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世界初の試み…全国4万km、送電線上空に「ドローン航路」整備できるか

世界初の試み…全国4万km、送電線上空に「ドローン航路」整備できるか

ドローンで送電線の点検を行う(イメージ)

コスト低減、物流用に開放へ

送電線の上空をドローン(飛行ロボット)の航路に活用する取り組みが始まった。送配電各社やNTTデータ日立製作所などが出資するグリッドスカイウェイ有限責任事業組合(東京都港区、足立浩一代表)が、今後10年で全国4万キロメートルの航路を整備する。まず送電線の点検に活用し、一定の収益を確保した上で、リーズナブルな料金での航路の一般開放を目指す。(梶原洵子)

全国で網の目状に張り巡らされた送電線網は「ドローン航路として有利な条件がそろっている」とグリッドスカイウェイの足立代表は話す。有人の航空機は送電線の近くを飛びにくいため、接近する心配がない。また、送配電会社は送電線保守の業務を通じて地域住民などと接点があるため、航路整備の話を進めやすい。

航路の整備といっても、土木工事は行わない。地域の関係者の理解を得た上で、ドローンが運航できる範囲を設定する。航路の高さや横幅も立体的に決め、航路システムのデジタル空間内で航路を設定する。ドローンはシステムに連携した上で実際の航路に入り、自動航行する。グリッドスカイウェイは航路運営者として、システム上でリアルタイムにドローンの追跡や航路からの逸脱検知を行い、安全運航を支援する。

現在、ドローンの運航には運航事業者が地域の関係者との調整や周知、飛行経路のリスク評価など煩雑な手続きを個別に行わなければならない。事前に一定の準備を終えたドローン航路を使い、調整・周知を航路運営者に委託することで、調整時間やコストを削減できる期待がある。

ドローン航路の開通式に臨んだ秩父市の北堀市長(左から4人目)、グリッドスカイウェイの足立代表(同3人目)ら

「まず送電線の点検用に航路を整備し、点検コストを同等以下にして社会課題を解決したい」と足立代表は話す。現在は人が鉄塔に昇り点検している。山間地での作業は負荷が大きく、人口減少や少子高齢化が進む中で人材の確保は難しくなっている。ドローンで負荷の軽減を図る。

次の段階で、物流用途などにドローン航路を開放する。「リーズナブルに提供したい」(足立代表)とする。

第1弾として、3月25日に埼玉県秩父市エリアで約150キロメートルの航路を開通させた。同市の北堀篤市長は「官民で連携し、ドローンの聖地を目指したい」と話す。同市では以前から、荷物配送や被災状況の確認にドローンを活用する実証を行ってきた。ドローン航路で取り組みを前進させたい考えだ。

ドローン航路の整備は経済産業省が中心になって進める「デジタルライフライン全国総合整備計画」の第1弾で、世界初の試みになるという。送電線の上空の利用と同時に、静岡県で河川上空の利用も始まった。河川の上空はトラジェクトリー(東京都港区)が中心になり、10年後に全国で約1万キロメートルの航路を整備する。

ドローンがコストなどの課題を乗り越えて全国を飛び回れるか。大きな挑戦になる。

日刊工業新聞 2025年04月01日

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