
「自分を愛する」って、簡単なようで、一番難しいことかもしれません。
介護士として働いていると、毎日“誰かを思う”ことに心を使います。
入居者様の笑顔を願い、同僚との関係を保ち、家族や上司との間で気を遣う。
だけど、そんな中でふと立ち止まると、
「あれ、自分のことを思いやる時間っていつあったんだろう?」と気づくんです。
私は長い間、「頑張らなきゃ」と自分を追い込みながら生きてきました。
ミスをすれば「私なんてダメだ」と責め、
入居者様や家族から厳しい言葉をもらえば、
心の奥で何度も自分を否定してきました。
「もっとちゃんとできるはず」
「なんでこんなことで落ち込むの?」
そんな言葉を、何度自分に投げつけたか分かりません。
でも、あるときふと気づいたんです。
——私は誰かを大切にしようとするあまり、
一番身近な“自分”をずっとないがしろにしていたんだって。
ある日のこと。
夜勤明けでクタクタになって帰る途中、鏡に映った自分の顔を見てハッとしました。
顔色は悪く、目の下にはクマ。
「これが“人の幸せ”を支える私の姿か…?」
そう思った瞬間、涙が止まらなくなりました。
「なんで、こんなに頑張っているのに苦しいんだろう」
「なんで、うまくいかないことばかりなんだろう」
そのとき、私は自分にそっと言ってあげたんです。
「もう、そんなに頑張らなくていいよ」って。
その日から、私は少しずつ、自分に優しくしてみることにしました。
完璧じゃなくてもいい。
笑顔を作れない日があってもいい。
誰かに冷たくしてしまう日があっても、
それでも「今日も一日よくやったね」と、自分に声をかけてあげる。
最初は、そんなことをしても何も変わらない気がしました。
でも不思議なことに、心が少しずつ軽くなっていったんです。
“自分を愛する”というのは、
「自分を甘やかす」ことでも、「わがままになる」ことでもありません。
ありのままの自分を、まるごと受け入れること。
いいところも、ダメなところも、「これが私」と認めることです。
仕事でミスして落ち込む自分も、
誰かにイライラしてしまう自分も、
「それでも頑張ろうとしている私なんだ」と認めてあげる。
それが、自分を愛する第一歩なんだと思います。
介護の仕事をしていると、よく見かけるんです。
「自分なんて…」とつぶやく人。
優しい人ほど、責任感の強い人ほど、
自分のことを後回しにしてしまう。
でもね、思うんです。
自分を愛せない人は、本当の意味で誰かを愛することも難しいんじゃないかって。
自分を大切にできてこそ、初めて他人にも優しくなれる。
それは、この仕事を通して何度も感じてきたことです。
ある入居者様がこんなことを言っていました。
「若い頃はね、いつも自分を責めてばかりいたの。でも、年を取って思うのよ。
“どんな私でも、私なんだから”って。」
その言葉を聞いたとき、胸の奥がじんわりとあたたかくなりました。
長い人生を歩んできた人の言葉には、
「自分を責め続けてきた痛み」と「受け入れる強さ」が詰まっている気がしました。
私たちはいつだって、
“できないこと”や“うまくいかないこと”ばかり見てしまいがちです。
だけど、本当はそれでも生きてきたという事実こそが、
一番誇らしいことなんじゃないでしょうか。
“自分を愛する”ようになると、不思議といろんなことが変わり始めます。
たとえば、失敗しても「まぁ、いいか」と思えるようになる。
誰かに厳しいことを言われても、
「私は私のペースで大丈夫」と受け止められるようになる。
人と比べなくなる。
焦らなくなる。
そして、笑顔が自然に戻ってくる。
そうなると、周りの人の反応まで変わってくるんです。
同じ一言でも、やさしく聞こえるようになる。
不思議だけど、自分を愛すると、世界が少しずつ優しくなっていくんです。
だからもし、今うまくいっていないと感じているなら、
それは「自分を嫌いすぎているサイン」かもしれません。
何もかも思うようにいかないときこそ、
「大丈夫、私が味方だよ」と自分に言ってあげてください。
誰も認めてくれなくても、
自分だけは自分を信じてあげていい。
それだけで、少しずつ何かが回りだします。
努力よりも、完璧さよりも、
「自分を大切にすること」が人生の歯車を動かす力になるんです。
私もまだ、毎日うまくいくわけじゃありません。
落ち込む日も、泣きたくなる日もあります。
でもそんな日ほど、自分をぎゅっと抱きしめるような気持ちで、
「今日も生きてくれてありがとう」と心の中でつぶやくようにしています。
そうしているうちに、
入居者様の笑顔がいつもより温かく見えたり、
空の色がやけに優しく感じたりする瞬間があるんです。
たぶんそれが、「自分を愛する」ということなんだと思います。
うまくいかない過去も、足りない今も、
全部ひっくるめて愛せたとき、人生は動き出します。
自分を責めていた日々が、少しずつ癒されていく。
そんな奇跡を、私は介護の現場でたくさん見てきました。
だから、どうか覚えていてください。
今までうまくいっていなくても、大丈夫。
あなたが自分を愛し始めた瞬間から、
人生は静かに、でも確実に、いい方向へ回り出します。
最後までお読みいただきありがとうございます。