今回ご紹介するのは、瀬尾まいこさんの作品の中でも
一番大好きなお話です!
毎日やらなきゃいけないことが山積みで、時間に追われて、
子どもを急かして一日をやっと終えて…
そんな繰り返しの日々のなかで、私はこの物語に救われました。
- 子育て中の方
- 親としての自分に自信がない方
- 親と自分の関係を見つめなおしたい方
あらすじ
母親との関係に悩みながらも、一人娘のひかりを育てるシングルマザーの美空。
離婚した元夫の弟・颯斗は、兄と美空が離婚した後も
美空とひかりの元を訪ねて、世話を焼いてくれる。
瀬尾さんが「これまでの私の人生を全部込めたと言いきれる作品」
と語る長編小説。
おすすめポイント
子育ての酸いも甘いも、共感だらけ
年長さんのひかりを一人で育てている美空の言葉は、
同じく育児奮闘中の人には共感するポイントが
たくさんあるのではないかと思います。
私は共感しすぎて、メモをする手が止まりませんでした(笑)
例えば、保育園に預けるときの気持ち。
保育園に通わせ始めたことは、毎朝胸が締めつけられた。
仕事のために預けるのだ。ひかりと私の生活のためだ。
そうわかっていても、「ママー」と泣き叫ぶひかりを見ていると、
とんでもない過ちを犯しているような気がした。
(略)
それなのに、半年が経つころには罪悪感は消え、
今では保育園に預けるとほっとするのだから、慣れというのはすごい。
強く、そしてある程度鈍感にならないと、子どもは育てられないのかもしれない。
瀬尾まいこ 『ありか』 水鈴社, 2025, 12ページ
その直後に、こうも綴る。
朝は早く保育園に送り届けたひかりに、今は一刻でも早く会いたい。
一緒にいると時々逃げだしたくなるけど、離れる時間があるとすぐに恋しくなる。
瀬尾まいこ 『ありか』 水鈴社, 2025, 14ページ
かと思えば、お迎え後にはこうなる。
ひかりは一度言い出すと同じことばかり言う。
だんだん頑固になって困ってしまう。
いい加減にしてほしいと、いらいらしかけてふっと息を吐く。
仕事が終わって保育園に迎えに行く時はいつだって、そわそわする。
早くひかりに会いたい。
(略)
ところが、家に帰ってくると、早くしないとと焦るばかりで、
一時間も経たずにその気持ちは消えてしまう。
帰宅からひかりが眠るまで、一緒に過ごせる時間は三時間もないのにだ。
瀬尾まいこ 『ありか』 水鈴社, 2025, 24ページ
この感情の揺れ、身に覚えありまくりなんですけど~!!
仕事に行けるという安心感
↓ (仕事中)
子どもに会いたい
↓ (帰宅後)
予定通りに動いてくれない子どもにいらいら
私は毎日この繰り返しです!
美空と子育てトークをしたいくらい、共感の嵐です!!!
幸せの瞬間を切り取ってくれる
子どもの寝顔を見ている時。
何気ない会話の中で「ママ好き!」と言ってくれる時。
一緒に笑いあえる時。
子育て中に感じる幸せの瞬間を、何度も何度も繰り返し切り取って、
あちらこちらに散りばめてくれています。
「幸せ」という言葉が何度も出てくるのが印象的。
もちろん、毎日がハッピーの連続ではない。
親子でぎくしゃくすることもあれば、
子どもが怪我をしたり、病気になったらどうしようという不安は常に付きまとう。
だけど、やっぱりこういう瞬間が最高に幸せなんですよね。
ひかりの頬はどんなものより滑らかで温かい。
こんな気持ちのいいものに好きなだけ触れられるのは、親だけだ。
きっと明日の朝は「早く早く」って追い立てているだろうけど、
寝る前のこの瞬間は幸せだと言い切れる。
瀬尾まいこ 『ありか』 水鈴社, 2025, 81ページ
子どもへの愛情がない親は?
美空は子どもへの愛情が自然とあふれてくる母親です。
それと対象的に描かれているのが、美空の実母。
実母は、子どもが苦手。
実の娘に対しても愛情表現ができない人なんです。
でも、産んだからには育て上げなければいけない。
その義務感だけで、美空を育ててきました。
美空が主人公なので、子どもを慈しみ育てる描写のほうが多いですが、
瀬尾さんは実母のような人も見捨てません。
母性は勝手に湧き出てくれる便利なものじゃないし、
子どもを愛せないからといって悪い親なわけでもない。
瀬尾まいこ 『ありか』 水鈴社, 2025, 139ページ
私自身、子どもへの愛情が無限にあるかと言われると、そうではないです。
四六時中子どものことを考えるのには限界があるし、
「ちょっと一人になりたい」と一日に何度も思ってしまう。
そんなとき、「私って母親としての愛情が不足しているのでは?」と罪悪感にかられます。
でも、この言葉に救われました。
「母性って、子どもへの愛情って、自然に無限大に溢れるものではないよね」
そう断言してくれる人が、作品が、ここにある。
それだけで、よどんだ気持ちが浄化されます。
最高すぎる登場人物たち
瀬尾さんの書くお話には、魅力的な人たちがたくさん出てきますが、
この作品も然り。
登場人物、ほぼ全員好きになっちゃいます!(断言)
特にキーパーソンとなるのは、離婚した夫の弟・颯斗君。
彼は、毎週水曜日にひかりのお迎えにいき、ご飯を用意して家で待っていてくれる。
心からひかりと美空のことが「家族」として好きで、気にかけてくれる。
美空が実母のことで悩んでいるときには、
「くそばばあだな」とあっけらかんと言い放つ。
精神的にも美空を支えてくれる、頼りになる男です。
他にも、同じ保育園のママ友・三池さんや、会社の同僚の宮崎さん、
別れた夫のお義母さんなど、お節介なまでの世話焼きたちが勢揃い。
あらゆる形で美空とひかりを支えてくれる人たちです。
彼らの優しさに、胸が潤う気持ちになります。
まとめ
子育て中の親からの目線で読んでみると、共感しながら楽しめる。
子どもの目線で読んでみると、親はそんな気持ちで育ててくれてたのかなと
親の気持ちを垣間見ることができる。
どちらの視点からでも、幸せの「ありか」を示してくれる、
優しい物語です。
あったかい気持ち、幸せな気持ちになりたい時に、ぜひ読んでみてください。
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◆タカラモノ(和田裕美)
こちらは子ども目線から書かれたお話。
主人公・ほのみの母親は、時々男と出奔する、どうしようもない親。
だけど、ほのみへの愛情をしっかりと言葉で伝えてきた。
型破りなママから教わった、人生で大切なことを綴った物語です。
◆隣人のうたはうるさくて、ときどきやさしい(白尾悠)
「ココ・アパートメント」は、家事の一部を住民たちが協働するコミュニティ型マンション。
年代も性別も様々な住民たちの歩んできた道が、一章ごとに語られていきます。
「幸せってこういうことか!」と気付きが得られる物語です。
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