相手の立場になって伝え方を考え直してみる

 「相手の立場になって考えなさい。」とよく言われます。多くの人が子どもの頃から親や学校の先生から言われているのではないでしょうか。人と何かを一緒に行う時、人と話す時、自分がやりたいことや考えを一方的に相手に押し付けるのではなく、相手のことも考えて行動・発言しましょう、ということです。小さい頃から言われて続けているのは、社会で生活する上でとても大事なことだからです。

 仕事も同じで、「相手の立場になる」ことが大事です。お客様に自社の製品、サービスを提案する時、この「相手の立場になって考える」ことが求められます。お客様の事業環境、経営課題、事業課題は何か、を考えてその視点で提案することが求められます。しかし、これを徹底することが意外に難しいのです。頭では分かっていても、提案書を書いていくうちに、自分よがりな視点が少しづつ入り込んできます。提案する側は、結果が求められるのもあり、自分の製品・サービスが如何に優れているかをアピールしようとします。これが相手のメリットになっていればいいのですが、色々考えを巡らせないとメリットに結びつかないのであれば伝え方がよくないのです。相手の立場に立っていないということです。どうしてもこの自分視点は入ってくるので、入ってくることを前提に考えた方が良いです。資料のレビューや、話す内容の確認をするとき、その都度、「自分がもし相手だったらどう感じるだろう?」と自分を相手に置き換えてみるのです。私の経験上の感じ方ですが、「相手の立場に立っているだろうか?」と考えるだけでは、立場の置き換えが不完全になりがちです。実際に、自分が相手に置き換わるのを頭の中でイメージする方法が効果があります。イメージの中で相手になり、自分の話を聞いてみるのです。あくまでイメージです。相手の立場で聞いてみると、「なぜ?それはあなたがそうしたいからではないですか?」と疑問が出てきます。そう感じたら、その箇所を見直す、というのを繰り返します。

 私は山登りによく行きます。山では、すれ違う人に「おはようございます」「こんにちわ」と挨拶します。山では、遭難などもあるため、少しでも自分の存在を誰かに確認してもらうことが大事、というのもあるためです。ただ、この挨拶、山のゆるやかな?マナーとして、登りの人が挨拶をしたら下りの人が返事をするのです。登りは体力を使うので登りの人はとても疲れていることが多いです。下りの人はそこまで疲れません。下りの人から声をかけると、登りの人は疲れていて返事をするのも大変、という配慮から、このような山のマナーができたようです。これも相手の立場になって考える、ですね!

デザイン思考によるアイデア創出のコミュニケーション

 会社の中では、アイデア出しが求められる様々なシーンがあります。新しいサービス、製品の企画や、業務効率化、業務高度化に向けた業務改革など。どのようなことに取組むべきかを関連メンバーで検討します。会社の中だけでなく、お客様とも共創の形で一緒にどのようなことが実現できると嬉しいかを考える時もあります。

 こういった時の進め方に、デザイン思考を活用することも有効な手段です。従来のように、一部のメンバーがまず案を作って関係者にレビューするやり方とは違い、関連メンバーの全員参加型でアイデア出しを行います。1つのやり方を紹介します。事前に決めたファシリテーターが、打ち合わせを進行します。ファシリテーターは、進行がスムーズにいくように事前に準備をします。皆の前提知識が同じになるように事前に皆が知っておくべき情報を共有します。その上で、ファシリテーターは当日のワークショップに向けて準備をします。皆に事前に共有した情報をもとに、どのようなアイデアが出そうかを仮説設定します。具体的なアイデアの中身というより、アイデアのジャンル、カテゴリーを想定します。この準備をしておくことで、当日メンバーから出たアイデアをその場でグルーピングできます。整理するのが早い人は、必ずこういう準備をしています。または、事前に準備したカテゴリーを当日のワークショップで先に提示して、そのカテゴリーに該当するアイデアポストイットなどで貼ってもらう、という進め方もあります。こちらは、ある意味、誘導的ですが、うまく皆のアイデアをまとめていくコミュニケーションのやり方でもあります。やはり、コミュニケーションは事前準備が大切です。

デザイン思考をコミュニケーションに活かす:登場人物の関係性を整理する

 どのようなITシステムを開発するべきかを検討するとき、「デザイン思考」を活用する方法があります。デザイン思考は、2005年頃に米国スタンフォード大学で広く普及しました。それまでのITシステムの開発方法は、システムの要件定義をして、その要件を実現する機能を定義して詳細の設計に進んでいきます。どのようなシステムにすべきかイメージがあったので要件定義も行うことができました。システムを利用する人もある程度限られていました。ところがインターネットが普及し、企業と個人、企業と企業がつながり始め、様々な人が使うITシステムが求められるようになりました。利用者が増えると、誰向けにどのような機能を提供すればいいのか、誰と誰がどのような情報をやり取りするのが効率的なのか、等々、従来の何倍も考えなければならないことがでてきます。

 ここにデザイン思考が登場しました。登場人物の関係性をデザイン思考で描いていくのです。お絵描きするような感じです。登場人物と登場人物を線でつなげて、その線の上に、登場人物間でやり取りする情報を書きます。考えられる全ての登場人物をとにかく書いて、やり取りする情報でつなぎます。この段階ではITシステムのことは忘れて、とにかく人と情報を書いていきます。とにかく考えられる人と情報をあぶりだすので、1人ではなく、複数人でアイデアを出していく進め方がよいです。大きな紙にポストイットを貼って進めると手戻りがあったときにやりやすいです。

 この人と人の関係性を表すものは、ITシステムをどう作るかだけでなく、様々なシーンで活用できます。仕事の手順を示すマニュアル作りや、災害時の情報伝達の流れの可視化、新製品やサービスの開発、あらゆるところに活かせます。デザイン思考による登場人物の関係性整理をすると、人と人の関係性を考え抜くので、頭の整理になり、つまりは人に分かりやすく説明できるようになります。

プレゼンテーション練習の大切さ

 プレゼンテーションの練習は、どのくらい行うのがよいでしょうか。どのくらいというのは、時間ではなく、回数です。私は、ある時から、プレゼン資料の内容が固まってから5回程リハーサルするようになりました。プレゼン資料の内容を固める段階も、実際に話してみてみるようにしています。その回数も含めると、おそらく10回以上、事前に話すことを行なっています。プレゼン資料の内容を固める段階は、実際に声に出してみると、話しづらかったりすることがすぐ分かります。目だけで眺めているだけでは、そのように感じられません。話しづらい理由は、スライド間のつながりが悪かったり、伝えたいポイントが適切に表現されていなかったり、などです。それらを修正して、また声に出して話してみる、これを何回か繰り返します。こうすることで内容を固めます。固まってから、全体を通しで実際に話してみます。この段階では、どこを強調して話すか、資料には書いてない内容をどのように補足して話すか、例示をどのように話すか、話の切り替わりポイントなどどこで間を開けるか、などを気に留めながら練習します。

 このような事前準備をいつから始めたのか詳しい時期を覚えていません。少なくとも20代の頃は行っていませんでした。恥ずかしい話ですが、おそらく30歳台後半かもしれません...^_^ それまでは、練習することは話すことが得意でない人がやることだと考えていたように思います。今考えると本当に恥ずかしいです....。練習をしないと、一見、スムーズに話しているようでも聞き手に伝わる内容になりません。自己満足で話している感じでしょうか。20代の頃、友達の結婚式でもこれをやってしまいました。友達に申し訳ない!

 どんなプレゼンの場でも練習は必要です。練習すると自分の言いたいことが固まってきます。言いたいことが固まってくると、細かい伝え方に考えが及ぶようになります。伝え方に考えが及ぶと、聞き手に分かりやすくなります。自己満足ではなく、聞き手を考えるようになるのです。

 

仕事におけるコミュニケーションスキルとは

 私は、本屋さんが好きでよく行きます。ほぼ毎日といっていいくらい行きます。それだけ頻繁に行っていても中をぐるっと周ると新しい発見があります。だから楽しいのです。ビジネスや自己啓発のコーナーには様々なテーマの本が並んでいますが、最も多いのがコミュニケーションに関するものです。「魅力ある話し方」「雑談の仕方」「よい印象を与える伝え方」など。それだけコミュニケーションに悩みを持っている人が多いということなのでしょう。

 かくいう私もその1人です。サラリーマン人生かれこれ35年になりますが、振り返ると、仕事の中で常に相手にどのように自分の考えを伝えるようか、とずっと考えてきています。話をするシーンも様々です。日々の報告、課題の共有、解決策のディスカッション、企画内容の説明、会議の進め方の事前打ち合わせ、プレゼンなど、コミュニケーションする場面は多岐に渡ります。その場面ごとに、どのように伝えると最も自分の言いたいことが相手に伝わるかを考えてきました。

 世の中一般で、話がうまい人は?、と聞かれて思い浮かぶのは、落語家や漫才師でしょうか。これらの方々は人を笑わせるのが商売ですので、言葉を選ぶセンスが抜群です。そして話の間の取り方も上手です。あのように緊張もせず、臨機応変に上手に話すことができたらなぁ、と考える人も多いのではないでしょうか。笑いもとれて場も和むしいいなぁ、と。でも、一般の企業や団体での人と人のコミュニケーションの場は、落語家や漫才師のように壇上で観客に話をするシーンはほぼありません。ましてや身一つでなど。そうです。身一つで話す、という場面はあまり考える必要がありません。どういう方法をとろうとも、相手に自分の言いたいことが伝わればいいのです。壇上で観客に話をするシーンは、会社の商品・サービスの紹介などのプレゼンテーションがあります。でも、漫才師のように、しゃべりだけで説明しなくていいのです。むしろ、しゃべりだけだと自社の商品・サービスの特長はうまく伝えることができません。話とスライド、そして場合によっては商品自体を観客に提示して説明します。iPhoneを開発した米アップル社の創業者スティーブジョブスはプレゼンテーションの天才と言われました。ジョブスは、商品発表のプレゼンテーションに万全の準備をして臨んだと言われています。自身の登場の仕方、映し出すスライドの内容、そして商品の提示方法(ポケットから、すっと取り出して、こんなところに入れられるぐらい小さい、という印象を観客に与えていました。)のリハーサルを何回も繰り返して臨んだそうです。

 私自身の数十年のサラリーマン生活から、仕事の場のコミュニケーションは、「考え方」「話し方」「資料」のトライアングルで構成されると考えています。話すのが抜群にうまくても「考え方」が人に伝わるものでなければNGですし、考え方がすばらしくてもそれが資料にうまく反映されていないと人には伝わりません。また考え方とそれに合致する資料が準備されても話し方がそこに合っていないと聞き手の理解を得られません。記憶にも残りません。逆に言うと、3つのうちどれかが突出して上手でなくても、バランスがとれていると相手に伝わります。コミュニケーションがうまく進んでいきます。

話す時の「間」について

 コミュニケーションにおいて「間」が大事です。それも適切な「間」です。適切な間ってどのくらいの時間なのでしょうか?特に決まったものはなく、コミュニケーションの場面によって異なります。ラジオでは、5秒以上の沈黙があると放送事故とみなされると聞いたことがあります。でもこれは相手の姿が見えない状況ですので、通常のコミュニケーションのシーンとは異なりますね。仕事で社内の関係者やお客様に話をする時も、1対1のシーンなのか、1対数人なのか、または、講演などのような1対多なのかによっても異なります。また、話をするテーマについての相手の理解度によっても「間」を変える必要があります。

 そもそも何故「間」が必要なのでしょうか?自身を聞く立場に置いてみた場合、「間」がないと次のような印象を持つことがあると思います。「そんなに一気に話されても理解が追い付かない。」「この人は自分の話したいことだけを一方的に話す人だ。」「まくしたてて話すことで自分を煙に巻こうとしているのではないか。」「もう少し落ち着いて話して欲しい。」「本当に人に分かってもらおうと思って話しているのか?」などでしょうか。逆に、「間」をとらない話す側の人は、「変に間をあけると、話す内容に自信がないと思われるのではないか?」「話している内容をちゃんと覚えていないのではないか?(思い出しながら話しているではないか?)」「話すことが得意ではないと思われるのではないか?」などと考えがちです。こうやってみると、話す側と聞く側で、真逆とまではいわなくても、ほぼそれに近い認識のギャップがあることが分かります。コミュニケーションは、やはり、相手(聞く側)の立場にたって考えて話すと間違いがありません。例えば、話題が切り替わるタイミングでは、「ここからは違う話ですよ。」ということを伝えるために「間」をあけることが有効です。また、「しかし」「ところが」のような逆説的なことを伝える時も「間」が効果的です。これも話の切り替わりだからです。聞き手にとって難しい話題や説明と思われる時も、適切な場で「間」をとるとよいです。相手の反応を感じることができます。1対1で話しをする場合は、特に一方的に話をしてはいけません。そもそも一方的に話をするのであれば、メール送付か、紙で渡して「後で見ておいてくださいね。」でいいのです。これはコミュニケーションではありませんが・・・。1対1や1対数人では、適切な話の区切りや、相手の反応を細かく観察することで、「間」をとらなければなりません。

 尚、相手の意見や考えを引き出したいコミュニケーション場面では、そもそもあまり自身が話さない方がようにもっていくべきで、こちらは、また別のテーマでブログで書きたいと思います。

課題管理とコミュニケーション

 ITシステム開発のマネジメントにおいて、スケジュール管理と並んで大事なものとして課題管理があります。システム開発プロジェクトが進んでいくにつれて様々な課題が発生します。課題管理表の形で一覧として整理して、プロジェクトメンバ間で共有します。今、どのような課題が存在しているのか、いつまでに解決する必要があるのか、課題を解決するのは誰かなどを可視化・共有します。スケジュール管理と課題管理は隣り合わせで管理されることが多いです。スケジュール通りに進捗していない場合、そこには課題があるからです。その課題を解決しないと、スケジュールが進捗していきません。課題を記載する粒度も大事です。大まかすぎる課題は、メンバ間で共有する時に認識が正しく共有されない可能性があります。また、あまりに大きな課題にしてしまうと解決するまでに時間がかかってしまいます。そうするとその大きな課題の中で、一部は進捗しているのに、設定した課題としては未解決、というステータスになります。解決した課題はクローズして残りの課題に注力する、ということがメンバ間で共有されにくくなります。一方で、あまりに細かい課題設定は、課題を記載することが主たる業務になってしまい、課題管理に日々の業務が振り回されることになります。例えば、「会議を設定する」「Aさんと打ち合わせを調整する」などの細かいタスクを課題にしてしまうような場合です。

 課題管理は、コミュニケーションを円滑に進めることに非常に寄与します。課題として書かれる内容がほぼ5W1Hを含んでいるためです。誰が(Who)、なぜ(Why)、何を(What)、どのように(How)、どの場で(Where)、いつまでに(When)を明確にすることで皆が課題を正しく認識できます。課題管理をうまく設定できる人は、話も分かりやすいのです。話をうまく相手に伝えられないという人は、課題管理を自分で作ると良いと思います。自身の考えの整理のために課題管理を作るのもコミュニケーションの準備として有効です。または、作った課題管理をコミュニケーションする相手と共有しながら話をするのもいいでしょう。相手は、あなたが伝えようとしている内容を理解しやすくなります。また、相手も質問しやすくなります。仕事におけるコミュニケーションは、必ずしも言葉だけで伝える必要はありません。適切な資料と適切な言葉、そして考え方、これらを組み合わせて伝えることが大事です。ただ、ITシステム開発プロジェクトの課題管理表のように、いつも表形式にして作る必要はありません。コミュニケーションの場に応じて、課題管理のアウトプットイメージは柔軟に変えていっていいのです。