カバー企画「Newtro」特集|おかもとえみ×中嶋イッキュウ×LE GRAND RETOURが語る、懐かしくも新しい「レトロブーム」

ジャズエレクトロユニット・LE GRAND RETOURが、中嶋イッキュウ(tricot、ジェニーハイ、好芻)をフィーチャリングゲストに迎えて中森明菜の「DESIRE -情熱-」をカバー。この音源がYouTubeの「Newtro」公式チャンネルで公開された。

「Newtro」はソニー・ミュージックソリューションズのメディアチームが手がける音楽プロジェクト。新世代のアーティストやクリエイターが「過去(Retro)の名曲」を再構築し、「現在や未来(New)」に新しい作品として生み出すことを目指しており、多様なアーティストによるカバー音源がこれまでに47曲公開されている(2025年12月時点)。

「DESIRE -情熱-」の公開を記念して、音楽ナタリーではLE GRAND RETOURと中嶋、そして「Newtro」に過去2回参加しており、昭和歌謡好きであるおかもとえみ(フレンズ)による座談会をセッティング。「Newtro」の大きなテーマである「レトロブーム」に対する印象をアーティスト目線で語り合ってもらうことで、往年の名曲や、それを再構築する同プロジェクトの魅力を紐解く。さらに、ハウス調のアレンジ、大人の余裕を感じるボーカルなど大胆に再解釈された「DESIRE -情熱-」についても話を聞いた。

取材・文 / 西廣智一撮影 / はぎひさこ

「Newtro」YouTube公式チャンネル

Newtro

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「Newtro」は全方位に向けたいい企画

──皆さんは「Newtro」という企画についてお話を聞いたとき、率直にどう感じましたか?

おかもとえみ(フレンズ) 私はもともと昭和の歌謡曲が好きで、その反面新しいものも好きだったので、古いものを新しくして今の世界の人たちに届ける「Newtro」の企画と自分の信念的なところがマッチすると思い、「これはやるしかない」という感じで参加させてもらいました。カバー動画ではイラストがふんだんに使われていたので、目からの情報としても入っていくことで、より人に届きやすい最適な打ち出し方だなとも思いました。

中嶋イッキュウ(tricot、ジェニーハイ、好芻) 私はこのお話をいただいて、企画書を読んだ時点でまず面白そうだなと思いました。昭和の曲はそこまで詳しくはなくて、お母さん世代の曲もサビくらいしか知らなかったんですけど、これまでに「Newtro」で発表された楽曲を聴いてみると「ああ、この曲サビは知ってたけど、Bメロがこんなにカッコいいんや」みたいな発見があって。やっぱり時代を超えた名曲は誰が歌っても、どれだけアレンジを変えても素敵やなと、原曲の強さも改めて感じました。

竹田麻里絵(LE GRAND RETOUR) 私は父が昭和歌謡とか70年代の曲とかを車でよく聴いていたので、例えば「真夜中のドア~stay with me」(松原みきの1979年の楽曲)は昔から好きでした。「Newtro」はそういう曲を現代のアーティストが新しい価値観でアレンジを施すことにすごくワクワクしましたし、私たちLE GRAND RETOURはインストバンドなので、どうやって自分たちの解釈をお届けしようか考えるのもすごく楽しかったです。何より、イッキュウさんのボーカルが最高すぎて……。

中園亜美(LE GRAND RETOUR) 本当にそれ! 「マジか!」って興奮したよね。

竹田 なので、本当に最高な企画だなと思いました!

平成ギャルをイメージしたポーズをとる4人。前列左から中嶋イッキュウ、おかもとえみ。後列左から中園亜美、竹田麻里絵(ともにLE GRAND RETOUR)。

平成ギャルをイメージしたポーズをとる4人。前列左から中嶋イッキュウ、おかもとえみ。後列左から中園亜美、竹田麻里絵(ともにLE GRAND RETOUR)。

中園 私はあまり昭和の楽曲は通ってきていなかったけど、「麻里絵ちゃんは精通しているから、LE GRAND RETOURとしてならやれるかも」とこの企画をお引き受けしました。もともとLE GRAND RETOURとしては、ボーカリストとのコラボレーションはよくやっていて。ただ、昭和歌謡をカバーするところまでは考えていなかったので、新しいことにチャレンジできるのがうれしくて。カバー楽曲を決めるときに、最初はちょっとジャズ味のある楽曲の中から選ばせてもらっていたんです。

竹田 イッキュウさんの歌がちゃんと生きる楽曲にしたくて、なかなか悩みましたね。

中園 私はLE GRAND RETOUR以外でもジャズのホール公演とかをやるんですけど、「ちょっと昭和レトロなカバーをしてください」というオファーを受けて「真夜中のドア~stay with me」とかをインストでカバーすることがあって、やっぱりお客さんにウケるんですよね。ジャズのお客さんにもこれだけ浸透している昭和の楽曲が、今どの世代の人たちにリーチしているのか。そう考えると、今回のカバーに食いつくのはすごく若い世代の子たちなのか、それとも原曲を知っている上の世代の人たちなのか、気になります。

竹田 「Newtro」に参加されているアーティストのファンの皆さんを考えると、昭和や平成初期を知らない20代から30代のリスナーが中心かなと思いますし、原曲をよく知る人となると確実にそれよりも上の世代ですよね。

中園 つまりは、全方位に向けたいい企画ということですね(笑)。

「ポケモン」「たまごっち」はレトロ?

──「Newtro」で取り上げられている楽曲の多くは1970年代から80年代、90年代のもので、元号でいうと昭和後期から平成初期のものが中心です。

おかもと そう聞くと、意外と幅広いですよね。

中園 私たちは今回、昭和の楽曲を選んだけど、最初は平成の曲も候補に入れてたよね。

竹田 「安室(奈美恵)ちゃんとかのほうが、世代的にはなじみがあるからアレンジしやすいかな」って。

中園 だけど、もうちょっと古い曲のほうがいいのかなという話になって、最終的に「DESIRE -情熱-」に決めました。

おかもと 「DESIRE -情熱-」って何年に発表された曲なんですか?

──1986年、昭和61年の2月ですね。

中園 ここにいるみんなが生まれる前か物心つく前なので、そりゃあ世代ではないですよね。

──では、皆さんの中で最初に強く記憶に残った音楽は?

中園 私はSPEEDとかかな。

竹田 ああ、そうだね。

中嶋 SPEEDの前は、どのへんが流行ってたんですかね。

中園 曲はよく覚えてないけど、テレビでなんとなく目にしていたのがWinkかな。

竹田 うん。よくまねしていた記憶はある。あとは光GENJIとか米米CLUBとか。

おかもと中嶋 あーっ。

中園 そのへんは記憶が薄いけどなんとなく覚えていて、SPEEDくらいになると鮮明に覚えている。

左からLE GRAND RETOUR、中嶋イッキュウ、おかもとえみ。

左からLE GRAND RETOUR、中嶋イッキュウ、おかもとえみ。

おかもと 私は戦隊モノの主題歌やアニソンが音楽の入り口だったので、「有言実行三姉妹シュシュトリアン」(1993年放送の特撮ドラマ)の主題歌のCDが欲しいと思ったのが最初の記憶かも。

竹田 確かに、当時はドラマとかを通じて音楽に触れることが多かった気がします。

おかもと 私たちはテレビの影響が強い世代かもしれないですね。

中嶋 アニメとかドラマとか、夢中になったアイドルって、世代感が一番表れやすいですよね。

おかもと 「Newtro」でも「ドラゴンボール」とか「ポケモン(ポケットモンスター)」とか、アニソンのカバーがけっこうありますよね。

中園 でも「ポケモン」ってわりと最近の感覚じゃない?

中嶋 「Newtro」ってレトロ感を強く意識していると思うけど、「ポケモン」はずっと人気だからその感覚が薄いのかも。最近再ブレイクしている「モンチッチ」とか「たまごっち」とか、そのへんの昭和や平成のグッズは世間的にレトロ感が強いのかな。

おかもと 「ポケモン」とか「たまごっち」ってリアルタイムで通ってきてるから、私的にはあまりレトロ感がなくて。むしろ、坂本九とか……。

中嶋 ああ、昭和の知らない世代。

おかもと そう。それくらい昔のものに、よりレトロ味を感じるかもしれない。最近(CANDY TUNEの)「倍倍FIGHT!」という曲が流行っているじゃないですか。あの歌詞に出てくる「バイのバイの」って、もともとは昭和の曲(ザ・ドリフターズ「ドリフのバイのバイのバイ」)にあったフレーズですもんね。そのへんにはレトロって感覚があるけど、世間が言うレトロはまだ新しいなと思ってしまうんです。

竹田 わかる。「たまごっち」に対して全然レトロとは思わないし。

中園 調べてみたら、「たまごっち」が発売されたのって1996年なんだよね。まだ最近な感覚が……。

一同 (笑)。

竹田 そう考えると、レトロひとつ取っても世代によって認識が全然違うのかな。