目次
- はじめに
- 「関税=基本関税+税・附加金」の構造を理解する
- 関税評価は「取引価額主義」が基本 — 証拠書類の整備が肝心
- 許認可・輸入禁止・検査制度に注意する
- 通関の流れとポイント
- リスク管理:AEOと事前照会
- まとめ
はじめに
インドは経済成長が続く一方で、関税制度や規制が頻繁に更新されるため、輸入実務では想定外のコストや手続き遅延が発生しやすい国です。
本記事では、「関税の構成」「価格評価の考え方」「許認可・規制」「通関手続きの流れ」「実務上の注意点」を中心に、実務で使える視点を見ていきます。
「関税=基本関税+税・附加金」の構造を理解する
インドの輸入課税は、一般に(1)Basic Customs Duty(BCD:基本関税)、(2)Integrated GST(IGST:輸入時に課されるGST)、(3)Social Welfare Surcharge(SWS:社会福祉付加金)などの合算で決まります。
なおIGSTは国内取引のGSTと同率で、事業者は輸入時に支払ったIGSTを原則として仕入税額控除(ITC)で処理できますが、支払いタイミングや申告ミスでキャッシュ負担が増えることがあるため注意が必要です。
用語
- GST:インド国内で取引される「モノ(Goods)」と「サービス(Services)」に課される統一間接税
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IGST:Imported goods に対するGST。事業者は後でクレジット可能な場合が多い
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SWS:基本関税額に対するパーセンテージで計算される付加金(例:10%が通例)
関税評価は「取引価額主義」が基本 — 証拠書類の整備が肝心
インドの関税評価は、原則として輸入者と海外売主間の実際の取引価額(transaction value)に基づきます。価格に関する補助的規定や算定ルールもあり、インボイスの金額だけで完結しないケース(関連取引、コミッション・ロイヤリティの扱い等)もあります。
従って、契約書・インボイス・支払記録・貨物の引渡し条件(INCOTERMS)などの証憑を揃え、税関の求めに迅速に提示できる体制を作ることが重要です。法令上の評価ルールは定められており、実務では細部の照合が行われます。
許認可・輸入禁止・検査制度に注意する
DGFT(Directorate General of Foreign Trade)が定める「Restricted / Prohibited」品目や、BIS(基準局)・FSSAI(食品)・WPC(無線機器)などによる認証が必要な製品が多くあります。種別によっては輸入許可(ライセンス)が事前に必要で、書類不備や認証未取得で差し戻し・没収・罰則の対象になり得ます。
特に医薬品、食品、化学品、植物・種子などは検疫・規格チェックが厳格なので、該当する場合は事前確認を徹底することが重要です。
通関の流れとポイント
一般的な流れは(1)船舶/航空の到着通知→(2)Import General Manifest(IGM)→(3)Bill of Entry(税関申告書)提出→(4)検査・評価→(5)納税→(6)貨物引取、という流れです。
どこの国でも共通ですが、通関前の書類の突合、インボイス記載の正確性(HSコード・数量・単価)、納税(オンライン決済)の準備などは予め実施しておきます。港湾混雑や検査で遅延するとデマレージ等の費用が発生するため、到着前の書類整備と港湾側のスケジュール把握にも注意しましょう。
リスク管理:AEOと事前照会
AEO制度について
インド税関は、AEO(Authorized Economic Operator:認定事業者制度)を導入しており、認定企業に対しては通関時の検査緩和や優先処理などの優遇措置を設けています。
日本企業にとっては、自社または現地輸入者がAEO認定を受けているかどうかで、通関のスムーズさに差が出ます。また、日本とインドの間ではAEO相互承認協定(MRA:Mutual Recognition Arrangement)が締結されており、日本でAEO認定を受けている輸出者は、インド側でも一定の通関優遇を受けられる場合があります。
輸出の頻度が高い企業や、検査によるリードタイム遅延を防ぎたい企業は、日本の税関でAEO認定を取得しておくと実務上のメリットが大きいでしょう。
事前照会制度(Authority for Advance Ruling(AAR/CAAR))について
「Authority for Advance Ruling(AAR)」または「Customs Authority for Advance Ruling(CAAR)」は、輸入前に関税分類、評価、原産地などの論点について税関に見解(裁定)を求める制度であり、インドの輸入者が申請主体となります。
日本の輸出企業が CAAR を直接申請することは通常ありませんが、契約段階で「輸入者が CAAR を取得する」旨を条項に盛り込んだり、関税や分類に不確定要素がある貨物について、輸入者側で事前裁定を得ているかどうかを確認しておくことで、通関リスクの低減や税務上の透明性確保に役立ちます。
さらに、AEO(Authorized Economic Operator)認定を受けた輸入者であれば、CAAR による裁定後の税関対応においても、検査頻度の軽減や処理優先化といった恩恵を受けられる可能性が高く、両制度を組み合わせて通関効率を高める戦略も実務上有効といえます。
まとめ
インドの関税制度は複雑に見えますが、仕組みを理解しておくことで、実務上のトラブルを大きく減らすことができます。AEOやAAR制度のように、事前準備や信頼構築を支援する仕組みも整いつつあります。
日本の輸出企業にとっても、「どの制度を相手先が活用できるのか」を把握しておくことは、見積もり精度の向上や通関遅延の回避につながります。取引先の理解を深めながら、リスクを見える化し、スムーズな貿易フローをデザインしていくことが、今後ますます重要になるでしょう。
※免責
本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。最新の法令や規制情報については、必ず公式な情報源をご確認ください。
(参照)
Central Board of Indirect Taxes & Customs, India
Directorate General of Foreign Trade | Ministry of Commerce and Industry | Government of India
Authority for Advance Ruling (AAR) | Goods and Services Tax Council
AEO制度相互承認に関する報道発表・リーフレット一覧 : 税関 Japan Customs
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