
感想
#国宝
— らいとぶらいと (@lightbright0817) 2025年9月22日
遂に観た。天涯孤独の喜久雄と跡取り息子の俊介。境遇は違えど互いに高め合う二人は血筋と才能に翻弄されていく。喜久雄は芸に取り憑かれ、俊介もまた歌舞伎への憎しみを抱える。しかし、何度も衝突しすれ違う二人が手を取り圧巻の演技を魅せる。何て愛憎渦巻く美しい友情だろう。1億点。 pic.twitter.com/w88NOnQ31g
あらすじと結末についての解説記事
関連記事
『国宝』考察
この映画が描いた「才能の勝利」は、本当に正しかったのか
映画『国宝』を観終えたあと、不思議な感覚が残った。
たしかに圧倒された。演技も、舞台も、積み重ねられた年月も。
それなのに、心のどこかが少し冷えている。
感動したはずなのに、手放しで「良かった」と言えない。
その違和感こそが、この映画の核心だ。
『国宝』は、芸の到達点を描いた映画ではない。
もっと残酷で、もっと静かな問いを投げかけている。
「国宝」とは、いったい何を守り、何を切り捨てた存在なのか。
国宝とは「守られる存在」だったはずなのに
国宝という言葉から、多くの人が思い浮かべるのは、
保護され、称えられ、未来へと受け渡される存在だろう。
しかし映画『国宝』で描かれるのは、
守られる過程よりも、選ばれる過程だ。
そこには常に比較があり、線引きがあり、
そして選ばれなかった者たちがいる。
芸は残る。
だが、その裏で切り落とされていく人生がある。
この映画は一度も、
「国宝になれたこと」を祝福しきらない。
むしろ、
国宝という称号が与えられた瞬間に、
人間としての自由や幸福が静かに削ぎ落とされていく様子を、
淡々と描いている。
国宝とは、守られる称号であると同時に、
個人を縛る檻でもあるのだ。
才能は血筋を超えたのか、それとも飲み込まれただけか
物語の中で、才能は確かに血筋を越えて評価される。
努力と実力によって、立場が逆転する瞬間も描かれる。
だが、それは本当に「勝利」だったのだろうか。
才能が認められた瞬間、
主人公は「個人」ではなく「器」として扱われ始める。
名前ではなく役割で呼ばれ、
感情ではなく完成度で評価され、
人生ではなく芸の完成だけを求められる。
血筋を越えたのではない。
血筋という構造の中に、才能が取り込まれただけだ。
この映画は、
努力が報われた物語のように見えて、
実は「努力しても逃げられない場所」を描いている。
『国宝』が一度も肯定しなかったもの
この映画には、はっきりと描かれないものがある。
それは「幸せ」だ。
誰かが心から満たされる瞬間は、ほとんど映らない。
成功の先にあるはずの安堵も、救いも、ほぼ与えられない。
あるのは、
役割を全うし続ける姿と、
芸が次へ受け渡されていく過程だけだ。
努力は尊い。
才能は圧倒的だ。
芸は美しい。
それでも映画は、
それらが「正しかった」とは決して言わない。
観客に委ねられるのは、
「それでもこの道を選ぶのか?」という問いだけだ。
なぜ『国宝』は、ここまで苦しい映画なのか
『国宝』が苦しいのは、
登場人物が不幸だからではない。
この映画が、
日本文化に根付いた価値観そのものを映しているからだ。
・芸のために個を捨てること
・伝統のために人生を差し出すこと
・選ばれた者だけが残る仕組み
それらを否定も肯定もせず、
ただ「そうやって続いてきた」と示す。
観る側は、自分の価値観を試される。
だから、簡単に感動で終われない。
結論、『国宝』は、称える映画ではなく、問い続ける映画だった
『国宝』は、
到達点を描いた映画ではない。
芸が完成した先に、
人は何を失い、何を残したのか。
その問いを、観客に押し返してくる映画だ。
国宝は守られる。
だが、人は守られないかもしれない。
それでも芸は続いていく。
だからこそ、この物語は美しく、そして残酷なのだ。
『国宝』というタイトルが、これほど重く感じられる理由
「国宝」という言葉は、本来ポジティブなはずだ。
価値が認められ、守られ、後世に残される存在。
しかしこの映画を観たあと、
その言葉は祝福よりも呪縛に近い響きを持つ。
なぜなら『国宝』は、
「守るべきもの」を明確にする代わりに、
「切り捨てられるもの」をはっきりと描いているからだ。
守られるのは芸であり、
守られないのは人間の感情や人生だ。
だからこの映画は、美しいのに苦しい。
そして観終わったあと、
どこか納得しきれない余韻を残す。
『国宝』は、
才能が報われる映画ではない。
血筋を否定する映画でもない。
芸という文化が、
どれだけの人生を飲み込んできたのかを
静かに示す映画だ。
だからこそ、この物語は美しく、
そして簡単には肯定できない。
以上。
ブログランキング参加中!
1日1回ポチッと応援よろしくお願いします♪


















