「なぜEBMは神格化されたのか」大脇幸志郎著p397-399
たとえばUSPSTFは早くからサケットらの仕事を取り入れてきた。マンモグラフィやPSAによるスクリーニングに対する慎重姿勢は、患者団体や医師会からの反発にもかかわらず信頼されてきた。ところがまさにそのPSAについての推奨が2018年に更新されたとき、2012年の旧版から加わったデータは以前の傾向から変わっていなかったにもかかわらず、55歳から69歳の男性についての推奨度が更新された。旧版ではほかの年齢層と同様の「D」すなわち行わないように推奨されていたが、新版では「C」すなわち個別に判断するよう推奨された。繰り返すが、この変更はスクリーニングの利益を示すデータが増えたためではない。
これらの判断に結びついた主要な試験が3件ある。アメリカで行われたPLCO研究、ヨーロッパで行われたERSPC研究、イギリスのCAP研究だ。2012年版までに報告されていたPLCOでは死亡を減らす効果が確認されず、ERSPCでは若干の効果が示され、その傾向はフォローアップ(経過を追うこと)でも変わらなかった。あとで報告されたCAPでも死亡を減らす効果は示されなかった。つまり、2012年版と2018年版は傾向として同様のデータを参照している。CAPは新しく加わったが、2012年版の推奨のとおり、スクリーニングしないことを支持するものだ。
それなのになぜ結論が変わったのか?それは結論に至る過程で恣意的にデータが選ばれたからだ。2012年版ではPLCOとERSPCに基づいて、死亡を減らす効果は1000人あたり「0~1人」と計算されたが、2018年版ではERSPCのみを採用して「1.3人」とされた。0かもしれないなら推奨できないが、0でないなら推奨できるというわけだ。だが2018年版がなぜPLCOとCAPを無視することにしたのかは説明されていない。
つまり、結論を変えたのは新しいデータではなく、データを要約する態度であって、結論はデータを見る前から決まっていたとしか思えない。
マンモグラフィについても、2023年5月9日に公開された草稿版で、40歳代の女性に対する推奨度は「C」から「B」に昇格したが、これを支持するデータは存在しないことがNEJM(という医学雑誌)で指摘された。2024年の確定版でも「B」推奨とされた。
(引用はここまで)
注
USPSTF 米国予防サービス特別委員会
PSA(prostate specific antigen) 前立腺特異抗原
PSAは、実質D(行わないように推奨する)というわけですね。
マンモグラフィは、実質C(個別に判断するように推奨する)というわけですね。
ちなみに「個別に判断する」って、どういう意味だろう。
「母親と叔母さん(母親の妹)が乳癌でした」
こんな場合は受けて下さいね、という意味だろうか。
マンモグラフィについては、こちらもご参照ください。