口腔ケアが不十分になると、要介護者の健康状態に様々な悪影響が生じやすくなります。
口腔内は細菌が繁殖しやすい環境であり、清掃が行き届かないと歯周病や虫歯の進行を招きます。
特に歯周病は、歯を支える骨が溶ける病気であり、重度になると歯が抜け落ち咀嚼機能が低下します。
その結果、食事の際に食べ物をしっかり噛めなくなり、栄養摂取が困難になるまたは食事が細くなることで低栄養に陥るリスクが高まるのです。
さらに、口腔内の細菌は口の中だけの問題に留まりません。
最も警戒すべきは誤嚥性肺炎のリスク増大です。
口腔内の細菌を含む唾液や食べかすが、誤って気管に入り込む誤嚥を起こすことで肺に細菌が感染し、肺炎を引き起こします。
要介護者は嚥下機能が低下していることが多いため、口腔内の細菌数が多いほど誤嚥性肺炎の発症リスクと重症度は高まり、生命を脅かす事態につながります。
また、口腔内の不潔な環境は口臭の原因となるだけでなく、味覚の低下を引き起こすこともあります。
舌の表面に付着する細菌や食べかす(舌苔)が増えると食べ物の味が感じにくくなり、食欲の減退を招く可能性があります。
食欲不振は低栄養状態をさらに悪化させ、全身の免疫力の低下にも直結します。
免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザなどの感染症全般にかかりやすくなるという悪循環となります。
適切な口腔ケアは、これらの口腔内の問題を防ぎ、食べる喜びを維持し、全身の健康を守るための予防医学的アプローチとして要介護者にとって非常に重要なのです。