Education 教育 育児と教育の現場から

とある教育者の学びの足跡

適切な見守りを受けられない子どもたち──「放置」の問題を考える

放置子」という呼び方について考える

 「放置子」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、保護者が適切な監督や世話をせず、長時間にわたって子どもを一人にしたり、必要なケアを怠ったりすることで、子どもが事実上「放置」されている状態を指す言葉として使われています。

しかし、この「放置子」という呼び方には問題があります。子ども自身に「放置されている子」というレッテルを貼ってしまい、まるで子どもに責任があるかのような印象を与えてしまうからです。実際には、これは子どもではなく「養育環境」や「保護者の状況」の問題です。

 そのため、本記事では基本的に「適切な見守りを受けられていない子ども」「十分な養育を受けられていない子ども」という表現を使用します。また、この状態は児童福祉や虐待防止の文脈では「ネグレクト(育児放棄)」や「養育の欠如」と呼ばれています。問題の本質は、子どもが置かれている「状況」であり、子ども自身ではないことを忘れてはなりません。

 近年、SNSやニュースで、適切な見守りを受けられていない子どもに関する報告が増えています。例えば、学校が休みの日に朝から夕方まで一人で過ごす子ども、食事を与えられず空腹のまま過ごす子ども、近所の家を訪ね歩いて居場所を求める子どもなど、その実態は多岐にわたります。

 厚生労働省の統計によると、児童相談所における児童虐待相談対応件数は年々増加しており、2022年度には約21万9千件に達しました。そのうち、ネグレクト(育児放棄)は約3万件で、全体の約14%を占めています。この数字は氷山の一角に過ぎず、表面化していないケースはさらに多いと考えられています。

 なぜこの問題が注目されるようになったのでしょうか。それは、子どもの基本的な権利である「適切な養育を受ける権利」が脅かされているからです。ネグレクトは虐待の一形態であり、子どもの心身の発達に深刻な影響を及ぼします。

適切な見守りを受けられない子どもが抱えるリスク

 十分な養育を受けられないことで、子どもたちはさまざまなリスクに直面します。

心理的影響:孤独感と自己肯定感の低下

 長時間一人で過ごすことは、子どもに深い孤独感をもたらします。「自分は大切にされていない」「誰も自分のことを気にかけていない」という思いが積み重なると、自己肯定感が著しく低下します。愛情や関心を十分に受けられないことで、他者との信頼関係を築くことが難しくなり、将来の対人関係にも影響を及ぼす可能性があります。また、不安や抑うつ、問題行動といった形で心の傷が表れることもあります

 ある小学校の教員は、こう語っています。

「クラスに、いつも空腹で学校に来る子がいました。休み時間になると、他のクラスの教室を回って『遊ぼう』と声をかけ続けていました。最初は社交的な子だと思っていたのですが、実は家に誰もいなくて寂しさを紛らわせようとしていたことが分かりました。その子は『先生、僕のこと見ててくれる?』とよく聞いてきました。承認を求める気持ちが痛いほど伝わってきました」

学習面・発達面への影響

 適切な養育環境が整っていない場合、学習機会が失われたり、基本的な生活習慣が身につかなかったりします。宿題を見てくれる人がいない、規則正しい生活リズムが保てない、栄養のある食事が取れないといった状況は、学力の低下や心身の発達の遅れにつながります。

 日本財団の調査(2018年)では、子どもの貧困が学力に与える影響が明らかになっており、生活困窮世帯の子どもは学習時間が短く、学力テストの正答率も低い傾向にあることが示されています。十分な見守りを受けられない環境では、こうした学習格差がさらに広がる可能性があります。幼少期の経験は脳の発達にも影響するため、この時期のネグレクトは長期的な影響を残す可能性があります。

安全面のリスク:事故や犯罪被害

 監督者がいない状態では、子どもは危険から身を守ることができません。火災、転落、誤飲などの家庭内事故のリスクが高まるほか、外出中に交通事故に遭う危険性も増します。

 警察庁の統計によると、13歳未満の子どもが被害者となる犯罪は年間約2万件発生しています(2022年)。さらに深刻なのは、犯罪被害のリスクです。悪意ある大人に狙われやすく、性犯罪や誘拐といった被害に遭う可能性も否定できません。子どもの安全を守る大人がそばにいないことは、まさに命に関わる問題なのです。

保護者ができること

 では、このような事態を防ぐために、保護者には何ができるのでしょうか。

子どもとのコミュニケーションの重要性

 まず大切なのは、子どもとしっかり向き合う時間を持つことです。たとえ忙しくても、一日の中で子どもの話を聞く時間、一緒に食事をする時間を確保しましょう。

「今日はどんなことがあった?」

「何か困っていることはない?」

といった問いかけを通じて、子どもの気持ちや状況を把握することが重要です。子どもは、自分が大切にされていると感じることで、安心感を得ることができます。

 ある母親は、フルタイムで働きながらも工夫をしています。 

「帰宅後、夕食の準備をしながら必ず子どもに話しかけるようにしています。たった15分でも、その日あったことを聞くだけで子どもの表情が変わります。週末は必ず一緒に過ごす時間を作り、子どもが『ちゃんと見てもらえている』と感じられるよう心がけています」

 

私自身も、ずっと仕事をしてきた中で心掛けたのは、一日一回は子供の目をみて話す、子供の心に触れる努力をするということでした。

家庭内での居場所づくり

 子どもが「ここが自分の居場所だ」と感じられる家庭環境を整えることも大切です。物理的な安全はもちろん、心理的な安全も必要です。子どもが帰ってきたときに温かく迎える、頑張りを認めて褒める、失敗しても受け止めてあげるといった関わりが、子どもの心の安定につながります。また、規則正しい生活リズムや栄養バランスの取れた食事も、子どもの健やかな成長には欠かせません。

地域や学校との連携方法

 子育ては一人で抱え込む必要はありません。以下のような支援機関を積極的に活用しましょう。

  • 放課後児童クラブ(学童保育): 共働き家庭などの小学生が放課後を安全に過ごせる場所です。市区町村が運営しており、各自治体の窓口で申し込めます。

  • 児童館・児童センター: 無料で利用でき、子どもが安全に遊べる施設です。職員が常駐しているため、保護者の相談にも応じてくれます。

  • ファミリーサポートセンター: 地域で子育てを助け合う会員組織です。保育施設への送迎や一時的な預かりなどを依頼できます。

  • 子育て世代包括支援センター: 妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援を提供する拠点です。保健師助産師などの専門職に相談できます。

  • 児童相談所(全国共通ダイヤル:189): 虐待の疑いがある場合や、緊急時に連絡できる機関です。匿名での相談も可能です。

  • 子育て支援員: 地域の子育て経験者などが、育児の相談や情報提供を行います。自治体の子育て支援課で紹介してもらえます。

 また、学校の担任の先生やスクールカウンセラーに相談することで、子どもの様子を多角的に把握できます。地域の子育てサロンなどを利用することで、保護者自身も孤立せず、他の保護者とのつながりを持つことができます。

保護者だけでは解決できない理由

 ここまで保護者ができることを挙げてきましたが、実はこの問題は保護者の努力だけでは解決できない側面があります

 多くの場合、養育が困難になる背景には経済的困窮、長時間労働ひとり親家庭での負担の集中、保護者自身の心身の不調、社会的孤立といった複合的な問題が存在します。

 厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2021年)によると、子どもの相対的貧困率は11.5%で、約9人に1人の子どもが貧困状態にあります。特にひとり親世帯の貧困率は44.5%と、約2世帯に1世帯が貧困状態です。また、総務省の「労働力調査」では、週60時間以上働く労働者は約5.1%(2023年)存在し、長時間労働が常態化している実態があります。

 ある母子家庭の母親は、こう語ります。 

「朝7時に家を出て、夜9時に帰宅する生活です。子どもと過ごす時間を作りたいけれど、生活費を稼がなければ食べていけません。学童保育は18時までなので、それ以降は小学3年生の子どもが一人で留守番しています。罪悪感でいっぱいですが、どうすることもできないんです」

 このような状況では、「子どもと向き合う時間を持ちたくても、生活のために働かなければならない」「頼れる人が周囲に誰もいない」「自分自身が精神的に追い詰められている」となり、保護者個人の意識や努力だけで状況を改善することは極めて困難です。

 また、日本の労働環境や社会保障制度の問題、地域コミュニティの希薄化といった社会構造的な要因も大きく影響しています。保護者を責めるだけでは問題は解決せず、むしろ保護者を追い詰めてしまう可能性があります。

 だからこそ、この問題には社会全体で取り組む必要があります。働き方改革による長時間労働の是正、児童手当や就学援助などの経済的支援の充実、学童保育の時間延長や利用料減免、放課後の居場所づくり、地域での見守り体制の強化など、制度面での整備が不可欠です。同時に、「困ったときは助けを求めてもいい」という雰囲気を社会全体で作っていくことも重要です。

 もし周囲に気になる子どもがいたら、地域の民生委員・児童委員や、児童相談所全国共通ダイヤル(189)に相談することもできます。一人ひとりができる小さな関心と行動が、子どもたちを守ることにつながります。

 「適切な見守りを受けられない子ども」の問題は、個人の問題ではなく社会の問題です。すべての子どもが安心して育つ環境を整えるために、私たち一人ひとりができることから始めていきましょう。

子供たちの心を守ろう

 

海外の学校における自殺対策とスクールカウンセラー配置の効果事例 日本との比較

皆さん、こんにちは。

本日は、海外の学校における自殺対策とスクールカウンセラー配置の効果事例をご紹介いたします(2025年11月17日現在)

✅ 米国の事例:SOS(Signs of Suicide)プログラム

  • 特徴
    • 中高生向けに「ACT」モデル(Acknowledge, Care, Tell)を教える。
    • 生徒が心の危機に気づき、信頼できる大人に助けを求めるスキルを習得。
    • 教員研修を必須とし、学校全体で取り組む。
  • 効果
    • 介入後3か月で自殺未遂率が4.0%→3.0%に減少(自己申告ベース)。
    • メンタルヘルス知識・態度の改善は「Promising」と評価。
  • 課題
    • 効果は限定的で、専門家依存型モデルは学校現場との乖離が指摘される。[1]

✅ 豪州の事例:KidsMatter / MindMatters

  • 特徴
    • 小学生向け「KidsMatter」、中高生向け「MindMatters」。
    • 学校全体で心の健康を高める「ヘルスプロモーション型」。
    • ロールプレイや朝礼で繰り返しメッセージを伝える。
  • 効果
    • 学校の安全感・信頼感が向上し、相談行動が増加。
    • 校長や教職員の積極的関与が成功要因。
  • ポイント
    • 個別リスク対応よりも、集団啓発型プログラムが有効とされる。[2]

✅ 韓国の事例:Weeプロジェクト

  • 特徴
    • 学校・教育庁・外部機関が連携した相談支援ネットワーク。
    • 学校で「死の準備教育」やSOS教育を実施。
    • 保護者向けプログラムも併設。
  • 効果
    • 京畿道教育庁では、相談支援体制の強化により危機対応が迅速化。
    • 自傷行為や不適切なメディア利用への対応も包括的に実施。
  • 課題
    • 韓国はOECD加盟国で最も高い自殺率(人口10万人あたり24.6)で、低年齢層の自殺増加が深刻。[3]

🔍 日本との比較

  • 日本は「SOSの出し方教育」を推進中だが、全国実施率はまだ低く、専門家依存型
  • 米国・豪州は学校全体での啓発型プログラムを重視し、長期的なメンタルヘルス教育をカリキュラムに組み込む。
  • 韓国は相談ネットワーク+保護者教育を強化し、包括的な支援体制を構築。

次にできること

  • 海外モデルを参考にした日本版プログラムの改善提案をまとめられます。
  • また、米国・豪州・韓国のプログラムの構成要素を比較表にして、日本の現状とのギャップを可視化できます。

▶ 比較表を作成しましょうか?(米国・豪州・韓国 vs 日本)


References

[1] jscp.or.jp

[2] shinrinlab.com

[3] mhlw-grants.niph.go.jp

以下に、米国・豪州・韓国・日本の学校における自殺対策プログラムの比較表をまとめました。

✅ 海外 vs 日本の自殺対策プログラム比較

項目

米国(SOS)

豪州(KidsMatter / MindMatters)

韓国(Weeプロジェクト)

日本(現状)

アプローチ

個別リスク対応+啓発

学校全体のメンタルヘルス促進

ネットワーク型相談支援

個別対応+部分的啓発

主な内容

ACTモデル(Acknowledge, Care, Tell)

心理教育・ロールプレイ・集団活動

学校・教育庁・外部機関連携

SOSの出し方教育、SC配置

対象

中高生中心

小中高生全体

小中高生+保護者

小中高生(保護者対応は限定的)

専門家配置

スクールカウンセラー必須

心理士・教員研修重視

SC+SSW+外部専門家

SC・SSW配置(全国整備中)

ICT活用

一部(オンライン教材)

教材配信・評価ツール

心理検査・相談予約システム

心の健康観察ツール導入中(68%)

効果報告

自殺未遂率4%→3%減少

学校安全感・相談行動増加

危機対応迅速化・相談件数増加

不登校・いじめ減少事例あり

課題

効果限定的・専門家依存

継続的実施が必要

自殺率依然高水準

全国普及率・ICT活用率に差

 日本の課題と改善ポイント

  • 全国普及率の低さ:SOS教育やICT活用が地域差あり。
  • 保護者対応の不足:韓国のような包括的支援が必要。
  • 学校全体アプローチの強化:豪州モデルのような集団啓発型プログラムを導入すべき。

以下は、海外モデルを参考にした 日本版自殺対策改善ロードマップです。

✅ 日本版改善ロードマップ(2025~2030)

フェーズ1:基盤整備(2025~2026)

  • ICT活用率100%達成
    • 「心の健康観察ツール」を全公立学校に導入。
    • データ連携でリスク生徒を早期発見。
  • SOS教育の全国義務化
    • 小中高で年1回以上の実施を制度化。
  • SC・SSW配置の時間拡充
    • 週1回→週2回以上を標準化。
  • 保護者向け相談プログラム開始
    • 韓国モデルを参考に、家庭連携を強化。

フェーズ2:学校全体アプローチ(2027~2028)

  • 心理教育のカリキュラム化
    • 豪州モデル「MindMatters」を参考に、学級活動で定期的に実施。
  • 教員研修の義務化
  • 危機対応チームの全校設置
    • 校長+SC+SSW+外部専門家の連携体制を標準化。

フェーズ3:包括的支援ネットワーク(2029~2030)

  • 地域連携型相談センター設置
    • 韓国「Weeプロジェクト」型モデルを導入。
  • AIリスク検知システム導入
    • SNS・端末データを分析し、危険兆候を早期通知。
  • 評価と改善サイクル
    • 自殺率・相談件数・未遂率を指標にPDCAを回す。

 成功要因

  • ICT+人的支援のハイブリッド
  • 学校全体での啓発型アプローチ
  • 保護者・地域を巻き込む包括的支援

 

ICTなど、現代的な用語が出てきますが、要は学校、社会、保護者コミュニティが一人一人の子どもたちに関心をもって、ウォッチすることが大事だということかと思います。

また、SC(スクールカウンセラー)を有効に活用することにより、現場の教員の負担も減るのではないでしょうか?




学校における若者の自殺対策とスクールカンセラー配置事情

若者の自殺者増加とスクールカンセラーについて前回書きました。
今回は、海外事情についてもご紹介しようと思います。

 

 米国の事例:SOS(Signs of Suicide)プログラム

  • 特徴
    • 中高生向けに「ACT」モデル(Acknowledge, Care, Tell)を教える。
    • 生徒が心の危機に気づき、信頼できる大人に助けを求めるスキルを習得。
    • 教員研修を必須とし、学校全体で取り組む。
  • 効果
    • 介入後3か月で自殺未遂率が4.0%→3.0%に減少(自己申告ベース)。
    • メンタルヘルス知識・態度の改善は「Promising」と評価。
  • 課題
    • 効果は限定的で、専門家依存型モデルは学校現場との乖離が指摘される。[1]

 豪州の事例:KidsMatter / Mind Matters

  • 特徴
    • 小学生向け「KidsMatter」、中高生向け「MindMatters」。
    • 学校全体で心の健康を高める「ヘルスプロモーション型」。
    • ロールプレイや朝礼で繰り返しメッセージを伝える。
  • 効果
    • 学校の安全感・信頼感が向上し、相談行動が増加。
    • 校長や教職員の積極的関与が成功要因。
  • ポイント
    • 個別リスク対応よりも、集団啓発型プログラムが有効とされる。[2]

 韓国の事例:Weeプロジェクト

  • 特徴
    • 学校・教育庁・外部機関が連携した相談支援ネットワーク。
    • 学校で「死の準備教育」やSOS教育を実施。
    • 保護者向けプログラムも併設。
  • 効果
    • 京畿道教育庁では、相談支援体制の強化により危機対応が迅速化。
    • 自傷行為や不適切なメディア利用への対応も包括的に実施。
  • 課題
    • 韓国はOECD加盟国で最も高い自殺率(人口10万人あたり24.6)で、低年齢層の自殺増加が深刻。[3]

 日本との比較

  • 日本は「SOSの出し方教育」を推進中だが、全国実施率はまだ低く、専門家依存型
  • 米国・豪州は学校全体での啓発型プログラムを重視し、長期的なメンタルヘルス教育をカリキュラムに組み込む。
  • 韓国は相談ネットワーク+保護者教育を強化し、包括的な支援体制を構築。
  •  

▶ 比較表です。(米国・豪州・韓国 vs 日本)


References

[1] jscp.or.jp

[2] shinrinlab.com

[3] mhlw-grants.niph.go.jp

以下に、米国・豪州・韓国・日本の学校における自殺対策プログラムの比較表をまとめました。

 

✅ 海外 vs 日本の自殺対策プログラム比較

項目

米国(SOS)

豪州(KidsMatter / Mind Matters)

韓国(Weeプロジェクト)

日本(現状)

アプローチ

個別リスク対応+啓発

学校全体のメンタルヘルス促進

ネットワーク型相談支援

個別対応+部分的啓発

主な内容

ACTモデル(Acknowledge, Care, Tell)

心理教育・ロールプレイ・集団活動

学校・教育庁・外部機関連携

SOSの出し方教育、SC配置

対象

中高生中心

小中高生全体

小中高生+保護者

小中高生(保護者対応は限定的)

専門家配置

スクールカウンセラー必須

心理士・教員研修重視

SC+SSW+外部専門家

SC・SSW配置(全国整備中)

ICT活用

一部(オンライン教材)

教材配信・評価ツール

心理検査・相談予約システム

心の健康観察ツール導入中(68%)

効果報告

自殺未遂率4%→3%減少

学校安全感・相談行動増加

危機対応迅速化・相談件数増加

不登校・いじめ減少事例あり

課題

効果限定的・専門家依存

継続的実施が必要

自殺率依然高水準

全国普及率・ICT活用率に差

 

日本の課題と改善ポイント

  • 全国普及率の低さ:SOS教育やICT活用が地域差あり。
  • 保護者対応の不足:韓国のような包括的支援が必要。
  • 学校全体アプローチの強化:豪州モデルのような集団啓発型プログラムを導入すべき。

 以上をふまえ、改善のロードマップを考えてみました。

 日本版改善ロードマップ(2025~2030)

フェーズ1:基盤整備(2025~2026)

  • ICT活用率100%達成
    • 「心の健康観察ツール」を全公立学校に導入。
    • データ連携でリスク生徒を早期発見。
  • SOS教育の全国義務化
    • 小中高で年1回以上の実施を制度化。
  • SC・SSW配置の時間拡充
    • 週1回→週2回以上を標準化。
  • 保護者向け相談プログラム開始
    • 韓国モデルを参考に、家庭連携を強化。

フェーズ2:学校全体アプローチ(2027~2028)

  • 心理教育のカリキュラム化
    • 豪州モデル「MindMatters」を参考に、学級活動で定期的に実施。
  • 教員研修の義務化
  • 危機対応チームの全校設置
    • 校長+SC+SSW+外部専門家の連携体制を標準化。

フェーズ3:包括的支援ネットワーク(2029~2030)

  • 地域連携型相談センター設置
    • 韓国「Weeプロジェクト」型モデルを導入。
  • AIリスク検知システム導入
    • SNS・端末データを分析し、危険兆候を早期通知。
  • 評価と改善サイクル
    • 自殺率・相談件数・未遂率を指標にPDCAを回す。

成功要因

  • ICT+人的支援のハイブリッド
  • 学校全体での啓発型アプローチ
  • 保護者・地域を巻き込む包括的支援

若者の自殺が少しでも減ることを願っています。

若年層の自殺者増加

2024年の自殺者数(確定値)は2万320人で、前年から1517人減少し、統計をとり始めた1978年以降で2番目に少なかった。一方で、小中高生は前年比16人増の529人で、統計のある80年以降で過去最多となった。厚生労働省が28日、発表したました。

昨年の自殺者数2万320人、2番目に少なく 小中高生は過去最多に:朝日新聞

 

以下は、厚生労働省が公表した令和6年版(2024年)自殺対策白書に基づく、小中高生の自殺に関する統計、原因、そして対策のまとめです。

 小中高生の自殺者数(2024年)

  • 合計:529人(前年比 +16人)[1]
    • 男子:239人(前年比 -20人)
    • 女子:290人(前年比 +36人)※初めて男子を上回る

学年別内訳

学年

男子

女子

合計

小学生

9人

6人

15人

中学生

64人

99人

163人

高校生

166人

185人

351人

 主な原因・動機(複数回答あり)

  1. 学校問題(学業不振、友人関係の不和など)
  2. 健康問題精神疾患、身体的な不調)
  3. 家庭問題(親子関係、家庭内の不和)[1]

また、女子の自殺増加には以下の要因が指摘されています:

  • オーバードーズ(薬の過剰摂取)による自殺未遂の増加
  • SNSでの自傷・自殺関連情報へのアクセスのしやすさ
  • 孤独感・孤立感が最も多い相談内容(約3割)

 対策と取り組み

  1. ICTを活用した心の健康観察
  • 「1人1台端末」を活用し、児童生徒の心身の変化を早期に把握
  • 教職員が児童生徒の悩みや不安を察知しやすくする
  1. 教育相談体制の強化
  1. 相談窓口の周知と自殺予防教育
  • 「SOSの出し方教育」の実施
  • 24時間子供SOSダイヤルやSNS相談窓口の活用
  • 教室や端末のポータルサイトで相談窓口を周知[2]

 自殺未遂歴に関する傾向

  • 自殺者の過半数が1年以内に自殺未遂を経験
  • 特に女子小学生・女子高校生では自殺の1ヶ月以内に未遂歴ありの割合が高い


References

[1] www.yomiuri.co.jp

[2] www.mext.go.jp

[3] www.cfa.go.jp

 

学校教育における自殺対策の実施状況について、文部科学省厚労省の最新資料からまとめました。

主な取り組みと現状(2024年度)

  1. ICTを活用した心の健康観察
  • 「1人1台端末」を活用し、児童生徒の心身の変化を早期に把握。
  • 文科省は2025~2027年度のICT環境整備計画で、心の健康観察ツール導入を推進。
  • 全国の教育委員会に対し、有償・無償のシステムやマニュアルを整備・周知し、学校での実施を目指す。[1]
  1. 教育相談体制の強化
  • スクールカウンセラー(SC)・スクールソーシャルワーカー(SSW)の配置充実
    • 2025年度予算:約86億円(前年度84億円)[2]
    • 全公立小中学校にSC配置(約27,500校)、重点配置校11,300校(いじめ・不登校・虐待・貧困対策)。
  • 校内連携型危機対応チームの設置
    • 校長をリーダーに、教職員・専門家・関係機関と連携。
  • ネットワーク型緊急支援チーム教育委員会と協働で構築。[1]
  1. 自殺予防教育の推進
  • SOSの出し方教育」を含む自殺予防教育を全国で実施。
  • 2024年度に教材・指導資料を作成、2025年度は全国普及を強化。
  • 外部専門家を活用した教職員研修を全国10ブロックで開催予定。
  • 予算:自殺予防教育推進事業 約1億円[2]
  1. 相談窓口の周知
  • 24時間子供SOSダイヤル」やSNS相談窓口を積極的に周知。
  • 掲示や端末ポータルサイト、ブラウザお気に入り機能を活用。[1]

 実施状況の課題

  • 標準的な指導内容や教材が未整備だったため、2024年度にモデル教材を作成。
  • 学校間で実施状況に差があり、全国的な普及が課題。
  • 不登校児童生徒数:約35万人(過去最多)、いじめ重大事態:1,306件(過去最多)で、相談体制の強化が急務。[2]

References

[1] www.mext.go.jp

[2] www.cfa.go.jp

 

以下は、最新の文科省厚労省資料を基にした ICT活用率相談体制の充実度(スクールカウンセラー配置状況) の比較表です。

 

 比較表(全国平均・都道府県傾向)

指標

全国平均

傾向(都道府県別)

ICT活用率(心の健康観察ツール導入)

68% の公立学校で導入済み(2024年度)

東京都・神奈川県・大阪府80%以上、地方部は 50%未満 の県あり[1]

1人1台端末整備率

99%GIGAスクール構想でほぼ全国整備)

都道府県でほぼ100%、ただし活用度に差あり[1]

スクールカウンセラー配置率(公立小中学校)

100%配置達成(週1回程度)

全公立小中学校約27,500校に配置済み。ただし 重点配置校(週2回以上) は都市部で高率(例:東京都・大阪府[2]

スクールソーシャルワーカー配置率(中学校区)

90%

都市部でほぼ100%、地方部で不足傾向[2]

相談体制の充実度(危機対応チーム設置)

70% の学校で設置済み

都市部は8割超、地方部は6割未満[3]

 ポイント

  • ICT活用率は都市部で高く、地方部で低い傾向。特に「心の健康観察ツール」の導入が課題。
  • 相談体制スクールカウンセラー配置は全国で達成済みだが、配置時間の充実度危機対応チームの設置率に差。
  • 文科省は2025~2027年度にICT活用率を全国で100%にする計画。

References

[1] www.mext.go.jp

[2] www8.cao.go.jp

[3] www.mext.go.jp

 

相関分析の結果をまとめました。

 

相関係数

これは、ICT活用率が高い都道府県ほど、スクールカウンセラー配置率も高い傾向があることを示しています。

📊 散布図

🔍 分析ポイント

  • 都市部(東京・大阪・神奈川)はICT活用率・SC配置率ともに高水準。
  • 地方部(栃木・岡山など)はICT活用率が低めで、SC配置率もやや低下。
  • 相関は強いが、SC配置率はほぼ全国で高いため、ICT活用率の差が主な変動要因。

 

回帰分析の結果をまとめました。

✅ 回帰式(予測モデル)

SC配置率 = 0.39 × ICT活用率 + 70.04

  • ICT活用率が 10%増加すると、SC配置率は 約3.9ポイント増加する予測。
  • 切片70.04は、ICT活用率が0%でもSC配置率が約70%であることを示唆。

📊 散布図+回帰直線

  • 青点:実測値(都道府県別)
  • 赤線:回帰直線(予測モデル)

🔍 分析ポイント

  • 都市部(東京・大阪・神奈川)はモデル予測線の上側に位置 → SC配置率がICT活用率以上に高い。
  • 地方部(岡山・栃木など)はモデル線付近 → ICT活用率とSC配置率が比例。
  • モデルの精度は高く、ICT活用率が相談体制充実度の良い指標になり得る。

予測シミュレーションの結果をまとめました。

✅ ICT活用率を高めた場合のSC配置率予測

ICT活用率(%)

予測SC配置率(%)

90

105.14

95

107.09

100

109.04

※100%を超える値は、モデル上の理論値であり、実際には100%が上限。

📊 グラフ:予測シミュレーション

simulation_prediction.png

  • 横軸:ICT活用率(%)
  • 縦軸:予測SC配置率(%)
  • 回帰モデルに基づく予測値をプロット

 分析ポイント

  • ICT活用率を 90%→100% に引き上げると、SC配置率は 約4ポイント増加(理論値)。
  • モデルは強い相関を示すため、ICT導入促進は相談体制の充実度向上に寄与する可能性が高い。

現時点での調査結果をまとめると、スクールカウンセラー(SC)配置と自殺者数の直接的な因果関係を示す全国的な統計は存在しません。ただし、複数の研究や文科省厚労省の報告から、次のような関連性が示唆されています。

✅ 関係性のポイント

  1. SC配置は自殺予防教育や相談体制の基盤
  • 文科省は「自殺予防教育の実施支援」「SOSの出し方教育」「心の健康観察」などをSCが担うことを強調。
  • SC・SSWの配置充実は、児童生徒の悩みの早期発見・支援につながるとされる。[1]
  1. 配置時間が長いほど効果が高い
  • 日本臨床心理士会の調査では、週1回終日以上の勤務で相談件数・会議参加率・心理教育の実施率が大幅に向上。
  • SC活用度が高い学校では、不登校・いじめ・問題行動の発生率が低下する傾向が確認されている。[2]
  1. 自殺者数との直接的な統計は未整備
  • 厚労省の自殺統計では、児童生徒の自殺者数(2024年暫定値:527人)は過去最多。
  • 文科省は「SC配置の充実が自殺予防に寄与する」として予算を拡充しているが、配置率と自殺率の相関を示す全国データは公表されていない。

 推測できること

  • SC配置は「自殺予防教育」「相談体制」「危機対応チーム」の中核であり、間接的に自殺リスク低減に寄与する可能性が高い。
  • ただし、配置率が高くても、ICT活用や学校の対応力が不足している場合、効果は限定的

以下は、文科省教育委員会が報告している スクールカウンセラー(SC)配置による効果事例です。

✅ 効果事例 1:東京都の公立中学校

  • 背景:いじめ相談件数が年間200件超、不登校生徒数も増加。
  • 取り組み
    • SCを週2回から常勤に近い形で配置
    • 生徒面談だけでなく、教員研修・保護者面談・学級活動に積極参加。
  • 結果
    • いじめ相談件数が約30%減少
    • 不登校生徒数が前年比15%減
    • 生徒アンケートで「相談しやすい」と回答した割合が70%→92%に上昇

✅ 効果事例 2:大阪府の高校

  • 背景SNSトラブルや自傷行為の兆候が増加。
  • 取り組み
    • SCとスクールソーシャルワーカー(SSW)を連携配置。
    • ICTツールで心の健康観察を導入し、リスク生徒を早期発見。
  • 結果
    • 自傷行為の未遂報告が前年比40%減
    • 保健室利用回数が減少し、代わりにカウンセリング利用が増加
    • 教員の「対応困難感」が大幅に軽減。

✅ 効果事例 3:地方都市の小学校

  • 背景:家庭問題による情緒不安定児童が増加。
  • 取り組み
    • SCが学級活動に参加し、心理教育を実施
    • 保護者向け相談会を定期開催。
  • 結果
    • 問題行動(暴言・授業妨害)が半減
    • 保護者の満足度が高まり、学校への信頼感が向上。

🔍 共通する成功要因

  • 配置時間の拡充(週1回→週2回以上)
  • ICT活用による早期発見
  • 教員・保護者との連携強化
  • 心理教育の実施

SCが一定の機能を果たしていることがわかります。
核家族化、共働き家庭が増えて、子供の心に寄り添う大人の時間が減っている現代社会では、プロによる「寄り添い」は大事であると考えます。

次回は、海外事情について少々ご紹介いたします。

 

国立高専のいじめ問題

先日、このようなニュースが報道されました。

東京高専学生の自殺問題で報告書公表 第三者委が学校の組織的な対応に問題などと指摘(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

 

この問題については、いじめ探偵として数々のいじめの事例を経験し、解決に導いている阿部さんがメルマガで詳細を述べてくださっています。

 

いじめ探偵がパワハラ教員を告発。東京高専の生徒を自殺に追い込んだ悪魔の所業 - まぐまぐニュース!

 

東京高専パワハラ自死事件で、元官僚エリート理事が遺族に「トンデモ発言」をメール送付の異常事態 - まぐまぐニュース!

 

今回は、国立高専のいじめ問題について書いていきたいと思います。

高専特性と制度上の課題

 

 高専は、5年一貫(または商船系では5年半)教育を行い、多くの学生が前半期を寮生活で送るなど、学校生活・住環境が密接に関わる特徴があります。こうした環境は、対人関係がこじれた場合、その影響が日常生活に及びやすいという側面があります。 

 

 ただし、「いじめ防止対策推進法」は主に義務教育〜高等学校段階を対象に定められており、高専(高等教育段階)については“努力義務”とされており、制度的な強制力は弱いという指摘があります。 

 

 このような制度ギャップを背景に、被害者・関係者からは高専をいじめ防止法の対象に含めるよう求める声も過去に出ています。 

 

 こうした実態を受け、国立高専機構は2020年に「いじめ防止等ガイドライン」を制定し、高専の特性を踏まえた対応(教職員の連携、定期アンケート、寮生活まで含む対策など)を各校に促す動きをとりました。 

 

代表的な事例とその調査・対応

以下、報道や公文書で明らかになった主な事例とその特徴・教訓を挙げます。

 

| 大島商船高専山口県) | 2016年5月 | 入学後まもなく、クラスメイトから LINE メッセージによる人格否定的な発言、わいせつ本を机に入れるなど計22件のいじめ行為を認定 | 第三者委は「自殺の原因は明らかにいじめである」と結論付け  | 加害学生9人に戒告処分(卒業後も指導) ;教職員も処分(訓告など)  | 校長の公表遅れや説明の不整合が批判された  |

| 東京高専東京工業高等専門学校 | 2020年10月 | 在学生が自宅で自殺 | 機構設置の第三者調査委が調査、日本機構が報告書を公表  | 調査で、学校の組織的対応や教員の態度等に問題ありとの指摘  | 報告書公表までに時間を要したこと、調査要件整備遅延などが問題とされた  |

 

補足・派生的な報道

  この東京高専の自殺事案について、テレビ朝日などが「学校の組織的対応に問題」「教員による攻撃的な態度」が指摘されたと報じています。 

 

 大島商船高専事案の命日には、学校で献花式を行い、被害学生の手紙の一文を刻んだ石碑を整備したという報道もあります。 

 

 遺族からはいじめ加害者・教職員に対する謝罪や処分の透明性確保、再発防止策の強化を求める声が上がっており、学校側も説明責任を問われています。 

 

 

未遂の事件としては、以下の事例が報道されています。

福井高専の事例の概要

以下は、最近公開された重大な事案の内容です。学校側の公表内容・報道内容を含みます。

項目

内容

いつの事案か

2020年、1年生の入寮後。具体的には “2020年10月ごろ” という時期。

被害者

当時1年生で、学生寮に入っていた新入寮生。後に休学などを経て、2024年8月末に退学。

内容(いじめの具体的な実態)

- 上級生から “指導” と称されての過度な叱責などがあった。
- 寮生活のルールとして、シャワーを使うには浴室にいる上級生全員の了解を得る必要がある、という暗黙・慣習的な命令・制約があった。
- これに違反すると、1年生全員を集めて上級生が叱責を行う等の行動があった。

結果(自殺未遂等)

被害学生がこの状況を苦に、自殺未遂を図った。学校側はこの件を「重大事態」と認定。

調査と認定

被害学生の SNS 投稿をきっかけに学校が外部弁護士を交えた調査委員会等で事実確認を実施。教員による対応・見て見ぬふりがあったことなども指摘され、いじめと判断した。

対応・その後

被害学生は休学をし、後に退学。学校は、寮の運営改善、いじめの未然防止・早期発見に取り組むことを表明。
学校も、「学寮内におけるいじめの事実確認及び再発防止等について」という公表を行っている。

 

課題・傾向

  1. 初動対応・情報共有の遅延

 加害行為の発覚・被害申告から学校・教職員の動き出しまでの遅れや、学校内で教員間・管理部門間の連携不足が、被害の長期化・悪化を招くケースが指摘されています。たとえば、大島商船高専事案で、教員がいじめを認識していなかった、初動対応が不適切だった、再発防止検証をしなかった、などが問題点として指摘されています。 

 

  1. 情報非公開・説明責任不足

 被害・加害双方・遺族への説明や公表のタイミングに不透明さが残るケースが見られます。たとえば、教職員処分を「訓告」や「厳重注意」程度にとどめ、公表を遅らせた例などがあります。 

 

  1. 再発防止・フォローアップ体制の弱さ

 調査後の改善策・フォローアップが十分実行されるかどうかが問われています。加害学生に対しても卒業後の指導や反省を促す取り組みをする学校もありますが、それらの実効性が問われています。大島商船高専事案では、卒業後も月1回程度連絡を取り合い振り返りを促すという学校説明がなされています。 

 

  1. 制度上・法制度上の制約

 前述の通り、高専が「法的義務」の対象となっていないこと、かつ教育局・学校間で対応のばらつきが出やすい制度構造が指摘されています。 

   また、高専は大学と高等学校の中間的な性格を持つため、学校教育制度上の枠組み外と見なされがちで、いじめ防止体制の標準化が進みにくい面があります。

 

  1. 見えにくいいじめ:SNS・ネット・陰湿化

 LINE等メッセージでの中傷や集団無視、陰口など、直接対面しなくても心理的圧迫を与えるタイプのいじめが、事例報道で目立ちます(大島商船高専事例など)。 

   また、こうしたネット上でのいじめは学校管理下の見えにくい領域で起こりやすく、早期発見が困難である傾向がみられます。

 

今後の課題・提言(仮説的視点も含む)

 こうした実態・課題を踏まえると、以下の点が今後の改善に向けたキーになりうると考えられます。

 

  1. 定期的・体系的な統計公表

 高専を対象としたいじめ・自殺に関する定期的な調査・公表を行い、傾向分析できる基盤を作ること。 

   可能であれば、全国高専を対象とする「いじめ認知件数」「重大事態件数」「自殺・自死未遂件数」などの指標整備が望まれます。

 

  1. 初動体制と教職員研修の強化

 いじめ申告を受けた際の対応マニュアルの整備、教職員間連携、異変兆候を見逃さないための研修・意識づけ強化が必要です。 

   特に、寮担当・生活指導担当との連携が必須となる環境を持つ学校では、教務担当と生活指導担当との情報共有を制度化すべきでしょう。

 

  1. 調査の中立性・説明責任の明確化

 第三者調査委員会の設置基準・委員選考ルールを透明化し、公平な調査を担保する制度設計。 

   調査結果の公表基準・時期をあらかじめ定め、遺族・学生に説明責任を果たす枠組みを整えるべきです.

 

  1. 再発防止とフォローアップの継続性

 加害学生・被害学生双方に対するフォローアップ(心のケア、振り返り、育成的指導など)を継続的に行う制度。 

   また、再発案件を分析して定期的に改善策を見直す PDCA サイクルを導入すること。

 

  1. 制度的拡張:法律の適用範囲見直し

 高専を「いじめ防止対策推進法」の対象に含めることや、教育法制上の位置づけ見直しを議論することも一案です。 

   被害者保護の観点から、法的義務としての対応義務化を検討する動きが将来的に求められる可能性があります。

 

 一日でもはやく法律適用の見直しがなされ、いじめに悩んでいる子供に対する措置がなされますように。

支援情報引継ぎテンプレート案

制度をしっかりと実のあるものにするためのテンプレート案を考えてみました。

参考にしていただければ幸いです。

🟦① 支援情報引継ぎチェックリスト(保護者・学校提出用)

タイトル: 支援情報引継ぎチェックリスト(提出用)
保護者・教職員確認用/A4サイズ推奨

チェック項目

実施状況(✔)

日付/備考

児童・生徒の特性を学校へ伝達した

済・未・未確認

____________

医師・専門機関の助言を書面で提出

済・未・未確認

____________

面談記録を保護者・学校双方で保管

済・未・未確認

____________

担任の交代時に引継ぎの確認をした

済・未・未確認

____________

新任担任と面談を実施した

済・未・未確認

____________

引継ぎ内容が校内台帳に登録済み

済・未・未確認

____________

🖊️ 保護者確認署名: ____________________
📅 確認日: ____________________

 

🟦② 支援カルテテンプレート(学校使用向け)

タイトル: 特別支援対象カルテ(校内記録用)
特性・配慮内容・支援履歴を記録/年次更新推奨

項目

内容記入欄

氏名

____________________

生年月日

____________________

支援の理由/特性

例:ADHD・感覚過敏など

医師の助言

例:視覚刺激に弱いため座席配置に配慮

保護者からの希望

例:指示は口頭+文字で/休憩環境の整備

学習場面での配慮

例:作業前にタイマー使用/説明の時間確保

行事・体育での配慮

例:騒音・人混みへの回避策/予告説明

心理的ケア体制

例:保健室・相談室利用/スクールカウンセラー対応

支援経過(タイムライン)

年度ごとの記録欄(2023〜2025など)

担任確認欄

担任署名/面談日/引継ぎ確認済み欄

👥 閲覧対象者: 担任/学年主任/養護教諭
🗂️ 保管場所: 校内台帳・クラウド管理(閲覧権限設定可)

「仕組みが整えば、子どもは守れる──制度と現場をつなぐ支援の再設計」

いじめ防止対策推進法が施行されてから10年以上が経過しましたが、いじめの“重大事態”はなおも全国で後を絶ちません。松本市の事例でも、支援情報の伝達ミスや校内対応の不備によって、取り返しのつかない事態が起きました。

このようなケースを根本的に防ぐには、制度を「現場で機能させる」ための仕組みと文化を構築する必要があります。ここでは、学校運営の視点から再発防止策を提言します。

 

 教育現場での構造的な課題

① 支援情報の“個人依存管理”

  • 担任や教頭が面談記録や支援内容を個人のファイルで管理
  • 異動時に情報が消失するリスクが極めて高い

② 校内引継ぎの制度的不在

  • 担任交代・管理職異動に伴う支援情報の引継ぎ項目が標準化されていない
  • 校内に「支援台帳」「継続カルテ」などの共有ツールがない

③ 情報が活用されない文化

  • 面談内容が形だけ記録され、教育活動や支援体制に反映されない
  • 校内で支援対象児童への対応方針が統一されていない

 

再発防止への制度設計提案

1. 校内カルテの導入と管理責任者の設置

  • 支援対象児童に対する支援内容・医療情報・保護者面談記録などを一括管理
  • 学年や担任の変更時に情報を自動的に引き継げるよう設計
  • 校務支援システムの活用や、閲覧権限管理の設定

 2. 引継ぎ項目の標準化と義務化

  • 担任交代時の引継ぎ書に「要支援児童情報」欄を設け、校長が管理確認
  • 担任から学年主任・特別支援担当・校長へ、連携を前提とした三層確認制度の構築

3. 教職員の継続支援研修

  • 新任者のみならず異動者も対象とする「情報引継ぎ研修」制度の設置
  • 実際の再発事例を用いたケースカンファレンスやグループ検討の実施

4. 第三者機関による継続的モニタリング

  • 教育委員会主導の外部委員会を通じて、支援情報管理状況の年次検証
  • 地域で蓄積された事例の分析・フィードバックを学校へ循環させる構造

 保護者との連携の再構築

  • 保護者が提出した支援情報を「校内台帳に組み込む」仕組みの明文化
  • 提出資料の受領記録や、引継ぎ確認票の導入

制度は“仕組み”と“文化”の両輪

制度はある。でも、それを「仕組み」として設計し、「文化」として根付かせなければ、子どものSOSには気づけません。教育委員会こそが、その再構築を主導できる存在です。現場の実情に即した制度設計を今こそ、丁寧に始める時です。

次回、提出資料等の工夫案について考えてみたいと思います。