加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Miles Davis - At Plugged Nickel, Chicago Vol. 1&2 1965」フリー&前衛色濃いライブ録音

マイルス・デイビスMiles Davis)が、1964年の秋(09月頃)から率いたクインテットは、「60年代黄金クインテット」と称えられるほど、当時の先鋭的なミュージシャンが
奇跡的に揃ったバンドでありました。

 

「Miles Davis - At Plugged Nickel, Chicago Vol. 1&2 1965」フリー&前衛色濃いライブ録音

 

マイルス以外のメンバーは、メンバー中、一番最後にバンドへ加入したサックス奏者のウェイン・ショーターWayne Shorter)、ドラムスはまだ10代のトニー・ウィリアムスTony Williams)、ピアノは大学で「音楽」と「電気工学」を専攻したという、バリバリ理系のハービー・ハンコックHerbie Hancock)、ベースはロン・カーターRon Carter)という布陣。

 

 

最初にバンドに加入したベースのロン・カーターRon Carter)は、アート・ファーマーArt Farmer)のバンドから(無理矢理)引き抜かれた模様(笑)。

 

トニー・ウィリアムスTony Williams)は1962年末、16歳でジャッキー・マクリーンJackie McLean)にスカウトされ、ニューヨークに進出した天才ドラマーであり、翌1963年にはマイルスのバンドに参加。

 

ピアノのハービー・ハンコックHerbie Hancock)は当時、ドナルド・バードDonald Byrd)のバンドのピアニストであったものの、これまたドナルド・バードのバンドから引き抜かれた模様。

 

ウェイン・ショーターWayne Shorter)は、音楽監督を務めてたアート・ブレイキー(Art Blakey)のジャズ・メッセンジャーズ退団した後にマイルスのバンドに参加。

 

マイルス・デイビス自叙伝」から引用すると最初、フリー系のミュージシャンだと思われていたそうですが、アート・ブレイキー(Art Blakey)のジャズ・メッセンジャーズ音楽監督を務める事により、伝統的なスタイルに戻っていたとの事。

 

 

「Miles Davis - At Plugged Nickel, Chicago Vol. 1&2 1965」フリー&前衛色濃いライブ録音

 

そんな様々な経緯を経て結成された「60年代黄金クインテット」が、1965年12月末にシカゴのライブスポット「Plugged Nickel」で実施されたライブ録音は、何枚かのライブアルバムと、2種類の「完全版」として発売されております。

 


マイルス自身の自叙伝を要約すると、マイルス曰く「バンドはトニーを中心に展開していたが、トニーは誰かが少し前衛的な事をするのが大好きだった。」

 

「オレがバンドのインスピレーションであり、知恵であり、つなぎ役だとしたら、トニーは創造的なひらめき、火柱で、ウェインはアイデアの源泉で、いろいろなアイデアに形を与え、ロンとハービーは全体をまとめていた。」

 

という感じで、バンド・メンバーに好き勝手(笑)やらせる風を装いつつ、「嫌い」と公言していた「フリー・ジャズ」から学べるものをどんどんマイルス自身の演奏スタイルに取り入れていたみたいです。

 


さて、「60年代黄金クインテット」が結成された1964年秋から1965年は、音楽ビジネスにも大きな変革があったようで、その辺の様子を、マイルス自身の自叙伝から要約して抜き出してみます。

 

マイルス・デイビス、クインシー・トループ著/中山康樹
マイルス・デイビス自叙伝②[JICC出版局]1990」第14章から要約抜粋

 

1964年、フリー・ジャズの猛威が、ジャズからメロディーを奪い去った。

 

イギリス出身のロックバンド、ビートルズThe Beatles)や、モータウンMotownサウンドが流行だし、ジェームス・ブラウンJames Brown)の人気も上昇してきた。

 

ロックやソウル・ミュージックの台頭で、ジャズの人気は急下降し、多くのジャズ・クラブも閉店していった。

 

 

こんな感じで、これまでのメロディアスなジャズが下火になり、「フリー・ジャズ」と呼ばれる、マイルスからしたら「テクニック不足な連中が演奏するデタラメな音楽」が幅をきかす事となります。

 

そんな時代の波に一番影響を受けていたのは、まだ10代のトニー・ウィリアムスTony Williams)。

 

その才能に惚れ込んだマイルスが、バンドの主導権をトニーに委ねた事で、「60年代黄金クインテット」の演奏は、以前からのメロディアスな演奏スタイルを残したマイルスと、前衛(フリー)色濃い残りの4人がせめぎあいが常時演奏の緊張感を高める事となり、その結果としてバラッド演奏であっても、甘さを徹底的に排したハードボイルドな演奏に終始する事となります。

 

そんな激動の時期の渦中、1965年12月末に行われた「Plugged Nickel」でのライブでは、アルバム「E.S.P.」からの新曲はマイルス作の「Agitation」のみ。

 

 

 

それ以外は、ライブでお馴染みのスタンダード・ナンバーが演奏されているのですが、例えばトニーのリクエストで久しぶりに演奏された「Walkin'」などは、以前よりかなりテンポを上げて演奏されており、そういう感じで昔の曲をテンポアップしつつ、前衛(フリー)的な色付けを加える事で、昔の曲を新曲の如く演奏する事に成功しております。

 


www.youtube.com

 

今回、「Plugged Nickel」でのライブ録音を聴き直して面白く感じた点は、マイルスがトランペットを吹いている時は、辛うじて曲のコード進行やモードのスケール感を感じる事が出来るのに、マイルスのソロが終わり、ウェイン・ショーターWayne Shorter)がソロ吹き出した途端、演奏から一切、コード進行やモードのスケール感が消し去られてしまう事(笑)。

 

そんな感じで全編、ハードボイルドというか、マイルス・デイビストニー・ウィリアムス・トリオ+ウェイン・ショーターの果し合いという感じの終始緊張感漂うライブ録音が「Plugged Nickel」でのライブであります。

 

前述の通り、「Plugged Nickel」でのライブは様々なフォーマットで発売されておりますが、最初に日本でのみアナログレコード2枚に分散発売された発売されたものが、一番すっきりしていて、聴きやすいかと思われます。

 

「Miles Davis - At Plugged Nickel, Chicago Vol. 1&2 1965」フリー&前衛色濃いライブ録音

Miles Davis - At Plugged Nickel, Chicago Vol. 1
CBS/Sony 25AP-1 / Sony Music SICP-4180 [2014.09.24]

01. Walkin' (R. Carpenter)  11:05
02. Agitation (M. Davis)  11:02

03. On Green Dolphin Street [complete form] (B. Kaper, N. Washington)  13:05
04. So What (M. Davis)  13:36
05. Theme [complete form] (M. Davis)  3:33


#01 December 23,1965 at Plugged Nickel, Chicago, IL, 1st set
#02-05 December 23,1965 at Plugged Nickel, Chicago, IL, 2nd set
Miles Davis (tp) Wayne Shorter (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds)

 

「Miles Davis - At Plugged Nickel, Chicago Vol. 1&2 1965」フリー&前衛色濃いライブ録音

Miles Davis - At Plugged Nickel, Chicago Vol. 2
CBS/Sony 25AP-291 / Sony Music SICP-4181 [2014.09.24]

01. 'Round About Midnight (B. Hanighen, C. Williams, T. Monk)  8:45
02. Stella By Starlight (N. Washington, V. Young)  13:10

03. All Blues (M. Davis)  12:23
04. Yesterdays [complete form] (J. Kern, O. Harbach)  15:05
05. Theme [complete form] (M. Davis)  5:05


#01 December 22,1965 at Plugged Nickel, Chicago, IL, 2nd set
Miles Davis (tp) Wayne Shorter (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds)

#02 December 23,1965 at Plugged Nickel, Chicago, IL, 1st set
#03, 04, 05 December 23,1965 at Plugged Nickel, Chicago, IL, 4th set
Miles Davis (tp) Wayne Shorter (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds)

 

 

 

記事にまとめていたら、かなり長くなってきたので、「完全版」BOXセットの詳細は次回に持ち越す事にして、ひとまず、他のフォーマットを付記しておきます。

 

「Miles Davis - At Plugged Nickel, Chicago Vol. 1&2 1965」フリー&前衛色濃いライブ録音

Miles Davis – Cookin' At The Plugged Nickel (1987)
Columbia CJ-40645/CK-40645 / CBS/Sony CSCS-5343 [1990.12.21] 

01. If I Were A Bell (F.Loesser)  16:46
02. Stella By Starlight (N.Washington-V.Young)  12:54

03. Walkin' [edited form] (R.Carpenter)  14:56
04. Milestones [edited form] (Miles Davis)  12:38


#01-03 December 22,1965 1st set
Miles Davis(tp) Wayne Shorter(ts) Herbie Hancock(p) Ron Carter(b) Tony Williams(ds)

#04 December 23,1965 3rd set
Miles Davis(tp) Wayne Shorter(ts) Herbie Hancock(p) Ron Carter(b) Tony Williams(ds)

 

このアルバムは、発売時期により追加曲があったり、欠落したソロを補完したバージョンに差し替えられたりしておりますので、なるべく最新のCDをお求めになる事を推奨致します。

 

 

 

「Miles Davis - At Plugged Nickel, Chicago Vol. 1&2 1965」フリー&前衛色濃いライブ録音

Miles Davis – More Cookin' At The Plugged Nickel (1965)
Sony Records Int'l SRCS-9754 [2001.11.29] ※Japan Only Issued

01. On Green Dolphin Street (N.Washington-B.Kaper)  13:01
02. I Fall In Love Too Easily (S.Cahn-J.Styne)  11:57
03. No Blues (Miles Davis)  20:04
04. Four (Miles Davis)  15:06
05. Milestones (Miles Davis)  11:34
06. The Theme (Miles Davis)  5:05


#04 December 22,1965 2nd set
Miles Davis(tp) Wayne Shorter(ts) Herbie Hancock(p) Ron Carter(b) Tony Williams(ds)

#02 December 23,1965 1st set
#01 December 23,1965 2nd set
#03,05 December 23,1965 3rd set
#06 December 23,1965 4th set
Miles Davis(tp) Wayne Shorter(ts) Herbie Hancock(p) Ron Carter(b) Tony Williams(ds)


※「The Complete Live At The Plugged Nickel 1965 (US)」に収録された、ロングバージョンを収録した日本独自企画。

 

 

 

「Miles Davis - At Plugged Nickel, Chicago Vol. 1&2 1965」フリー&前衛色濃いライブ録音

Miles Davis – Highlights From The Plugged Nickel

Columbia CK-67377 [1995]

01. Milestones (Miles Davis)  11:37
02. Yesterdays (J. Kern, O. Harbach)  15:05
03. So What (Miles Davis)  13:39
04. Stella By Starlight (N. Washington, V. Young)  13:08
05. Walkin' (R. Carpenter)  11:02
06. 'Round About Midnight (B. Hanighen, C. Williams, T. Monk)  8:42


#06 December 22, 1965 2nd Set
Miles Davis(tp) Wayne Shorter(ts) Herbie Hancock(p) Ron Carter(b) Tony Williams(ds)

#04,05 December 23, 1965 1st Set
#03 December 23, 1965 2nd Set
#01 December 23, 1965 3rd Set
#02 December 23, 1965 4th Set
Miles Davis(tp) Wayne Shorter(ts) Herbie Hancock(p) Ron Carter(b) Tony Williams(ds)

 

※「The Complete Live At The Plugged Nickel 1965 (US)」の抜粋版です。

 

 

次回は「完全版(The Complete Live At The Plugged Nickel 1965)」BOXセットの詳細をざっとご紹介していきます。

 

The Complete Plugged Nickel Live 1965

The Complete Plugged Nickel Live 1965

Amazon