「電話」「お盆帰り」
空腹を感じる。
無味無臭な薬達を手頃な瓶の液体で流し込む。
温もったそれが食道を流れ落ちていく。
閉じきったカーテンの隙間から日差しを感じる。
意識を手放す。
こぽりと口内の違和感により目を覚ます。
どうやら吐いてしまったらしい。
耳鳴りがうるさい。
口元にアルコールを感じる。タオルは無いだろうか。
そうして部屋を見回して気がついた。スマホが光っている。
口に残ったそれを嚥下し、応答ボタンを押す。
「もしもし」
彼女の声がする。
久々に人の声を聞いた。
「あぁ」
絞り出すような声になってしまった。
「その声、寝起きでしょ」
「うん……」
「顔を洗って、うがいでもしてきたら?」
微かに笑って誤魔化す。
話題を変えよう。
「そっちは、さ、どうなの」
「……それなりかな」
「そう、なんだ。何も考えなくて、良さそうだもんね」
「確かにお金も時間も、身体の健康も考えなくて良いのはそうだね」
無言の時間が流れる。
「君もこっちに来ない?」
「冗談」
流そうとしたが彼女は続ける。
「上から君のことを見ていて、ずっと後悔していた。寿命を全うするまで生きてって遺書に書いてしまったこと」
ゆるくため息を吐く。
「そっか」
「君をそんな状態にしてしまうまで追い詰めてしまって、ごめんなさい」
泣き声が聞こえる。
僕は彼女を泣かせてしまったのか。
「いいよ」
スマホを手元に置く。
重かったはずの足が動いた。
カーテンを避け、ガラス戸を開ける。
部屋の空気が循環した。
フェンスの上に座ってみる。
青い空。
どこかで煙が立ち上っていく。
今日はお盆だったか。
見上げ、手を伸ばした。
引かれるような感覚の中、僕は目を閉じた。




