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by hinaseno
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『遠い声/浜辺のパラソル』のこと(その1)―― ”ごく少数の幸せな読者へ”


ずっと紹介しよう紹介しようと思いながら、発売からかなり経ってしまった川本三郎さんのこの新刊のことを。

『遠い声/浜辺のパラソル』のこと(その1)―― ”ごく少数の幸せな読者へ”_a0285828_11532631.jpeg


タイトルは『遠い声/浜辺のパラソル』。発売は7月15日。その日は川本さんの80歳の誕生日でした。

川本さんの新刊はたいていはひと月くらい前には把握しています。ふた月に1回くらいはAmazonでチェックしているので。でも、この本のことを知ったのは7月の下旬、発売されてすでに2週間くらい経ってのことだったんですね。『遠い声』というタイトルを見てどれくらい驚いたことか。あの本が2024年という年に復刻されるなんて信じられない思いでした。

あの本というのはこれ。

『遠い声/浜辺のパラソル』のこと(その1)―― ”ごく少数の幸せな読者へ”_a0285828_11533005.jpeg


『東京人』連載の川本三郎さんの「東京つれづれ日誌」の今月号(2024年10月号)の記事に、この本のことが触れられています。


 80歳を祝って、出版社ベルリブロが旧作の掌編集三冊からセレクションして『遠い声/浜辺のパラソル』を出してくれた。奥付の発売日は2024年7月15日と、私の誕生日になっているのがうれしい。
 ベルリブロは元みすず書房の編集者、尾方邦雄さんが昨年立ち上げた一人出版社。昨年の第一作、フランス文学者の石川美子さんの素晴らしいエッセイ集『山と言葉のあいだ』に次ぐ二冊目になる。
 一人出版社だから無論、少部数。それでも80歳の記念になる本でうれしい。


そう、ベルリブロは尾方邦雄さんという方が昨年立ち上げた一人出版社なんですね。尾方さんは筑摩書房やみすず書房にいらっしゃった人とのこと。流石にいい本出してくれますね。注目すべき出版社がまたひとつできました。


さて、川本さんの話はもう少し続いていて、そこには個人的に興味深い話がいくつも。


 石井美子さんによると、いまでこそフランス文学の古典になっているスタンダールだが、32歳のとき最初に出した本『ハイドン・モーツァルト・メタスタージュ伝』(スタンダールもハイドンが好きだった!)は自費出版で千部だけ。二年後に出した『イタリア絵画史』もやはり千部。
 だから『イタリア絵画史』全二巻の第二巻のとびらには”To the happy few”と記した。「少数の幸いなる人へ」という意味。数は少なくてもこの本を手にしてくれた人々は幸せだという思いがこめられている。
 拙著もこれに倣って”ごく少数の幸せな読者へ”という思い。本の印刷を精興社にしてもらえたのもうれしいこと。精興社は岩波の荷風全集を手がけている。今度の文庫版『断腸亭日乗』も出版は精興社。1996年に都市出版から拙著『荷風と東京 「断腸亭日乗」私註』を出してもらったとき、当時の社長で編集長の粕谷一希さんに印刷は精興社でとお願いした。粕谷さんは希望を叶えてくれた。
 こんどの『遠い声/浜辺のパラソル』出版に際しても、尾方邦雄さんに印刷は精興社にといったところ、尾方さんは当然のように「そのつもりです」。これも有難いことだった。
 石川美子さんの『山と言葉のあいだ』も印刷は精興社だった。精興社の本は本当に品がいい。


精興社のこと、そしてスタンダールの”To the happy few(ごく少数の幸せな読者へ)”のこと。個人的にはたまらない話が次から次へと。これだけでもたまらないことばかりなんですが、本の内容も本当に素晴らしいんですね。単なる復刻ではなかったのだから。

それについては次回に書くことにしましょう。


ところで一人出版社といえば、そして元みすず書房といえば…

そう、今年の春にみすず書房から発売されたあの島田潤一郎さんの『長い読書』の装丁がまさにその尾方邦雄さんだったんですね。しかも『長い読書』の印刷は精興社。素敵なものは、いろんなところでつながっています。


by hinaseno | 2024-09-19 11:55 | 文学 | Comments(0)