私が企業法務の仕事に従事して、かなりの年数が経過したが、この仕事はなかなか奥深い。
一口に法務と言っても、働く会社の規模や業界、ビジネスモデルによって、求められるスキルや業務範囲は全く異なるからだ。この違いこそが企業法務の真髄であり、醍醐味でもある。そのヒントを得るため、私は定期的に転職サイト doda の求人情報をチェックしている。
実は、この習慣には、ブログのネタ探しという側面があるが、「現在どんな会社が、どんな法務人材を求めているのか」をリサーチするのが純粋に面白いから。今回は、その中から特に興味を惹かれた3つの案件をピックアップし、私なりの視点で分析してみた。

1.滋賀を支える老舗企業:株式会社平和堂(小売・プライム上場)
滋賀県といえば琵琶湖と飛び出し坊や「とび太くん」が双璧……なのは滋賀県民にとって常識中の常識(?)なのは言うまでもない。しかし、それと並ぶ存在感を放つのが、彦根市に本社を置くプライム上場企業・平和堂。売上4,000億円規模を誇り、私も2023年のビワイチ(琵琶湖一周サイクリング)の際には大変お世話になった。
そんな平和堂が現在、企業法務担当者を中途採用活動中。
【求人概要】
【滋賀本社/彦根市】法務/契約書確認など ※ハトのマークでお馴染み/長期就業しやすい環境◎<地域に愛されるハトのマークの総合スーパー/長期就業◎>
■職務内容:
法務担当として下記業務をお任せします。
(1)法務に関する事項
・法規、訴訟等の業務および調査研究(会社法、民法、独占禁止法、下請法等)
・契約書の点検に関する業務(契約書チェック、ひな形の作成、修正)
・許認可届出に関する業務(防火管理、酒類販売、医療機器、古物商等)
・弁護士、司法書士、弁理士への相談、訴訟対応等
(2)株式に関する事項
・株主からの問合せ対応 ・名義書換代理人との連絡業務 ・新株発行、消却に関する実務 ・持株会
(3)株主総会に関する事項
・株主総会開催運営に関する業務 ・招集通知、株主通信等の作成
(4)取締役会に関する事項
・取締役会、臨時取締役会の設営(事務局、議案収集、年間スケジュールの作成等)
※その他、内部統制、文書管理等の業務があります。
【求人概要から読み取れること】
同社のHPで組織図を確認すると、法務部門などは見当たらないので、総務部に配属されるのだろうか。純粋な法務(契約書審査・法律相談)に加え、株主総会や取締役会の運営事務局といった総務色の強い業務も担当する模様。さらに、B to Cの小売業というビジネスモデルを考えると、店舗運営に伴う現場トラブルへの関与も避けられないかもしれない。このように法務の基礎から、上場企業における総務・コーポレート業務まで、幅広く経験を積みたい方には最適な環境といえるかも。

2.次世代モビリティを担う:株式会社LUUP(スタートアップ・電動キックボード)
よくビジネス街や繁華街で水色の電動キークボードが走っている場面に遭遇する。私も少し興味があり、機会があれば、一度乗ってみたいと密かに思っている。そのシェアリングサービスを行っている株式会社LUUPが現在、法務リスクマネジメント責任者を募集中。
【求人概要】
法務・リスクマネジメント責任者◆電動モビリティ「LUUP(ループ)」/年休122日
~電動キックボードのシェアリングサービスLUUP(ループ)/街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる/在宅相談可・フルフレックス◎~
新しいインフラづくりを支える法務の実務家を募集します。
当社は、表面的にはtoCのビジネスでありながら、数千か所のポートをベースに事業を展開しており、これらポートのオーナーや地域の事業者、自治体や国など、多くのステークホルダーとの関係を持っています。これらステークホルダーとの関係を法的側面から戦略的に構築・維持・改善するとともに、交通インフラの運営者としてのリスクマネジメントや、更には上場準備への法的側面からの関与も含む、幅広い役割が期待されるポジションとなります。
■業務詳細:
今回のポジションの方には、コーポレート部門を統括する取締役CFOとともに、以下のような法務・リスクマネジメント業務の実務を担って頂きます。
【具体的な業務内容(例)】
・法的側面からの事業戦略策定への関与
・ポートオーナーをはじめとするステークホルダーとの契約作成、レビュー、交渉(含、対行政)
・車両の保安基準や交通法規上の制約を踏まえたハードウェア開発、サービス運営戦略の策定・リスク管理
・上場準備への法的側面からの関与、ドキュメント作成
・ファイナンスや会社運営全般に際しての機関法務業務
■仕事の魅力:
・社会インフラになることを目指している、日本でも数少ないプロダクトの成長に、法務・リスクマネジメント業務を通じて重要な役割を果たすことができる
・スタートアップとしてアジャイルかつ合理的な意思決定ができる環境でありながらも、新しいインフラづくりを目指すという社会的意義も大きい事業に携わることができる
■当社について:
当社は、“街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる”をミッションに掲げ、電動キックボードや電動アシストなど電動マイクロモビリティシェア「LUUP(ループ)」を日本各地で展開しています。
2024年4月時点で7,000ポート以上を運営し、将来的には、電動マイクロモビリティの普及によるCO2削減と、ご高齢の方も乗ることができる新しい電動モビリティの導入を実現し、すべての人が安全・便利に移動できる持続可能な社会をつくることを目指します。
【求人概要から読み取れること】
予定年収が1,000万~1,800万円と、その責任の重さが報酬にも表れている。なお、スタートアップ企業の法務責任者に求められるのは、「既存の仕組みを回す」ことだけではない。具体的には、以下の行動が必要。
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新しいビジネスモデルに対する法規制を正しく評価すること。
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事業成長のスピードに合わせてリスクを先回りして特定し、適切な戦略に基づくアクションを仕掛けていくこと。
まさに「未来のルールをデザインしていく」ような、非常にハードルが高く、刺激的な仕事だろう。給与もハードルも責任もまさにハイレベルといったところ。

3. ヘルスケアテックの牽引役:株式会社asken(あすけん)(IT・ヘルスケア)
ダイエットアプリで国内シェア一位の「あすけん」を運営する会社。実は私の妻もこのアプリを使用中で、一時期食事のたびにあすけんのアプリについてウンチクを聞かされて辟易したもの(笑)。食事の写真を撮るだけでAIが栄養指導をしてくれるという、2007年設立の比較的新しいヘルスケアテック企業。
【求人概要】
株式会社asken/【法務】契約書作成・法務相談等◆リモート◆月平均残業10~15h◆国内最大級のAI食事管理アプリ運営/勤務地:新宿区の求人情報 - 転職ならdoda(デューダ)
【法務】契約書作成・法務相談等◆リモート◆月平均残業10~15h◆国内最大級のAI食事管理アプリ運営
◇◆累計会員数1,200万人超・AI食事管理アプリ『あすけん』を提供/健康×食×ITの分野で法務の実務経験を積める/リモート×出社のハイブリッド勤務◆◇
■業務概要:
法務グループマネージャーの指示のもと、必要に応じて外部弁護士、親会社(グリーンハウス)の法務部門と連携して業務を行っていただきます。
■業務詳細:
・各種契約書の作成/審査/管理
・法務相談対応
・知的財産権の登録/管理
・広告審査
・法改正への対応
・社内規程/規約/ポリシー等の改定
・契約管理及び契約管理フローの運用/改善
・従業員向け研修など、社内に向けた教育機会の提供
■魅力:
◎健康×食×ITという分野で、新しいビジネスやサービスに関わりながら企業法務の実務経験を積んでいただくことが可能です。
◎取引先やお客様も大変幅広く、事業や社員が増えていく中で、自ら課題を見つけ工夫しながら、業務に取り組むことができるポジションです。
◎当社は新しい取り組みやアイデアを形にすることを応援していく風土があるため、課題を見つけ改善するなど、チャレンジできる環境です。
■働き方:
・リモートワークを導入しています。経営管理部では月1回の経営管理部定例ミーティング以外は、所属グループと相談して、各自が自由に日々の働き方を選んでいます。
・家庭と両立して働いているママパパ社員も多く在籍し、フレックス制(コアレス)を導入しており、自身の裁量で業務スケジュールをコントロールしやすい環境です。
・社内ではオンラインミーティングやチャットツールを使用し、リモートでも気軽に、密にコミュニケーションを取れる風土です。
■配属先情報:
<経営管理部 法務グループ>
・経営管理部法務グループマネージャーが直属の上長となります。
・経営管理部には管理グループ、法務グループ、広報グループ、情報システムグループの4つのグループがあり、11名が所属しています。
■社内の雰囲気:
社員は70人程度。事業が急拡大中のため、ベンチャー企業的な活気や風通しの良さがある組織です。
平均年齢は37歳前後、ほとんどが中途入社の社員で構成されています。
【求人概要から読み取れること】
入社した場合、経営管理部 法務グループに所属し、契約・相談・研修・知財など幅広い業務に従事するようだ。特に注目したいのは、求人票にある以下のフレーズ。
- 「自ら課題を見つけ工夫しながら、業務に取り組む」
- 「新しい取り組みやアイデアを形にすることを応援していく風土があるため、課題を見つけ改善するなど、チャレンジできる環境」
新しい技術と個人情報(ヘルスケアデータ)を扱うビジネスにおいて、法務にも「待ち」の姿勢ではなく、「能動さ」と「自発性」が強く求められていることがわかる。アプリ開発のスピード感に負けず、積極的に課題解決に取り組む姿勢が評価されるのだろう。ちなみに、法務部門のプレイングマネジャーである私の仕事のスタイルも、「待ち」や「現状維持」ではなく、「継続的な自己改善」なので、同社の法務部門のスタンスには大いに共感。

4.まとめ「企業法務の仕事は会社の数だけ色がある」
今回ご紹介した3社を比較してみると、企業法務担当者としての根本的な業務(契約、相談対応など)は似ていても、勤務する会社の規模や業界、そしてビジネスモデルによって、求められる専門性や働き方が細部にわたって全く異なることがわかる。これは、多くの会社で共通したルールが適用される経理や人事といった職種とは違う、企業法務という仕事の最も面白く、また奥深い点だと再認識させられる。以前に大手ゲームメーカーの任天堂の法務求人を紹介したことがあったが、こちらもいかにも任天堂的な内容だった。
このように、企業法務担当者の求人情報は、単なる転職情報ではなく、「その会社が今、事業の成長のために何を課題とし、法務に何を期待しているか」が凝縮された内部情報といえる。現在転職活動中の方は、求人情報の行間からそのあたりを推察するなどして、今後の転職活動に役立ててほしい。


