映画ごときで人生は変わらない 

不穏映画が大好物のアラフィフ女 感想と考察が入り混じる映画レビュー。不穏度を数値化しています

【対峙】評価と感想(ネタバレあり)/喪失と怒りと再生と鬱と。

 

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不穏度

35(100を満点として)

自分ごとだったら…と考えると相当キツイ

基本情報

公開年:2021年

監督&脚本:フラン・クランツ

キャスト:マーサ・プリンプトン(ゲイル・ペリー)ジェイソン・アイザックス(ジェイ・ペリー)アン・ダウド(リンダ)リード・バーニー(リチャード)

上映時間:111分

あらすじ

<以下、公式サイトより引用>

アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が勃発。多くの同級生が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。それから6年、いまだ息子の死を受け入れられないジェイとゲイルの夫妻は、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆があったのではないかという思いを募らせていた。

夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をする機会を得る。場所は教会の奥の小さな個室、立会人は無し。「お元気ですか?」と、古い知り合い同士のような挨拶をぎこちなく交わす 4 人。

そして遂に、ゲイルの「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける──

評価

感動しました!ずいぶん前に知人に勧められたんですけど、なんか重そうで怖くて躊躇してたんですよね…。でも今、観て良かったと本当に思いますよ。なんつーか、色々な意味で人生において「観ておくべき」作品の一本だと思います。

主たる舞台は教会の一部屋。4人だけの会話劇なんですが、喪失から怒り、赦しを経て魂を再生させるまでのダイナミックな一部始終が詰まっていて、2時間緊張感が続きます。すっかり感情移入して最後泣いちゃいましたよ…。

そんで、舞台のほうが合いそうなこの脚本、なぜ映像作品でなくてはならなかったのか?ということを考えちゃったんですよね。では以下、そんなことも含めての感想です〜。(ネタバレちょいあり)

感想

オープニングは教会のスタッフが「対峙のための部屋」を用意するシークエンス。ソワソワしつつテーブルの形からテッシュの位置まで気を配る様子から、大切な会合なんだなということが伝わってきます。

続いて車の中の夫婦。高校乱射事件の被害者側の両親です。妻のゲイルは「(言わないとならないけど)あの言葉を言えるか分からない」と言います。どんな言葉なのか?という謎が最後まで物語を引っ張るわけですね。

その後、加害者側夫婦と円テーブルを囲んでの対話が始まる。画の種類はわずか6つ。

被害者夫婦の2S、加害者夫婦の2S、そして一人一人の1S。しばらくこの切り返しだけで会話が続きます。カメラはフィックスです。

ここで加害者夫婦の2人の間に、奥の壁に飾った十字架が見えるんですよ。つまり被害者夫婦の正面に十字架があるということ。これ、「あの言葉」が何なのかを示唆しているように思います。

そして女性たちは自分の感情に基づいたことを話すのに対し、男性2人は「銃規制はどうなってるんだ?」みたいな政治的な方向に行きがち。それを被害者妻であるゲイルが引き戻す、といった流れです。

その後しばらくすると、カメラが揺れだす。手持ちに変わるんです。するとしだいに被害者夫のジェイが感情をあらわにし、怒るところでカメラのブレが最大になる。

普段立場でモノを語ることが多い中年男性が感情的になることの重大さを映像で表現したかったのでしょう。

その後、登場人物たちは部屋の隅の別の椅子に座ったり、テッシュを取りに立ったりと変則的に動きだす。

そして最後ゲイルは意を決して「あの言葉」を言うのです。「あなた方を、そしてあなたの息子を赦します」と。痛ましいまでの喪失を乗り越えた瞬間です。

そして4人は祈りを捧げ、再び円テーブルを囲むことなくおよそ2時間の対話を終える。

はじめに加害者妻が被害者側に花を手渡しているのですが、部屋を出た後、4人は花を入れる箱を教会の人に探してもらいます。待っている時間なんとなく気まずい空気が流れ、加害者夫婦は先に教会を出る。

しかし、その後。

妻のリンダが1人で戻ってきて「言えなかったこと」を被害者夫婦に語ります。2人の女性は涙を流して抱き合います。そして流れてくる讃美歌。実に感動的なクライマックスです。おそらく5段階の死の受容過程に近いものだと思うのですが、人はあまりに辛い出来事をこうやって乗り越えていくのでしょう。

んで、当初「これ舞台作品で良くない?」と思ったのですが、画面正面に映る十字架に気がついたり、揺れるカメラなんかを観て、あ〜これはやっぱり映像で表現すべき作品なんだなあ、と。ちゃんと「映画」であるなあ、と。

監督は子役からキャリアをスタートさせ、テレビドラマなどで役者として活躍したフラン・クルンツ。今作が監督デビュー作だそうですが、なんかもう仕上がってます。

それとですね、もう一つ唸ったのがとあるキャラクターのせいで単なる「良かったね」な感動作にはなってないんですよ。4人のうち1人だけ最後まで感情に蓋をしている人物がいます。加害者父のリチャードです。事件後、多方面から責められ生活を脅かされた末に身についた術なのか、元々の性格なのか。話していない秘密もありそうですし、彼の気持ちにピリオドはまだまだ着かないでしょう。

最後まで目を合わせず、気まずそうにしているリチャードの姿は、この日が終わっても「加害者の親」はずっと続くことを考えさせられて暗い気分になります。しかも誰にでも起こり得ることだしなあ。気持ちも分かるよ…ってよくよく考えたらすごい鬱映画じゃん…。年末にとんでもないモノを観てしまったわ…。

喪失と再生とそして続く現実を描いた、重いけれど観る価値がある一本「対峙」はアマプラで観られます〜。

対峙

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