中国政府はいつも「歴史的必然」「中華民族の夢」「祖国統一」といった言葉で台湾問題を語ります。
ただ、私はここにもうひとつの本質があると思っています。
それは――
「正当性の問題」、もっと言えば“正当性にある瑕疵”への恐怖です。
戦後の「中国」だったのは誰か
第二次世界大戦のとき、
対日戦争・対独戦争で「連合国の一員として戦っていた中国」は、
いまの共産党政権ではなく国民党(中華民国)でした。
これらを担っていたのは、あくまで中華民国(国民党政権)です。
その後、内戦で共産党が大陸を制圧し、国民党は台湾へ逃れました。
ここで大事なのは、
という点です。
ソ連が崩壊したときには、「ソ連の権利義務はロシアが継続して引き継ぐ」と整理されました。
ソ連 → ロシアは「継続国」として一応スジが通っている。
しかし、中華民国 → 中華人民共和国はそうなっていない。
ここに、歴史的連続性という意味での「正当性の瑕疵」が生まれます。
ちなみに清国から中華民国への承継手続きは形なりにもおこなっていました。
国連の椅子を「取り替えた」アルバニア決議
では、今の共産党中国はどうやって国連の「中国席」を手に入れたのか。
1971年のアルバニア決議で、
「国連における中国を代表する唯一の正統な政府は、中華人民共和国である」
と総会が決め、中華民国(台湾)は追い出されました。
ここでわかりやすくするため無理やりですが例えてみます
つまり、アルバニア決議は
「同じ“世帯(=一つの中国)”の中で、補助金の受け取り担当を親から息子に変更します」
と行政側が勝手に決めた、という構図に近い。
ここまでは、「中国は一つ」という前提がある限り、それほど大きな矛盾にはならないのです。
では、親(台湾)が世帯を分けたらどうなるか
問題はここからです。
もし親(台湾)が、
「自分は別世帯として生きます」
(=台湾が明確に独立国家としての道を選ぶ)
と言い出したら、どうなるか。
-
「同一世帯だから」という理由で息子(共産党中国)が代理受給していたにすぎない
-
ところが親が別世帯として独立してしまったら、
→ 「そもそも、なぜ息子がその補助金をそのまま受け取り続けているのか?」
という根本の問いが生まれる
これが、中国が「一つの中国」にこだわる理由であり、
台湾独立をことさら警戒する本当の理由だと私は思っています。
領土問題や民族感情だけではなく、
「P5中国席」「戦勝国としての中国」という正当性の大黒柱に、ツッコミが入りかねない
という恐怖が背後にある。
共産党中国が抱える「正当性に瑕疵がある」という問題
整理すると、こうなります。
この瑕疵は、本来なら
台湾(中華民国)から正式に権利義務の承継を受ける
ことでしか、きれいには解消できません。
ところが、正面から「承継させてください」と言ってしまえば、
「今の自分たちの正当性には、もともと穴が空いている」と
自分で認めることになる
それは共産党にとって、内外どちらに対しても絶対に言いたくない本音のはずです。
だからこそ、
-
歴史的必然
-
中華民族の夢
-
祖国統一
といった情緒的な物語を前面に出すしかない。
本当に痛い論点(国家承継と正当性の瑕疵)には触れられない、という構造があるように見えます。
まとめ
中国が台湾問題にここまで敏感なのは、
-
「領土」「民族」「面子」だけの話ではなく
-
自分たちの“中華”としての正当性に、もともと瑕疵があることを、
台湾独立があぶり出してしまうから
だと私は考えています。
平時には、慣行と力でこの瑕疵にフタをすることができます。
しかし、有事になればなるほど、隠していた腫れ物は目立ってくる。
中国が「一つの中国」と「台湾独立」をどれほど神経質に扱うのか。
その背景には、こうした正当性の問題が横たわっているのではないか――
それが今回の私の仮説です。