
はじめまして。Project Management Unitのsyo.です。
これは、社内イベントの受付で目にした「極めてアナログな業務」を、AIとNFCを使って1か月で改善した実録です。
今回は実際の業務改善を楽しく物語風にお届けします。ぜひ楽しみながら読んでください。
扉絵は、開発の一幕を表現したイメージ図です。
最先端企業の「未開の地」
2025年11月下旬の全社会合、通称MRT(Monthly Round Table)が終わった後の懇親会にて、私は人知れず、重要な任務を拝命しました。
いや、自ら名乗り出て、とある提案をしたのでした。
弊社では、毎月1回、全社員が集って、会社の置かれている課題や進んでいくべき方向性について、確認し合う会合を開いています。社長や役員からのメッセージ、各プロジェクトの紹介、そしてMobilus Valueを体現した社員を表彰する「Value Connection」など、盛りだくさんの内容です。
会合後は、別会場へ移動し、立食形式の懇親会へと移ります。美味しい食事を片手に、普段交流の少ない他部署のメンバーと会話が弾みます。月一回のこの楽しみなイベントが、モビルスの結束力を形成していると言っても過言ではないかもしれません。
そんな中で私は、入社以来、殊更に違和感を抱いていた光景がありました。
生成AIの最先端を走り、「CX向上」をスローガンに掲げる会社としてはお恥ずかしい限りですが、実にアナログな運用が残っている部分があったのです。
それは、MRTの参加受付です。
参加者は、A3用紙に印刷された名簿の中から、自身の名前を見つけてボールペンを使ってチェックマークを付けるのです。100人規模となると、受付には長蛇の列ができ、3列で捌くにしても、なかなかスムーズに進まず、開始直前に人が殺到するため、定刻通りに席につけない社員が出るというのが常態化していました。
え?
名簿にボールペンでチェックマーク?
一応、誤解のないように触れておきます。弊社の執務エリアはセキュリティを意識したゾーニングをしておりまして、入口にはIDカードを用いた入退室管理を完備しております。部外者は入れないどころか、ついうっかりIDカードをかざすのを忘れてドアを素通りすると、自力では二度とドアを開けられないほど、厳重な管理をしています。
そうです。
最先端の企業が、厳重なセキュリティを完備して、CXをリードすると言っておきながら、その基盤となる場面でアナログ運用という「未開の地」がそこには現存していたのです。
突然の提案
そして、冒頭の任務へとつながります。
この月のMRTは社屋移転をして間もなくで、会合後の懇親会は、いつもの業者さんとは違うケータリングサービスが振舞われていました。このときの業者さんの要請を受けた人数把握のために、懇親会の受付でも同様のアナログな名簿照合をしていました。
私は、その光景を目の当たりにして、勇気を出して、こうしたらどうでしょう?と提案をしたのです。
「せっかくIDカードを全社員が首から下げているので、これで受付しませんか?」
「え、それできるなら、やりたいです!」
二つ返事で進みます。
「カードのIDさえ拾えれば絶対できるはずです!作ります!やってみましょう!」
「ぜひ、お願いします!」
MRTを企画運営する弊社アドミニストレーションUnit(会社の総務・法務・人事を担う部門。通称アドミ)の方々、何名かの前で、そう言い放った私は、こうして重要案件に着任したのでした。私は、立食を軽く済ませると、その懇親会を離れて即座に自席に戻り、手元の社用スマホを片手に、IDカードの読み取り実験を始めました。
構想としては、スマホをIDカードの読み取り機にして、そうやって読み取った受付データを、PCに吸い出して保存する構成にしようと心に決めたのでした。

その日は金曜日で、そのまま連休に突入するという、そんな夜だったのです。実のところ、もともと推し活でアイドルライブを観に行く予定があり、限られた時間の中で、私はAIに向けてプロンプトを投げ始めていました。きっと、こうすればIDカードから必要な情報を取り出せるはず。そんな確信と期待の中、結構な長い時間さわって調整を重ねるも、上手くいかないまま予定の時間が迫ってしまい、いったん、中断を余儀なくされたのです。
推し活現場での妄想チャレンジ
さらにその日は、連休を使って実家に帰省する予定だったため、大荷物を抱えながら、一目散に推し活現場へと向かいました。推しの登場を待っている間もソワソワしながらのライブ鑑賞でした。そして、お目当てのアイドルグループがライブを終えてステージを降りたのち、いわゆる特典会を始めるまでの時間を活用しようと、私はライブハウスのドリンクカウンター近くで大荷物を傍らにMacを広げ、妄想を始めました。
しばらくして、特典会が始まる間際になって、やっと決め手となるアイディアが浮かんできました。時間と人目を気にしながらも続けた妄想チャレンジにより、難関突破の道筋が見えてきたのでした。
すぐさまアドミの責任者の方にチャットし、とりあえず壁を超えられそうだという旨を報告しました。このあと取り得る施策を相談しつつ、意気揚々と推しグループの特典会に臨みました。そして、一定の方向性が見え、推し活を終えて会場を後にするや否や、頭の中はアイドルのことではなく「さらに次の一手でどうするか?」でいっぱいでした。
移動と帰省の最中での脳内設計

プロトタイプとしてはそこまでで良かったのですが、今後の展開で考えなければいけない課題は残っていました。帰省のためにたどり着いた東京駅でも、新幹線の発車時刻までの間、待合室でMacを広げてはAIと対話しつつ作戦を練ります。新幹線の車内でも、目的の駅までのギリギリまで、考えに考え尽くしました。トンネルに入ると、テザリングしているスマホの電波が不安定になり、AIが反応せず開発が止まり、さらにはAIの使用上限に達して、手が止まってしまったのでした。それでも思考は止めず、帰省の間中、ずっと暇さえあれば開発のことに思いを巡らすこととなりました。
最終日の昼には帰京。自宅に着いてしばらくして、夜の段階では、骨組みが作れるほどに情報整理ができました。再度、進捗をアドミに一報を入れたところで、私とAIによる脳内設計は終わりを告げたのでした。
挫折とAIとの共闘、そして実装へ

翌朝以降、MacだけではなくWindows版への移植を開始。すると、まもなくして衝撃が走ります。当初使用していた、スマホ・PC間のデータ転送ライブラリが、Windows環境をサポートしていないことが判明。まさに痛恨の手戻りでした。本当はすぐにでもアドミの方にプレゼンしたかったのですが、他日程と重なっていて予定が合わず、そもそも重大な課題に直面したために、しばらく調整の期間が必要となりました。
一進一退を繰り返しながら、仕事の合間を縫って開発。昼ごはんを左手に抱えて、右手では打ち込みを続ける毎日。どうしてもスマホとPCとの間の通信が上手くいかない。一度は完成に近づいていたはずのMac版も、Windows版の仕様変更に伴い再構築。スクラップ・アンド・ビルドを続けました。
通信が完結できないと、出席受付をしたデータをスマホからPCに取り出すことができないので、本当に重要な肝の部分。一昔前だと、Googleで同様の事例を検索しては、真似して解決策を探るのが一般的でした。でも、AIというツールを手にした私は、まるで熟練のアシスタントと対話するかのように生成AIと会話を重ね、何千回以上ものキャッチボールを繰り返して、少しずつバグを潰していきました。
勝手に任命を受けてから、ちょうど1週間。金曜日の早朝に、やっとWindows版も含めた安定動作の目処が立ったのでした。早速、アドミのスケジュールを押さえ、週明け月曜日にプレゼンをする運びとなりました。
待ちに待ったお披露目……となるはずのプレゼン本番。
私自身のIDカードから取り出した情報が、もしかするとアドミでは把握していないデータだった可能性が浮上しました。加えて、満を持して完成したと思っていたWindows版の重大な不具合も判明。
さすがに、執務室のセキュリティパッケージとしても使われているIDカードなので、秘匿された仕様があるのかもしれないとなり、バグのことも含めて、一気に振り出しに戻ったのでした。
ただ、この事態は、実は織り込み済みでした。バグというのは単純にコーディングミスだと分かり、筋道立てて修正を始めます。そしてカード情報が管理外であった場合の第二の案は、まさに頭の中で整理していた想定内の内容でした。現実的な運用のことも考え、すぐに機能拡張と修正に当たります。
その翌々日の夜、修正も終わり、再度、プレゼンの機会をもらうことに。お互いに忙しい中だったので、その週の金曜日に再検証の時間をいただくことになりました。
当日はデモをしながら運用手順を一通り説明し、注意点等を伝えた上で、無事、簡単な動作検証もできました。あとはアドミに実機を預け、12月のMRTでの導入判断を待つのみとなりました。
最後の難関、そしてリリース
そう言いつつ、エンジニアとしては、ここをもっとこうしたいとか、ここはこうじゃなきゃダメとか、いろんな不備が気になり、こっそりと改良を続けました。
そんな中で、お忙しいアドミの責任者の方に代わって、この受付システムの運用は某氏に引き継がれることになったとの連絡を受けます。12月のMRTまで、あと1週間と迫る金曜日の夕方でした。
仕事も立て込んでいたので、お互いの予定を合わせて翌週の火曜日にアポを取りました。こうして、アドミに準備していただいた受付用のスマホ端末に、今回開発した受付アプリのインストールを進める運びとなったのです。
某氏に、これまでに行った改良を説明しつつ、動作確認を行います。すると、台帳が存在しないと思われていたIDカード情報もリストが発掘されたようで、全社員のデータ打ち込みも完了しており、全ての準備が整った状態で待ち受けてくれていました。
正直、胸をなで下ろしました。
いったん正常動作を確認したのち、自席に戻ります。そうやって安堵したのも束の間。端末準備を始めていた某氏から、不穏な報告が入ります。IDカード読み取り時に、意図しない音が鳴る、と。
このアプリ、読み取り成功時と、そうでない場合とで音を鳴り分けする仕様となっており、聞き分け用のサンプル音源を提供したのですが、そのサンプル通りの音ではなく、エラー発生のような音がするという旨の問い合わせでした。
実物を聞かせてもらうと、確かに意図しない音が鳴っている。
でも、当初から準備していた1台では同様の音は鳴らず、期待したサウンドが再生されます。追加で準備いただいた端末2台だけで起きる不具合。いや、単純な不具合じゃない。読み取りや受付記録の挙動は正常ではあるものの、音だけがおかしい。
某氏と一緒に格闘しながら、ある発見をしました。「マナーモード」の設定の違いです。
その点をきっかけに調べてみると、どうやらIDカードの読み取り時、システム音として必ず鳴る音があることが分かりました。つまり、私が用意したサウンドとは別に、システム音が重なって鳴っていたのでした。すぐに修正にかかりますが、どうしても消せません。
そうです。このシステム音は、日本のスマホにおけるカメラのシャッター音と同様の理由からか、通常の手続きでは消せない音なのでした。正常動作するように見えていた1台との比較で気づいたのですが、マナーモードの時にだけ、システム音が鳴らないようにできるということまで突き止めました。
そのことに気づいてからは、受付動作中に自動でマナーモードへ切り替える実装に変更することで解決しました。そして、受付終了やアプリ終了後には元のマナーモード設定を復元するような作り込み。
長かった調整も佳境を迎え、一通りの準備が整ったのでした。MRTまで3日。実際に使えるのか、正直心配になりながらも、アプリのデビューの瞬間が刻一刻と近づいていきます。
エピローグ
しかし、MRTの受付が始まった、まさにその時に、私はIDカードをかざすことはありませんでした。勃発する緊急対応に追われ、結局、12月のMRTには顔を出すことができず。
MRT後の懇親会も、わずかな時間しかいられなかったのですが、アドミの方から結果を聞く限り、特に大きなトラブルはなく終えたとのことでした。列の滞留もなく、スムーズに受付ができたとの声をいただきました。
そして肝心の出席データの吸い出しですが、こちらも某氏が対応してくださり、無事PCへの転送ができたとのことでした。アドミの集計の手間なども省くことができ、当初の目論見通りの結果が得られたようで、何よりです。
1ヶ月という怒涛の開発は、こうして幕を閉じました。今後も、機会があれば業務改善に寄与する開発を推進できたらいいな、と思っています。
みなさんも、AIを活用した開発、始めてみませんか?
技術要素メモ
- NFCカード(社員証)
- Androidスマートフォン(受付端末)
- Windows / macOS 両対応
- 生成AIによる設計・デバッグ支援
- 社内向けPoC/業務改善ツール
【余談】推しグループについて
強くてニューゲーム。
前身グループも含めると12年活動しているアイドルグループ。2024年2月4日に今のグループ名に改名して再デビュー。
格好いい系の楽曲を中心に、完全生歌のパフォーマンスが特徴。さらに、生演奏さながらのマニピュレータによるサウンドでのライブは圧巻。
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