日本盤CD帯に記された通り、「ファンキー・ジャズの帝王」としてヒップ・ホップ世代からも崇拝、あがめ祀られる存在となったホレス・シルヴァー(Horace Silver)。

約10年の自主レーベル「Silveto」での活動を終え、メジャー・レーベル「Columbia」から1993年に発売したアルバムが「It's Got To Be Funky」です。

Horace Silver - It's Got To Be Funky
Columbia CK-53812 / Sony Records SRCS-6736 [1993.06.17]
01. Funky Bunky 7:30
02. Dufus Rufus 5:34
03. The Lunceford Legacy 7:03
04. The Hillbilly Bebopper 5:29
05. The Walk Around - Look Up And Down Song 5:55
06. It's Got To Be Funky 6:45
07. Basically Blue 6:27
08. Song For My Father 8:33
09. When You're In Love 4:30
10. Put Me In The Basement 7:19
11. Little Mama 7:05
12. Yo' Mama's Mambo 3:40
all songs written by Horace Silver
Oscar Brashear, Ron Stout, Bob Summers (tp, flh) Bob McChesney (tb) Maurice Spears (bass-tb)
Suzette Moriarty (french horn) Horace Silver (p) Bob Maize (b) Carl Burnett (ds)
Guest Soloists - Andy Bey (vo #2, 4, 6, 8)
Red Holloway (ts solo #1, 2, 5, 6, 7, 8, 10, 11 & as solo #4)
Eddie Harris (ts solo #1, 6) Branford Marsalis (ts solo #4, 7)
February 8 and 9, 1993 in NYC.
このアルバムは、ホレスのピアノ・トリオにトランペット3人、トロンボーン2人、フレンチ・ホルン1人という6人編成の金管ブラス・アンサンブルを加えたバンドで演奏されており、うち4曲には、ヴォーカルのアンディ・ベイ(Andy Bey)が、ソウルフルな歌声を聴かせてくれます。
また、メインのゲスト・ソロイストとして、サックスのレッド・ホロウェイ(Red Holloway)が9曲に参加。さらにゲスト・ソロイストとしてテナー・サックスのエディ・ハリス(Eddie Harris)と、ブランフォード・マルサリス(Branford Marsalis)がそれぞれ2曲ずつソロを聴かせてくれます。
なお、日本盤解説には、ジャズ・ジャーナリスト・小川隆夫さんによるインタビューが掲載されており、そこに記載されたホレス・シルヴァーの曲紹介を、今回のブログ記事に「引用している」事を、最初にお断りしておきます。
01曲目「Funky Bunky」は、クインテット+ストリングスのために作曲され、リハーサルまで行われたものの、お蔵入りになっていた曲だそうです。
タイトル通り踊りだしたくなるようなファンキーなリズムにのり、躍動的なブラス・アンサンブルが炸裂(笑)しております。
ソロにはホレス・シルヴァーの他、テナー・サックスのレッド・ホロウェイ(Red Holloway)、アルト・サックスのエディ・ハリス(Eddie Harris)が登場。これぞファンキー!と叫びたくなるようなソロを聴かせてくれます。
02曲目「Dufus Rufus」は、アップテンポな演奏であり、ホレスのファンキーなバッキングにのり、ヴォーカルのアンディ・ベイ(Andy Bey)がソウルフルな歌声を聴かせてくれます。
ソロはホレスの他、ファンキーなテナー・サックスのレッド・ホロウェイ、そしてトランペットのオスカー・ブラッシャー(Oscar Brashear)がはちきれんばかりのハイノートを聴かせてくれます。
03曲目「The Lunceford Legacy」は、ジミー ランスフォード(Jimmie Lunceford)に捧げた曲だそうです。
スイング時代のアルト・サックス奏者で自らの楽団を率いていた彼のレコードを聴いて、子供時代のホレス・シルヴァーはミュージシャンになる事を志したそうで、ソロはホレスのみですが、かなり抒情的なソロを聴かせてくれます。
04曲目「The Hillbilly Bebopper」は、有名ジャズ・スタンダードであるチェロキーのコード進行を元に、カントリー風な曲に仕上げたものだそうで、アンディ・ベイ(Andy Bey)のソウルフルな歌入り。
ホレスのゴキゲンなバッキングに煽られつつ、アルト・サックスに持ち替えたレッド・ホロウェイと、テナー・サックスのブランフォード・マルサリス(Branford Marsalis)がファンキーなソロを聴かせてくれ、ソロ最後に登場するホレスも、1960年代のブルーノート黄金期を思い出させる、気合の入ったソロを聴かせてくれます。
05曲目「The Walk Around - Look Up And Down Song」は、レイ・チャールス(Ray Charles)の演奏などで知られるスタンダード「In A Little Spanish Town」のコード進行を元に作られた曲だそうで。
ホレスがロスの街を歩いていた時に思いついた曲なんだそうで、3拍子のリズムが何となくウォーキングに聴くとぴったりな感じ(笑)。
テナー・サックスのレッド・ホロウェイと、ホレスがご機嫌なソロを聴かせてくれますが、ソロ途中に登場するブラス・アンサンブルもかなり魅力的。
06曲目は、アルバム・タイトルにも使われた日本人好みな哀愁系かつソウルフルな「It's Got To Be Funky」。アンディ・ベイのソウルフルなヴォーカルが加わる、タイトル通りファンキーな曲です。
ソロはホレスの他、テナー・サックスのレッド・ホロウェイ、そして同じくテナー・サックスのエディ・ハリスが聴きごたえあるソロを聴かせてくれております。
07曲目「Basically Blue」は、偉大なるピアニストでバンド・リーダーであったカウント・ベイシー(Count Basie)に捧げたミディアム・テンポで、ファンキーかつ、黄金期のカウント・ベイシー楽団の演奏に寄せたのか、かなり深めにスイングする曲。
ソロはホレスの他、テナー・サックスのレッド・ホロウェイと、同じくテナー・サックスのブランフォード・マルサリスです。
08曲目「Song For My Father」は、ホレス・シルヴァーの一番有名な曲。
テーマ部も、このブラス・アンサンブルの為にゆったりしたフレーズに変更、重厚なブラスアンサンブルの後に登場するアンディ・ベイの哀愁漂うヴォーカルも良いですね。
テナー・サックスのレッド・ホロウェイの短めなソロの後、ホレス・シルヴァーのファンキーなピアノ・ソロが登場します。
09曲目「When You're In Love」は、ホレスが「ロスの海岸を夕暮れ時に歩いている姿を頭に描いて書いたラブ・バラード」だそうです。
「恋愛映画の最後のシーンに流れるテーマ音楽」とホレス自ら解説する通り、抒情感溢れるバラッド演奏に仕上がっており、ホレスのソロと重厚なブラス・アンサンブルが、演奏が進むにつれ、センチメンタル雰囲気を一層盛り上げていきます。
10曲目「Put Me In The Basement」は、有名スタンダード「Body And Soul」のコード進行を元に作られた曲だそうで、演奏の随所で聴かれるブラス・アンサンブルも美しいです。
コールマン・ホーキンス(Coleman Hawkins)による名演を、ホレスがよく聴いていたみたいです。ソロはホレスと、テナー・サックスのレッド・ホロウェイが懐かしのスイング風な演奏を聴かせてくれ、短いながらも「Bob Maize」のベース・ソロも登場します。
11曲目「Little Mama」は、これまたファンキーなブルース進行の曲。
ホレスのファンキーで心地よいバッキングにのせ、テナー・サックスのレッド・ホロウェイの豪快なソロが登場。お次のホレス・シルヴァーもノリノリ(死語)なソロを聴かせてくれてます。
12曲目「Yo' Mama's Mambo」は、タイトルからも察せる通り哀愁系のラテン調の曲であり、マンボの王様・ティト・プエンテ(Tito Puente)の演奏からヒントを得て、このブラス・アンサンブル用に「ひと捻りして仕上げた」曲なんだそうです。
この曲「Doin' The Thing」に似てますね(笑)。
ロン・スタウト(Ron Stout)のブルー・ミッチェル(Blue Mitchell)を彷彿とさせるトランペット・ソロ、トロンボーンのボブ・マクチェスニー(Bob McChesney)の短いソロを経て、ホレスの前のめり気味の特徴あるソロが登場。
最後にカール・バーネット(Carl Burnett)の短めなドラム・ソロを経て演奏は後テーマに雪崩れ込んでいきます。
ついでに補足。
1993年06月に日本発売されたこの「It's Got To Be Funky」ですが、当初の予定では「Mt. Fuji Jazz Festival '93」に出演するホレス・シルヴァー(Horace Silver)の来日記念盤だったんですよね。
ただ、皆様ご存じかと思われますが、この年の来日はホレス・シルヴァー側の都合でキャンセル。翌年の「Mt. Fuji Jazz Festival '94」で、ようやくマウント・フジのステージに登場します。
長年在籍していたブルーノート(Blue Note Records)が活動休止に入る1980年頃に発売された「Horace Silver - Silver 'N Strings (Blue Note LWB-1033)」を最後に、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)はメジャー・レーベルから離れ、自身が立ち上げたレーベル「Silveto」からアルバムを発売していたそうです。
「Silveto」はホレスの個人経営のレコード会社であったらしく、発売されたアルバムが日本全国の流通経路にのる事はなく、新潟とかの地方都市に住むものとしては、入手困難であり、いまだ「Silveto」から発売された大部分のアルバムを聴く機会がありません・・・。



