格好だが、証券会社はセキュリティー強化や補償などの方針を打ち出し「貯蓄から投資へ」の流れを止めないよう対策を進める。
個人株主増加の背景には、24年に少額投資非課税制度(NISA)が拡充されたほか、東証が投資単位の引き下げを要望している点がある。
政策保有株式の縮減が進む中、安定株主としての個人株主に着目し、自社商品券の付与などの株主優待制度を新設する企業も目立つ。三菱UFJ信託銀行によると、25年3月の株主優待制度の新設企業は148社と前年比で倍増、株主優待の実施企業数は5年ぶりにプラスに転じた。近年、公平な利益還元を図るといった理由で株主優待制度は減少傾向だったが「個人投資家への関心が高まっていることがうかがえる」(法人マーケット統括部株主戦略企画室)。
企業にとって個人株主の重要性が増している理由は数だけではない。アクティビスト(物言う株主)の活発化もあり、25年6月総会では株主提案が過去最多となった。同社の集計では、25年6月総会において個人株主の株主提案への賛成率は23・4%と、議決権個数ベースでの24・5%よりも低かった。同社法人マーケット統括部株主戦略企画室の担当者は「株主提案が上程された場合にも個人株主には安定株主としての役割が期待できる」とした上で「議案内容を吟味する個人株主もいるので、有事の際には丁寧かつタイムリーに開示することが重要になる」と話す。
三井住友信託銀行の調べでは、25年6月総会の平均出席者は72人、土産を用意した企業は全体の11%だった。コロナ禍の21年にはそれぞれ29人、4%だったが緩やかに増加傾向だ。総会前にオンラインで質問を受け付けたり、総会後に懇親会を開いたりして個人株主との対話の機会を増やす企業も目立つ。
政府が旗を振り個人の資産形成への関心が高まる中で12日以降、日経平均株価は史上最高値を連日で更新し、追い風が吹いている。
一方で逆風となったのが証券口座への不正アクセスによる売買事件だ。金融庁のまとめでは、1―7月の不正取引は累計で8111件となった。野村ホールディングスは25年4―6月期連結決算で不正取引で生じた損失の補償費用に66億円を計上した。森内博之執行役最高財務責任者(CFO)は「不正取引が生じた後、セキュリティーレベルを段階的に引き上げ、被害件数や(不正)売買金額はピーク時から減少した。被害にあったほぼすべてのお客さまと直接コミュニケーションを取ることができている」と話す。