レザークラフト研究

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手縫糸-撚り糸と、組紐状の糸

今回の記事は、あまり一般的な話ではないのですが、撚り糸ではなく、組紐状の糸をレザークラフトの手縫いに使ってみた感想を書いてみたいと思います。

 

撚り糸と、組紐状の糸

 

レザークラフトで手縫いする場合、手縫い用の糸を使うと思いますが、一般的によく売られている糸は、「撚り糸」の部類に入ると思います。

『エスコード』『ビニモ』『ゼブラ』『六花(リュウファ)』『オ・シノワ』など。

撚り糸は、通常、何本かの細い糸を撚って1本の糸に作られています。

撚りの方向は、基本的には、ミシン用の糸と、手縫い用の糸では、全く逆方向になりますが、「手縫いにも使える」と表示のあるミシン用の糸もあります。

 

それに対して、あまり一般的にレザークラフト店には置いていないのですが、「組紐状の糸」、というものも売られています。これは、レザークラフト用の糸、というよりは、他にも様々な用途で使えるための糸、なのだと思います。

『ユーフェン ポリブレイド』など。

色も、太さも、撚り糸と同じくらい、種類があるようです。

組紐状の糸は、文字通り、組紐の状態に編まれている糸のことです。

組紐の構造は、(糸の種類によりますが)6本くらいの糸で組んであり、その6本くらいの糸も、それぞれ、さらに細い糸から成りたっています。

撚っていないので、繊維がほぐれてこない、繊維がほぐれないので見た目が綺麗、という特徴があります。

 

撚り糸も組紐状の糸も、そんなに価格は変わらなかったように思います。

 

撚り糸も、組紐状の糸も、どちらも、レザークラフトにおいては、糸に蝋を引いて縫うことになります。

 

 

組紐状の糸をレザークラフトの手縫いに使ってみて

 

実際に組紐状の糸を試しに使って縫ってみたところ、私個人的にはあまり好きになれなかった点が2つありました。

 

1つめは、蝋のこと。

 

前述のとおり、組紐状の糸は、繊維がほぐれることが無いので、見た目は綺麗なのですが、逆に、均一に糸が組まれて紐状になっているため、蝋をしっかり付けないと、スルスルと糸が緩みやすく、すべって縫いづらいのです。

「糸締まり」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、糸を引き締めるのが行いづらい。(自分だけ?w)

なので、蝋を沢山付けることになりますが、当然、糸がベタベタして、手もベタベタするので、自分はかなりこのベタベタな状態が苦手です。

しかも、蝋の沢山付いた糸を使うと、縫穴に蝋が付いて残るし、作品にも手から蝋がベタベタと付くので、あまり綺麗な仕上りになりません。

 

 

2つめは、誤ってもう一方の糸のすき間に針を挿してしまったときのこと。

 

レザークラフトで手縫いする場合、まず1つの縫穴に糸を通して、革の両側に糸を均等な長さに垂らし、両端に垂れた糸に、それぞれ針をセットします(ですので、針は2本使います)。

次に、隣の縫穴にそれぞれの側から針を挿し、縫い進めます。

1つの縫穴の中で、それぞれの方向からの糸が交差する、という形で縫うわけです。

 

このとき、片方の糸を通したあと、反対側から同じ縫い穴に糸を通す時、縫穴の隙間はとても狭いので、後から通した針が、先に通してある糸に、わずかに刺してしまい、そのまま通してしまうことがあります。

この交わった部分を、とりあえず「交差点」と呼ぶことにします。

通常、この「交差点」は、縫穴の中で起こります。

慣れれば、「A糸の隙間にB糸を挿してしまった!」ということが、縫穴の中を覗かなくても、革の表、又は、裏の縫目の見た目でわかります。

「交差点」で糸が固定されて引っ張られた状態になるため、縫目が綺麗に並ばなくなるからです。

A糸(緑色)にB糸(黄色)が刺さっている状態。写真は撚り糸です。
わかりやすいように太い糸で作りました。
この記事で言う「交差点」は、この写真のような状態が、
(01.㎜くらいわずかに交差した状態で)縫穴の中で起きている、と思ってください。

 

そこで、元の状態に戻したいのですが、組紐状の糸の場合、思ったよりこの修正する行為に時間がかかってしまいました。

 

従来の撚られている糸であれば、少しA糸の撚りをほぐして、B糸の針を逆行させれば、すぐ元の状態に戻せます。

ほぐしたA糸は、再度よく蝋をひいておけば、見た目も殆ど元どおりになります。

 

一方、組紐状の糸の場合、糸自体が組紐状に編み上げられているので、そもそも「糸の撚りをほぐす」という動作ができません。

特に細い糸で、縫穴も小さい場合、挿してしまった位置を把握して、正確に元のルートで針を戻すのは、至難の業です。

自分の場合は、1.5㎜ピッチの縫穴に、0.4㎜の細さの糸で縫っていた時に、何十分も格闘したあげく、結局、針に糸が付いたままでは戻すことができませんでした。片方の針の根元の糸を切って、何とか糸を引き出して戻しましたが、糸は短くなってしまうし、とてもストレスを感じました。

 

眼が悪い自分には、ルーペでかなり拡大しても、組紐のどの部分で糸を交差してしまったのか、判別するのは無理に近かったです。

 

というわけで、自分はそれ以来、撚り糸を使い続けています(笑

 

ただ、組紐状の糸が良くない、ということではありません。

大ぶりの5㎜、6㎜ピッチくらいの縫穴で作る作品であれば、縫穴自体が大きいですから、「交差点」を作ることも起きにくいでしょうし、組紐状の糸のほうが見た目は撚り糸より少し綺麗なので、良いかもしれません。

 

しかし、小さい縫穴に細い糸を使う場合は、ひと目ひと目を慎重に縫い進めないと、修正する時に、前述のような大きな苦労が待っています。

 

 

余談: 蝋(ロウ)引き糸

 

蝋の有無に関して言えば、「蝋(ロウ)引き糸」といって、製造過程で糸に蝋を塗ってあるタイプの糸と、蝋が付いていないタイプの糸があります。

 

蝋引き(ロウビキ)糸については、そのまま使って縫える糸が殆どですが、

『ビニモ』の手縫い糸に関しては、付いている蝋が多すぎるので、端布で3回くらいは取り除いてから縫うことをお勧めします。

そのまま使って縫うと、針を縫い穴に通すたびに、革の穴の周囲に蝋がくっついてしまい、作品が汚れる原因になります。

 

 

今回は、組紐状の糸を使ってみて、そして、苦労したお話、でした。

 


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