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【噂の新店】「オパラン」
「親しき友人とテーブルを囲むことがかけがえのない時間」。フレンチの巨匠であるポール・ボキューズ氏のこの言葉を体現したお店が2025年10月6日、恵比寿に誕生した。「メゾン ポール・ボキューズ」で長年料理長を務めたシェフと、マダムが二人三脚で切り盛りする「opaline(オパラン)」だ。

料理長の入砂俊重さんは、専門学校卒業後に都内のフランス料理店「La Chance」で6〜7年間修業を積み、2000年にヨーロッパへ。スイス・ジュネーブで経験を積む。翌2001年からはフランスへ移り、ブルターニュの一つ星レストラン「Le Temps de vivre」、パリの二つ星レストラン「Le Divellec」、同じく二つ星の「Caurchevel Le Chabichou」、三つ星レストラン「Lucas-Carton」など、名だたる星付きレストランで腕を磨いた。

帰国後は、2003年に古巣の「La Chance」に一時戻った後「銀座レカン」に入店。わずか半年でスーシェフに就任し、3年間務めた。その後、ポール・ボキューズ氏との提携を控えていた株式会社ひらまつへ、縁あって入社する。2007年、国立新美術館内の「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」の立ち上げに参画。その後は「オーベルジュ・ド・リル トーキョー」や「レストランひらまつ」広尾本店などを経て、2016年に「メゾン ポール・ボキューズ」の料理長に就任。以来、約9年間にわたりグランメゾンの中核を担ってきた。

マダムの原田桂子さんは、1994年にひらまつ入社。ブライダルコンシェルジュとして約100件の婚礼を担当した後、2007年の「メゾン ポール・ボキューズ」のオープンと同時にマダムに就任。長きにわたりメゾンの顔として、温かく洗練されたもてなしを提供してきた。
クラシカルなフランス料理を、シェフの解釈で再構成した料理
店名の「opaline」は、宝石・オパールの色を意味するフランス語だ。オパールはシェフの誕生月である10月の誕生石。それだけでなく、シェフが18歳の頃、ワーキングホリデーで訪れたオーストラリアでオパールを掘っていたという経験にも由来する。

「多彩で自由なあり方になぞらえ、特定の色にとらわれることなく、訪れる方に穏やかなひとときを提供したい」。名店のエスプリを受け継ぎつつ「居心地」「恩返し」「地域」をコンセプトに、コロナ禍を経て再認識された「集う時間」の価値を、シェフは日常に寄り添うフレンチで表現する。
料理はシェフが修業を始めた頃に憧れたクラシックなフランス料理を、現代のシェフの解釈で再構成。素材とフレンチの根幹であるソースとの調和を最優先している。
フルコースでも13,200円! 1~2カ月で内容が変わる旬のコース

コースは3種類。魚料理と肉料理の両方を楽しめる「menu a」13,200円と、魚か肉かを選べる「menu b」「menu c」各9,350円。「特別な日だけでなく、日常のひとときにも気軽にフレンチを楽しんでいただきたい」と手の届きやすい価格帯だ。

取材時の冷前菜は「カジキマグロの軽い燻製 シチリア産ピスタチオのクリーム」。軽く燻製して火入れしたメカジキを角切りし、下にはニンニクを利かせたドフィノワーズ風のジャガイモが敷かれている。味の決め手はエシャロットとセロリに、ほのかにガラムマサラを忍ばせたビネグレットソースと、シチリア産ピスタチオのふんわりとしたクリームだ。スモーキーさをまとったカジキマグロに、ガラムマサラのスパイシーさ、ピスタチオのナッティーでまろやかな甘み、そしてビネグレットの丸みを帯びた酸味が絶妙に調和する。

温前菜の「白レバーのフォンダン リードヴォーと栗」は、白レバーをプリンのようになめらかに仕上げた、温かいフォンダンだ。これに、高級食材として知られるリードヴォー(仔牛の胸腺)のムニエルを合わせている。

ソースはフランス産の栗を使い、甘やかなマデラソースで仕上げる。さらに国産の和栗を添えることで、後味を調整している。栗のまろやかさとレバーの濃厚さが一体となるところに、あえて青さ(苦み)を持つセルバチコを添えることで、全体の味わいを引き締めている。

この日の魚料理は「浜田港から届いた平目 ノワイリーソース ディルの香り」。魚介類は、長年付き合いのある豊洲の仲卸に加え、島根県・浜田港から直接仕入れることもあり、この平目も浜田港から直送されたものだ。平目はフュメ・ド・ポワソン(魚のブイヨン)をかけ、オーブンでふっくらと焼き上げている。

ソースは、プレミアムドライ・ヴェルモットの「ノイリー・プラット」を使った伝統的なソースだ。これはポール・ボキューズ氏もよく使っていたものだという。白ワイン4に対しヴェルモット6ほどの比率で煮詰め、バターとクリームでブールブラン(バターソース)のように乳化させ、ソースに艶と厚みを持たせている。香ばしくソテーしたマッシュルーム、食感を生むパンのチュイール、ディルの香りがなんとも華やかだ。

デザートには「洋なしのソルベとマスカルポーネのアイスクリーム」が用意され、最後のコーヒーとチョコレートも自家製だ。食後酒とも合うようアルマニャックを隠し味に入れており、カカオマス100%とミルクチョコ40%を1対4の比率でブレンドするなど、細部までこだわりが光る。
ワインのペアリングコースも3杯4,400円~とうれしい価格帯

ドリンクは、料理に合わせたペアリングコース(3杯 4,400円、4杯 6,600円)を展開。グラスシャンパーニュの「PHILIPPONNAT(フィリポナ)」はなんと1,980円、グラスの赤・白ワインは1,320円~とかなり手が届きやすい。
ボトルリストには、フランス・ブルゴーニュの「SEPTEMBRE(セプタンブル)」シリーズなど、シェフとマダムが選び抜いた銘柄が並ぶ。ノンアルコールも充実しており「シチリアレモンソーダ」や「エルダーフラワーソーダ」などが用意されている。

店内はペールブルーの皿や赤いソファが配され、温かみのある空間が広がる。現在はシェフとマダムの2人体制。「あまり宣伝せず、ゆっくりと知っていただきたい」とシェフは語るが、オープン直後から旧店舗時代の常連客や元同僚も訪れ、注目度は高い。予約は「ゼロの日がない」そう。
恵比寿の駅近という好立地で、名店で培われた確かな技術と温かなもてなしを、日常の価格で楽しめるのだから、予約が取りやすいのは今のうちかもしれない。
※価格はすべて税込、サービス料(10%)別


