宇宙の始まりに何があったのか…謎解明のカギ「ミュー粒子」、調べる技術を追う
宇宙の始まりは約138億年前に爆発的膨張が起こった時と言われている。だが、その時に何があったか、今の宇宙になるまでの歴史は分かっていない。この課題は多くの研究者が長年挑み続けるテーマの一つで、数多くの理論や実験が展開されてきた。中でも物質を構成する最小単位の「素粒子」は、宇宙の謎の解明への手がかりになると期待されている。素粒子を調べる技術と研究の重要性を伝える仕組みを追った。(飯田真美子)
宇宙が誕生した約138億年前は、今とは異なる環境だったと考えられている。具体的に、宇宙が誕生する前は素粒子に働く電磁気力と強い力、弱い力の3種類の“力”が統一されていたが、それが崩れたことで爆発的膨張が起こって現在の宇宙が生まれたという説がある。この素粒子が持つ3つの力が1つになる「大統一理論」が宇宙を知るカギと言われており、同理論を証明できれば宇宙初期の状態が分かる。そのために、さまざまな素粒子に焦点を当てた研究が進められおり、東京大学の梶田隆章卓越教授は「素粒子研究は複数の測定装置を組み合わせた方法や加速器を使った実験が行われてきた」という。ただ、さまざまな実験が行われる中で大統一理論はいまだに明らかになっていないのが現状だ。
東大や高エネルギー加速器研究機構(KEK)、神戸大学が中核となる国際共同研究グループは、大統一理論の証明につながるであろう素粒子の一種で電子より約200倍重い「ミュー粒子」がまれに起こす崩壊現象「ミューイーガンマ」を探索している。従来より測定感度が約2・4倍高い装置を使った実験「MEG II」で2022年に約18週間取得したデータを解析すると、6兆7000億回に1回も崩壊が起こらないことが分かった。同装置は検出器の性能を改善すべく浜松ホトニクスと開発した新型半導体光センサーなどを組み込み、時間分解能や検出効率を向上させた。26年までデータを取得し、最終的に従来の約10倍の探索感度を達成したい考えだ。これにより、ミュー粒子の崩壊現象の解明につなげる。
素粒子を通じて宇宙誕生の謎を調べる研究は重要であるが、内容が難しく一般には理解してもらいにくい。日本科学未来館(東京都江東区)では、素粒子などから宇宙を知る「未読の宇宙」という新たな常設展示を23日から始める。宇宙から降り注ぐ高エネルギーの放射線を調べる方法や加速器を使った素粒子実験などを模擬装置で体験できる。タブレットに表示された研究者が説明や指示をしてくれるため、専門家の下で本当に実験しているような雰囲気が味わえる。難しい解説は極力減らし、理系に興味のない人でも楽しめる展示にしたという。日本科学未来館の浅川智恵子館長は「素粒子はノーベル物理学賞に値する研究もある。まだ未読の宇宙からのメッセージは多くあることを感じてほしい」と強調する。こうした取り組みが次世代の研究者育成につながると期待したい。