
2025年10月、新国立劇場バレエ団による『シンデレラ』が上演されます。シンデレラ役として出演する柴山紗帆さんに、バレエならではの『シンデレラ』の特徴や見どころ、バレエ鑑賞初心者の方におすすめの見方を伺いました!

新国立劇場バレエ団限定のシンデレラ
『シンデレラ』は多くの人に親しまれている有名なお話ですが、よく知られているストーリーと今回のバレエのストーリーで違う部分はありますか?
基本的なストーリーは原作と同じです。ただ、新国立劇場で上演するバージョンは、シンデレラが舞踏会の前に変身するシーンの描かれ方が少し違うんです。魔法使いがカボチャを馬車に変えるのは同じなのですが、この時に動物たちが出てくるのではなく、春・夏・秋・冬の四季の妖精がいて、彼らがシンデレラの変身を導いてくれるという演出になっています。ここが、皆さんの知っているストーリーとは違うポイントですね。四季の精はそれぞれ舞台上で一人で踊る「ヴァリエーション」を披露します。ここでは、それぞれの季節を表現した踊りをぜひ楽しんでいただきたいです。
公演のホームページに書かれている、「日本では唯一、新国立劇場バレエ団だけが持つ貴重なレパートリー」とは、どういった意味なのでしょうか?
バレエは、1つのお話に対して、何人もの振付家が様々なバージョンの振りを作っていることが多くあります。新国立劇場バレエ団が上演している「シンデレラ」は、フレデリック・アシュトンというイギリスの巨匠が作ったバージョンになります。このバージョンは、英国ロイヤルバレエなどでも上演されていますが、日本だと私たち新国立劇場バレエ団のみ上演を許可されています。
そうなんですね。柴山さんはアシュトンの振り付けにはどのような特徴があると感じていらっしゃいますか?
過去に春の精を踊った時に印象的だったのが、手の使い方です。バレエは、中指を下げて、他の指を少し上げて、柔らかく見せることが多いのですが、アシュトン版は指を真っすぐ伸ばして、手のラインを真っすぐに見せるんです。こういった細かい決まり事が多い印象がありますね。あとは、音楽に対してのアプローチも細かいので、音楽性が際立つとても素敵な踊りになっていると思います。

セリフをイメージして、踊りに意味を持たせる
柴山さんは役を演じる上で、どんなことを意識しながら踊っていらっしゃいますか?
踊っている時にセリフをイメージするように心がけています。 バレエは言葉ではなく、踊りで全てを表現します。決められた振りを踊るだけではなくて、登場人物の気持ちを表現するために、その振りにどういう意味があるのか自分の中で整理して、もしセリフがあるとしたらどんな言葉を言うかをイメージしながら踊れたらと思っています。
この間(2025年6月)、『不思議の国のアリス』でハートの女王役を演じたのですが、役柄が難しくて悩んでいた時に、ゲストコーチやミストレス*1に「できるだけ英語でセリフを想像して踊るのが良い」とアドバイスを受けました。日本語は抑揚が強くないのに対して、英語だとアクセントが強いので、そういった言葉のリズムだけでも自分の体の表現が変わってきます。今後、もっと取り入れていきたいと思っています。踊り手として、しっかり思いが伝わる踊りをしていきたいです。
バレエ鑑賞に対して「セリフがない」ことにハードルを感じる方も多いと思います。観る側は、どんなところに注目すれば楽しみやすいでしょうか?
バレエは、オーケストラの音楽と踊り手の身体で表現していきます。踊りやダンサーの表情を見ていただくと、自然とキャラクターの喜怒哀楽を感じていただけると思います。また、セリフがないからこそ、自由に捉えられることもあります。「どういうふうに思っているんだろう」とセリフや思いを想像しながら観るのも面白いかもしれません。これといった観方はないので、あまり決めずに、自由に観て、楽しんでいただけたらと思います。劇場でしか味わえない空気感が確実にあるので、まずはその空気を楽しんでいただきたいです。

美しい音楽・舞台装置の中で輝くチャーミングなシンデレラ
誰もが憧れるプリンセスである『シンデレラ』を演じるにあたって、お気持ちをお聞かせください。
『シンデレラ』という物語自体に憧れがあるので、嬉しい気持ちが一番ですね。音楽もとっても豊かだし、舞台装置もすごく綺麗で。代々受け継がれてきた素敵なお衣裳を着られることもすごく楽しみです。
振付や演出によって、同じシンデレラというキャラクターも印象が変わってくるのですが、アシュトン版は、心優しく、チャーミングに描かれています。お姉さんたちに反対されながらも物乞いにパンをあげたり、舞踏会に行けずひとり家に残されても、箒をダンスのパートナーに見立てて楽しく踊ったり、とても可愛らしいけど、芯が強い女性だなと。また、同じアシュトン版であっても、演じる人によっても全然違ってくると思います。今回は公演ごとに異なる5人がシンデレラを演じますが、一人一人表現したい思いも異なるので、その違いも楽しんでいただけたらと思っています。
お稽古はまだ始まっていないとのことですが、2017年にも柴山さんは『シンデレラ』に出演されていましたね。その時の王子様役の渡邊峻郁さんと今回も共演されるとのことですがいかがですか?
私は、『シンデレラ』が全幕での主役デビューだったので、とても思い出深いです。今回久々にまたやらせていただけること、しかもまた峻郁さんと踊れるのがすごく嬉しいです。
峻郁さんは、海外のバレエ団でキャリアを積んでから新国立劇場にいらっしゃったので、前回の『シンデレラ』の時は、すごく助けてもらいました。とにかく優しくて、丁寧にコミュニケーションを取ってくださる方なので、安心感がありましたね。技術的なことから細かい表現のことまで、「じゃあ次はこうしてみようか」と丁寧に話しながら固めていった記憶があります。自分たちがしっくりくるものを先生に見ていただいて、意見を伺うというような流れで進めていける、心強い方です。
前回の柴山さんのシンデレラから8年を経て、どんな変化がありそうでしょうか?
前回とは確実に違うと思います。前回の公演の頃は経験が浅かった分、今思うと振りにかなり追われていた気がします。それから様々な作品を踊り経験を積んで、プリンシパルという立場にもなった今、視野も広がっていると思うので、他のキャラクターの方々との絡みも意識しながら、舞台を楽しめると嬉しいです。

お姉さん役を男性ダンサーが!?見どころがてんこ盛り
『シンデレラ』のお気に入りのシーンや注目してほしいシーンはありますか?
何だろう...素敵なシーンがいっぱいあるんですよね。まずはシンデレラと王子が二人で踊るパ・ド・ドゥ *2のことは、曲もロマンティックで、素敵な踊りなので大好きですし、一番最後の星の精たちのシーンもとても幻想的です。他には、変身して馬車に乗って舞踏会に行くシーンも見どころですね。あとは、これもアシュトン版の特徴ですが、シンデレラの二人のお姉様方を男性が踊ります。コメディーがたくさん詰まっているので、観ていて面白いと思います。
それは面白いですね!男性が、女性の役を演じるというのはバレエでは良くあることなのでしょうか?
イギリスの伝統的なパントマイムでは、男性が女性の役をユーモラスに演じることが多くあり、イギリスでつくられたバレエは、その流れを汲んで男性が女性役を演じる演出があったりするんです。『シンデレラ』についても、初演の時にはお姉さん役を振付家のアシュトンご自身が演じたそうです。男性たちが踊るパワフルなお姉さんも楽しみですね。
ロンドン公演後、パワーアップした新国立劇場バレエ団を観てほしい
今回の新国立劇場の『シンデレラ』はどんな特徴を持つ公演になりそうでしょうか?
7月のロンドンでの公演*3を経て、かなり気持ちが変わったので、今までと違う『シンデレラ』になるんじゃないかなと思っています。私から申し上げるのも恐れ多いですが、アーティストもスタッフもこれまで以上に進化した新国立劇場のバレエをお見せできるのではないかなと思います。
ロンドン公演はやはり大きなインパクトがあったんですね。公演を終えてみて、率直なご感想をお聞かせください。
国が違うとお客様の反応が全然雰囲気が違うんだなと思いました。数日間ではあったんですけど、イギリスの方々とコミュニケーションも取れて、文化の違いをとても強く感じました。新国立劇場での『ジゼル』公演からロンドン公演までに、ゲストコーチや監督から教わったことがたくさんあり、さらに深めることができたのも本当に貴重な機会だったなと思っています。バレエ団の他のメンバーも、マインドが変わる機会になったのではないかと。大きな公演をひとつ終えて、今回の『シンデレラ』もまた上り坂の途中の公演として頑張りたいです。
最後に、今回の公演を観てくださるバレエ初心者の方に向けて一言メッセージをお願いします!
「バレエは敷居が高いな」って思われる方もいらっしゃるかと思いますが、実は全くそんなことはないと思っています。ちょっとでも興味がある作品を、ぜひ気軽に観に来ていただきたいです。『シンデレラ』はバレエが初めての方でも親しんでいただきやすい作品だと思うので、ぜひ劇場でしか味わえない雰囲気を体験しに来てください。

プロフィール
柴山紗帆(しばやま さほ)
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| 公演名 | 新国立劇場バレエ団「シンデレラ」 |
|---|---|
| 日程 | 2025年10月17日(金)~10月26日(日) | 会場 | 新国立劇場 オペラパレス |
| Webサイト | シンデレラ | 新国立劇場 バレエ | お問い合わせ |
新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999(10:00~18:00/休館日を除き年中無休) |
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*1:ダンサーの技術指導や作品のリハーサルを担当する責任者
*2:男女二人の踊り手が披露するデュエット(二人組)の踊り
*3:新国立劇場バレエ団は、2025年7月24日〜27日に、英国ロイヤルオペラハウス(ロンドン)にてバレエ『ジゼル』を上演。全5公演のチケットは完売で、毎公演スタンディングオベーションと熱狂的な拍手に包まれた。現地主要メディアからも 5 つ星評価を獲得し、大成功に終わった。
