02-1_1_03 EU化粧品指令 EUにおける香料化学物質の規制

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2025.4.15 更新

EU化粧品指令/化粧品に関する規則 No 1223/2009 (2024.4.24版)

EU化粧品指令1223/2009はEU市場で市販される化粧品が遵守すべき規則。化粧品に添加を禁止する物質、配合濃度やラベル表示等に規制のある物質が定められている。第15条は発がん性、変異原性(遺伝子毒性)、生殖毒性(内分泌かく乱)があるCMR物質の化粧品への使用に関する規定。規則(EC)No1272/2008の別表Ⅵのパート3でカテゴリー1A、1B、または2のCMR物質(carcinogenic, mutagenic, and reprotoxic)に分類される物質は第15条に定められた場合を除き化粧品への使用は禁止され、『別表II 化粧品への配合が禁止の物質』にリストが掲載されている。 このリストには下に添付する表の通り、多くの香料に使われる化学物質も入っている。

第19条はラベル表示*に関する規定が定められている。別表 IIIは『法律によって制限される場合を除いて化粧品に配合することを禁止する物質』のリスト。このリストに新たに56の香料アレルゲン物質を追加した修正法2023/1490によれば、この別表IIIの香料アレルゲン物質は80種類。表中の「その他」の項の条件に当てはまる場合は19条によって成分のラベル表示が義務付けられている。

*アレルゲン物質の規制・ラベル表示に関しては化粧品指令修正法の2023/1545 およびラベリングの説明も参照: Fragrance allergens labelling: https://ec.europa.eu/growth/sectors/cosmetics/products/fragrance-allergens-labelling_en

EU化粧品指令の定義では「化粧品」は「人体の外部及び口内に接触させることを意図した物質または混合物」と定義されており、香水やパーソナルケア用品も皮膚に接触する観点からのみこの規則の対象になっている。

吸引して楽しむ香水や、香りを楽しむことを宣伝するようなパーソナルケア用品であっても皮膚に接触する観点からのみこの規則の対象になっているという問題点もあるが、化粧品への配合禁止、濃度の上限の設定や小児用製品への配合禁止、ラベルに成分表示義務を課すなど、現状では香料に関する政府機関の規制として一番進んでいる法律と言える。

別表II (ANNEX II) は化粧品に配合禁止の化学物質、別表III (ANNEX III) には 『法律によって制限される場合を除いて化粧品に配合することを禁止する物質』。この2つの別表から香料物質を抜粋して下に示す通り表にした。EUのサイトにある表には香料であるかどうかの記述はなく、ここに記載したもの以外にも規制対象の香料物質が存在する可能性がある。特定の化学物質が香料としてEU化粧品指令で規制されているかどうかを知るためには、下記のEUのサイトにある最新版のEU化粧品指令 1223/2009で検索して確かめる必要がある。

EU化粧品指令/化粧品に関する規則 No 1223/2009 2024.4.24版
REGULATION (EC) No 1223/2009 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 30 November 2009 on cosmetic products:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A02009R1223-20240424

EU化粧品指令 修正法(amendment):
EU化粧品指令 (Regulation (EC) No 2023/1490(2023年12月~) 別表 II 禁止物質の修正、追加 :https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32023R1490

EU化粧品指令 (Regulation (EC) No 2023/1545(2023年8月~) 別表 III ラベル表示義務・規制物質データ変更、削除、追加:https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2023/1545/oj/eng

EU化粧品指令 (Regulation (EC) No 2021/1902(2022年3月~) 別表II III VI 改正: https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32021R1902&from=EN

EU化粧品指令/化粧品に関する規則 1223/2009 2024.4.24版の別表II・別表IIIに掲載されている香料物質リスト(2025.4.5 アクセス)

2021年に前バージョンの表を作ってから改正や訂正、修正法によってデータの編集、化学物質の削除及び大幅な追加が行われた結果に基づき、規制を受けている香料物質のリストを2024年4月24日版に沿って更新した。対象になる化学物質は別表II (ANNEX II) にはNo.1から1730、別表III (ANNEX III) にはNo.2aから378の多くの化学物質がリストされている。

下に示す表は、この二つの別表から香料物質を抜粋したもの。別表には香料か、またアレルゲンであるかの記述はなく、ここに記載したもの以外にも対象の香料物質、香料でアレルゲンの物質が存在する可能性がある。別表IIIの修正法No 2023/1545(2023年8月より施行)にはリファレンスNo.327から371の化学物質が追加されたが、No. 363以外の物質は香料としての用途がある物質であった。追加された化学物質には多数の精油成分が含まれている。


2023.12.29 更新:スズランの香りリリアールが化粧品配合禁止に

アレルゲンとしてEU化粧品指令1223/2009にリストアップされているすずらん様の香りがする合成香料のリリアールが、内分泌をかく乱するとして(環境ホルモン作用)2022年3月1日よりEUで化粧品に入れることが禁止になりました。日本では規制されていません。

Environment Working Groupの記事「リリアールと生殖:EUは有毒な香料成分をパーソナルケア商品に使うことを禁止しました」”Lilial and fertility: EU bans toxic fragrance ingredient from personal care products” (2022.3.2):https://www.ewg.org/news-insights/news-release/2022/03/lilial-and-fertility-eu-bans-toxic-fragrance-ingredient-personal

「リリアールの使用をやめましょう:EUの禁止は化粧品に含まれる化学物質のリスクを示しています」”Lose the lilial: European Union ban shows risks of chemical in cosmetics” (2022.3.21)

スズラン様の香気がある。リリアール (Lilial) またはリリーアルデヒド (Lily aldehyde) は、芳香族アルデヒドの一種で合成香料の一つ。IUPAC名では3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナールと呼ばれる。リリアールはGivaudan社の商標名であるが、一般的にはこの名称で知られている。

リリアール (Lilial) ウィキペディア

環境ホルモンは超微量で作用するために安全な量が決められないことから、EUでは環境ホルモン作用が疑われる化学物質は原則使用禁止になっています。
環境ホルモンについては『02-2_1_01 香料成分の毒性と規制』もご参照ください。


2021年版のEU化粧品指令 1223/2009

EU(European Union:欧州連合)は化粧品*について日本や米国より厳しい法律があり、化粧品の供給及び販売に関して、成分規制、責任者、主なラベル情報、EU委員会への製品情報の提出について「化粧品に関する規則1223/2009(化粧品指令/化粧品規則)」を定めています。

・化粧品指令1223/2009の説明・旧指令Directive 76/768/ECとの違い
https://ec.europa.eu/growth/sectors/cosmetics/legislation_en

化粧品指令/化粧品に関する規則 1223/2009(Regulation (EC) N° 1223/2009)には化粧品に関する法律について260ページにわたる文書が掲載されています。: https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A02009R1223-20210526 

別表2 (ANNEX II LIST OF SUBSTANCES PROHIBITED IN COSMETIC PRODUCTS) には1379種類の化粧品に配合禁止の化学物質のリストです。香料として使用することが禁止されている32種類の化学物質が含まれています。

別表3 (ANNEX III LIST OF SUBSTANCES WHICH COSMETIC PRODUCTS MUST NOT CONTAIN EXCEPT SUBJECT TO THE RESTRICTIONS LAID DOWN) は法律で定められた場合を除いて化粧品に配合禁止の297種類の化学物質のリストです。ここにアレルゲンとしてラベルに表示しなければならない26の香料物質が含まれています。

ラベル表示については化粧品指令1223/2009のArticle19(1)に定められており、ANNEX III 表中ではOtherの項にラベルに表示しなくてはならない条件が記載されています。
Fragrance allergens labellinghttps://ec.europa.eu/growth/sectors/cosmetics/products/fragrance-allergens-labelling_en

・2021年に欧州消費者安全性科学委員会(SCCS)は、この26の物質に加えて、消費者が情報を知らされるべきだとして、さらに多くの香料のアレルギー性について334ページにわたる意見書を発表しました。26のアレルゲン香料物質が実際の製品にどのくらい配合されているかの調査などの情報がP73-77に掲載されています。
『OPINION on Fragrance allergens in cosmetic products』
https://ec.europa.eu/health/scientific_committees/consumer_safety/docs/sccs_o_102.pdf

*(人体に使用する多岐にわたる製品が含まれる;ジェトロ*の説明を参照)


化粧品指令/化粧品に関する規則 1223/2009『別表II 化粧品への配合が禁止の物質』から「fragrance」で検索された化学物質32種類を、また『別表III 法律によって制限される場合を除いて化粧品に配合することを禁止する物質』297種類の化学物質のリストからアレルゲンとしてラベルに表示しなければならない26の香料物質を抜粋。26の物質には含まれないが”fragrance”で検索された化学物質5種類も付記しました。(2021.5.26バージョン)

PDFフォーマット:02_1_3_EU化粧品指令_香料リストPDF(プリント用)

Word フォーマット:02_1_3_EU化粧品指令_香料リストdocx(ファイル中で検索が可能)


日本の香料化学物質の規制はないに等しい

このようなEUの香料成分規制の動きに対して、日本の化学物質の規制は大幅に遅れています。医薬品医療機器等法第61条によって、化粧品は全成分をパッケージに記載する義務がありますが、香料は「香料を着香剤として使用する場合の成分名は『香料』として記載して差し支えない。」という例外的扱いになっています。アレルゲンとして注意すべき香料のラベル表示を義務付ける法律もありません。

厚生労働省 化粧品基準(薬事法第42条第2項の規程に基づく 平成12年):https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/keshouhin-standard.pdf

東京都健康安全センター 医薬品医療機器等法における化粧品の表示
http://www.tokyo-eiken.go.jp/k_yakuji/i-kanshi/cosme/c_label/

様々な行政機関の法令や規則、規制、基準といった様々なルールがあって全体としてわかりにくい化粧品のルールを解説しています。週刊粧業 『化粧品の規制について~入門編:成分について①~』(2019.4.24):
https://www.syogyo.jp/news/2019/04/post_024078


ジェトロの化粧品指令の解説

JETRO(ジェトロ)** のウエブサイト『化粧品の現地輸入規則および留意点:EU向け輸出』より引用(調査時点:2015年2月 最終更新:2019年1月 記事番号: A-030301)
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-030301.html

*「化粧品規則1223/2009はEUにおける化粧品の供給および販売に関する規則を定めたものです。この規則は欧州諸国の化粧品規則の統一を目的に制定された規則で、対象となる化粧品については、人体(皮膚、髪、爪、唇、外部生殖器、歯および口腔粘膜を含む)に塗布することを意図した物質または混合物であり、清浄、芳香、外観の変化、保護、良好な状態に保つ、または体臭を抑えることを目的とした製品と定義しています。」

「EUで販売する場合に許可される化粧品の成分規制 化粧品規則では、化粧品の含有物に関する一定の制限を設けています。一部の物質は使用が禁止されており、いかなる場合においてもEUで供給する化粧品に使用することはできません(化粧品への配合が禁止されている成分は化粧品規則の付属文書IIに掲載されています)。他の物質についてはその関連する規則に準拠する場合にのみ使用できます(配合が制限されている物質は付属書III、 配合が可能な色素・防腐剤・紫外線吸収剤はそれぞれ付属書IV、V、およびVIに掲載されています)。また、特定のCMR(発がん性、変異原性、生殖毒性)物質は2010年12月より使用禁止ですが、消費者安全科学委員会(Scientific Committee for Consumer Safety: SCCS)が安全と評価した物質や代替物質がない場合には一部許容されることになりました。該当する場合は CLP規則(EC No. 1272/2008)の法令原文で基準の詳細を確認してください。
また、ナノ物質を含む化粧品は欧州委員会に通知する必要があります。」

**Japan External Trade Organization 独立行政法人日本貿易振興機構 対日投資の促進、農林水産物・食品の輸出や中堅・中小企業等の海外展開支援に機動的かつ効率的に取り組むとともに、調査や研究を行う。


香料に使われている物質の半数は国際規格で有毒化学物質に分類される物です。香料の毒性については、当館の以下の記事もご参照ください。

02-1_1_01 柔軟剤・合成洗剤の成分とその問題
02-2_1_01 香料成分の毒性と規制
02-1_1_04 香料化学物質規制 EUと日本の比較
02-2_3_01 香害関連記事(海外)
「香料の何が問題なのか」カテゴリーの各記事