再浮上のカギはアップルか…キヤノントッキ社長に聞く、FPD投資の展望
キヤノンは産業機器を手がけるインダストリアルグループでさらなる成長を狙う。好調な半導体露光装置だけでなく、主要3子会社での事業成長も重要になる。半導体では装置の適用領域の拡大、ディスプレーでは事業の安定性を高めることがテーマになる。キヤノングループのリソースを使い、いかに事業を伸ばすか。各社のトップに聞いた。2回目はキヤノントッキ社長の伊藤博之氏。(3回連載)
―フラットパネルディスプレー(FPD)の設備投資は低水準が続きます。
「2021年までは良かったが、その後緩やかになってしまった。足元では商談の数も少ないというのが現状だ。ただ、ディスプレーは確実に進化していくので、巡ってくるチャンスを取っていく。サービスビジネスも立ち上げて、装置の改造や保守に力を入れる」
―京東方科技集団(BOE)など中国勢が技術を含め競争力を付けています。
「24年ごろから液晶ディスプレー(LCD)と有機EL(OLED)の比率が5対5になってきた。デカップリング(分断)もあり、中国市場は中国製品で賄う形になってきた。ただ、中国のセットメーカーはパネルを高く買ってくれない中、3年後を見据え、高付加価値製品にシフトしていく。一方、物量ではBOEがナンバーワン。それ以外のメーカーはこれまでとは違う製造方法で勝負するのではないか」
―投資再開のタイミングは。
「これは個人的な見解になるが、27年は米アップルの『iPhone(アイフォーン)』発売から20周年のメモリアルな年になる。10周年の17年に発売したiPhone XでOLEDを採用したように、ディスプレーで新技術を採用していく可能性がある。特にAI(人工知能)をスマートフォンに搭載すると電力効率の問題が生まれる。ディスプレーの発光効率を高めて、省電力化につなげる必要があるだろう」
―シャープやジャパンディスプレイ(JDI)の事業撤退もありました。
「現状の円安傾向や中国のデカップリングを考えれば、国内にディスプレー拠点が帰ってくる可能性はある。一方、モバイルやテレビなど、同じモノを作っても仕方がない。チャンスがあるとすれば、次世代のディスプレーだろう」
*取材はオンラインで実施。写真はキヤノントッキ提供
【記者の目/アップル新製品が投資左右】
FPD投資の再浮上のカギはやはりアップルだろう。iPhone Xの空前のヒットにより、当時のFPD業界は設備投資に沸き立った。そこから景色は変わり、FPDメーカーの数は減ったものの、構造は大きくは変わらない。「アップルのメモリアルイヤー」である27年ごろの新製品がFPD投資の今後を左右する。(小林健人)