ここでは 自動機における安全設計で重要な 「ライトカーテンとエリアセンサの違い、構造と設置の具体例」についてのメモです。
自動機の設計において、ライトカーテン と エリアセンサの違いを正しく理解することは、安全設計においてとても重要です。
両者は外見こそ似ていますが、その中身である フェールセーフ に基づく内部構造や、冗長性を担保する回路設計には決定的な違いが存在します。 多くの解説サイトでは「安全用か否か」という表面的な分類に留まりがちですが、本記事ではさらに踏み込み、なぜエリアセンサを安全用途に使ってはいけないのかを、回路図レベルの挙動や物理的な特性、そして労働安全衛生法などの法的根拠に基づいてメモしていきます。
また、設計の現場では「コストと安全性のバランス」に悩む場面も多々あると思うのですが、本記事では私の設計経験と調査に基づき、コストを抑えつつピッキングなどの用途に最適なエリアセンサの活用法や、具体的な型式を挙げた選定基準についても言及します。
この記事を読むことで、曖昧だった知識を確信へと変え、自信を持って機器選定ができるようになることを目指します。
構造から学ぶライトカーテンとエリアセンサの違い
フェールセーフ設計とエリアセンサの決定的な差
機械設計における安全思想の根幹は「フェールセーフ」にあります。 これは、機器やシステムの一部が故障したり、エネルギー供給が途絶えたりした場合に、必ず機械を「安全な状態(通常は停止状態)」へ移行させるという設計概念です。
ライトカーテンは、このフェールセーフ思想に基づいて厳格に設計されています。 具体的には、投光素子の劣化、受光回路の破損、あるいはケーブルの断線といったトラブルが発生した際、ライトカーテンは即座に出力をOFFにし、機械を強制的に停止させます。 つまり、「故障=停止」という図式が成立しており、故障したまま危険な運転が継続されることを防いでいます。
一方で、汎用エリアセンサは「信頼性」を重視して作られていますが、フェールセーフ設計ではありません。 信頼性とは「壊れにくいこと」を意味しますが、万が一壊れた場合の挙動までは保証していません。
例えば、エリアセンサ内部の出力トランジスタがショート故障(短絡)を起こした場合、光が遮られているにもかかわらず、電気的にはON信号(通電状態)が出続ける恐れがあります。 この状態で作業者が危険領域に侵入しても、センサーは「人がいない」という誤った信号を出し続け、機械は止まりません。
このように、エリアセンサは故障時に「危険側(動く側)」に故障する可能性が残されているため、人の命を守るためのインターロック装置として使用することは構造的に不適切であり、非常に危険です。
安全を担保する回路の冗長性と相互監視
ライトカーテンがエリアセンサと大きく異なる点の一つに、内部回路の「二重化(冗長化)」が挙げられます。 国際規格IEC 61496およびJIS B 9704で規定されるType 4のセーフティライトカーテンでは、投光器および受光器の制御をつかさどるCPUや信号処理回路が、独立した2系統で構成されています。 これは、単に予備の回路を持っているという意味ではありません。
重要なのは、この二つの回路が常に互いの動作をチェックし合う「相互監視(クロスモニタリング)」を行っている点です。 メインのCPUとサブのCPUは、常に同じ演算処理を行い、その結果を照合しています。 もし片方の回路にノイズが乗ったり、コンデンサの故障などで演算結果に不一致が生じたりした場合、即座に異常と判断して安全出力を遮断します。
これに対し、一般的なエリアセンサは、コストやサイズを優先するため、シングルCPU構成であることがほとんどです。 回路が一つしかないため、その回路が暴走したり、誤った演算を行ったりしても、それを内部で検知して止める術がありません。 安全関連部(SRP/CS)の設計において、単一故障が安全機能を無効化しないことは必須条件であり、この冗長性の有無が、安全機器としての適格性を分ける決定的な要素となります。
故障を検知する自己診断機能の有無
安全装置には、常時「自分自身が正常に機能しているか」を確認し続ける能力が求められます。 ライトカーテンは、電源投入時の初期チェックだけでなく、稼働中も周期的に高度な「自己診断」を実行しています。 診断項目は多岐にわたり、投光LEDの断線や劣化、受光素子の感度異常、内部メモリのデータ破損、電源電圧の変動などを、マイクロ秒単位の高速サイクルで監視しています。 もし何らかの異常が見つかれば、センサーは即座にエラー状態(ロックアウト)となり、出力をOFFにして機械の再起動を阻止します。
エリアセンサにも動作表示灯などはありますが、内部回路の健全性を常時監視し、異常時に能動的に安全側へ移行するような自己診断機能は搭載されていません。 そのため、エリアセンサを使用している場合、センサーが故障して機能不全に陥っていることに気づかないまま、生産を続けてしまう「潜在的な危険状態」が発生し得ます。 作業者が「センサーが付いているから安全だ」と信じて手を伸ばしたとき、実はセンサーが故障して反応しなかった、という最悪の事態を防ぐためには、常時自己診断を行うライトカーテンが不可欠です。
安全出力OSSDと汎用出力の危険性の違い
出力信号の形式においても、両者には明確な違いがあります。 ライトカーテンの出力は「OSSD(Output Signal Switching Device)」と呼ばれ、単なるON/OFFスイッチではありません。 OSSDは、ON状態(遮光されていない安全な状態)であっても、人間の目や機械のリレーには反応しないほどの極めて短い時間(数マイクロ秒〜数百マイクロ秒)、定期的にOFFパルスを出力する「パルステスト」を行っています。
このパルステストにより、出力配線が電源線と接触してショート(短絡)していないか、あるいはアースと地絡していないかを常に診断しています。 もしケーブルの被覆が破れて+24Vラインと接触した場合、通常のエリアセンサ(NPN/PNPトランジスタ出力)であれば、センサーがOFFしようとしても物理的に電圧がかかり続け、機械は止まりません。 しかし、OSSDであれば、パルスによる電圧降下が確認できない時点で「外部配線短絡」と判断し、もう一方の冗長回路を使って強制的に出力を遮断します。
以下の表に、一般的なエリアセンサとセーフティライトカーテンの機能的な違いと、代表的な製品型式を整理しました。
表1:ライトカーテンとエリアセンサの機能および代表型式比較
| 比較項目 | セーフティライトカーテン (Type 4) | 汎用エリアセンサ (ピッキングセンサ等) |
| 主な目的 | 人体の保護 (安全機能) | 物品の検出、ポカヨケ (制御機能) |
| 内部回路 | 二重化 (冗長構成) + 相互監視 | 単一回路 (シングルCPU) |
| 故障時の挙動 | 必ずOFF (安全側) になる | ONのまま (危険側) になる可能性がある |
| 出力形式 | OSSD (パルス診断付き) | トランジスタ (NPN/PNPオープンコレクタ) |
| 自己診断 | 常時実行 (投光素子、回路等) | 限定的あるいは無し |
| 準拠規格 | IEC 61496-1/-2, JIS B 9704 | JIS C 8201 (一般制御機器) |
| パナソニック参考型式 | SF4D シリーズ, SF4B シリーズ | NA1-PK5 (ピッキング用), NA2-N (エリア用) |
| オムロン参考型式 | F3SJ シリーズ, F3SG-SR シリーズ | F3W-D (ピッキング用), F3W-E (エリア用) |
| キーエンス参考型式 | GL-R シリーズ, GL-S シリーズ | PJ シリーズ (汎用エリア) |
参考出典先:パナソニック インダストリー
参考出典先:キーエンス
このように、配線トラブルや外部要因による故障も含めて安全側に動作するOSSDに対し、汎用エリアセンサの出力は短絡事故に対して無防備です。 制御盤内や可動部の配線において、短絡リスクを完全に排除することは難しいため、OSSD出力を持つ機器の選定が推奨されます。
特性で選ぶライトカーテンとエリアセンサの違い
反射の影響を防ぐ指向角と設置の難易度
光を使って検知するセンサーにおいて、見落とされがちですが非常に重要なスペックが「指向角(有効開口角)」です。 これは、投光器から発射された光がどのくらいの広がりを持って進むか、また受光器がどのくらいの角度からの光を受け入れるかを示す指標です。
セーフティライトカーテン(Type 4)の指向角は、国際規格により ±2.5°以内 (検出距離3m以上の場合)と極めて狭く厳格に定められています。 なぜこれほど狭くする必要があるかというと、周囲からの「反射光」による誤動作を防ぐためです。 もし指向角が広いと、センサーの近くにあるステンレス製の装置カバー、安全柵のアルミフレーム、あるいは光沢のある床面などに光が反射し、遮光物体(人の手など)を迂回して受光器に届いてしまう可能性があります。 これを「迂回反射」と呼びます。 迂回反射が起きると、実際には人が光軸を遮っているにもかかわらず、受光器には反射光が届いているため「遮光されていない(安全)」と誤認し、機械が停止しないという重大な事故につながります。
一方、エリアセンサは設置の容易さを優先して設計されているため、指向角が比較的広く設定されています(例:±10°や±20°など)。指向角が広いと、投光器と受光器の向きが多少ずれていても光が届くため、光軸調整が簡単で振動にも強いというメリットがあります。 しかし、安全用途で使用する場合、この広さは致命的な欠点となります。 前述の迂回反射のリスクが高まるだけでなく、隣接する他のセンサーからの光を拾ってしまう「相互干渉」も起きやすくなるからです。
ライトカーテンの設置には高いアライメント精度が求められますが、これは反射による不感帯を排除し、確実な検知を保証するために必要な仕様 なのです。
指や手を守るための最小検出物体と分解能
機械の危険部にどれだけ近づけるか、あるいはどれだけ細かい身体の一部を検知できるかは、センサーの「最小検出物体」または「分解能」によって決まります。
ライトカーテンは、保護したい対象部位に合わせて厳密な分解能が設定されています。
- 指検出用:φ14mm程度。指先が少しでも侵入すれば検知します。
- 手検出用:φ25mm程度。手のひらや手首の侵入を検知します。
- 人体検出用:φ45mm以上、または光軸ピッチが広いタイプ。腕や身体全体の侵入を検知します。
これに対し、エリアセンサは主に物品の通過確認やピッキングのポカヨケに使用されるため、光軸ピッチ(光の間隔)が20mm〜40mm、あるいはそれ以上と広くなっています。 そのため、最小検出物体はφ30mm、φ50mm、あるいは「φ35mm以上の不透明体」といった粗い設定になっていることが一般的です。 もし、分解能の粗いエリアセンサを指の保護に使った場合、光軸と光軸の間を指がすり抜けてしまい、検知されないまま危険部へ到達してしまう恐れがあります。 安全対策では、「たまたま検知しなかった」は許されないため、保護部位に応じた適切な分解能を持つライトカーテンを選定する必要があります。
停止性能に関わる応答時間の保証とバラつき
人が危険領域に侵入してから、実際に機械が停止するまでの時間を正確に把握することは、安全設計において極めて重要です。 この時間の一部を構成するのが、センサーが遮光されてから出力信号をOFFにするまでの「応答時間(OFF応答時間)」です。
ライトカーテンのカタログや仕様書には、応答時間の「最大値」が明記され、保証されています(例:最大14ms)。 この数値は、ノイズ環境下、温度変化、内部回路の自己診断処理のタイミングなど、あらゆる悪条件が重なった「最悪の場合(ワーストケース)」を考慮したものです。 安全設計では、常に最悪の事態を想定して計算を行う必要があるため、この最大値の保証が不可欠です。
対して、汎用エリアセンサの応答時間は「〇〇ms以下」と記載されていても、それはあくまで通常の信号処理における速度であり、安全機能としての保証値ではありません。 また、多くのエリアセンサは「平均値」や「標準値」で示されることがあり、検出条件や感度調整、相互干渉防止機能の利用有無によって大きく変動する場合があります。
表2:ライトカーテンとエリアセンサのスペック詳細比較
| 比較項目 | セーフティライトカーテン (Type 4) | 汎用エリアセンサ (例: Panasonic NA1-PK5) |
| 指向角 (開口角) | ±2.5° 以内 (検出距離3m以上) | 広角 (製品によるが ±10° ~ 20° 程度) |
| 最小検出物体 | φ14mm (指), φ25mm (手) | φ35mm 以上、φ50mm 以上など |
| 応答時間 (OFF) | 最大値を保証 (例: 14ms以下) | 標準値や平均値 (例: 10ms以下だが条件で変動) |
| 安全距離計算 | 可能 (Tが確定するため) | 不可能 (Tが保証されないため) |
| 外乱光耐性 | 安全規格レベルの耐性あり | 一般的なFA機器レベル (3,000lx 〜 10,000lx程度) |
参考出典先:キーエンス
参考出典先:オムロン
ISO13855に基づく安全距離の計算方法
ライトカーテンを設置する位置は、適当に決めてよいものではありません。 国際規格ISO 13855(JIS B 9715)に基づき、危険源からセンサーの検知面までの「安全距離 (S)」を計算し、物理的に確保する必要があります。
安全距離の詳細な計算方法は ライトカーテンの安全距離 を参照してほしいのですが、ここでは基本的な計算式をメモします。
ここで、各変数は以下の意味を持ちます。
- S (安全距離 mm):保護領域から危険源(挟まれ点など)までの最短距離。
- K (人体の接近速度 mm/s):通常は2000 mm/s(手の侵入速度)または1600 mm/s(歩行速度)を使用します。
- T (全体の応答時間 s):T = Tm + Ts
- Tm: 機械自体の停止時間(ブレーキが効いて完全に停止するまでの時間)。
- Ts: ライトカーテンの最大応答時間。
- C (侵入距離 mm):センサーの検出能力(d)に依存する追加距離。
- d ≦ 14mm の場合:C = 0
- 14mm < d ≦ 40mm の場合:C = 8 × (d - 14)
この計算において、変数 Ts(ライトカーテンの応答時間)は、前述の通りメーカーによって保証された最大値を使用します。 しかし、エリアセンサを使用する場合、この Ts の保証値が存在しません。 また、故障時には信号が出ない(Ts = ∞)可能性があるため、数理的に安全距離を算出すること自体が不可能となります。
さらに、変数 C はセンサーの最小検出物体 d によって決まります。 分解能の粗いエリアセンサ(例えば d=35mm)の場合、追加距離 C は 8 × (35 - 14) = 168mm となります。 これがもし指検出用のライトカーテン(d=14mm)であれば C=0mm で済みます。 つまり、エリアセンサを使うと、機械をより大きく作るか、センサーをかなり手前に設置しなければならず、スペース効率の面でも不利になることが多いのです。
コストと用途に見合ったピッキングセンサの活用
ここまで安全面でのリスクを強調してきましたが、エリアセンサが製品として劣っているわけではありません。 重要なのは「適材適所」です。 エリアセンサは、ライトカーテンに比べて構造がシンプルであるため、導入コストを大幅に抑えることができます。 製品によっては、価格差が数倍から10倍程度になることもあります。
エリアセンサ(特にピッキングセンサと呼ばれるもの)の最適な用途は、安全確保ではなく「制御」や「ポカヨケ」です。
例えば、部品棚から部品を取り出す際、正しい棚に手を入れたかを確認するシステムでは、エリアセンサが威力を発揮します。 多くのピッキングセンサには大型の作業指示灯(ジョブインジケータ)が搭載されており、作業者に「次はここから部品を取ってください」と光で教えることができます。
読者の皆様が具体的な設計に活かせるよう、あくまでも想定ですが、以下のようなケーススタディで使い分けをイメージしてみましょう。
具体的な使い分けケーススタディ(想定例)
- ケーススタディA:ロボット溶接セルの開口部
- 状況:自動溶接ロボットが稼働しているセルのワーク投入口。作業者がワークをセットし、スタートボタンを押すとロボットが動く。
- リスク:ロボット稼働中に作業者が侵入すると、アームと衝突したり挟まれたりして重傷を負うリスクが高い。
- 選定:セーフティライトカーテン (Type 4)
- 理由:人命に関わる重大なリスクがあるため、フェールセーフと冗長性が必須。故障時に機械が確実に止まる保証が必要。
- 推奨型式例:パナソニック SF4D、オムロン F3SJ、キーエンス GL-R
- ケーススタディB:組立工程の部品取り出し棚(パーツビン)
- 状況:作業台の前に並んだ部品箱から、ネジやワッシャーを取り出して製品に組み付ける。
- リスク:間違った部品を取ると製品不良になる(ポカミス)。ただし、部品箱に手を入れても怪我をするような機械的危険源はない。
- 選定:汎用エリアセンサ (ピッキングセンサ)
- 理由:目的は「生産品質の確保(ポカヨケ)」であり、安全確保ではない。万が一センサーが故障しても、不良品が出るだけで人は怪我をしないため、コストを優先して良い。
- 推奨型式例:パナソニック NA1-PK5、オムロン F3W-D、キーエンス PJ
規格と法令によるライトカーテンとエリアセンサの違い
労働安全衛生法が定める機械安全の法的要件
日本国内において、機械の安全対策は単なる推奨事項ではなく、法律で義務付けられています。 労働安全衛生法(安衛法)および労働安全衛生規則では、機械の危険な可動部分には適切な防護措置を講じることが、事業者や機械設計者に求められています。
特に、安衛法第42条では「譲渡等の制限」として、危険な機械には厚生労働大臣が定める規格を具備した安全装置を備えなければならないと規定されています。 汎用エリアセンサは、一般的な産業用センサとしての規格(JIS C 8201等)には準拠していますが、国際的な安全規格(IEC 61496)や、日本の法律が求める「安全装置」としての要件は満たしていません。
したがって、法令で指定された危険機械の防護柵の代わりとしてエリアセンサを使用することは、コンプライアンス違反となるだけでなく、万が一事故が発生した場合には、設計者や事業者が労働安全衛生法違反として処罰される可能性があります。 安全対策は企業の社会的責任(CSR)にも直結するため、法令遵守の観点からもライトカーテンの選定は必須です。
動力プレス機械における型式検定の義務
日本国内で使用される「動力プレス機械」や「シャー(せん断機)」の安全対策には、さらに厳しい規制が存在します。 労働安全衛生法第44条の2に基づき、これらの機械に使用する光線式安全装置は、厚生労働省が実施する「型式検定」に合格し、その合格標章(検定マーク)が貼付されたものでなければなりません。
ライトカーテンの中には、この型式検定を取得し、動力プレス機械の安全装置として正式に使用できるモデルが存在します(例:パナソニック SF4Dシリーズ(厚生労働省型式検定合格品:プレス機械・シャー(紙断裁機)対応(SF4D-□-01のみ)、オムロン F3SJシリーズなどの特定モデル)。 これらの製品は、プレスの急停止性能に対応できるか、振動に耐えられるかといった厳しい試験をクリアしています。
一方で、エリアセンサがこの型式検定を受けることはありません。 したがって、動力プレス機械の安全装置としてエリアセンサを使用することは、いかなる理由があっても認められず、明確な違法行為となります。 海外製のプレス機械を輸入する場合や、既存の設備を改造する場合でも、日本国内に設置する限りはこの検定合格品の使用義務が発生しますので、選定時には必ず検定合格証の有無を確認する必要があります。
信頼性を評価するパフォーマンスレベルの達成
近年、機械安全の国際的な主流は「制御システムの安全関連部(SRP/CS)」の信頼性を確率論的に評価する手法へと移行しています。 これはISO 13849-1(JIS B 9705-1)で規定され、パフォーマンスレベル(PL)という指標で表されます。 PLは、低い方からa, b, c, d, eの5段階があり、リスクアセスメントの結果に基づいて必要なレベル(PLr)を決定し、それを満たすシステムを構築する必要があります。
PLを達成するためには、使用する機器の信頼性データが必要となります。
- MTTFd:危険側故障に至るまでの平均時間
- DCavg:故障診断率(自己診断でどれだけ故障を見つけられるか)
- CCF:共通原因故障への耐性
ライトカーテンメーカーは、自社製品のこれらのデータ(信頼性値)を開示しており、PLdやPLeといった高い安全レベルの回路構築が可能です。 しかし、エリアセンサメーカーは通常、これらの安全パラメータを提供していません(そもそも安全機器として設計されていないため、算出していません)。
データがない以上、計算上でPLを算出・証明することができず、結果としてリスクアセスメントに基づいた妥当な安全対策として認められません。 現代の機械設計では、単に「センサーがついている」だけでなく、「どの程度の信頼性で機能するか」を数値で証明することが求められており、その点でもライトカーテンの使用が唯一の解となります。
まとめ:ライトカーテンとエリアセンサの違い
本記事で解説したライトカーテンとエリアセンサの主な違いと要点を以下にまとめます。
- ライトカーテンは「人命保護」を目的としたフェールセーフ対応の安全機器
- エリアセンサは「物体検出」を目的とした制御機器であり、安全用途には不可
- ライトカーテンは故障時に必ず「停止(OFF)」するよう設計されている
- エリアセンサは故障時に「通電(ON)」したまま固着し、機械が止まらないリスクがある
- ライトカーテンの内部回路は二重化され、CPU同士が常に相互監視している
- ライトカーテンはOSSD出力により、出力配線の短絡(ショート)を検知できる
- エリアセンサの汎用出力は短絡時に危険側故障を起こす可能性がある
- 指向角が狭い(±2.5°)ライトカーテンは、反射による検知漏れを防ぐ
- ライトカーテンは最小検出物体が保証されており、指などの微細な侵入も検知可能
- ライトカーテンは最大応答時間が保証されており、安全距離の計算が可能
- エリアセンサは応答時間の最大値保証がなく、安全距離計算が成立しない
- 動力プレス機械には厚生労働省の型式検定合格品(ライトカーテン)が必須
- ISO13849-1に基づくパフォーマンスレベル(PL)の達成にはライトカーテンが必要
- コストが安いエリアセンサは、ポカヨケや通過検知など、安全に関わらない用途に適している
- 設計者は用途が「安全」か「制御」かを明確にし、人命に関わる場合は迷わずライトカーテンを選定すべき
以上です。
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