お久しぶりです。生きています。春山です。
私は現在、ある士業の事務所に勤めている。そしてこのたび、ここを辞めることになった。
「繁忙期以外は残業代が出ない」「体力気力の限界」、この二つが主な理由だ。
ほかに「就業規則がない」「有給休暇を管理していない」「健康診断が自腹」「人手不足が解消されない」などもあるが、やっぱり前者2点が大きい。
以下、今回の退職に至るまでの話である(特定を避けるため、ところどころフェイク入れてます)。私みたいなアホはそうそういないだろうが、はじめに声を大にして言いたい。
残業代
繁忙期にしか
出しません
それは立派な
労基法違反(字余り)
無知の死
「繁忙期以外は基本的に残業はしない方針です」
入所後、雇用契約書への署名を求めながら所長はそう言った。へー、そういうもんかと私は思った。そういうこともあるんだ、就業規則とかに書いてあるのかな、と。そして雇用契約書に署名・捺印し、所長に渡した。
今だから思う。あのときの自分を思いっきり殴りに行きたい。殴って引きずって家に連れて帰りたい。私はあまりに無知でアホだった。なお入所して数日後、弊事務所には就業規則が備わっていないことを他の職員から聞いた。あれ、ハロワの求人票には「就業規則:あり」って書いてあったような……?
「繁忙期以外は基本的に残業しない方針」。その言葉が「繁忙期以外は残業代を出さない」という意味だと知ったのは、初めて繁忙期に突入し、パートさんから残業代の申請用紙を配られたときだった。
弊事務所の繁忙期は12月~3月。この期間だけは残業代の申請ができた。定時を過ぎて勤務した時間を30分単位で紙に手書きし、締め日に所長に提出する。これ以外の期間は、どれだけ残業しても金にならない。そもそも申請を所長に出すことができない。すべてサビ残になる。ちなみに休日出勤は、繁忙期だろうとなかろうと、いつやっても残業代はつかなかった。
恥ずかしながら、弊事務所に入るまで私は、「繁忙期以外は残業代を出さない」ことが違法であると知らなかった。これはもう自身の無知を恥じて呪うしかない(こういうことせめて高校の教育課程くらいで教えたがよかろうや、とも思う)。
そして弊事務所の実態に疑問を抱かなかったのは、実際、入って2年ほどは繁忙期以外に残業が発生しなかったからである。たまにイレギュラーなことが起こって30分~1時間くらい終業時間を超過したりもしたが、特に気にすることはなかった。申請するほどの残業ではなかった。前職が残業・サビ残・休日出勤の嵐だったので、感覚がマヒしていたのかもしれない。
もしかして:違法
あれ、これ、おかしいな?と思いはじめたのは、今年の初夏ごろからだ。正社員のA先輩が一人退職したことがきっかけだった。
退職後も人員の補充はなく、A先輩が持っていた顧問先は、残った正社員とパートで分担して引き継ぐことになった。ちなみに弊事務所は正社員とパートの数を合わせても10人以下しかいない。そして過半数はパートである。
私もA先輩の顧問先をいくつか引き継いだ。自分がもともと持っていた顧問先と合わせて業務をこなしていく。引き継いだ顧問先との関係づくり、大変クセの強いA先輩の引継書、過去の処理を見直して見つけたA先輩のとんでもねえ放置ミス、事務所内のITまわりの事務。それらと悪戦苦闘する日々。少しずつ業務が滞りはじめた。
堂々と言うことではないが、私は仕事が早い方ではない。キャパもまっっったく大きくない。基礎体力もそれほどない。シゴデキとは正反対の社会人だ。それでも仕事は待ってくれない。月次の報告やさまざまな申告・申請の期限が、次々とやってくる。
あーだめだ、これは残業しないと終わらないな。
業務スケジュールを見ながらそう考えて、ふと気づいた。
あれ、今月は繁忙期じゃないけど残業代つくのかな。……ひょっとしてつかない??えっまだ繁忙期までしばらくあるよ?それまでどんだけ残業しても残業代の申請はできないってこと?え、まじで?シンプルに業務量ふえてるのに?
そもそもこれってアリなん?
恥ずかしながら私は、ここにきて初めて、現状に疑問を持った。
違法だった
めちゃくちゃ検索しまくった。「残業代 繁忙期のみ」「残業 就業規則」と検索窓に打ち込み、厚労省のサイトを見、法令にもあたった。アリもナシもクソもない。「違法」だった。グレーですらなく、どシンプルに真っ黒だった。
知り合いにも訊きまくった。友人、パートナー、転職エージェントさん、カウンセラーさん、美容師さん、果ては脱毛サロンのお姉さんにまで訊いた。全員に「めちゃくちゃ違法じゃん笑」と言われた。爆笑しながら言ってもらえたのがせめてもの慰めだった。
爆笑した後、真面目な顔で「残業の証拠は残しておきなよ。何かあったら労基に出せるように」とアドバイスするところまで、みんな同じだった。彼ら彼女らからしたら、私は相当あぶなっかしいアホにみえたことだろう。はあ~?と呆れられても文句は言えない。それでもアドバイスまでしてくれた彼ら彼女らには感謝しかない。とりあえず退勤前にPCの時刻の写真を撮るようにした。
やばいところに就職してしまった
それにしても、職場の人たちはこれを違法だと知っているのだろうか。給与の管理をしているパートさんに話してみた。
「うん、違法だよ」
言いにくそうな様子も見せず、パートさんはあっさりそう言った。そこから延々、所長のことを愚痴っていたが、なんかもうどうでもよかった。
正社員のB先輩にも訊いてみた。B先輩は実質、弊事務所のナンバー2にあたるベテランだ。A先輩が退職する前から大量の顧問先を抱え、そこにさらにA先輩の顧問先も加わり、残業&休日出勤三昧だった。
B先輩は答えなかった。違法だとも、知らなかったとも言わなかった。ただ無言で顔を背けていた。
やばいところに就職してしまった。
これまでうすうす思っていた。有給休暇の管理を全くしていないとか、健康診断が全部自費かつ誰も受診しようとしないとか、就業規則がないとか。それでも「まあそこまで目くじら立てるようなことでは……」と思って目を逸らしていた。「もっとブラックな職場はたくさんあるし」とも思っていた。
けれど、ここが限界だった。おうこら向き合えと首根っこつかまれて、ギチギチと力ずくで顔を「現実」に向けられたような気分だった。
DVみたいな構図だと思った。クソDV野郎に暴力をふるわれながら「でもこの人にもいいところはたくさんあるし。もっとひどい奴はいるし」と、クソDV野郎を擁護してしまうパターンだ、これ。
逃げようと思った。もう無理。ほんとにもう無理だった。某退職代行業者の名前はうまいことつけたなあと思う。
転職活動
そういうわけで、夏ごろから転職活動を始めた。それまでにもいろいろ心折れることはあったが割愛する。本当にポキポキポキポキ折れまくって、そのたびに「わ~まだ折れるところあったんだ~!」と感心するほどだった。
最初はこっそり撮影していた退勤時のPCの時刻表示も、堂々と撮影するようになった。何も言われなかったし、私も本気で労基にGOするつもりはなかった。それでも何らかの武器を身につけておきたくて、もくもくと時刻表示を撮影し続けた。
数か月の転職活動のあと、ありがたいことに、内定をいただいた。
内定をもらってすぐのころは「人手不足の中で辞めていいのかな、やっぱり無責任じゃないか」と悩んだりもした。退職したいと伝えるのがこうも難しいとは。周囲に相談すると、誰もかれも「人手不足で職場が回るのはあなたのせいじゃない、職場のマネジメントの問題だ」と諭してくれた。私自身、同じような相談を受けたときは、そう回答してきた。けれどいざ自分自身が辞める立場になると、悩む。ものすごく悩む。辞めてやる!と決めたくせに悩む。こういうときに退職代行を頼む人もいるんだろうな……と考えたりした。
それでも少しずつ退職の準備を始めていた。そしてこの冬から、新天地での勤務が始まる。はずだった。
気力体力の限界
繁忙期に突入してすぐ、私はぶっ倒れた。家でぶっ倒れて職場にも連絡できず、無断欠勤&音信不通の状態に陥った。職場から親に連絡が行き、そして、あれよあれよという間にしばらく仕事を休ませてもらうことになった。「一人暮らしの家の中で昏倒すると警察を呼ばれる」という、あまり得なくてもいい知見を得た。
内定先が遠方だったこともあり、さすがに心配した身内から転職に待ったがかかった。「ちょっと休んでもいいのではないか」と言われた。親のきょうだいには部屋で倒れてそのまま亡くなった状態で発見された人がいるため、余計に不安にさせたようだ。とても申し訳ないことをしたと思う。
希死念慮があったわけではない。でも正直いうと、ぶっ倒れたとき、このまま死んででもまあ別にいいやと思った。そういう思考になる程度には、心身ともに限界だったのかもしれない。今はこうやって文章が書けるくらい元気です。
その後
結局、こうして倒れたことが決め手となり、改めて職場に退職を願い出ることになった。引き止められることもなく、退職手続に移ることができた。そして現在に至る。今は職場に行かず、ゆっくりと寝て起きて体調を整えている。たぶん有休消化中となっているはずだが、有休の残日数を誰も知らないので、どういう扱いなのかは不明である。
これから弊事務所は本格的な繁忙期に入っていく。A先輩の分も、私の分も、人員の補充はできていない。
求人は出しているが応募はない。少なくとも私が倒れるまでは、一通も応募がなかった。せめて新しく人が入るまでは在籍していようかと悩んだりもした。
でも、今はもうどうでもいい。職場の人に憎しみはない。悪い人たちではなかった。何度か体調を崩した私を、いつも心配してくれていた。仕事もしょっちゅう手伝っていただいた。所長だって悪人ではない。明確なパワハラを受けたわけでもない。とても頭の良い人だった。立派だと思う場面もたくさんあった。
でも、無理だった。そして今はもう、すべてがどうでもいい。労基にGOも多分しない。そして、あの事務所が立ち行かなくなっても、つぶれても、もうどうでもいいやと思う。もうあれは「弊事務所」じゃなく、ただの「あの事務所」だ。早く関係を終わらせたい。つながりを切らせてほしい。今はもうそれしか残っていない。
もうすぐ2025年が終わり、2026年がやってくる。21世紀の四分の一が終わろうとしている今日でさえ、こんな感じの個人の士業事務所は存在している。割といる。けっこうな数ある。そういう事実がある。
というわけで、年が明けたら無職爆誕である。正真正銘の無職。ド無職だ。
まさかこんな年越しになるとは想像もしていなかった。人生、何が起こるかわかんないな。











上の画像は、雑談が壊滅的にド下手くそであることをカウンセラーさんに相談したときのメモです。雑談ってめちゃくちゃ難しくないですか。他人と話していると、比喩でなく、リアルに汗ダラダラになります。