エピローグ オレたちは強い
【※本記事は『SLAM DUNK スラム ダンク』(井上雄彦)のエニアグラム分析に二次創作要素を加えたものです。すべての引用部分の著作権は、各著者に帰属します。
詳細は本連載 序 をご参照ください。】
インターハイ3回戦での敗戦をもって、赤木と木暮は予定通りバスケ部を引退した。
これから2月末までは受験勉強に全力投球だ。
努力家の彼らのことだ、きっと第一志望校の現役合格を勝ち取るに違いない。
一方、三井はインターハイの後も部に残ることを選んだ。
冬の選抜大会で神奈川代表の座を勝ち取って、そこでの活躍でスポーツ推薦を狙う。
「赤点軍団」の彼は、そちらの方が学力勝負よりも勝算がありそう、というわけだ。
新キャプテン・宮城リョータからは「目の上のたんこぶ」としてウザがられている。
とはいえ、それは仲良し兄弟のじゃれ合いのようなものだった。
きっと、兄・ソータが生きていた頃もリョータは家で似たようなことをしていたに違いない。
年の離れた姉一人しかいない三井は、弟のような後輩たちとの付き合いを存分に楽しんでいるようだ。
東京の祖母からもらった小遣いで、腹ペコ後輩たちに餃子やラーメンをおごってやる日もある。

大会の予戦が近付いてきた初秋のある日。
この日も湘北高校バスケ部は日暮れ過ぎまでみっちりと練習を行った。
三井と宮城はJR藤沢駅へと向かう。
金欠だからさっさと帰ろーぜ、ということで、恒例のポテト&コーラも今日はお預けだ。
帰宅ラッシュで混雑するホームで、東海道線の下り電車を待つ二人。
宮城は一駅先の辻堂、三井はそのまた先の茅ヶ崎で降りる。
「……オイ、辻堂駅の線路沿いにある『ブタメイボー(豚明坊)』って店、あれ何だ?」
「あれっすか。『ブタメイボー』じゃないっすよ。『トンメイファン』って読むんっす」
「トン……?何だそれ」
「トンカツ屋っす。うち、親の給料日に家族でロースカツ食べにあそこに行くんっすよ。二月に一度ぐらい」
「トンカツ、か……いいな。うまいか?」
「結構いけるっすよ。時々豚食いたくなるんっすよねー。オレ、沖縄育ちだから。……やべ、まじで腹減った」
宮城の目がしばし宙を泳いだ。揚げたてロースカツの肉汁が口中にジュワッ……。あの感覚を思い出したからだ。
「そっか……食ってみてーな。ほら、うち、そういう店行かねーから」
≪だよなー。三井サンちは行かねーよな……庶民的な店だし≫
前に木暮が話していた。
三井が住んでるあの辺は古くからの高級住宅地。社長とか医者とかの家がゴロゴロあるよ、と。
「……今度、練習の帰りに行くか?その、トンなんとか。」
「トンメイファン。」
「そ、トンメイファン。」
「いいっすよ。三井サンがおごってくれるなら」
「げっ、オレのおごりかよ!」
文句を言いながらも三井の口元が少しだけ緩んだ。
目ざとい宮城は、その一瞬を見逃さない。
いたずら小僧の弟の顔になってニヤリ、と笑い返した。
「んー、せっかくだし、ロースカツ、特上!大盛りっ!」
特上ロースカツ大盛り二人前……。
全部でいくらかかるだろう、と三井は少しだけ不安になった。
≪しゃーない、あれ使うか……≫
東京の祖母がインターハイ出場のお祝いに、とくれた3万円。
まだ1枚だけ残っている。
ふと、三井は思い出した。
「桜木も連れってってやろーや!! 復帰祝いにな!!
死ぬほどキャベツ食わせてやろーぜ!!」
湘北の問題児軍団三男坊・桜木花道。
インターハイ・山王工業戦で背中を負傷して以来、彼は海辺の病院でリハビリや鍼灸治療に専念していた。
安西先生の話だと、回復もきわめて順調らしい。
まだしばらくリハビリは続くが、この調子だと中間テスト後には練習に復帰できるだろう、とのこと。
先生もうれしそうだった。
一方、夏の全日本合宿でもまれた流川楓は、プレーの幅を一気に広げた。
以前のような天上天下唯我独尊ぶりはすっかりなりを潜めた。
鋭い突破、味方を生かすパス、緩急をつけた攻めなどを使い分けるオールラウンダーへと成長しつつある。
≪コートの支配者≫の異名を持つ陵南二年の仙道彰(せんどう・あきら)と肩を並べる日も、そう遠くはなさそうだ。
一体ヤツはどこまで伸びていくのだろうか。
≪またアイツらと一緒に夏の続きがやれるな……
赤木と木暮は抜けたけど、今度の湘北もいいぞ……
いーか 見てろよ神奈川 見てろよ全国!!
オレたちは 強い!!≫
新たなドラマの予感に、三井寿は胸の高鳴りを抑えられなかった。
本記事は、筆者の note と、
はてなブログ・【SLAM DUNK人物探偵事務所】に同時投稿しています。
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あとがき
最後までお読みくださってありがとうございます。
2025年の初夏、オンラインで数年前からエニアグラムを共に学んでいる仲間たちと、11月の文学フリマ東京に参加しようよ、ということになりました。ならば自分はタイプ3の三井寿について書こう、と即決したのですが、気が付いたらこれだけの分量に膨れ上がっていました。
結局同人誌への掲載は見送りましたが、このような形で年内に全文を公開することができてほっとしております。
最後になりましたが、この『SLAM DUNK スラム ダンク』というすばらしい作品、そして愛すべき数々のキャラクターを世に送り出してくださった井上雄彦先生に、心からの感謝と敬意とを捧げます。
そして、筆者のエニアグラムの恩師であり、"Personality Types"という不朽の名著を世に出してくださった故・ドン・リチャード・リソ(Don Richard Riso, 1946-2012 )先生の御霊に、本作品を謹んで捧げたいと思います。
リソ先生は、筆者にとっての「安西先生」でした。
この「エニアグラムで読む 三井寿」をきっかけに、一人でも多くの方がリソ先生の仕事に興味を持ってくださればうれしいです。

