
今年最期の作品。明るい作品ではないですが、前向きに生きる人の話で今年を終ることができてよかったと思っています。1年間、お世話になりました!
刑務所や拘置所への差し入れを代行する「差入屋」を家族で営む一家が、ある事件をきっかけにその絆が揺らいでいく姿を描いたヒューマンサスペンス。2024年釜山国際映画祭正式出品です。
タイトルで観ることにしました。私にも苦い経験がある。 (笑)これが罪かと思うほどのものでしたが、あの冷たいガラス越に面会者と話した経験がある。だから面会の大切さは分る。
差入屋の存在を始めて知りました。映画が始めると冒頭で彼が犯罪者だったと知った。彼は何でこの仕事に就いた。悩みは何だ?どうやってこれを克服する。こんな視点で観ることにしました。
差入れする犯人像の描き方によく分からないところがある。でも彼は刑事でもないし、彼自身が犯罪者だったから分るか苦しみだと割り切って観ていました。
犯罪者が社会に戻るのは難しい。こんな映画は沢山あるが、差入れ屋としてこの視点で描いた作品はない。だから泣けるところがあった。元犯罪者に対する世間の目は厳しいが家族の支えと自分の仕事で人を救えると耐えて、耐えて、これこそが贖罪と生きる姿に泣けます。
こういう人がいることを知っておくことが、この世を明るくするのではないでしょうか。初監督作となる古川豪監督にエールを送りたいです。
監督・脚本:古川豪、撮影:江﨑朋生、編集:小西智香、音楽:ベンジャミン・ベドゥサック、主題歌:SUPER BEAVER。
出演者:丸山隆平、真木よう子、三浦綺羅、川口真奈、北村匠海、村川絵梨、甲本雅裕、根岸季衣、岸谷五朗、名取裕子、寺尾聰。
物語は、
金子真司(丸山隆平)は刑務所や拘置所に収容された人への差し入れを代行する「差入屋」を一家で営んでいる。ある日、息子の幼なじみの女の子が殺害されるという凄惨な事件が発生する。一家がショックを受ける中、犯人の母親が「差し入れをしたい」と店を訪れる。差入屋としての仕事をまっとうし、犯人と向き合いながらも、金子は疑問と怒りが日に日に募っていく。そんなある日、金子は一人の女子高生と出会う。彼女は毎日のように拘置所を訪れ、なぜか自分の母親を殺した男との面会を求めていた。この2つの事件と向き合う中で、金子の過去が周囲にあらわとなり、家族の絆を揺るがしていく。(映画COMより)
あらすじ&感想:
〇差入れ屋の金子真司、彼は元受刑者だった。
妻の美和子(真木よう子)が勤めの合間を縫って幼子の和真を抱いてバスを使って収監されている真司に会いに行く。しかし、真司から「約束を守れ!生き甲斐の面接に遅れて、言いたいことがあるか!俺のことはどうでもいいのか?」と怒鳴り散らす。美和子がいたたまれず席を外した。真司は美和子が子供を抱いていたことに気付き、言葉を掛けようとするが面会時間終了だった。
真司は気が短く自己本位なところがあり、つまらんことで暴力事件を犯したのか?自分のことだからもう少し説明があったほうが良いい。

そんな真司が叔父(寺尾聰)の指導で差入れ屋になり、男性受刑者に離婚届けの押印を求めて面会。すると受刑者は意見も聞かず、かって自分が妻を怒ったように怒鳴り散らす。真司はこれに耐えきった。叔父から「ころあいだろう。あとは任せる」と印籠を渡され、真司が店を仕切ることになった。
真司は刑務所を出たとことで男(岸谷五朗)にぶち当たって“ごめんなさい”と謝った。後にこの男の差入れ屋になるとは?こういう遊び心が面白い。
〇真司は店を引き継ぎ、家族を大切にしながら過ごす中で、妻の友人の子娘が刺殺される事件に遭遇した。
真司一家は妻の美和子と小学生の長男の和真(三浦綺羅)、叔父と生活していた。家の前で造っている植木鉢がよく割られるが、美和子は掃除し新しい植木鉢に変えていた。

朝食時、TVニュースで「横川裕二、元暴力団員が強盗殺人で逮捕。太田区の二宮芳恵宅に入り刺殺」と流れていた。後に真司にとって大きな事件になるのだが、何気なくここで見せておくという演出が面白い。
真司は予定の差入れに出掛けた。その後、真司の母親・容子(名取裕子)が店に顔を出す。美和子はそっとお金を渡して返した。
帰宅した真司が母親が家に来たことを知り、母親を尋ねて「家族に関わるな!男を追い続けて、俺の面会に一度も来なかった」と怒りをぶつけた。真司は母親からネグレクトされて育ったようだが、彼が犯した事件との繋がりなどが一切示されない。真司を理解するためにもう少し丁寧な描写が必要だった。
妻の友人・徳山詩織(村川絵梨)の娘・カリンちゃんが川原で発見され刺殺されていた。。
美和子は捜索から発見、葬儀まで詩織に付き添った。ところが近所の人から「あんたみたいな商売している人に来て欲しくない」と非難さるが気丈に過ごしていた。金子夫婦が葬儀に参加し、帰宅すると植木鉢が悪戯されていた。
真司が世話になった弁護士の久保木(甲本雅裕)が訪ねてきた。
偶然道行く二宮を見て「あの子の母親が殺されたが母親は自宅売春やっていたが事件には出来ない」と二宮芳恵殺人事件を話題にした。
真司は頼まれた差入れをしに刑務所を顔を出すと、受付で面会を拒否される女生徒(川口真奈)に出会った。真司は“何があったか?”と思った。まさかこの娘が二宮芳恵の娘とは思わなかった。
カリンちゃん殺害犯人は小島高史(北村匠海)だった。報道陣が小島宅に押しかけるが、母親のこず江(根岸季衣)は水を掛けて追い払う。どうやらこちらの母親も毒母のようだ!
〇真司は小島こず江の依頼で高史に差入れした。高史に侮辱され腹が立った。
真司はこの依頼は嫌だった。美和子に窘められて受け入れた。ブランケットと手紙を差入れだった。

面会室で高史に会った。
ブランケットを差入れたことを告げ、手紙を読もうとすると、高史が「あんた、何年入っていた。何でこんな仕事をしている?素人には難しいか?」と聞く。真司は「刑期は3年、後悔しかない」と答えた。すると「嘘をつけ!しばらく入ってさぼって出てくる。100匹の蟻の話を知っているか」と話し出した。真司は頭にきて席を外した。真司はこず江に“差入れは終った”と告げた。植木鉢が壊されていた。
高史が何故真司を知っていたのか。説明が欲しい。
真司はこず江の催促で再度高史に面会した。
こず江は自分で会おうとはしない。真司の母親と一緒だった。いつもの女生徒が面会に来て、断られているのを目にした。
真司は高史に「何でやった?」と聞いた。「報復だ!社会に対して!」と答えが返ってきた。「何でカリンちゃんを、彼女の身になってみろ」と問うと「あんたの価値観で判断するな!あなたの家族が悲劇だ」と言った。真司は又頭に来て席を外した。
真司は高史の言葉に“どうして俺はこう見られるのか”と悔やんだ。やる気が亡くなった。
そこに久保木がやってきて「二宮芳恵殺害事件は母親が殺害されたことで終わらず、母親が娘に売春をさせていたことに触れそうでだ。そうなったら娘の人生が終る。犯人・横川に面会させてもらえない、特殊事情だ」と酒を飲みながら愚痴る。久保木は高史に手を貸して欲しかったのかなと思った。

横川は便器を使って首を締め自殺を図った。が、刑務官に発見され未遂に終わった。横川は芳恵を殺したとき娘が笑ったことを想いだしていた。
〇真司は息子・和真が学校でいじめられていることを知り、暴行事件を起こした。
和真へのいじめが“罪人の子だから”というものだった。妻の美和子もいじめられていることを知った。真司の怒りは収まらなかった。教員室を尋ね、担任の先生を殴った。教頭先生が「不注意だった」と取りなしてくれ、事件にはならなかった。真司は「もう差入れ店を辞める!」と美和子に言った。
美和子が「あなたのやっていることは凄いこと、なんで自身が持てない。私たちがやっていることは凄いことなのよ。私は分かっている、しっかりしてよ」と励ました。

真司は叔父に「どうしていいか分からない」と聞いた。叔父は「俺は服役してないから分からないでこの仕事をやってきた。ひとつだけ悩んだことがあった。お前への差入れだ。まさか身内に差入れするとは思わなかった。しかしお前に差入れして良かった。おれは家族がもてた。さんざん迷惑かけたけどお前の母さんに感謝している。あいつが“差入れしたらどう”と言ったんだ。お前が思うようにやれ!」と答えた。寺尾聰さんの出番はほとんどないがこのセリフは良かった!
真司は出所したとき美和子が和真を連れて迎えてくれた時、泣いたことをおもぃ出した。そして“この仕事を続けよう”と思った。
真司はこず江邸を尋ね、手紙を帰した。こず江は「いつまで子供の責任を取らされるの。私は20歳まで立派に育てました」と面会を無視した。自分の母はこれよりましだと思った。(笑)
〇真司は女生徒の面会を引き受けることに決めた。
少女の名は二宮佐知。家に連れてきて一緒に飯食った。佐知は事件のことを「横川が家に来た時、自分が誘った。しかし横川は母を刺し、私には手を出さなかった。母にはまだ生命があったが。自分が母を殺した」と話した。

真司は「危ない面接になるので約束してくれ」と「嘘はつくな!」「事件のことはどうでもいい」「3つ目は直接話すな!」と話して、家に返した。
〇真司は袖の下を使って刑務官を買収し、佐知を連れて横川に面会した。
横川(岸谷五朗)は佐知を見て“約束が違う”と部屋を出ようとしたが刑務官に止められた。真司は“毛布と手紙を差入れにきた”と告げた。

佐知が「元気ですか?」と書いた画用紙を見せた。横川が「このリスク分かっているのか?」と聞いた。真司が「分かっている、墓場まで持ってゆきます」と答えた。「務所に戻りたかっただけだ」と横川が言った。「元気ですか?」と佐知が再び画用紙を見せた。横川はあのとき佐知に盗んだ金を、“新しい人生をおくれ”と渡したことを思いだした。「ダメだ、そんなことしたら人生が無駄になる」と横川が反対した。佐知が「すっと生きてください」とまた画用紙を見せると、横川は部屋を出て行った。佐知が大声で「ずっと待っています」と泣きながら叫んだ!横川はこれを聞いて泣いていた!
真司は高史に面会し、「自分は家族を持ちしっかり人生を歩んでいる」と伝えた。「君も環境が違っていたら俺の気持ちが分かる。可哀そうだ」と声を掛けた。高史が「もういいですか」と言うから「気になっていたことだが、その目はどうした?」と聞くと「何度も手術したが麻痺している。誤認医者ですよ」と言った。
〇佐知は施設に入り、真司に沢山の“いちご“を送ってきた。世話になった人にお裾分けした。母親にも!
まとめ:
ラストシーンは壊された植木鉢を妻の美和子がきれいに掃除するシーンで終る。家族が耐えて、耐えて生きる姿に涙があふれる。きっとこういう人たちが沢山いるのだと思う。
金子は自分が収監されていた時、妻の面会に“思いやりがない”と妻を責めた。自分が差入れ屋となって受刑者に面会してみて、かって自分がやったと同じように受け入れてもらえなかった。金子はこのことで自信を失くしていくが、妻の美和子の支えで、横川に会い“この仕事が人助けになっている”と自信を取り戻し前向きに歩み出した。毎日が贖罪の日々なんだろうと思った。
刑を終えた人への普遍的な物語になっている。
シナリオにあいまいなところもあるが、出演者の感情の入った演技でカバーしてあった。
金子役の丸山隆平さん、一本気で切れやすいが優しさがある平凡な人だが傷つきやすい。経験を積みながら強くなっていく姿がよかった。金子の妻役真木よう子さん、鷹揚存在感があって説得力のある作品になったと思います。
小島高史役の北村匠海さん、金子に大きな影響を与えるこじれ役。とらえどころのない不気味さがよくでた演技で、金子が俺のやっていることが全く受け入れられないと分かればいい訳で、金子がビビるのが分かるいい演技でした。
演出として、植木鉢の意味が浮かび上がって来るのが面白かった。
小さな作品ですが、犯罪者支援について色々考えさせてくれる作品でした。来年、どんな作品と出会えるかと楽しみです。来年もよろしくお願いします。
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