都市と楽しみ

都市計画と経済学の融和した都市経営を京都で考えています

昨年読んだ本

 今年は420冊と夏のエアコンおこもりの間の読書と旅行が少なかったためだろうか多めだった、なお、30年前からのエクセル集計が9千5百冊を越えました 

 面白いのもあったが、週刊文春のミステリの推薦本が、ほぼ「面白くなかった」、ミステリ界も行き詰まりを感じる、さらにラノベ的なものもあり、プロットの構造とこなれた文体や考えられた仕掛け好きには困った状況だ

経済書は良いのが少なかった

コモングッド     ロバート・ライシュ         

コモングッドとは「公共善」、どんな手段を使っても個人的に勝つという政治家・経営者の「恥」を書き、上下格差の拡大とアメリカの問題を提起

The Nvidia Way エヌビディアの流儀          テイ・キム         

革新のGPUとプログラムのCUDA、自社が敵と言う開発優先、プロジェクト志向の組織・人材・評価と組織論にもつながる

「組織と人数」の絶対法則           トレイシー・カミレッリ、サマンサ・ロッキー、ロビン・ダンバー     

5友人・意思決定,15親友・ブレーン・ストーミング適応,50良好な関係の友人・民主的に運営できる集団の最大の数,150友人・ダンパー数、この人数を越えると「内集団」と「外集団に」分かれると3倍、組織・空間・関係性管理

 

 夏のおこもり期に女性3作家の歴史物を読んだ①西條奈加はうまい、23冊読んだが多彩な書き分けができる妻女だ、②宇江佐真理は髪結い伊三次捕物余話を主体に30冊、晩年は伊三次捕物余話完結させるため病と闘いつつであった、まだまだ独自の暖かい眼差しでの家族の世界を書けたのにと惜しむ、③澤田ふじ子は60冊読んだ、公事宿は良かったが、老境になるに従いだんだんと説教臭く繰り返しが目立ち、プロットがあるのか疑問に思えた、京都の知識も名古屋出身のためか首をかしげる内容もあった、読むのに難儀した

牧谿の猿           西條奈加            

善人長屋のひとりだけの善人が引き起こす事件を裏稼業の人々が解決する、そして大きな流れが裏にある、人情と哀しみにあふれる内容

亥子ころころ     西條奈加            

家族3代娘・孫娘のありようを描きながら、同業の若い職人とその友人の行方を追うミステリ性、そして互いを思いやるとした結末、菓子の種類を知るのも楽しい

竈河岸  宇江佐真理         

髪結い伊三次捕物余話結末巻になってしまった 不破家の龍之進に次郎衛、伊予太と茜のこれから、幸せな家族と見捨てられた家族の対比

冤罪凶状           澤田ふじ子         

公事宿2016年完結25年間22冊、蕎麦好き隠居が「楽しみは一度は死ねること」、「翁草」、六角堂近くのそば鶴とは、娘の澤田瞳子が十数年後を「新」として書くという

 

歴史ものなども

憧れ写楽           谷津矢車            

写楽には本物がいた、版元と絵師の関係、仙鶴堂鶴屋喜右衛門と歌麿蔦屋重三郎が隠す本物の写楽の6枚の絵の謎を解くと兄弟子の恋川春町と蝦蔵のたくらみが明らかに、絵師の技量・発展と版元の役割も併行したテーマに

 

やはり大御所はうまい

マーブル館殺人事件        アンソニーホロヴィッツ            

作中作と現実がリンク、二つ事象の殺人を解決すのに手を貸す警部、そして謎解きの復讐とハッピーエンドにつながる安心、楽しめる

スパイダー・ゲーム        ジェフリー・ディーヴァー&イザベラ・マルドナード

女連邦検査官とセキュリティ教授のバディ、連続殺人事件に見せた幼児教育の悪意の仕掛けに気づいたナード女殺害が目的、師匠の殺し屋とその妻、そこに誘導された殺し屋など重層的

ボタニストの殺人           M・W・クレイヴン         

ポーとティリーのコンビが連続毒殺事件とその仕組みを解明、そして冤罪に巻き込まれた大金持ち爵位付きのエステルとポーが結ばれる、最後に決め手の事件が起こる

 

エスピオナージや政治ものが良かった

エージェント17 ジョン・ブロウンロウ     

引退した殺し屋16を殺害しようとする17、その裏にはCIAの仕掛けがあった、関係する女2人も巻き込みハンドラーとの闘い、久々にのめり込んだ

聖夜の嘘           アンドリュー・クラヴァン            

元軍人が住む町で起こった司書を妻を亡くし娘と暮らす軍人が殺人、その真相を大学教授が解き明かしていく、最後のどんでん返しが見事なコンゲームに近い

獄門橋  エイミー・チェア            

第二次世界大戦末期のサンフランシスコでの大統領候補殺し、大金持ちの祖母と孫三人が疑われる、母も容疑者となるが、二回のどんでん返しと人情刑事

 

新たな文学作品

藍を継ぐ海        伊予原新            

透明な文体、豊富な知識、表題作の日和佐の海亀はデータや特産、方言まで正確、すっきり、東大の地球惑星科学専攻博士

 

骨太な著作があった

地上の楽園        月村了衛            

孔仁学と玄勇太、第一部は虚構と政治では小泉純也らの産物だった「北朝鮮帰国運動」と朝鮮総連、第二部は北朝鮮での悲惨な生活水準と統制、第三部は脱北後と拉致、そして歴史の振り返り、そして啓子は沈黙する

飛越     馳星周  

障害競馬での円谷と森山の2人の翔吾は先輩後輩のジョッキー、馬は絶対王者 ルプスデイと若い キアーロディルーナ、女は離婚したが娘の沙織と結婚する藍奈と事故とリハビリがからむ、こんなに面白い世界とは

楽園の暇           相場英雄            

埼玉の農業開発計画の裏には半導体工場誘致の悪だくみが、かつての金融の掃除屋と警察の連携、情報収集から似非フィクサーの派遣会社元会長兼学者を追い落とす

 

ひねった仕掛け

少女には向かない完全犯罪           方丈貴恵            

請負人実行犯の逆稿に殺された完全犯罪請負人の黒羽烏由宇(くろばうゆう)の幽霊と小学生音葉のバディ、黒幕の完全犯罪請負人を殺すに至る3重のどんでん返しが見事

汽水域  岩井圭也            

自分の人生と殺人魔の人生照らしあわせ、家族と信頼、そして裏切る自覚のなかったDVが明らになった高卒のフリーライター東大に行けなかったと3人殺し犯人の解明、ちょと叙述トリック

殺し屋の営業術  野栄有  

コンゲーム的、フルコミッションでのトップ営業マンが、ひょんなことから殺人請負会社の赤字2億円を2週間で取り返すことに、対抗する大手請負の女性と暴力・知恵のある男の2人組と対決、後攻有利の法則やネガティヴ・クロージング(後悔が残るのを想像させる)、知識は海堂尊の模倣か

地雷グリコ        青崎有吾            

グリコの地雷など女子高生の射守矢真兎が5つのゲームを支配する爽快さ、そして最後に絵空との鉱田への謝罪が解き明かされる

刑事ものとして楽しめた、底に愛情を感じる

失われた貌        櫻田智也          

刑事バディもの、山奥の顔を潰された死体と10年前の失踪男性、2つの事件は悪徳探偵と不倫の関係、そしてNPO認知症ゴミ屋敷父がからむ、人物表が欲しい

 

 文春のベスト10の読み残しもあるが、ちょっと選定が疑問にも感じる、また、和書でも人物表は必須にした方が良い、読むときの整理にも役立つ