昨年8月に兵庫県知事のパワハラ問題について触れたと思う。
あれから百条委員会の調査報告書に続いて、3月19日に第三者委員会から調査報告書が公表されたので、企業法務担当者として興味深く一読した。
おおむね予想されてはいたが、以下の行為について斎藤知事のパワハラが認定されている。
①車が侵入禁止のため20m手前で降りた際に職員を激しく叱責
→職員の精神に悪影響、伝え聞いた職員を委縮させ、勤務環境を悪化。
②空飛ぶクルマの連携協定の締結式前に報道されたことを問題視し、担当職員に「空クルは知事直轄」「勝手にやるな」と職員を激しい口調で詰問し、面会を一方的に打ち切った。
→怒りの感情をぶつけることは理不尽な叱責
③兵庫県県立美術館が夏休み期間中に休館するという新聞報道を知って激怒し、教育長に「聞いていない」と連発した。
→詳しい事情を聞くことなく、最初から叱責しており、その言動は極めて不適切
④兵庫県が受賞したSDGs未来都市授与式にマスコミが取材に来ないことを問題視し、夜間や休日にLINEで報道各社が現地取材に来るよう繰り返し求めた。
→ニュース採用はマスコミ各社が独自基準で判断するにもかかわらず、自分の考えを押し付ける過剰な要求に相当。
⑤机を叩いて職員を叱責
→机を叩く行為は相手を威圧するものであり、指導方法として不適切
⑥はばたんペイのキャンペーン用のうちわ(発注済み)を見ながら舌打ちし、大きなため息をついた(知事の顔写真がなかったため)。
→写真を入れたいならば事前協議するべき。担当者のミスであるような措置は不適切。
⑦長時間にわたって継続的に夜間・休日にLINEによる叱責や業務指示
→緊急性のない内容が多く職員の生活時間を無用に侵害、職員を疲弊させ、勤務環境を害した。
調査報告書の最後には、委員会のまとめとして「組織のトップと幹部は自分とは違う見方もあるという複眼的な思考を持つ姿勢を持つべき。さらに、感情をコントロールし、特に公式の場では人を傷つける発言、事態を混乱させようとする発言は慎むべきである。」という言葉で締めくくられている。これは要するに「あなたは、リーダーとしてもっと広い器量を持ちなさい」ということだろう。

結果として、知事の行為について明確にパワハラが認定されたわけだが、このような状況を引き起こした時点で、組織のリーダーとしては不適格ではないだろうか。思うにIQは高いかもしれないが、EQはかなり低いタイプとみた。組織のトップは相応のヒューマンスキルが求められる。特に令和時代のマネジメントとして、心理的安全性の確保は必須と言っていい。部下が萎縮して自由な意見や創造的なアイデアを生み出せない組織風土は、最終的には生産性低下の原因にもなりかねない。

ちなみに、今回の現職知事に対しては相当厳しい内容の調査報告書が公開されても、当人は辞任する意向はないようだし、職員たちはさぞかし落胆しているのではないだろうか。かくいう私もそれなりに神経がずぶとくてストレス耐性にはそれなりに自信がある方だが(←妻によく言われる)、さすがにここまでの鉄面皮ぶりには驚かされる。例えば、昨年紹介した岐阜県と愛知県の某町長にも同じようなハラスメント問題が発生しているが、こちらの二人は第三者委員会の調査報告書を受けて、潔く辞任しているのと対照的。
もちろん、今回の問題は公務員だけではなく民間企業にもあてはまる。私自身もプレイングマネジャーという立場上、一人のリーダーとして部門内の心理的安全性をかなり意識している。さらに、数多くの社内クライアントがいるために彼らと良好な関係性を構築することにも配慮。例えば、私は社内クライアントには誰でも分け隔てなく公平に接しているし、打合せなどでも愛想よく接して、時には自虐ネタを連発して(←これは不要か?)人当たりの良さを印象づけるよう工夫している。もちろん、仕事はスピーディかつ確実にこなすのは当然の事。そうして「あの人には何でも相談しやすい。そして仕事も速いし、頼りになる」という印象を持ってもらえるよう配慮している。例えば、「あの人はいつもNOしか言わない。それにいつも不機嫌だから相談しにくいんだよね」という風評が立つようではプロ失格。
いずれにせよ、今回の調査報告書からも明らかなように、今回の兵庫県知事パワハラ問題は、ある意味コンプライアンス担当者にとって重要事例となってしまった。関係者はこの調査報告書を一読しておいて損はないと思う。この調査報告書をダウンロードしておき、自社の研修材料として用いる方法もアリかも。
さてさて、今後の展開はどうなっていくのだろうか?兵庫県の職員だけではなく世間から注目を浴び続けるのは間違いないだろう。
