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「如果我不曾見過太陽(邦題:もしも太陽を見なかったら)」は 残酷で美しい童話(~最終集)

正月なのに全く明るくないドラマを一気見してしまった。

「如果我不曾見過太陽」は美しい悲恋物語なのだけれど、男主は10人も殺した連続殺人犯。女主はドラマの途中で表舞台から姿を消してしまう。平凡な展開に見えた物語は最初から少しずつ歪んでゆき、意外な展開を見せる。ハッピーエンドでもないし陰惨な部分も多いので万人に勧められるドラマではないけれど、Netflixで日本語字幕で見やすいし、良質な作品です。

なるべくネタバレしないように書きたいんですが、うまく伝わらなさそう。中盤までのストーリーのネタバレ及び原稿後半には重大なネタバレが含まれます。ご注意ください。

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「如果我不曾見過太陽」豆瓣よりポスター これだけだと内容がよく分からないな(笑)

序盤のお話

新米ADの周品瑜(江齊 飾)は監督の言いつけで収監中の「レインコートキラー」にインタビュー依頼に会いに行く。雨の日に10人もを殺害した李壬曜(曾敬驊 飾)は犯行の手口は詳しく供述したものの動機については口を閉ざし、取材もインタビューも拒否してきた。…ところが李壬曜は当日も周品瑜が来るのを条件にインタビューを受けるという。

李壬曜に纏わる取材を続けるうち周品瑜は少女の幽霊を観るようになる。彼女は李壬曜と同じ高校に通っていたバレエダンサーを夢見る江曉彤(李沐 飾)。李壬曜の私物のCDの中から彼女の写真を見つけた周品瑜は、彼女が李壬曜の犯行に関係あると考えはじめ、やがて二人が通っていた高校の様子を鮮やかに夢に見るようになり…。

 

最初から高校生の悲恋が物語の核なのだろうと想像はつく。李壬曜の父親は借金まみれのギャンブル狂で、母親はそんな父親を見捨てられない。学校でも問題児。一方の江曉彤は表彰される程踊りが上手なダンス科の生徒で、家も中流で家族仲も良好。

過去編では徐々に深まっていく二人の関係と、江曉彤の親友で彼女に密かに思いを寄せているらしい赖芸蓁(程予希 飾)、李壬曜を目の仇にする議員の息子・歐陽悌(石知田 飾)のグループを中心に展開する。

初々しい恋愛模様はリリカルに描かれる(多少冗長に感じられるのは台湾ドラマ特有のテンポの緩やかさによるものだと思う)。江曉彤役の李沐は何処かで見た…と思ったら「次の被害者」の主人公の娘を演じていた女優さんだ。29歳(!)だというが、どう見ても繊細な高校生に見える。女優さんて凄い。

男主・李壬曜を演じる曾敬驊は映画「返校」に出演していた俳優さんだが、あの時より洗練された、穏やかな佇まい。切れ長の目だけで様々な感情を物語れる俳優さんだ。

 

李壬曜や赖芸蓁は悲惨な家庭の犠牲者で、江曉彤は二人を何とか救おうとする。ただ大人たちの力関係や無理解で事態は(視聴者の想像通り)悪い方に転がってゆく。

 

幽霊譚にも思えてくる第1シーズン

過去編はよくできてはいるけどありがちな物語だ。ただ時折挟まれる現在編(と言っても時間軸は2023年)が不穏な空気を醸し出す。頼りないADに見えていた周品瑜は、どうやら時間の感覚も曖昧で記憶も所々欠落しているようだ。時折現れる江曉彤の幽霊は彼女に何か言いたげだ。連続殺人犯である李壬曜は周品瑜に接する時は限りなく優し気に見える。彼女が“姉さん”と呼ぶ沈暮は彼と知り合いみたいだ。

 

…所々に引っかかる情報が挟み込まれ、現代編については???だらけになる。

ちなみに第1シーズンでは根本的な疑問である「何故李壬曜は10人もの人を殺したのか?」については全く分からない。とある事件が起き、それが原因だろうと推測はできるものの、5年後の再会を約束して李壬曜と江曉彤は離ればなれになってしまうからだ。

第1シーズンは1時間×10本あるので、もやもやしたまま観続けるのはちょっと忍耐が必要だけれど、これらの謎は第2シーズンで綺麗に片が付く。もやもやが晴れれば意味が全てわかるように作られていて、その点もとても良く考えられていると思う。

 

タイトルの意味は…

邦題の「もしも太陽を見なかったら」は「如果我不曾見過太陽」のほぼ直訳で、英語のタイトルもほぼ同じ。ドラマの中で李壬曜が江曉彤に語る「蛾と蝶の違い」がその由来だ。「蛾も蝶も同じようにはばたく。蛾は夜の生き物で、蛍光灯の灯を太陽と間違え同じ場所を回るだけ。蝶は昼の生き物だから青空の中を自由に、太陽に向かって飛んで行ける」。

高校時代の江曉彤は李壬曜や赖芸蓁を暖かく包み込んでくれた。李壬曜も赖芸蓁も自由に蝶のように羽ばたく江曉彤を太陽になぞらえ、その明かりに縋ろうとする。でも二人は所詮夜の生き物で、再び巡り合った時太陽のように江曉彤を照らすことはできない。彼らの生き方は蛍光灯に群がる蛾のように袋小路だ。

…そういう意味ではタイトルはドラマの内容を正確にとらえているのだけれど、ドラマの魅力を伝えるにはちょっと抽象的過ぎるかもしれない。

 

第2シーズンの描き方は秀逸

第2シーズンの始まりは二人が別れてから7年後。李壬曜が江曉彤に面差しの似た盲目の女性・夏天晴(柯佳嬿 飾)と出会うところから始まる。他のキャストは7年後でも変更がないのに、主役だけ変更?それとも他人の空似?という疑問を抱えつつ、再びロマンスものの展開に。7年後の世界でも男主の李壬曜が連続殺人犯になりそうな気配はあまりない。江曉彤をひたすら想いつつも夏天晴に惹かれていく誠実で静かな男性だ。

ただ夏天晴が本当の気持ちを吐露した時から、世界は変わり始める。

ここから先はストーリーに関わる重大なネタバレが含まれます。OKという方だけどうぞ。

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「如果我不曾見過太陽二季」豆瓣より 二季の方が豆瓣の評価も高い

女主の描き方の妙

何故江曉彤が5年後の再会を果たさず消えてしまったのか、何故周品瑜が彼女の夢を見、姉と名乗る女性は何故江曉彤の親友なのかは第2シーズンの中盤で分かる。

江曉彤も夏天晴も周品瑜も同じ人物なのだ。

 

多重人格を描いたドラマや小説は少なくない。

ただ大抵の場合同じ役者さんがメイクと衣装で印象を変えたり、小説の場合も医療者側から語られたりすることが殆どだ。多重人格を患った人の自己認識を描いたものは余り見かけたことがない。そうした意味でこのドラマの描き方はとても興味深い。

 

多重人格(解離性同一性障害)は重大なトラウマを体験した時に心理的防御の一つとして生じるのだと言われている。江曉彤が自分を消してしまいたいほどの強烈な体験をした後に、本来の人格を消してしまったとしても不思議はない。年齢も外見も(時には性別も)違った複数の人格を宿した場合、その人には自身の外見も全く違って見えていることだろう(そうでなければ別人格を宿した意味がない)。

各々の人格は独立した記憶を持つので別人格の行動や記憶は分からないけれど、全ての人格の全ての行動や記憶を知っている人格、というのが存在するとも言われる。夏天晴を度々訪れる奇妙な少女・琪琪(姚愛寗 飾)はそうした人格のようだ。一方で本来の江曉彤は高校生のまま心の奥底で眠ってしまっている。

一人の女性を四人の別々の女優さんに演じさせる、というアイディアは本人の目線から見たこの病をよく表しているのではないかと思う。後半このことが判明すると、違和感を感じた全ての伏線は意味が通るようになる。

 

一方、男主の李壬曜も親友の赖芸蓁の心も壊れている。ただ、この二人については理解も共感もしにくかった。勿論二人が殺人に手を染めるのには理由があるし、殺される側は吐き気がするほど嫌な奴等なのだけれど。特に最後から二番目の事件については擁護の余地がなく「やっぱり壊れてたんだなあ」という以外の感想が出てこない。赖芸蓁はもっと不思議で、全てを知っていて素知らぬ顔で江曉彤の傍にいられる神経がよく分からない。

もし二人が江曉彤という太陽を見つけてしまわなかったら、蛍光灯の周りをぐるぐる飛び回るように平凡で静かな、出口のない人生を送っていたんだろうか。…「希望」が疫病や災害と一緒に入っていた“パンドラの箱”の物語を思い出してしまう。

 

やりきれなさが残るラスト

第2シーズン中盤から後半にかけてはそれまでの伏線が回収されて納得しながら見ていたんだけれど、最終盤はちょっと不満が残る。あの手紙に何が書いてあったんだろう?江曉彤は何故二人のしたことが全て水泡に帰すことを選んだんだろう?

 

江曉彤も結局蝶ではなく蛾だったのだろうか?高校生の時は未来の可能性は無限大に思えても、大人になれば「無理なこと」「不可能なこと」が見えてくる。高校生から一気に10年近く時間を飛ばしてしまった江曉彤は、過去に閉じ込められたまま外に出る道を見つけられなかったのだろうか?

 

ラストは何だか割り切れない気持ちが残るけれど、エンドロールで三人の女優さんが楽しそうに騒いでいるのを見てほっこりして救われた気分になった。

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題名:如果我不曾見過太陽 如果我不曾见过太阳 Had I Not Seen The Sun

編劇:林欣慧「想見你(邦題:時をかける愛) 簡奇峯 2シーズン19集

導演:蔣繼正「恋愛的夏天」簡奇峯「想見你」

出演:曾敬驊 李沐 柯佳嬿 江齊 程予希

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2025年のベスト7を選んでみた

新年あけましておめでとうございます。昨年ブログを訪れてくださった皆様、本当にありがとうございました。今年も当ブログを宜しくお願いいたします。

昨年ブログで取り上げた中国ドラマは50作品(うち2本は再視聴)、バラエティは6作品。その中からベスト7を選んでみました。…というより、一年前とか忘れかけてるんで、ちゃんと記録しとかないと(汗)。

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「異人之下之決戦碧遊村」微博より 本作は豆瓣の評価も高かった

2025視聴ドラマBest7

今回は「もう一周したいか」を基準に選んでみることにした。結果、25年は大作が面白かった、というごく普通の結果に。

 

清明上河図密碼

古装探案ものとしてはこちらと「唐朝詭事録之長安」。どちらも歴史的事象を下敷きにしながら一見奇談に見える事件を解決していくという点では同じ。「清明上河図」の完全再現!というのを加味してこちらにしてみた。…河に沿ってPANしていく映像は圧巻なのだけど、言われるまでずっとCGだと思ってたのは内緒(笑)。

ストーリーも大変面白かった。キャストも派手ではないけれど堅実。…本当に面白いんで誰か買って日本で放送してよー。

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長安的茘枝

こちらも大作。たかがライチ、されどライチ。楊貴妃が好きで産地から運ばせた、という逸話は知られた話だけれど、その逸話をネタにこれだけの話を作りこむのは流石马伯庸原作だけのことはある。笑って泣いて共感する(=身につまされる)ことのできるウェルメイドなドラマ。映画版は日本でも公開になったけれど、ドラマもぜひ来てほしい。

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蔵海伝

肖战主演の復讐譚。「盗墓筆記」シリーズからの発展系オリジナル作品で、「盗墓筆記」らしさも垣間見られて嬉しかった。キャストも豪華で、話も単なる復讐譚ではなく複雑、敵味方のキャラクターも作り込まれて重層的。文句なく面白かった。

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十二封信

小品だけれど時間交錯系として出色。主人公たちが健気でとにかく泣かされた。使われている曲も涙を誘う。映像も美しい。

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異人之下之決戦碧遊村

すごく楽しみにしていた「異人之下」の続編。日本ではアニメで描かれるようなことを中国ではお金と人手を掛けて実写でやってのけてしまう。超能力者同士の戦い、というと日本では手垢のついたテーマだけれど、巧い具合に武侠的要素や伝奇的要素が絡んで面白い。しかも今回は泣かせる。キャラクターはオジサンが増えたけど、その分味がある。

こちらは正月早々に日本でも配信予定。既に2周してるんだけど、日本語が付いたらもう一周する(決心)。

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凡人修仙伝

こちらもアニメ→実写化作品。SFXバリバリの武侠・仙侠ものは「暗河伝」「水龍吟」「赴山海」等いろいろあったけれど、この作品が頭一つ抜けた。

「赴山海」はあの珍妙な現代パートさえなければなー。「暗河伝」は暗河という組織についての理解は深まったけれど、もう少しその後についても突っ込んでほしかった。「水龍吟」はすごく気に入って楽しく観られたけど、全体的な出来の良さでは「凡人修仙伝」が一歩上だったと思う。

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書巻一夢

25年、刘宇宁出演ドラマは多かった。「折腰」「紫川之光明王」「書巻一夢」、バラエティも「天賜的声音第6季」「開始推理吧 第三季」「地球超新鮮」「音楽縁計画II」と続いたので、ずーっと刘宇宁の顔を見た気が(笑)。でもドラマとしては「書巻一夢」が一番好み。傘被ってマスクしてマント靡かせてる離十六が厨二っぽくてサイコー。

 

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次点としては25年前半に多かった女性主人公もの「九重紫」「雁回時」、苦手な幻仙系+悲恋なのに非常にすんなり観ることのできた「無憂渡」、今年中に観終われなかった「大生意人」辺り。特に「雁回時」のふてぶてしくて悪辣なことも平気な女主は新鮮だった。

成毅作品は後半に固まって「赴山海」「天地剣心」「長安二十四計」の三本が配信になった。…完全に好みの問題だとは思うけれど、見返す程面白いかといわれるとどうにも困る。来年には事務所から独立するみたいだし、来年配信されるであろう「両京十五日」に期待。

侯明昊の新作は「異人之下之決戦碧遊村(王也の出番は多くない)」「淮水竹亭(特別出演で1シーンのみ)」「入青雲」…だけかと思ったら年を跨ぐ形で「逍遥」「玉茗茶骨」の2本が配信中。どっちも観始めたばかりなんで評価は持ち越し。

 

2025年の総合評価

「これは新しい!」「見たことがない!」みたいな感想はないままだった気がする2025年。

古装は相変わらず仙侠もの、ファンタジー色強めな恋愛劇が多く、どれを見るかは主演俳優次第な感じ。探案ものも多く、猟奇的な事件が沢山発生(笑)。武侠系は…控えめに言っても低調。

現代劇はそもそもあまり観ないけれど、唯一積極的に観るジャンルであるサスペンス系も大きな話題になった作品は少なかった気がする。大ヒットしたらしい「許我燿眼」は個人的にはあまり響かなかったしな…。

バラエティ系も新規番組はなく楽しめたのはどれも続編、という結果に。「開始推理吧」「音楽縁計画」は前のシーズンよりパワーアップしていて面白かったけど、やっぱり新しいアイディアも欲しい。

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毎年初頭には大作が来ることも多いし、前宣伝はされているけど一向に…という作品もちらほら。

2026年は面白い作品に沢山出会えますように。

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「長安二十四計(~最終集)」は“復讐譚”というより“生存競争”

年内に今年の「ベスト〇〇」的な纏めを書こうと思ったのに、体調を崩して全部観終われない情けないことに。「長安二十四計」だけは何とか最後まで観終われたので、2025年滑り込みで感想だけでも書いておこう。

二転三転するストーリーの面白さで見せる作品なだけになるべくネタバレを避けてはいますけれど、中盤までのストーリー及びある程度のネタバレは含まれます。ご注意ください。

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長安二十四計」微博より 一番気に入ったキャラクターは顧将軍

お話は最後まで残酷非情

ターゲットの6人への復讐…というお話は単なる前ふりに過ぎず、中盤から後半は謝淮安と仇敵との神経戦、というか相手の心理の最も弱いところを突く心理戦が続く。

 

謝淮安(成毅 飾)が動き出したことを知った虎賁は白吻虎軍を率いる車椅子の将軍・顧玉(叶祖新 飾)を拉致、謝淮安は虎賁の兵が隠れ住む藏兵巷に単身で乗り込むことになる。犠牲を出しつつも藏兵巷を制圧したものの兵の大半は逃亡。都に舞い戻った言鳳山(张涵予 飾)の指揮下、形勢は逆転。蕭武陽(刘奕君 飾)は昏睡状態、顧玉は行方不明、と味方はバラバラに。謝淮安は再び単身言鳳山の屋敷に乗り込み…。

 

お話は更に二転三転し、王勁松扮する謎の男の正体や、フードの老臣の正体も徐々に明かされていく。展開自体はスピーディで続きが気になって一気に観てしまうのだけれど、中盤まで「何故この人たちはこんなにも憎み合っているんだろう?」という素朴な疑問は拭えなかった。ようやく腑に落ちたのは言鳳山の過去が明らかになって以降のことだ。

 

「衣食足りて礼節を知る」

言鳳山はかつて北の民族・鐵秣に捕まり、たった一人分しか与えられない食糧を巡って捕虜同士が殺し合う中生き残った経験を持つ。仲間を全て殺して閉じ込められていた穀物庫から逃げ出すが、道中助けてくれ食糧を分けてくれた村人さえ殺害してしまう。言鳳山にとって権力を手に入れることは飢えを満たすことで、一度限界を超えた“飢え”はいくら権力を手に入れても満たされることがないのかもしれない。

長安を狙う北方民族・鐵秣は寒く厳しい土地で冬生まれた子は食糧が足りず生き残れない。彼らにとって「豊かな地=長安」で、長安を手に入れなければ彼らの“飢え”は満たされない。何を引き換えにしても絶対に手に入れなければならないのだ。

 

言鳳山率いる虎賁も鐵秣の人々も、師父や弟子、養父や養子同然の関係も意に介さず殺し合う。普通のドラマだと師父と弟子の間には親子以上の情愛があったりするものだけれど、このドラマは実にドライに関係を切り捨てる。自分が殺した相手の家に平気で住むのは如何にも悪趣味に思えたけれど(これは予算の関係にも思えるけど)そうした無神経さも、これが食を巡る生存競争なのだと考えれば納得がいく。食べ物を手に入れる為に相手を騙し、唆し、斬り捨てる。天敵、仇敵というより一切れの肉を争う相手なのだ。

このドラマが豊かな田園地帯で幕を開け、穀物倉庫で幕を閉じるのは(そしてすごく沢山食事のシーンが登場するのは)偶然ではないだろう。

 

…そんな人たちが相手では師弟や大義といったものは役に立たない。このドラマでは情や義を行動原理にする人物はとても格好よく、でも悲劇的に描かれる(顧玉の藏兵巷での大立ち回りや、佟梦实扮する葉崢の立ち回りシーンは見応え満点。めちゃカッコいい)。

 

主人公・謝淮安はそのあわいに立つ。やり口は正直言鳳山や鐵秣と同様に冷徹とも言える。相手に毒薬渡しながら「餃子何個食べる?」って聞く時の成毅は恐ろしい。一方で虎賁の残党を許し、傀儡皇帝だった蕭文敬(周奇 飾)を救う等ぎりぎりの処で道理と分別のある「人」の世界に留まっているようにも見える。

ただそうは言っても大分命は失われているし、このドラマに登場するキャラクターで一人も殺していないという人、誰もいないんじゃないかな…。

 

ベテランの役者さんたちの演技は見ごたえあり

立ち回りのシーンを大幅に削って、残り予算を全部キャスティングに回したんじゃないかと思うくらい、ベテランの役者さんは豪華、強烈な印象を残す。脚本的にもエピソードの挟み方が上手くて、短いシーンでそのキャラクターの人となりが上手く描かれる。

余り活躍の場がなかった高相(宋佳倫 飾)も中~終盤に見せ場があるし、父の旧知の商人・楊儲豪(韩童生 飾)や隠れ家で店を営む老人(尹铸胜 飾)も味わい深い。大御所の倪大紅と王勁松が羊肉持ってじゃれ合うシーン(何でそうなるのかは流石にネタバレ過ぎて書けないけど)の可愛らしい&恐ろしいこと(笑)。

 

そうしたベテラン俳優さんと渡り合っている成毅は「頑張った」といえるんじゃないかと思う。ほぼ無表情か怨み骨髄といった表情しかしないので他のドラマとはかなり印象が違うし、そもそも主人公が何を考えているのかは視聴者には全く分からないのでアレだが、主人公の孤独、凍みるような心情は良く伝わってきたと思う。

 

で、エンドなんですが…

なんだかんだ言って「超前」買ったわけだけれど、本編ではなくエピローグとして語られた謝淮安の命運はどうなんだろう?単に続編作りたいです、と取ればいいのか、それともずっと復讐以外考えてこなかった主人公にとってある意味解放である、と取ればいいのか。

…あのご老体の考えている未来、というのも今一つ分からず(碌なことを考えていない気も、未来を見据えている気もする)困った(笑)。

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題名:长安二十四计 The Vendetta of An 28集

編劇:霜城(总)、莫雨聪、李雪彤、王骢、虞筱霏

導演:林峰「赴山海」李磊「鬼吹灯」シリーズ

出演:成毅 Cheng Yi 刘奕君 王劲松 周奇「蔵海伝」 佟梦实Tong Meng Shi「慶余年」

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刘宇宁コンサートのセトリ(大連)

大連はめちゃ寒いところ、というイメージがあったんだけど、実際の緯度は北京より下で仙台と同じくらい。平均気温も一番寒い一月で-6.8度。刘宇宁の出身地丹東から一番近い開催都市だ。

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「刘宇宁工作室」微博より 今回のコピーは「Long Time No Sea」

大連公演(12/20)新規曲一覧

探検家 詞曲:刘凤瑶 2018

OPが「人造衛星情人」から変更に!しかも最初期の曲の一つ「探検家」だ。ロック調の曲で摩登兄弟らしい曲で刘宇宁の嗓音が大変かっこいい。。創作者の刘凤瑶は刘宇宁に「恋語1920」や「想像」を提供、「友情歳月」のプロデュースも務めている。

「探検家」は映画「Alpha(邦題:アルファ 帰還りし者たち 日本では劇場未公開/DVDは発売済)」のプロモーションソング。映画の内容は2万年前の大氷河期に、狼と少年が困難を乗り越え帰郷するまでを描いたものだそう。

 

不燃算了吧 詞曲:艾里克 2025

撲通撲通 詞曲:门尼 2025

告別旅行 詞:李有鱼 曲:付尧 2025

以上の3曲は「音楽縁計画第二季」から。第二季の刘宇宁は毎回違ったタイプの曲を選ぶだけでなく、ステージで如何に映えるかを基準に選んでいるように見える。

 

心太軟 with任賢齊 詞曲:小虫 原唱:任賢斎Richie Jen 

一念関山(新)with任賢齊 詞:顾如愿 曲:明遥 2023

大連のゲストは任賢齊。「心太軟」は彼の大ヒット曲で「我们的歌」で二人が組んだ時に最初にステージで披露した曲でもある。「一念関山」は任賢斎歌唱の同ドラマ主題歌。

「刘宇宁工作室」微博より 「撲通撲通」は音楽縁計画の時も可愛らしいセットだったけどこちらも愛らしい



大連公演セトリ

セトリはいろいろ細かく入れ変わっている。衣装は例によって全部新調したようだ。スチルにあった風船を沢山持っている演出は「撲通撲通」の時みたい。可愛いな。

 

①探検家(新)

②忠実観衆

涼州

④Fall in Love

⑤撞地球

⑥星辰与共

⑦你的眼神

⑧自詡周全

⑨不燃算了吧(新)

⑩你說愛情啊

⑪無心生大夢

⑫就在江湖之上

⑬天問

⑭譲酒

⑮尋一個你

⑯ 烽月

⑰奉上

⑱当遇見你

⑲若没有你

⑳傷心的人都在跳舞

㉑講真的

㉒乞丐

㉓撲通撲通(新)

㉔想你了

㉕把你的名字念一万遍

㉖告別旅行(新)

㉗昨日少年

㉘笑紅塵

㉙別来無養

㉚心太軟 with任 賢齊

㉛一念関山(新)with任 賢齊

㉜走馬

㉝如約 with 摩登兄弟

㉞不需要想念

㉟青春呐

㊱黒夜一束光

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これで予め予告されていた公演は全て終わったわけだけれど、会場のスチルを見る限り三階席まで全て満杯。まだ追加公演があるんだろうか?

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「音楽縁計画II」今季は名曲揃い(~9集)

音楽縁計画もいよいよあと一回と年度盛典を残すだけになった。参加アーチストも多くなったんで、ここらでまとめとかないと、分からなくなりそう(笑)。

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「音楽縁計画」微博より #9初登場の侯明昊 緊張気味なのは錚々たるメンバーが集まっているから?

#4~#9までの出演者

皆勤賞なのは薛之谦・张靓颖・周深・刘宇宁・黄子弘凡の5人。

いずれも第一季出演メンバーで、この番組の為にスケジュールを空けたことがよく分かる。

よく考えると前半の選曲パートには進行ナレーションのみで司会がいない。だから歌手の誰かがスタジオを回す必要があるのだけれど、歌手の中には内気で喋りが得意でない人も多そう。後半に行くにしたがってこのパートが賑やかになったのは、薛之谦を中心にレギュラーメンバーが上手く合いの手を入れながら回しているおかげだと思う。

欧阳娜娜もお休みは#3#4#9のみ。#8辺りでは薛之谦に突っ込みも入れられるようになって(笑)成長した。

その他の単発(といっても大抵2集くらいは出演。恐らくは2本撮り)ゲストは以下の通り。…中国って歌手多い。知らない人も沢山。

谭晶(5.6.9)

解放軍芸術学院卒のソプラノ歌手。卒業後政治部歌舞団に所属。…所謂ポップスの歌手ではないので全然知らないのも道理。でもゲームの主題歌なんかも歌ってるみたいだ。(テレビ)ドラマの主題歌も沢山歌っているようだけれど、観ないジャンルなんでよく分からない。

刘端端(5.6)

#5#6の歌手以外枠はこの人。「慶余年」の二皇子。俳優業専業化と思いきや案外沢山のシングルも出しているし、音楽劇などにも出演。この「歌手専業以外」枠、毎回登場するゲストの“表現力”に唸らされる。第一季でシステムになれているせいか、しっかり毎回曲をゲットしていた。

黄誉博(5.6)

2001年生まれの若者枠。子役出身で、ドラマ出演と同時に「爆米花乐队」という子どもで結成されたグループに所属。12歳の時には「春晩」にも出演している。その後南京芸術学院で学び大学生の創作曲大会で最優秀賞を受賞し、本格的に歌手活動を開始。芸歴が長いのでアルバムもかなり出している。

R.E.D(5.6)

第一季の年度盛典に出演していたガールズグループ。グループの正式名称はRed Era Diva。メンバーは7名。芒果TVの「百分百出品」という国際文化交流番組(って何だろ?)出身。

…やっぱりグループだと歌手本人の意思が見えづらいなー、というのが視聴者としての感想。

蒋敦豪(7.8)

新疆ウイグル自治区出身。20歳の時友人と音楽事務所を立ち上げる。経歴を見ると「中国新歌声」「蒙面唱将猜猜猜」「創造営2021」等新人歌手がデビューするきっかけとなる番組は一通り出演している感じだ。

小沈阳 (7)

役者さんとして何処かで顔を見たことがあるけれど…。「西遊記女人国」で猪八戒を演じていた、と言われてようやく思い出した(汗)。歌手としても20か所でコンサートをうつくらい、活動しているようだ。

姚晓棠(7.8)

第一季にも出演しており刘端端と「覇王別妃」を歌ったりしていた。「中国好声音2021」で4位になって頭角を現し、女優としても活動。最近では「许我耀眼」の挿入歌も歌っている。

小阿七(9)

百度百科にはメディアクリエイター、とある。それ以上の情報がなかったので本人の微博にいってみた。曲も幾つか出しているようだし、ライブも行っているようだ…ってことくらいしか分からなかった。

侯明昊(9)

侯明昊がこの番組に出演するとは思っていなかったので、ちょっと嬉しい。プロフィールはこちら。

王啸坤(9)

第一季の最初の回にも出演していた。私が知っているのは「三国机密之潜龙在渊」のエンド曲「少年志」くらいだけど、歌手歴は20年近くあるベテラン(でもデビューが早いので年齢は刘宇宁と二つしか違わない)。

 

印象に残ったステージ等

#4 象人 詞曲:李昂星 演唱:张弛/周深

創作者が映画「エレファント・マン」に触発されて作った、という曲。デヴィッド・リンチ監督の名作だけれど今から45年も前の作品なんで、まず中国の若い人も観てるんだってことに驚いた。創作者は見た目は可愛い男の子って感じなんだけど、映画のエッセンスを取り出したような歌詞は苦渋に満ちている。

デモも充分迫力に満ちていたけれど、舞台は更に面白かった。まず歌詞が二人それぞれ違っていた。本来一曲の歌詞を二人に分けたらしい。先攻の张弛は周囲からの無理解でエレファント・マンの苦悩を歌い、後攻の周深はエレファント・マン自身の心中にもある醜さを歌った。…凄い、という感想しか出てこなかった。

 

#6 扑通扑通 詞曲:门尼 演唱:刘宇宁/周深

タイトルは「ドキドキ」っていう心臓の音。9集までで刘宇宁と周深が競合になったのは3回、かなりの頻度だ。今まで歌ったことのない“新しい歌”を歌いたい、と言っていた二人だから被るのは不思議ではないのかも。

ただ、同じ曲でもアプローチは全く違う。同じ曲に聴こえないくらい印象が違うのは本当に不思議。

この曲で刘宇宁はミュージカル風の舞台を作った。しかも一部はオペラ風の歌唱。一体幾つ引き出しがあるんだろ?

 

#6 农民与土地 作詞:成良 薛之谦 曲:成良 演唱:薛之谦

作者の成良は(何処だったか忘れたけど)田舎に住んでいて、こつこつ歌を作ってはデモを送っていたそうだ。確か飛行機にも初めて乗った、と言っていた。こういう人に光が当たるのもこの番組ならでは。薛之谦は真摯な姿勢でこの曲を表現した。すごく歌に対して誠実な人なんだと改めて思わされた曲。

 

#8 小孩与我 詞曲:郁一凡 魏翔&薛之谦/蒋敦豪

第2季で一番泣かされた。デモを聴いて涙をぬぐう魏翔と薛之谦を観て泣き、その後の創作者と魏翔の会話でも泣かされた。歌詞は苦しみながら努力を重ねる自分が、無邪気に夢を見ていた頃の自分に語りかける形で、シンプル且つ誰もが思い当たる部分があると思う。

舞台の魏翔と薛之谦に至っては決して楽ではなかったであろうこれまでの道のりが浮かび上がるような歌唱で、歌っている本人たちも、観客も、観ているこちらも大泣きした。

感動と興奮に包まれていた舞台で、次に歌わなければならなかった蒋敦豪はホント気の毒だったと思うけれど、こちらは若々しさを前面に出した明るいアレンジで「ああ、若いってこういうことよね」って妙に納得した(笑)。

 

#8 有时候想变成一只猫 詞曲:孙睦涵 演唱:张靓颖/欧阳娜娜

欧阳娜娜ってお人形みたいで可愛いって観る度思うけれど、こういう歌を歌っていると本当に部屋に籠って猫と戯れてるみたいに思える。可愛い。

 

讯号 詞:詹翊玄 曲:詹翊玄・关天天 歌唱:Seven kids/希林娜依·高

ここで再びSeven Kidsが!出演の予定がなかったのに喻言と张峻豪が駆けつけてくれた。制作側は大変だろうけど、こういうフレキシブルさは嬉しい。喻言はちゃんと振りまでつけてくれたみたいだ。出演者とスタッフの熱意が感じられる作品に仕上がった。

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「音楽縁計画」微博より 時間もなさそうなのに完璧に仕上げてきたSeven Kids すごい

#9まできて歌われない歌がない。今シーズン、提供曲のレベルがここまで全く落ちていないのが素晴らしい(去年はAIが作った曲とか、出演歌手が全く興味を示さない歌もいくつかあった)。あとは最終回と年度盛典を残すのみ。去年も年度盛典の舞台は面白かったので今から楽しみ。でも正月2日生放送なんだよなあ…。見られるかなあ。

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題名:音乐缘计划第二季 Melody Journey

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「水龍吟」後半戦はキャラクターの勝利

「水龍吟」最後まで面白かった。当面の敵を倒してもその黒幕が現れて…という展開は珍しいものではないけれど、事情が変わるにつれ多数いるキャラクターそれぞれが意外な変化を遂げていくのが斬新。多彩な罗云熙も堪能できます。

ここから先は終盤までのストーリーに触れています。ご注意ください。

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「水龍吟」微博より すごく沢山衣装替えしてた気がする唐儷辭

後半のお話

剣王城の戦いで勝利し、碧落宮の協力を取り付けることに成功した唐儷辭たち。

いよいよ中原剣会を巻き込み風流店との決戦に挑むことになる。戦いの中風流店の背後にいる一闕陰陽、その傀儡である鬼牡丹の存在が明らかに。風流店が潰れた後も毒丸薬の流入は止まらず、一方で一枚岩だった剣会にも亀裂が走る。

剣会に下る者、逆に裏切る者、罠にはまる者…と仲間たちの立場も入れ替わり、唐儷辭は徐々に孤立を深めていく…。

 

終盤のストーリーは天界にまで及ぶことになり、徐々にファンタジー色も強まっていく(武打シーンもCGが多くなる)。ただし主要なキャラクターそれぞれにはきちんと見せ場が用意されているので、最後まで江湖ものっぽさも失われなかったように思う。

 

罗云熙の魅力全開

やっぱりこのドラマは罗云熙による罗云熙の為のドラマ。冒頭の魔王っぽい登場から、謎の貴公子、記憶喪失の青年、江湖第一の高手、果ては天上人まで七変化。それもそのはずでドラマの制作会社には罗云熙の所属事務所「中視同成文化伝媒有限公司」が入っている。

主人公はクリプトン星からやって来たスーパーマンを中華世界に組み込んだような設定なのだけれど、観ている側が違和感なく納得してしまうのは罗云熙ならでは、という気もする。

 

キャラクターを際立たせる「多重性」

主人公・唐儷辭だけでなく、主要なキャラクターもただ正派・邪派というだけでなく、多様な側面が描かれるのがこのドラマの良いところ。

特に女性たちには大きな変化が。「水龍吟」は恋愛要素は薄くて、そういう意味では女性が活躍する場面は少ないのだけれど、承認欲求の塊である鍾春髻に「公主」という地位が与えられたゆえの悲劇や、西方桃の普珠への複雑な恋心と野心はとても印象的。西方桃は原作では女装した男性なのだそうだが(ブロマンスっぽいな!)、妖艶な女性と禁欲的且つ高貴な生まれの男性という組み合わせは良かったと思う。

 

最初から登場している阿誰が果たして何者か、という謎は終盤まで解けないけれど、成程そう言うことだったかと納得がいく。同じく序盤から登場している池雲は中原剣会には属してなさそうだし何者なのかよく分からなかったけれど、こちらも終盤で明かされる。元気印、という役回りだけかと思ったら終盤の展開で泣かされました。

 

キャラクターが立体的に描かれたこともあり、どの役者さんもはまり役に見えた。特に鬼牡丹役の徐正溪。鬼牡丹は奇妙な動きと表情の人物なのだけれど(これは正体を知れば納得する)、凄く楽しそうに演じているように見えた。

 

ラストはまあそうなるだろうな、と思う展開ではあったけれど、登場人物たちの幸せな姿が見られて、気持ちよく視聴終了できた。満足。

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題名:水龙吟 Whispers of Fate 40集

原作:藤萍「千劫眉」

編劇:庄修 蔺丛鹤 闫沫伊

導演:陈宙飞(「少年白马醉春风」) 钱敬午(「苍兰诀」)

出演:罗云熙Luo YunXi 方逸倫Fang Yilun 肖順堯Xiao Shunyao 林允 敖子逸

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「長安二十四計」は最初から死屍累々(~8集)

今年3本目の成毅主演ドラマ。「赴山海」(豆瓣5.9)「天地剣心」(豆瓣6.0)と厳しい評価が続いたけれど、今作も…すごく心配(笑)。

ここから先は8集までのストーリーのネタバレが含まれます。おまけにだいぶ辛口です。ご注意ください。

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舞台設定はこんな感じ

まずは冒頭に説明される、舞台設定から。ちなみに「長安」とはいうものの、完全架空歴史。

 

太祖(建国皇帝)が急死し、虎賁将軍である言風山(张涵予 飾)が幼帝・蕭文敬をたて、朝廷を支配。逆らう王族を殺害し言皇帝と噂されるほどの権力者になった。先帝の長男・蕭武陽(刘奕君 飾)は北方で挙兵し王権を奪還。蕭文敬(周奇 飾)は王位を譲るのを良しとせず、王宮に火を放ち焼死したと思われた。…が焼死体は偽物。遺体から虎賁軍の令牌が発見されるに及び、新たに皇位に着いた蕭武陽は、蕭文敬が虎賁軍と共に落ち延び皇位奪還の狼煙を上げると考えた。

謎の老臣が新帝に一人の男を推挙する。その男の父・劉子溫は虎賁の将軍だったが15年前に言風山の裏切りに会い、一家は滅亡。幸いにも生き残った遺児は復讐を誓い準備を進め、劉家の残党も協力しているという。新帝はその男、謝淮安(成毅 飾)を長安に呼び寄せることにした…。

 

架空ではあるものの、元ネタはありそう。明の第三代・永楽帝の靖難之役(朱棣が甥から帝位を簒奪)がそれらしい。靖難之役も幼帝は皇宮を逃げ出し、見つからないままだった。

 

“琅琊榜”風?な成毅

主人公・謝淮安は淮南という片田舎で県令に仕える主簿を務めている。県令役が王茂蕾(「延喜攻略」春望役)だったりするんで、もう少し展開があるのかと思ったけどほぼ第一集だけ。

…ここまではなかなか面白い。

第二集以降、舞台を長安に移してからは(季節が冬になったせいもあって)衣装も白のモフモフで“琅琊榜”風。護衛の剣客・葉崢(佟梦实 飾)もついてるし。

ここからが本格的に復讐譚になるわけだけれど…。

 

油断ならなさそうな軍人皇帝とこれまた油断ならなさそうな高官との出会いの前に、まずは「一生会うつもりはない」と言っていた妹・白莞(徐璐 飾)と再会。ここでは名乗らないけれど、序盤から妹が絡んでくる展開とは思わなかった。

妹の師父の老人は、新帝は簒奪者だとして抗議の死を遂げてしまう。…新しい皇帝もあんまり評判が良くなさそうだ。この師父はどうやら虎賁と繋がっていたようなので扇動の一手段かもしれないけど、抗議の自死をするほど新帝が酷いのか、どうも釈然としない。まあ新帝を演じているのが常にヴィランな刘奕君なので(笑)視聴者としては、何かあるんだろうな、とは思うけど。

 

…以降、7集までに朝廷の話は登場しないので、真偽のほどは分からないまま。折角主人公を呼び寄せたのに何も命じないでいいのかなー?

(8集でようやく新帝と高相再登場。どうやら主人公の活動報告は新帝に届いているらしい。功績は鮮やか、って話に。…そういえば現場に金吾衛が応援に来てたりしてたから、そこで察しろってことなのかな?)

 

ひたすらに重苦しく、暗い

妹の師父の死からの一連で、虎賁という組織が非情で残酷なことはよく分かる。が、そもそも虎賁がどんな組織なのか、目的は何か、何をしてきたのかはさっぱり分からない。15年の支配の間、他国と戦争している様子もないし、地方は(少なくとも淮南では)飢饉や貧困で人々が苦しんでいる、というわけでもなさそうだ。一度入ったら抜けられず、都中に眼を張り巡らせている、と語られるけれど秘密結社?

(8集で台詞があり暗衛であることが分かった。設立目的は不明のままだけど)

 

残酷さ、非情さで言えばその他の登場人物も負けてない。能力不足だからと言って呼び寄せた書生を切り捨てる新帝、逃げ出そうとして衝動的に下僕を殺害してしまう蕭文敬、仇の一人をあっさり刺し殺す妹…。沢山人が亡くなるのは武侠もの等でもおなじみではあるけれど、非常にやり口が残酷な割に誰もショックを受けたりしていないのが気になり始める。息を抜くような団欒場面もないので、これまでのところ全体に重苦しい空気が続く。

 

バランスを欠く展開?

主人公の復讐自体も“計略”は余り感じられず残酷さばかりが目立つ。

そもそも主人公のターゲットは6人。

・蒲逆川 乾盛19年に見捨てられ消息不明

・言風山 虎賁の総領 言皇帝と呼ばれていた

・青衣  監察/情報担当 朝廷の大臣の秘密を握っている

・劉子言  虎賁第一の殺し屋 叔父

・衛千庭 南葦溝に埋まってる

・謎の男 (フードで顔がわからない)

(ここから先は敵の生死について触れています。知りたくない方は2枚目の写真まで飛ばしてください)

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長安二十四計」微博より この二人の綱の引き合いのようだが、それらしい部分はまだ登場しない

「埋まっている」人の生死ついては7話で判明。「説英雄誰是英雄」の関七と同様の目にあっていた(本当に埋まってた)。ただ、関七には「生かしておきたい理由」と「閉じ込めなければならない理由」がはっきりしていたのに対し、こちらは懲罰としての意味しかない。挙句のあれは…そこまでやらなくても、と思わざるを得なかった。

 

情報担当のはずの青衣はあっさりやられるし(8集になって捕えられたことが判明。死んだんじゃなかったの?)、叔父の劉子言もあそこまで兄を憎んでいた(殺し屋にしてはあるまじき殺し方で憎んでいたとしか見えない)理由が分からない。

そもそも全体の1/4までに6人のうち4人、始末がついちゃっていいんだろうか?

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長安二十四計」微博より 人物相関図に記載されている人はほぼ登場しているんだけど…

「二十四」計?

「二十四計」と銘打った割に計略もぼんやりしている。「風起隴西」では各話のタイトルが兵法三十六計の計略名で(しかもちゃんと実行される)、分かりやすかった。

何かヒントがないかと思って微博も探してみたけれど「金蝉脱壳(蝉が脱皮するように人知れず姿を消す)」しか載ってなかった。…ほんとに24個あるのかなあ。

 

それとも「二十四」は二十四節気のことなのかな?

というのも少なくとも最初の二集には節気名が表示されていたからだ。ドラマの中での経過時間は説明もないので分からないが、主人公らの衣装はころころ変わる。だんだん薄着になっているので、季節は進んでいるんだろう。節気を代表する“物”や“イベント”で観る人がみれば分かるのかもしれないけど、その辺りの知識のない自分にはさっぱり分からない(泣)。

 

全ての原因は“説明不足”?

主人公に同情できず、残酷に見えてしまうのは主人公(の父親)側の事情も、仇側の事情も分からないからだ。

「一族の仇を討つ」ことが物語の中心になっているドラマは沢山ある。金字塔「琅琊榜」は勿論のこと、最近では「蔵海伝」も基本構造は同じ。ただ、これらの物語では自分の父親や一族がどんなに無辜で善人だったか、仇側がどれほど卑怯な裏切り方をしたのか、は丁寧に描かれた(「琅琊榜」の場合事件の真相は中々明らかにならないが、皇帝が語ることを禁じていることで逆に被害者の悲劇が強調される)。

8話に至って主人公の父親の墓が見つかり(15年前に飼っていた犬が突然現れて…というエピソードには苦笑いしてしまう)市井の人々が将軍の悼んで墓を作ってくれたことだけは分かった。…それだけ?

 

もやもやの原因の大半はやっぱり「説明不足」に集約される気がする。計略にしても季節にしても設定にしても、明らかに説明が足りていない。

このドラマは原作なしのオリジナル作品だ。但し脚本家の数が5人と多い。脚本が迷走した可能性もありそう。これだけ俳優さんを揃えて全28集しかない、というのも少々気になる点。もしかすると編集時点で大量にカットされたのかも、とも思う。

 

残り3/4で起死回生はある?

主人公が絶対に仇を討たないといけない人物は虎賁のトップである言風山と謎のフードの男。主人公を新帝に推挙した人物もフードを被っていたけど同一人物?

それから虎賁に囚われている王劲松さん(役名が未だに不明)の役回りも謎のまま。

加えて8集からは車椅子の将軍・顧玉(叶祖新 飾)の事件が展開し、主人公側・虎賁側にも新たな登場人物が。

 

権謀術数を中心に据えたドラマなので、とりあえず成毅の美しい剣技が見られればいい、というわけにもいかない。考え込んでいるか、敵と対峙して睨みつけているかだけでは、成毅の魅力全開というわけにもいかない。…でもあと3/4もあるわけだし(笑)。

今の処ひたすら復讐のことだけ考えてるらしい主人公と、それを諫める年長者の台詞があるだけだけど、転機はいずれ来そうではある。…面白くなるかなあ、なるといいなあ。

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題名:长安二十四计 The Vendetta of An 28集

編劇:霜城(总)、莫雨聪、李雪彤、王骢、虞筱霏

導演:林峰「赴山海」李磊「鬼吹灯」シリーズ

出演:成毅 Cheng Yi 刘奕君 王劲松 周奇「蔵海伝」 佟梦实Tong Meng Shi「慶余年」

 

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「大生意人」の時代はいつ?(~10集)

「大生意人」面白い。面白いんだけど清朝の歴史に疎いもので、いつ頃の話か、どんな時代なのかさっぱり分からない。中国ドラマだと西暦何年のテロップは出ないし。場所も寧古塔って何処よ?寒そうだし流刑地だし北だとは思うけど…。ここはやっぱり自分で調べるしかないかも(泣)。資料は百度百科、日本版・中文版Wikiなどからです。

ここから先は序盤のストーリーのネタバレが含まれます。ご注意ください。

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「大生意人」微博より 全員勢ぞろいのポスターはちょっと古臭いのでこっち(笑)

序盤は寧古塔から

主人公・古平原(陈晓 飾)は5年前に寧古塔に流刑になった書生で、今は奴婢として駐在する将軍の代わりに部族間の争いから事件の解決まで様々なことを請け負っている(というよりこき使われている)。或る日2人の流人が高価な朝鮮人参を見つけてきた。ところが人参は競売当日に紛失、潔白を主張した流人は自殺してしまい、古平原は事件の解決を命じられる。

この人参を買いに来た京城の大店・李家の息子・李欽(罗一舟 飾)、同道する謎の女性商人・蘇紫軒(李纯 飾)らの協力で盗みの疑いを掛けられた母子を救うことには成功するものの、古平原は将軍に追われお尋ね者に。

山西から来た商隊の隊長・常四(成泰燊 飾)とその娘・玉児(孙千 飾)に助けられた古平原は共に山西へ。ところが大晦日に帰って来たばかりの商隊は借金の返済を迫られ、返さなければ屋敷を奪われてしまうという。古平原と玉児は一計を案じ…。

 

古平原は頭も良く弁も立つのだけれど、商売のことは素人。なのに行く先々で命を懸けた駆け引きに挑むことになる。ドラマの中で語られる「商いは戦なのだ」という言葉通り盗まれるわ、脅されるわ、騙されるわ、獄に繋がれるわで、この時代の商売は命が幾つあっても足りなさそう。

そこをどうやって切り抜けていくのかが見どころだけれど、そもそも地方から科挙を受けに来た一介の書生が何故「陥れられ」流罪になったのか、も全編を通じての大きな謎になっている(のだと思う)。

 

登場人物も非情且つ狡猾な手段で獲物を横取りしようとする(ように見える)李欽の父親・李萬堂や、蜂起を画策しているらしい蘇紫軒等、今の処何を考えているのか読めない人たちもいて、お話がどう転がっていくのかさっぱりで面白い。

 

で、いつ頃の話?

中国の年号はさっぱりだけど主人公の台詞にあるのは

「咸豊5年に流刑になった」「ここで5年我慢した」

咸豊というのは1851-61年に使われた年号。皇帝は第9代、愛新覚羅奕詝。西太后の垂簾政治が行われる前の最後の皇帝だ。流刑が咸豊5年でそこから10年経っているとすると、ドラマの最初の時点は咸豊10年(1861)辺りということになる。

 

ドラマの中での役人や軍人の腐敗っぷりときたら酷いものだけれど、それもそのはず。咸豊帝の治世は内憂外患の時代だと言っていい。

内憂は1851年に始まった太平天国の乱。キリスト教系の組織・太平天国軍が蜂起、長沙、武昌といった大都市を陥落させ53年には南京を占領、新王朝を宣言するに至る。背景には重税や匪賊の問題があったらしい。乱は1964年に指導者が死亡し南京が陥落するまで続いた(日本版Wiki)。

外患はアロー戦争(第二次アヘン戦争)。英国船籍の中国船、アロー号の臨検に端を発する清と英仏連合軍の戦争だ。1960年には天津を占領され、北京に連合軍が迫り咸豊帝が北京を脱出。連合軍は北京に入城し天津港の開港や九龍半島の割譲を含む不平等条約を結ぶことでようやく終結した(日本版Wiki)。

1861年8月咸豊帝は避難先の熱河で死去。西太后一派を廃するよう遺勅を残すも辛酉政変により逆に妃嬪であった西太后らに実権を握られる。

 

…清国ガッタガタだったんだな。南では叛乱、東では外国の侵攻、なのに朝廷内では権力争い。ドラマの中で朝廷が埋蔵金伝説にも興味を示し税を取りたてようとするのは、戦争続きで国庫が底をついているからだ。

 

咸豊帝の評価は日本版と中国版のWikiでは全く違っていて日本版が「平凡だが熱心に政務に励んだ」とされているのに対し中国版では「大酒飲みで好色。音楽が好きでアヘン中毒」とにべもない。

その後一時的に清国は落ち着きを取り戻すものの(同知維新)、光緒帝時代(1875年~)には再び清仏戦争日清戦争など戦火が広がることになる。

 

ところで寧古塔って何処?

ドラマ序盤の舞台は「寧古塔」。聴いたことがない地名だったけれど「寧古塔に流され中原には二度と戻れない」というのは清代のドラマの定番台詞なんだとか(知らなかった)。

中国東北部、旧満州の古い地名で現在の黒竜江省牡丹江市寧安市辺りを指すらしい。範囲は案外広くて黒竜江省東部からロシア極東南部に広がる地域。名前の由来は“塔”があるからではなくモンゴル語で「6つ」という意味の“ニングタ”からきているのだそうだ。

 

普通に寧古塔で調べると歴史ある地だということしか分からないけれど、流刑地としての方が有名みたいだ。17世紀後半から18世紀初頭にかけては東北諸民族が朝廷に貢物を運ぶ中継地点として栄える一方で、清の朝廷から駆逐されてしまった役人の流刑地となった。

ちなみにドラマに登場する最初の交易品「高麗人参」はこの地域で売買される品物の代表格。

何故交易の中心地が流刑地になるのかというと、辺境の人手不足解消の為らしい。正式に任命された行政官の補佐や、開墾のような大プロジェクトの運営は元官吏に任されるし、重罪犯も家族を連れて行くので人口増加、人手不足解消の役に立った(百度百科)。

 

ただ寧古塔の自然は大変に厳しく、生きていくのは大変だったようだ。北京からは7,8千里離れており、(旧暦)8月には雪が降り始め、9月には河川が凍り付き厚い氷と雪に覆われる、そんな土地だったようだ(王家祯「研堂见闻杂录」)。食糧を得るためには万里の長城の内側の2倍働かねばならない。ドラマの中で親たちは「我が子を中原に送る」ことに固執するけれど、この土地を離れて豊かな中原で暮らしたい、という願いはよく分かる気がする。

中央から遠く離れているせいか、辛亥革命以降は革命運動や抗日パルチザンの拠点にもなったようだ(日本版Wiki)。

近年では観光の目玉として「流人体験」ツアーもあるようだ(CCTV2025.01.04)。

 

じゃあ山西は何処?

寧古塔を逃げ出すことになった古平原は常四の商隊に紛れ山西に向かう。ドラマの中では商業の中心地、と紹介されているけれど、その中心地・平遥城は商業、特に金融の中心地として有名だった。清代末期には20数件の票号(金融機関)が軒を連ねていたという。中でも日昇昌は有名だが辛亥革命で清が倒れると債権が回収できず没落した(日本版Wiki)。

平遥城は最も保存状態の良い古代都市として世界遺産にも登録されている。

光緒帝の時代(1875~)には大きな飢饉が全土を襲ったが山西省は最も被害のひどい地域の一つで、100万人のうち95万人が死亡したという。

 

中文版wikiには「古代のウォール街」とあった。成程李萬堂が商売の権利を手に入れたがるわけだ。

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微博に載っていた人物相関図によれば物語はこの後「徽州」(現在の安徽省。「徽州商人」が有名)「京城」(北京)「江蘇」(古くからの商業都市。上海を含む)と舞台を移していくようだ。これまでのどの場所も撮影が大変美しい。果てしなく広がる草原、一面の雪景色、古都の街並み。それだけでも一件の価値がある。撮影は滅茶大変そうだけど…。

 

密度の濃いドラマな上分からないことも多くてなかなか視聴が捗らないけれど、面白さは鉄板なので日本に上陸したら是非多くの人に見てほしい。

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題名:大生意人 Legend of The Magnate 40集

原作:赵之羽「大生意人」

編劇・導演:张挺「大明風華」「天下長河」

出演:陈晓 Chen Xiao 孙千Sun Qian 罗一舟Luo Yizhou 成泰燊Cheng Taishen

李纯Frida Li Chun

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「唐朝詭事録之長安」(~最終集)天子と公主の決裂は次季持ち越し!

最後の事件もなかなかにスリリングだった「唐朝詭事録之長安」。

第7案で天子と公主の最終決戦「先天政変」まで一月ないことが判明、更に第8案が外国からのスパイを扱った内容だったのでドキドキしたけれど、どうやら最終決戦は次季まで持ち越しのようだ。でも「私は決心した!」って公主が宣言しちゃったのでシリーズが今季で終了ということはなさそう。最終話と次シーズンに活躍しそうな怪しい人たちについて調べてみた。

ここから先は最終話ストーリーの(多少の)ネタバレが含まれます。ご注意ください。

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「唐朝詭事録」微博より 主人公たちは遥か後ろ 公主と天子が前面に(笑)

第8案「盛世馬球」

常々辺境で唐と争っている「盔勒」からのスパイ探しのお話。六本指の男、四天王の面、鬼市など怪しげなアイテムが頻出し、裴喜君が危険な目にあったりもする。スパイはどうやら天子が国際交流の場として用意した「馬球試合」で事を起こそうしており、しかも高官の中にスパイと通じている者がいるらしい…。

 

盔勒はどうやら架空の国のようだけれど、唐に限らず大抵の時代で北方民族と揉めてる気が。そりゃスパイもいるだろうし政治家を抱き込むこともあったろう。ちなみに(詳しくは言えないけど)高官が敵国と通じた理由は「仕方ないよねー」と同情できるものだった。

ちなみに玄宗の晩年に起こる「安史の乱」は辺境の異民族進入を防ぐために設けられた節度使がその発端になる。そういう意味でも複雑な気持ちになるエピソードだった。

 

事件は解決し試合で天子は異民族の皆さんのハートをつかむことにも成功。一方不利な状況に追い込まれた公主は遂に何事かを決心する、というところで今季はおしまい。

 

馬球とポロは同じ競技?

馬球はポロの原型とも言われる競技で、後漢の頃から中原で流行した。西に伝わりポロとなったらしい。日本に伝わったのは複数の球を用いる「打毬」で、平安時代には端午の節句の際に行われており、一時は廃れたものの江戸時代に武技の手練用に再び用いられるようになった(宮内庁HP)。…日本でも同様の競技が行われていたなんて知らなかった。写真を見ると流鏑馬みたいな衣装でやっていたようだ。

 

ドラマの馬球シーンは迫力満点。他のドラマでも度々馬球のシーンは登場するけど、ここまで緊迫感ある馬球シーンにはなかなかお目にかかれない。日本は撮影用の馬が少ないので、馬が轡を並べて競り合うようなシーンは撮影できないだろうな。羨ましい。

 

天子の周りの怪しい人物たち

天子の周りには如何にも怪しい登場人物たちが侍っている。太上皇と繋がっている太鑑や、実は公主のスパイである宮女など。いろんなことを天子に吹き込もうとしたり自身の主人に情報を漏らしたりしているけど、今季特別大きな動き、というのはなかった。こちらも次季に持ち越し?

 

宮女の阿茵についてはちょっと面白い記事を見つけた(網易25.11.23)。彼女は天子の為に赤箭粉を煎じる役目なのだけれど、この赤箭粉を使って天子の暗殺が謀られた事実がある、というのだ。元氏というのがその宮女で、これが先天之変の先駆けになったらしい。ちなみに赤箭粉というのは天麻を原料とした薬で抗痙攣作用・脳機能改善・血圧降下などの作用があり、太平公主も愛飲していたと「資治通鑑」に記述がある。

 

同じ記事にもう一人、実在の人物だと特定された役柄についても記述があった。公主の腰巾着、崔相(李进荣 飾)。フルネームは崔湜(自分で名乗るシーンがある)。この人の経歴もなかなか面白い(以下中文版Wiki)。博陵崔氏という名門に生まれ、本人も美しい容姿を持ち美貌の妻がいたのだが、妻妾を玄宗帝に献上した。武則天の側近だった上官婉児の愛人であり太上皇の娘・安楽公主とも密通していた。一方密かに太平公主と繋がりを持ち、先天之変を起こす。玄宗に毒を盛る計画もこの人の発案らしい。…色男、すごいな。

 

太平公主の波乱の生涯

ドラマの公主も複雑で多様な面を持つ権力者だけれど、実際の太平公主の経歴もなかなか(以下中文版Wiki)。

武則天の末娘として665年頃に生まれる。美しい人だったようだが、中文Wikiでは5,6歳の時に従兄に襲われるという事件が記されている(従兄は流刑中に殺害)。8歳の時に祖母の菩提を弔うという名目で出家。この時に太平と名乗る。出家は吐蕃から持ちかけられた婚姻の話を断る為だったらしい。

最初の結婚は16歳の頃で開いては叔母・城陽公主の次男、薛紹。結婚は大々的に行われ恩赦もされた。武則天は娘を溺愛していた為、薛紹の兄嫁の出身が卑しいとして離婚を強要したりと横暴だったようだ。ただ、夫婦仲は良かったらしく二子をもうけている。ただ婚姻は長く続かず、薛紹の兄と弟が謀反に参加し処刑されたことで終止符が打たれる。夫の薛紹は死罪を免れたものの、鞭打ち百回の刑を受け獄中で餓死させられた。

 

二回目の結婚は2年後。別の従兄との結婚話があったが立ち消え、結局武則天の伯父の孫である武攸暨と結婚する。彼に嫁がせるために武則天は彼の妻子を殺害した。この二か月後、武則天は正式に即位する。ちなみに武攸暨は先天之変前年の712年に亡くなった。

 

この二度目の結婚の間に太平公主は寺の僧や朝廷の部下たちと愛人関係にあったと書かれている。歴史上女性の権力者には愛人の噂が付きまとうので本当のところはどうなんだろう?ともかく、これが武則天の耳に入り噂の相手は投獄されてしまう。それが太平公主武則天の亀裂を決定的にし、太平公主神龍政変に加わり武則天に退位を迫ることになる。

 

その後韋皇后の唐隆政変を玄宗(当時は太子)と共に収めたのは以前書いた通り。じゃあその後どのくらい権力があったかというと、朝廷の七人の宰相のうち五人は公主が任命するほどで、睿宗(玄宗のお父さん)より強大な権力をもっていたらしい。

玄宗たちにとっては煩わしい存在だったにちがいない。

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太平公主と天子となった玄宗の争いは激化の一途を辿り、公主がクーデターを起こすとの理由で玄宗が先んじて起兵するのが「先天之変」。政変の日付は先天2年7月3日。

…馬球試合がいつか分からないけど、第七案の時点であと10日もなーい!

第4季の予定はまだ何も発表になってないけれど、あるよね?ね?

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題名:唐朝诡事录之长安 Strange Legend of Tang Dynasty Ⅲ 40集

導演:巨兴茂

編劇:魏风华 郭靖宇

出演:出演:杨旭文William Yang Xu Wen 杨志刚Yang Zhi Gang 郜思雯 陈创 孙雪宁

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「水龍吟」における江湖の歩き方(~12集)

「唐朝詭事録之長安」や「大生意人」といった大作が来ているのに、最初に観てしまうのが「水龍吟」。ストレスフリーに観られるんだもん(笑)。

ただ「江湖」や「武侠」が苦手という声もよく聞くので、最小限これだけ分かっていれば大丈夫!(かもしれない)な情報をまとめてみた。

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「水龍吟」微博より 罗云熙はUPでも美しいけれど、動いている時も非常に綺麗

序盤の超ざっくりとしたお話

結婚式が行われている郝府の屋根の上に黒衣の男が現れる。男は琵琶を奏でそこに居た全員を皆殺しにした。事件を捜査する中原剣会・鍾春髻(包上恩 飾)は寺に隠遁する唐儷辭(罗云熙 飾)が犯人であることを突き止め、惨劇での唯一の生存者で目撃者の阿誰(林允 飾)と共に寺に向かう。

唐儷辭はそれが自分の仇敵、風流店尊主・柳眼(方逸倫 飾)の仕業であることを見抜く。柳眼は武力が高まる薬と偽り、飲むと薬人(傀儡)になってしまう丸薬を武林にばらまいているらしい。

柳眼が剣王・余玄清を通じて丸薬を流布していることを突き止めた唐儷辭は護衛の池雲(敖子逸 飾)剣王に恨みを持つ沈郎魂(肖順堯)、阿誰と共に剣王城へ。鍾春髻も兄弟子と共に剣王城へ向かう。そこには天淨閣の普珠(杨仕泽 飾)、謎めいた味方・雪線子(白澍 飾)もやって来ていて…。

 

ざっくり書いてもどこの剣派だ、どれが悪役だ…とグループがおおくてややこしい。これが武侠ものの醍醐味だとも言えるけど、何せテロップ短いんで分かりづらい。

 

正派と邪派とその他

但し、多すぎる登場人物全部を覚えている必要はないと思う(自分は全然覚えられない)。武侠ものって、名乗ってすぐに死んじゃったり退場しちゃったりする人も多い。時々「○○の仇だ~」と言って兄弟や義兄弟が登場したりして「○○って誰?」となったりするけど、気にしない(笑)。

同じ派閥の人は似たような色の服を着ていたりするんで、大体わかる。

 

武侠もののグループ(門派)は乱暴に分類すると「正派」「邪派」「その他」に分かれる。正派は基本的に正義の味方で、歴史もある。朝廷やお役所とは距離を置くけれど、世間を騒がす凶悪事件等があれば積極的に事件解決に関与する。

このドラマでは鍾春髻の属する「中原剣会」や普珠の属する「天淨閣」がそれにあたる。主人公・唐儷辭が元々所属していた「周睇樓」も正派。

剣王率いる「剣王城」も本来はそのはずだったんだけど…。

 

周睇樓で過去に何が起きたのか、についてはこれから解き明かされていくんだろうけど、この門派は音を操るのが特徴なので皆得意楽器がある。唐儷辭は琴と笛、且つて同じ派閥だった柳眼は琵琶。過去でちらっと登場した二師兄(夏之光 飾)の楽器は鼓らしい。楽器持っている人は皆この派閥かというと…そうでもなくて、敵にもいたりするから要注意。

 

このドラマの邪派は簡単で「風流店」。風流店は入れ替わり立ち替わり新しい部下が登場するので覚えにくいけど名前に「色」か「花」の名前が入っている。衣装もその色に合わせてあるしメイクも如何にもそれ風なんで、混乱することは少なさそう。

ここまで登場しているのは箜篌(竪琴)を使う「紅姑娘」、池雲と関係ありそうな「白素車」、桃の花と共に登場する「西方桃」ら。

 

主人公はそもそも寺に隠遁しているのでどちらにも属していない。ただ正派からは大師兄殺しの疑いを掛けられ、後には世界を滅ぼす「一阙阴阳」ではないかという疑いをもたれてしまう。主人公のお友達はいろいろ謎だらけ。途中で仲間入りする十三楼の沈郎魂は殺し屋だし、お友達らしい雪線子は今の処お友達、とだけで正体不明。祝宴で結婚相手を含め皆殺しになった阿誰もどうやら特殊能力があるらしい。

大体この程度分かっていれば序盤は置いていかれることがないんじゃないかな。

 

ドラマは微妙にブロマンス風味

どこで見たのか忘れちゃったけれど、このドラマは「ブロマンス」時代劇だと書いてあった。阿誰というヒロインはいるしキスシーンもある。池雲と白素車、柳眼を慕う紅姑娘、普珠と年に一度碁を打ちに来る西方桃などサブカップルも豊富。

 

一方で確かにブロマンスっぽい感じも受ける。男性陣のベクトルは(相手がいる、以内に関わらず)真っ直ぐ主人公・唐儷辭に向いてる、というか。仇と思しき柳眼とは愛憎半ばする関係みたいだし、池雲と沈郎魂は命がけで守ろうとする。普珠なんか唐儷辭の手を引いて剣王城から逃げ出してた(笑)。

こうした場面は想像力を逞しくして捜せばもっといろいろありそう。すごいなーと思うのは、主人公が相手が男女どちらであってもそれらしく見えてしまうことだ。罗云熙、変幻自在。

 

罗云熙はとにかく美しくかっこいい

いろいろ書いてきたけれど、このドラマの見どころはやっぱり罗云熙だ。唐儷辭は扱う武器も笛・琴・剣・紅布と様々。なんたって天下第一なんで、強い。最近の武侠ものは旧来の武侠ものにありがちな修行シーンとかは一切ないので最初っから爽快感MAXだ。

元々バレエダンサーだけあって武打シーンの動きが美しい人だけれど、特に高いところから舞い降りてくる姿は非常に美しい。ワイヤーに釣られてふわりと下りてくるのは見た目と違ってものすごく筋力が必要で、すごいなあと思う。

髪型も一般の古装と違って巻き毛で毛先が白髪。多分出自と関係があるんだろう。総銀髪のスチルも出回っていてこれまた美しい。

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お話は主人公・唐儷辭の出自と過去、記憶を失っている阿誰の正体、辺りの謎を含みながら展開していくんだろうと思う。特別出演の徐正溪の姿もまだ拝んでないし、先が楽しみ。

音楽もオープニングは黃子弘凡、エンド曲は张靓颖と刘宇宁のデュエットと豪華なことも付け加えておきたい。

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題名:水龙吟 Whispers of Fate 40集

原作:藤萍「千劫眉」

編劇:庄修 蔺丛鹤 闫沫伊

導演:陈宙飞(「少年白马醉春风」) 钱敬午(「苍兰诀」)

出演:罗云熙Luo YunXi 方逸倫Fang Yilun 肖順堯Xiao Shunyao 林允 敖子逸

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