ママたちの子育て中の奮闘っぷりを描く小説は多々あれど、
パパたちの子育てをメインで描いた小説はあまり見たことがありません。
ママだけでなく、パパ側の気持ちや事情も知りたい。読んでみたい。
そんな願いを叶えてくれる本がありました!
今回は、パパたちが主人公の子育て奮闘小説をご紹介します。
- 育児に悩んでいるパパ
- パパにイライラしてしまうママ
- 終わりが見えない子育てに嘆いている方
あらすじ
7人のパパ作家による、令和パパたちの心の声を描いた短編集。
【収録作品】
・ダディートラック(外山薫)
・俺の乳首からおっぱいは出ない(行成薫)
・世界で一番あふれた消失(似鳥鶏)
・連絡帳の父(岩井圭也)
・受験生の父(石持浅海)
・髪を結ぶ(河邉徹)
・そういう家族がそこにある(カツセマサヒコ)
おすすめポイント
パパならではの苦悩がわかる
ママの子育ての悩みと言ったら、夜間授乳や夜泣きで眠れない。
夫が育児に参加してくれない。ワンオペ。などなど…
だけど、パパにはパパだけの悩みがあることが、この本の中で描かれています。
そもそも、育児の戦力として、妻と子どもに認めてもらえるか、という問題が
立ちはだかります。
子どもをお腹の中で10か月以上育てているのはママの方。
パパは、最初から10か月の遅れをとっているわけです。
まずはこの母と子の密接な関係の輪の中に、入っていけるかどうか。
この本には、一生懸命に「育児に参加させてくれ」と頑張るパパたちがいます。
特に私の涙腺が刺激されたのは、『俺の乳首からおっぱいは出ない』(行成薫)です。
娘への授乳と細切れ睡眠に悩む妻を助けるために、
「俺も授乳ができたらいいのに」と筋トレに励んでいくパパが主人公。
一見、タイトルもあらすじもコメディのようですが、主人公は真剣そのもの。
真面目に母乳を出そうとして、でもやっぱり出なくて、
しまいに妻からの怒りが怖くなって家に帰れなくなってしまいます。
娘が生まれた日、喜びよりも困惑の方が強かった俺だが、
それでも、よき父になろうとは決心した。いろいろ計算違いがありながらも、
俺と妻のところにようやく来てくれた子供だ。
精いっぱい愛してあげたかった。育児にも教育にも積極的に参加して、
夫妻二人で子供を育てていこうと思っていた。
だが、だめだった。娘と接する時間が足りない。おいていかれる。
妻と娘の背中が、遠ざかっていく。
行成薫 『パパたちの肖像』「俺の乳首からおっぱいは出ない」 光文社, 2025,84ページ
この疎外感と切なさは、パパ特有の悩みだなぁと胸が痛くなりました。
ママと同じことに悩んでいる
パパだけの苦悩もあるけれど、やっぱりママと同じことにも悩んでいるんだなと
感じました。
仕事と家庭、どちらを優先するか。
子どもの癇癪にどう向き合うか。
夫婦間の話し合いが足りない。お互いの気持ちがわからない。
パパも、ママと同じくらい、時には泣きなくなるほどの生き苦しさを感じながら、
日々子育てに奮闘していることがわかります。
『ダディートラック』(外山薫)では、妻が出世し、夫が家事育児の分担をしています。
自分のキャリアの行く末を案じる中、小学校のPTA活動にも参加することに・・・
渋々出席する主人公ですが、PTA会長である稲葉パパとの会話の中で、
現状の育児と仕事の分担について、ハッとさせられます。
その言葉がこちら。
「うちのパパは育児や家庭に参加しないで、仕事ばかりよ~」と愚痴るママたちに対して、稲葉パパの一言。
「どうなんでしょうかね。案外、仕事優先って思わされてるだけなんじゃないですかね」
外山薫 『パパたちの肖像』「ダディートラック」 光文社, 2025,27ページ
「確かに…」と納得しちゃいました。
双方納得の上でのバランスならば問題ないですが、
一方的に不満に思っている場合、相手もそう思っている可能性があるんですよね。
「育児と家事は私ばっかり」と思っている自分と、
「仕事は俺ばっかり」と思っているかもしれない相手。
この視点はなかったので、私もハッとさせられました。
子育ては、苦しいだけじゃない
本書で描かれるテーマは、パパたちの苦悩や心の叫びですが、
苦しい思いをしてがんばった分、ちゃんと報われるので安心してください。
『髪を結ぶ』(河邉徹)では、
娘の髪を結ぶことさえ覚束ないほど手先が不器用なパパが、
保育園の夏祭りの景品を作ることに。
仕事ではトラブルが発生し、残業続き。
果たして主人公は、景品作りを納期までに終えることができるのか。
私は、この話の結末を読んで、泣きそうになりました。
大人になってから、自分が不得意なことに立ち向かう場面はぐんと減ってきます。
避けようと思えば、いくらでも避けられるから。
この話の主人公も、手先が不器用で、コミュニケーションが苦手なので、
そのスキルが不要な仕事に就き、自分が得意なことを武器にして生きてきました。
でも、育児をしていると、そんなわけにはいきません。
子どものために、得意・不得意関係なく、
どうしてもやらなければいけないタスクが発生します。
何とか不得意なことをやりきったパパの姿を、娘や妻はどう感じ、どんな対応をするのか。
ぜひ、感動の物語の結末を見届けてください。
苦しいことは永遠には続かない
乳児期、イヤイヤ期、反抗期…
子育てをする中で立ちはだかる壁は、いくつもあります。
渦中にいると、「この苦しみはいつ終わるのか…」と途方にくれる瞬間があります。
だけど、短編集の中には、苦しんだ末の数年後が描かれているお話が、
希望の光を見せてくれます。
一番大変な時期を乗り越えたパパたちや家族の姿に、勇気がもらえます!
まとめ
短編のアンソロジーなので、作家さんによって読み味も様々。
登場する家族も、乳児、保育園児、小学生、高校生、
共働き家庭、専業主婦家庭、など多種多様に渡っています。
自分の状況に照らし合わせて読むもよし、
こんな家庭もあるんだなと新しい発見を求めるのもよし、
パパの気持ちを知るために読むのもよし。
パパはもちろん、ママにもぜひおすすめしたい一冊です!