ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音楽や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

平成中村座「義経千本桜」「弁天娘女男白浪」「仇ゆめ」 @名古屋・名古屋城 二乃丸広場内特設会場

歌舞伎「平成中村座」(6月7日・名古屋城 二乃丸広場内特設会場・夜の部)

   

初めての平成中村座。名古屋で8年ぶりという興業は名古屋城内の二乃丸広場特設会場というこれ以上ないロケーション。もともと初代中村屋は名古屋の中村区出身だそうで、中村公園内にも初代の銅像が出来て、先日勘三郎七之助も参加して除幕式が執り行われた。せっかく名古屋城の入場料もチケット代に含まれているので、少し早く着いて城内を見学。そして会場内へ。

外では切子や刷毛など江戸仕事、それに弁当の屋台が出たりして大賑わい。靴を脱いで上がる場内は、昔の芝居小屋をイメージして造られていて舞台がグッと近く、天井からぶら下がった大きな提灯といい、周囲に飾られた赤い提灯といい、舞台正面に特別に設えられた「お大尽席」(会場からの退場時も提灯を持ったお茶子さんが城門まで送ってくれる特別席)といい、雰囲気たっぷり。もちろん定式幕は中村座カラー。人気の公演とあって会場はほぼ満席。今回自分が取った席は、花道のすぐ横下手側の座椅子の通称”ドブ席”。花道で見栄を切る役者が背中を見せてしまう席だが、臨場感は抜群。それこそ見上げるとすぐそこの役者の汗や唾が飛んできそう。このドブ席は1列だけで、すぐ横には椅子席があり、ご裕福そうな旦那様や奥様が座っていらした(笑)。この狭い雰囲気で気分も盛り上がる。

 

芝居は普通こんなに有名な話を並べないだろうという大盤振る舞いな演目。まずは扇雀が狐忠信を演じる「川連法眼館(通称:四の切)」。てっきり狐は勘九郎だろうと思っていたので意外だった(配役をよく見ていなかった)。扇雀は50代後半。それが飛んだり跳ねたりと舞台をトリッキーに駆け回るんだからスゴイ。さすが。1か月の長丁場ですけど大丈夫ですか?(笑)。

「弁天娘女男白浪」は何といっても七之助女形では当代随一の艶っぽさ。もう男が観ても”惚れてまうやろ”という美しさと、女装がバレた後のはっちゃけた演技の対比が楽しい。自分の近くに座っていた女性客は大ファンなのだろう、目が完全にハート型になっていた(笑)。器用な萬太郎も、女形を演らせるとピカイチの梅枝も、悪人役ではあまり見せ場が無いか。体躯が大きい彌十郎はさすがの存在感。でもこの2つの話を見て自分の眼が釘付けになったのは亀蔵。その類稀な外見(失礼)と腰の座った迫力ある口跡、時々見せる茶目っ気と、いっぺんでファンになってしまった。

最後は「仇ゆめ」。狸が化けた踊りの師匠は勘九郎七之助は今いちど女形での登場。この2人を一度に見ると、勘三郎の息子2人の産み分けがどれだけ”奇跡”なのかよく分かる。勘九郎は口跡だけ聞いているとちょっとかすれた勘三郎、といった感じで目をつぶると分からないほど親父にそっくりになってきている。ただ女形を演らせるとやっぱり醜女。それが弟の七之助はため息が出るほどの色っぽさ。兄弟でこれだけ個性や外見が違うからこそ同じ舞台で演じ分けられる。この「仇ゆめ」では勘九郎が大サービスで会場内を駆け回った。そして圧巻は…、舞台のバックドロップがドーンと開いて、その向こうには薄暮に浮かび上がる本物の名古屋城という演出。これは凄い!(自分の席からはばっちりの眺めだった席によっては見えないかも)。ずっとコミカルに演じ続けてきた狸(勘九郎)が死に際にもう一目、と惚れた深雪(七之助)と絡む場面。客席から笑い声が漏れたのはどうして? 畜生とはいえ、あそこは切ない場面だと思うのだが…。

歌舞伎には珍しくカーテン・コールもあり、幕間を入れて約4時間で終演。満足。文句なしに楽しかった。

 

一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)

川連法眼館(かわつらほうげんやかた)

佐藤忠信/忠信実は源九郎狐  中村 扇雀
静御前  中村 梅枝
亀井六郎  中村 萬太郎
駿河次郎  中村 虎之介
妻飛鳥  中村 歌女之丞
川連法眼  片岡 亀蔵
源九郎判官義経  中村 勘九郎

 

河竹黙阿弥

二、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)

松屋見世先の場
稲瀬川勢揃いの場


弁天小僧菊之助  中村 七之助
南郷力丸  片岡 亀蔵
赤星十三郎  中村 梅枝
忠信利平  中村 萬太郎
伜宗之助  中村 虎之介
日本駄右衛門  坂東 彌十郎

 

北條秀司 作・演出

三、仇ゆめ(あだゆめ)

狸  中村 勘九郎
深雪太夫  中村 七之助
舞の師匠  坂東 新悟
揚屋の亭主  坂東 彌十郎

2017.6.7