いつまでも子を苦しめる親のエゴ - 月9『明日はもっと、いい日になる』第10話
今季の月9はまいんちゃんこと福原遥主演で児相(児童相談所)を扱ったドラマ*1。最終話を目前にした第10話は、ぶっきらぼうで人付き合いの苦手な児童福祉司・蔵田(演:林遣都)の過去を掘ったエピソードだった。身につまされる描写があったので、ネタバレゴリゴリで記事を書く。
それと、この記事を読む知り合いの皆さんにお願いなのですが、どうか筆者の両親に、この文章を絶対に読ませないでください。優しさでどうぞお願いします。
目次さん
- 目次さん
- ネタバレの第10話あらすじ
- 遂に描かれた蔵田の過去
- 自分語りになるけれど
- 別れから数年後、突然の諸々
- 更に数年後、自分の家庭を持って
- 何でこちらがこそこそと生きなければならないのだろう
- 翻って蔵田くんのおはなし
- ドラマそのものの評価
- もしもうっかり誰かがこの文章を読むのならば
- おしまい
臨床の分かる、法医学者でいたい 〜 今更、第109次久留米学会の話
今更どころか1か月経っとるやないかというごもっともなツッコミが入ろうと思いながら、文章をしたためる。現地で思うことは沢山あったが、大雨予報を警戒してパソコンは自宅に置いていき、その後実臨床が忙しくて全く文章にする暇がなかった。遅きに失する上に、実働隊のMD会員が100人ちょいという何ともニッチな世界の話を誰が読もうと思いつつ、心の中に留めておくのも勿体ないので、ネットの片隅にたゆたわせておく。
まえおき
2025年6月11日〜13日に久留米大学主管、久留米シティプラザ会場で開かれた第109次日本法医学会学術全国集会に行ってきた。行きやすさとプライベートの関係で大体2-3年おきに行っている。学生になったらもっとちゃんと行きます。
毎年主管校が肝いりでコーディネートする特別企画の中で、今年はシンポジウム2の「大規模災害時における死体検案の実務と課題 〜過去の経験を踏まえて〜」が目を引いた。東日本大震災を経て法医の道を志したので、これからの災害医療/法医学に向けて何か実になるものがあればと参加した。
その他は小児例を中心に一般口演と法医病理学会の症例検討をつまみ食いして、ポスターセッションをぐるぐる回り、知り合いにちらほら挨拶してから、隙間を縫って久留米と博多を観光して帰ってきた。直前で日程変更したので徒歩強行+タクシー・バスでの旅だったが、短時間ながらそこそこ色々回れたのではないかと思う。

- まえおき
- この学会の内向きさには、辟易する
- 人がいないから、育てられる場所も限られてくる
- 全国学会なのに、通訳もしないとはお粗末
- 実際の参加レポート
- シンポジウム2:大規模災害時における死体検案の実務と課題 〜過去の経験を踏まえて〜
- オーラルとポスターのおもしろかったもの
- 純粋な疑問として
- 臨床の分かる、法医学者でいたい
- 久留米よいとこレポート
- おしまい
この学会の内向きさには、辟易する
これはもう前からずっと言っているのだが、法医学会は、内向き過ぎる。内輪の運動会じゃないんだぞ。アウトリーチに出す金も気概もないくせに、人が集まらない集まらないと嘆いてどうする。いざ外部広報をしようとすると、症例写真がどうこうとか守秘義務がと騒いで途端に内向きになる。実症例を出さずとも、実務内容や他学会とのコラボレーションでも外部広報できように!!!
質疑応答においても、大体同じ人が同じことしか言わない(以前から)。現実に即さない突拍子もない意見が出てくることもざらである。いや勿論突拍子もない意見は研究の種であることも多いので、一概に悪ではないのだが、臨床家の肌感覚とあまりにずれていると、それは……となる。
要するに新しい風が吹いてこない。新しい人は細々と入ってくるが、実務の忙しさで研究もできず、疲れて辞めていく人も多い。それか学位だけと割り切って入ってきて、教官として残らない人もいる。ポストはそれなり空いているし、需要も確実にあるのだが、学生育成→教官輩出という供給サイドが圧倒的に間に合っていないのだ。
数ヶ月前、中山美穂が自宅で急死した直後、Ai学会に海堂尊が怪文書を出していた(事情を知る人間からすると怪文書でしかない)。海堂尊はAi学会の立ち上げには関与しているが、法医学会の大学院生だった過去はなく*1、法医学会の内情に詳しいわけではない*2。その中で彼は、東大閥(岩瀬門下)と旭川医大・清水教授門下のスタッフ名をつらつらと挙げてこれは癒着だと騒ぎ立てるが、これは全くの間違いである。そのくらい人がいない、ただそれだけなのだ。人がいないから、全国集会ですら、大体みんな顔見知りの、内輪の会議になってしまう。東大も千葉大も人が沢山いてよろしい。田舎に行けばひと教室3人も医師が在籍していればよい方で、うっかりすると医師教員ひとりでせっせと解剖業務に当たっていたりする(某北の方の県とか)。というか海堂尊は、北の雄・東北大学の法医学教室が輩出した教授・スタッフの数を見たら卒倒するに違いない(reseachmapで各大学のスタッフが学位を取った場所を調べて確認してみてほしい)*3。
plaza.umin.ac.jp - これは事情をよく知る人が読むとただの怪文書ですが、言い得て妙な部分もある
*1:ネット上で公然の秘密なので書いておくが、放射線医学総合研究所重粒子センター病院の臨床検査科にいた医師である
*2:Ai学会=死後画像診断/オートプシー・イメージングの学会なので確かに法医業務と関わりはあるし、関連学会だが、法医学会とは一応別組織である
石井くん、漫才の世界に戻ってきてくれてありがとう。 - 元コマンダンテ石井、新コンビ結成
嬉しい話。
【爆誕】
— CITY 石井 (@141blend) 2025年6月6日
この度、小野くんと「CITY」というコンビを組むこととなりました!
応援していただけるよう、精一杯頑張りたいと思います!
やる気あります!
よろしくお願いします! pic.twitter.com/af5tXMBQtl
元コマンダンテの石井くんが新コンビを結成して漫才師の道に戻って来てくれました。石井くんらしいマジスタイリッシュなアー写です。いえこれは宣材写真ではなくアー写です。
コンビでの新しいYouTubeアカウントもできていました。結成に当たってのトーク動画が上がっています。
石井くんの前のコンビたるコマンダンテへの愛は昔の記事を読んでいただきたいですが、「コマンダンテはこのまま歳を重ねて熟年漫才師になってほしい」と思っていたので、石井くんにはピン芸人ではなく漫才師の道に戻って来てほしいとずっと願っていました。以前の記事にも書いた通り、コマンダンテは気付いたらボケと突っ込みが入れ替わっている漫才、が得意でしたが、ピン芸人ではそういう芸風はできませんし。漫才としてもしゃべくりややかましい漫才というよりは、全然声量のない、冷静かつ精緻な漫才なので(コマンダンテチャンネルのために音量を上げていたら広告の音量で耳が死ぬのはファン周知の事実だった)、ピン芸人には向かないだろうと思っていたのです。
※ちなみに安田くんがコント師・GAGに加入したことに関しては新たな居場所を見つけただけだと思っています。コマンダンテのときには安田くんの方が好きでしたが、ピンになってからは石井くんの芸人としての行方をひたすら心配していました。
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途中カフェちゃんでネタみたいな相方捜しをしていた辺りから*1、ああこれは漫才への未練が残っているなとは思っていましたが、ここに来てこのスタイリッシュなアー写を見て、やっぱりネタ路線ではなくて、石井くんらしいスタイルで漫才師としての再出発を切ってくれたことに一安心しました(コマンダンテも安田くん見た目おじいちゃんいじりをしていましたが、元々安田くんはインテリア専門でセレクトショップ勤務歴のあるファッショニスタです)。新しいコンビで石井くんがどこまで辿り着けるのか分かりませんが、芸歴20年目を目前にした中堅漫才師の確かな技術をもって、よきコンビを作り上げてほしいなと願います。
コマンダンテの解散に寄せた記事には書きませんでしたが、石井くんは真面目な顔してふざけるきらいがあり(可愛いものではボケツッコミ入れ替わり漫才、可愛くないものではM-1の運動会漫才)*2、コマンダンテの終焉期は石井くんの振り回しに安田くんがついていけなかったのではという印象が拭えませんでした。そういうとこだけ大阪芸人みたいなエキセントリックさを見せずともよいのです、もう……漫才師としての確かな技量があるんだから……
次のCITYは、ふたりの技量を活かして、息長く、技術も評価されて、ふたりのやりたいことができるようなコンビになればと願います。仙台単独来たら絶対買います!!!!!
*1:動画としてはこの辺→
*2:どこかで「M-1は競技漫才」(201120の石井くんついーと)とか話していたが、普段サンパチを前に精緻な漫才をするくせに、M-1の時だけ運動会のリレーネタ(ガチで舞台上を追いかけ回っている)とか若干エキセントリックなネタを選んできて、おい普段の芸風でやらんかいとずっと思っていた。本人たちなりには、普段の精緻な漫才では賞レースを勝ち抜けないと思って、毛色の違うドタバタ漫才を出してきたのかもしれないが。
静謐で、丁寧で、苦しみも喜びも正確 - ドラマ『#アンメット ある脳外科医の日記』
今季はやたら沢山ドラマを観ているが*1、4月期の連ドラでイチオシなのが『アンメット ある脳外科医の日記』(フジ/カンテレ、月10)と『燕は戻ってこない』(NHK、ドラマ10/火10)の2作である。『PICU』の時にも書いたが、飛び道具的な展開が現実味の無い医療ドラマより、静謐で蕩々とした医療ドラマの方が好みだ。『アンメット』は脳外科医という花形と思われがちな科*2を舞台にしながら、その背景にある正確な診断学と、繊細な手術技術を静かに描いている。杉咲花の喋り口がここまでぴったりだとは思わなかった。若葉竜也のぶっきらぼうさも、脳外科医としてリアリティが強くてよい。
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背景とか
主人公たる川内ミヤビ(演:杉咲花)は1年半前に自動車事故(自損)を起こし、直近2年間の逆行性/順行性健忘、エピソード記憶障害を抱えた脳外科医だ。一時は看護助手*3として働いていたものの、若葉竜也演じる同じく脳外科の三瓶がアメリカから帰国してきて、脳外科医としての道に引き戻される。三瓶はミヤビの脳損傷が記憶障害と不釣り合いであることを指摘し、記憶障害に隠された事件が少しずつ露わになってくる。
原作は子鹿ゆずると大槻閑人による共作で、現在も『モーニング』連載中。原作者の子鹿は実際に脳外科医であり、神経所見や診察手技が正確なのも頷ける。ミヤビを主人公にするのはドラマ版独自の展開だ(原作者の子鹿も面白がっているのでこれは見事な翻案であろう)。
地味な仕事の積み重ねこそ医療である
『コード・ブルー』やら『ドクターX』に憧れる皆様には申し訳無いが、医師になって最初に気付くのは事務仕事の多さと地味な鍛錬の連続である。脳外科医であるミヤビにとって、それはマイクロ(=顕微鏡手技)でちまちまと結紮練習することであり*4、決して派手な緊急手術を繰り返すことではない。
このドラマでひどくリアルだなと思ったのが、第1話(失語症となった女優)や第2話(AVM→脳出血で半側空間無視になったサッカー強豪校の高校生)で、患者たちのリハビリ風景を主軸に据えたことだ。これはミヤビ自身も事故の後遺症である高次脳機能障害(ミヤビの場合は記憶障害)に苦しんでいることがきっかけと思われる。実際、神経の病棟において(脳神経外科、内科問わずで)*5、転院を含めたリハビリの調整は業務上大きなウェイトを占めている。……が、急性期治療を主軸にした作品ではなかなか描かれない部分だ。
このドラマはどこか積み重ね、というものを重要にしている気がする。第6話以降のミヤビは、三瓶と共に抗てんかん薬を調整して記憶が1日しか保たない現状を打開しようとする。薬を増やして記憶できる時間が延びたミヤビは、新しく積み重ねた記憶を噛み締めて生きるのである。そう言えば脳外科医として手術に復帰する前、ミヤビはひとりひたすらに結紮の反復練習に取り組んでいた。短期エピソード記憶が損なわれていても、手技の手続記憶はどんどん向上することを示した三瓶も、隣でまた積み重ねを支えた人物である。オペ看として傷を負った津幡師長にも、傷を乗り越えるための症例を積み重ねさせた。
(どうでもいいがミヤビの抗てんかん薬がペランパネル; フィコンパ[PER]単剤というところはちょっとリアリティに乏しい。フィコンパはとてもよい薬なのだが、元々の適応は他剤で効果の乏しいてんかんであり(KEGGも参照)、併用が前提の薬であった。ラコサミド; ビムパット[LCM]の方が単剤での承認が通って長いので、現実に即している気がするが、まあ世迷い言である)
このふたりがこんなにぴったりだとは
原作のミヤビ、三瓶のイメージとは少し異なっているが、とはいえ杉咲花と若葉竜也の演技はとてもよい。杉咲花の、優等生そうに見えるがどこかでちょっと諦めているあの感じは、記憶障害という制約を抱えてしまったミヤビの表現としてとてもよい。
若葉竜也のぶっきらぼうさは、病院の中に住み込んでしまうほど仕事バカな三瓶をよく表している。なんと言うか、ふたりとも、原作とはやや異なっていても、とてもよい(語彙力が無いが)。
脇を固める吉瀬美智子(津幡師長)、千葉雄大(救急部長/星前)も、緩急が効いている。綾野を演じる岡山天音が、どこか諦めたような演技が上手いのは言うまでもないが、それがミヤビの諦めと丁度対比になっている。井浦新は『光る君へ』で権力に狂っていく姿を見た後では、(今のところ)欲も無く穏やかそうに見えていてギャップがよい(もっとも、西島財閥との懇親会を見るに欲が無いわけではなさそうだが)。
この先の話、そしておしまい
原作でも描かれているが、この先は西島がミヤビに執着する原因、そしてミヤビの事故の真相が明かされることになるだろう。ドラマよりも先に展開が知りたい人は是非原作を買ってみてほしい。原作の巻末には、ミヤビの学び直しと称して、脳外科知識の解説が付いていてよかった(医学的にも大変丁寧で正確であった)。
第7話はJアラート発出もありイレギュラーな放送となっていたが、各地で再放送予定が組まれたようだ。TVerでは最新話が1週間配信、Netflixを契約すれば第1話から見放題となる。こちらも合わせてどうぞ。そう言えばサントラもいいね。
関連:アンメット ある脳外科医の日記 / 杉咲花 / 若葉竜也
*1:録画して沢山観ている、『アンメット』の他にも朝ドラ『虎に翼』、大河ドラマ『光る君へ』、ドラマ10『燕は戻ってこない』(『天使の耳〜交通警察の夜』を観ていたので引き続きドラマ10も)、民放だと予告で何か結末が気になってしまった『Destiny』と、『イップス』である
*2:実際には急患も多ければ、長時間の手術も多くかなりタフな仕事だ、筆者は出身大学も相まって余計にそう思うが
*3:この設定は原作でもあったが、『となりのナースエイド』が放送されたばっかりだったので不思議な重複になっていた。色々言われていたが、このドラマはコメディとしては面白かった(それもあって『イップス』を観ている)。☞
*4:これが内視鏡外科ならば、マイクロが内視鏡に取って代わって、それでいてほぼ同じ手技である。はたまた小児科であれば、暴れる小児の細い血管に点滴ルートを取ることになったり
*5:そう言えば神経内科がメインのドラマはあんまりないなあ。ぱっと思いついたところでも、『フラジャイル』の宮崎せんせーの前職が神経内科というくらい。診断学をメインに据えてみても面白そうなのにな。……いや、神経内科の診断学が難しすぎるし、治らない病気を沢山診断していく辛さがあるから、ドラマにならないのか……blog.goo.ne.jp - 調べたら『1リットルの涙』がヒットしたけど、やっぱり筆者は岐阜大の下畑先生だった。神経内科関係で検索して、丁寧だなあと思ってよく見たら大概下畑先生。
ウェンズデーは至高だしクリスティーナ・リッチも至高 - Netflix『ウェンズデー』を観た
鈴木亮平が振り切りまくっている『シティハンター』の話をしていたら*1、家人が勢いでNetflixに加入したので、久々にNetflix民になった*2。当の『シティハンター』は家人も観たそうなのでスキップされ、代わりに暇人としてひとりでずっと『ウェンズデー』"Wednesday"('22)を観ていた。チャールズ・アダムズ原作の『アダムス・ファミリー』をティム・バートンが手掛けてドラマ仕立てにした。
『アダムス・ファミリー』と言えば1991年・1993年に作られた映画2作があまりに有名である。この作品で虐待と拷問が大好きな一家の長女を演じたのが当時天才子役の名を欲しいままにしていたクリスティーナ・リッチ。『ウェンズデー』にもネヴァーモア学園の不思議ちゃん教師として登場している。つくづくリッチの演技でなければこんなにウェンズデーを好きにならなかったと思う。個性的なキャラクターだらけだが、筆者はやっぱりウェンズデーが1番好きだ。
ウェンズデーと言えばリッチのイメージがあまりに有名だが、ジェナ・オルテガはそれを見事に覆した。バートンの演出・脚本が見事なのもあるが、それ以上にオルテガの演技が上手い。無表情で悪事に手を染め、それでいて嫌いになれないウェンズデーの魅力をよく捉えている。逆に、元ウェンズデーことリッチの方も、にこにこだけれどウェンズデーに死ぬほど嫌われる女教師を演じていてそこもよい。
リッチは『アダムス・ファミリー』『キャスパー』と話題作に立て続けに出演、天才子役として話題になったが、私生活では親との不仲などトラブルが多発し、その後のキャリアは一時低迷していた。今作での登場は、勿論過去の名作へのオマージュ配役でもあるが、役柄としても魅力あり、単なるオマージュ配役に留まらずにいるのがよい。
ネヴァーモア学園は「のけ者の学園」とされているが、社会から排除された者たちに狂った慈愛の目を向けるのはティム・バートンの過去作通りの展開である。『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』も、『スウィーニー・トッド』も、はたまたアリスも、バートンはいつも社会ののけ者やクリーチャーたちを愛してきた。『アダムス・ファミリー』の世界観は、言われるまでもなくバートン作品との親和性が高い。
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『ウェンズデー』は配信でも大変好調で、既に第2期の制作も決定している。ウェンズデーは果たしてネヴァーモアにきちんと戻ってくるのか、そして散りばめられたままの様々な謎について、どんどん深めるところはあると思う。パグズリーやフランプおばあちゃんがもっと出ても良い。取り敢えず楽しみにしておく。河出書房新社からアダムスの手による原作も日本語で出ているのでこちらも合わせてどうぞ。
萌絵の心をかき乱した事件はこれだったのか - 中華航空機140便事故と森博嗣
NHKの『事件の涙』で中華航空機事故を特集していた。小牧空港(旧・名古屋空港)で起きた事故を30年ぶりに記者が辿るという内容である。寡聞にしてこの事故のことをあまり知らなかったのであるが、事故の日付と場所を見て、はたと思い至った。
森博嗣がメフィスト賞を創設させてまで(←実話)*1鮮烈にデビューした『すべてがFになる』という作品がある。多作な森が現在に至るまで紡ぎ続けているサーガの第1作でもある。主人公は国立N大学、もとい森が勤めていた名古屋大学の工学部助教授(当時)である犀川と、彼を追ってゼミ生になった昔馴染みのお嬢様・西之園萌絵。ふたりのイニシャルを取って、"F"から始まる10作は「S&Mシリーズ」と呼ばれている。"F"の冒頭、萌絵は森サーガの主軸であり続ける天才科学者・真賀田四季の元を訪れ、自分の過去に繋がる事実を述べられて酷く動揺する。
高校生時分の萌絵は、海外渡航から帰ってくる両親を那古野空港(=つまり名古屋空港、当時なので小牧空港のこと)に迎えに行くが、両親が乗った便は萌絵の目の前で墜落する。萌絵はこの衝撃的な事実にずっと蓋をして生きている(そんな萌絵を四季は酷く揺さぶる)。"F"の記載を読むに、物語の舞台は、執筆当時からそう遠くない時点として描かれている。森がメフィスト賞を獲って"F"が刊行されたのは1996年。中華航空機事故が小牧空港で起きたのは1994年。そしてこの事故は台北から飛んできた機体が小牧空港に着陸する時に起きた。全てが合致している。
先程もちらっと述べたが、森サーガは森自身の周囲の事実をよく取り込んで描かれている。舞台は那古野(なごの)とされているが明らかに名古屋市だ。犀川ら登場人物は名鉄百貨店前のナナちゃん人形でよく待ち合わせている。犀川は国立N大学工学部助教授で、教授職を固辞したとなっているが、森も名古屋大学工学部助教授まで務めており、この辺の事実も同様である。
過去も未来も含めた長大なサーガの中で、S&Mシリーズ→Gシリーズは、執筆時の年代と比較的近くに設定されている。ということは萌絵が両親を亡くした航空機事故とは、それすなわち中華航空機事故のことだろうと思う。そんなことは森サーガのファン、特に新刊が出る度にずっと追って来た古参ファンには自明だったのだろうが。
『事件の涙』はNHKプラスでも配信されているが、5月6日に再放送があるようだ。話題になった『すべてがFになる』は過去綾野剛・武井咲主演で映像化されているものの、森ミステリィの機微を全部ぶっ壊して、設定もどこかに行っているので観なくてもよい(早見あかりの演じる四季のみがよい)。それより檀れいが紅子さまを演じた『黒猫の三角』(フジ、2015年)を観た方がよいと思う。事故に関しては『メーデー!』S16E9で特集されているようだ。
『ブリジット・ジョーンズの日記』第4弾制作決定 - 気になるおヒューとコリン・ファースの行方
1週間くらい前だが、『ブリジット・ジョーンズの日記』第4弾映画の製作が決定したと噂になった。主演のレネー・ゼルウィガーに加え、第3作に登場した産科医のエマ・トンプソン、そして第2作まで登場したヒュー・グラントの再登場が報じられている。なお、ブリジットにとってのダーシーさまことコリン・ファースのキャスティングは発表されておらず、ちょっとどきどきな結果だ。
variety.com - THE RIVERが引用している典拠記事
当日にも匂わせで呟いたが、原作にわりかし忠実だった前2作とは違い、映画化第3作ではほぼオリジナルストーリーと言ってもよいような独自脚本が採られた。このため、映画第4作では、原作回帰するのか、はたまた再び独自路線に走るのかという点も含めて目が離せない。また、気になるおヒューとコリン・ファースの行方も深掘りしたいところだ。
コリン・ファースの役は原作第3作だと……であり、寧ろ第3作を嫌がったはずのおヒューが復帰するのもおひょひょと思うし、とするとどこを映像化するのか? 問題もあり。キャスト的には原作第3作の内容? #ブリジット・ジョーンズの日記 https://t.co/AcGou6SG9d
— ふぁじっこあなみ (@mice_fuz_anami) 2024年4月10日
!!! この記事には『ブリジット・ジョーンズの日記』原作・映画版のネタバレを含みます !!!
- そもそもの前提
- 原作を下敷きにした2作目まで、大きく外れて現代的な内容にした第3作
- 第3作は、映画も原作も衝撃の展開
- とすると、映画第4作の筋書は?
そもそもの前提
大河ドラマ『光る君へ』で源氏物語をはじめとした平安文学への本歌取りが話題になっているところだが、実は『ブリジット・ジョーンズの日記』もそういった構造になっている。主人公のブリジット・ジョーンズは、1995年にアラサーに差し掛かった冴えない行き遅れ。通りから人が消えたことで有名なBBC版『高慢と偏見』に胸を躍らせるが、自分にとってのダーシーさまが近くにいることには気付かない。1997年のダイアナ妃事故死に大きく心をかき乱され、ふとするとプチ事件が起こる自らの人生に叫喚しながら生きていくのだった。
ちらっと書いた通り、この作品は原作者のヘレン・フィールディングが、1995年に放送されたBBC版『高慢と偏見』の大ファンで、そこから着想を得て執筆されたものである。この作品で国内知名度を一気に上げたのが我らがコリン・ファース。一躍セックスシンボルとなり、本当に通りから人を消し、作品も今までで最高の映像化と呼ばれるようになった。ブリジットとぶつかりながらも惹かれ合っていくマーク・ダーシーの名前は、勿論『高慢と偏見』のダーシーから採られており、フィールディングも(さながらブリジットばりに)ファースを想定して書いたキャラクターであった。それ故彼のキャスティングも、原作者の望み通りだったのである。
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実際、物語の流れも『高慢と偏見』の筋書を基にしている。ブリジットにきょうだいはいないが、30代を過ぎて仕事も恋愛もあまり上手く行かず、オールドミス一歩手前の人生を密かに嘆いている。『高慢と偏見』のエリザベスは、父親が娘たちの結婚や財産の行方に無頓着なので、結婚先も決まらずに放置されている状況だ。
何より『高慢と偏見』らしいのは、主人公の女性とダーシーの出会いが最悪ということである。『高慢と偏見』では、ダーシーがずけずけ言うエリザベスへの文句が本人に立ち聞かれて第一印象は最悪。『ブリジット・ジョーンズの日記』でもブリジットとマークの初対面は最悪で、お互い恋人になる未来など1mmも見えない。映画版では更にアグリーセーターまで着ていて本当に最悪だ。
原作を下敷きにした2作目まで、大きく外れて現代的な内容にした第3作
ファースを起用したキャスティングに原作者の意向が反映されていたように、続けて制作された第1作・第2作は原作小説の影響が色濃く、原作の重要なエピソードをしっかり押さえて制作されていた。ブリジット役にはイギリス人ではなくアメリカ人のレネー・ゼルウィガーが起用されたが(レネーの起用に関しては一悶着あるものの)*1、蓋を開けてみればゼルウィガーはイギリス人よりもイギリス人らしいと言われ、アカデミー賞主演女優賞ノミネートなど賞レースで大健闘した。
続く☞☞☞
*1:BJの第1作・第2作は当時のミラマックスが制作に関与しているが、ミラマックスと言えば、かの有名なハーヴィー・ワインスティーンが率いていた制作会社である。アカデミー賞生産装置と呼ばれるほど賞レースでは常勝チームだったが、一方で女優たちへ自らへの枕営業を強いたとも言われ、#MeToo運動が始まるきっかけにもなった。ゼルウィガー本人はワインスティーンに関して口を噤んでいるものの、前後して『シカゴ』の主演を務めるなど、彼と制作上の蜜月を築いていたことは間違いない。おまけに両作品でオスカーにも絡んでいる。ザ・イギリス人女性のブリジットへゼルウィガーがキャスティングされたことへ、憶測が沢山飛ぶのはしょうがないと思う☞



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