遊心逍遥記

遊び心で本の森を逍遥し、その時の思いを残しておこうと始めました。

笹本稜平

『山狩』  笹本稜平   光文社

関西に住む私には千葉県の地形のイメージがない。「千葉県は全国の都道府県で唯一標高500mを超す山がない」(p4)ということを本書で知った。 この小説は房総半島の南端を所轄する安房警察署の生活安全課に所属する小塚俊也巡査部長が主要な登場人物の一人…

『希望の峰 マカルー西壁』  笹本稜平  祥伝社

著者の小説はいくつかの分野に広がっている。冒険小説、山岳小説、警察小説などである。さらに山岳小説と警察小説が融合したものもある。 本書はそのタイトルからわかるように、山岳小説。本書を読んで、遅ればせながら、これが「ソロ」シリーズの一環で、『…

『公安狼』 笹本稜平  徳間書店

奥書を読むと、「読楽」2018年9月号~2019年9月号に掲載され、加筆修正して2020年3月に単行本が刊行された。 著者による警察小説の作品シリーズを読み始めているが、公安捜査ものを読むのはこれが初めてだと思う。 この小説はストーリーの構成がまず面白い。…

『山岳捜査』  笹本稜平  小学館

山好きでかつ警察小説を愛読する人にはのめり込める作品。 特に後立山連峰の鹿島槍ヶ岳、五竜岳辺りを登山した経験がある人には、冬山登山のスリリングな感触をヴァーチャルに味わいながら事件の成り行きに引きこまれることだろう。 奥書を読むと、本書は「S…

『指揮権発動』  笹本稜平  角川書店

「小説 野性時代」(2017年4月号~2018年5月号)に連載された後、加筆修正を経て、2019年1月に単行本が刊行された。 この小説の興味深い点は、捜査する場所が海外、それもアフガニスタン・イスラム共和国のゴタール市を舞台とすること。カブール市内で日本人…

『サンズイ』  笹本稜平  光文社

本書のタイトルは警察内部の隠語。警察小説愛読者には常識用語になっているだろう。贈収賄や官製談合といった汚職がらみの政治案件を守備範囲として担当する部署を指す。「汚職」の「汚」の字の部首「サンズイ」に由来。警視庁捜査二課第四知能犯~第六知能…

『ビッグブラザーを撃て!』  笹本稜平  光文社文庫

笹本稜平さんの作品を溯り、作家デビュー作を読んでみることにした。 2000年9月にカッパ・ノベルス(光文社)から阿由葉稜という名義で出版された。その時のタイトルは『暗号 -Back・Door-』である。 2003年9月、文庫本となるに際して標記のタイトルに改題…

『最終標的 所轄魂』  笹本稜平   徳間書店

所轄魂シリーズの第5弾! 「読楽」(2017年3月~2018年3月)に連載された後、加筆修正されて、2018年10月に単行本が刊行され、2022年5月13日に文庫化された。 冒頭、警察庁刑事局長である勝沼厳が警察大学校の校長に異動するという噂が大原課長から葛木邦彦…

『危険領域 所轄魂』  笹本稜平  徳間文庫

所轄魂シリーズ第4弾! 本書は2017年6月、単行本が刊行され、2019年7月に文庫化された。 最初に、タイトルの由来に直結していく記述をご紹介しよう。この作品は13の章で構成される。一つは第6章に出てくる。「俊史は恐ろしげなことを口にする。・・・・勝沼にす…

『強襲 所轄魂』  笹本稜平  徳間文庫

所轄魂シリーズの第3弾。2015年7月に単行本が刊行され、2018年6月に文庫化された。 あることがきっかけとなり警視庁捜査一課の敏腕刑事、葛木邦彦は所轄への異動を希望した。願いは受理され、城東署の刑事・組織対策犯罪課強行犯捜査係長となる。所轄では犯…

『失踪都市 所轄魂』  笹本稜平   徳間文庫

『所轄魂』の第2弾! 2014年7月に単行本が刊行され、2017年5月に文庫本となった。 中心となる人物は、城東署刑事・組織犯罪対策課強行犯捜査係の係長、葛木邦彦。ノンキャリアの警察官で、警視庁捜査一課殺人捜査係に所属していたが、それを擲ち希望して所…

『所轄魂』 笹本稜平  徳間文庫

このストーリーで軸となるのは葛木邦彦。警視庁捜査一課の殺人犯捜査係主任となるまで、花形部署の第一線をつっぱしってきた。だが、2年前に妻がくも膜下出血でこの世を去った。それを契機に、所轄の刑事課へ異動を願い出て、江東区東部を管轄する城東警察署…

『時の渚』  笹本稜平  文春文庫

著者は2001年にこの作品で第18回サントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞した。2001年5月に単行本として刊行され、2004年4月に文庫本となっている。 だいぶ前に購入していたのを先日(注記:2020年4月)読んだ。 20年前に書かれた小説とは感じさせない…

『突破口 組織犯罪対策部マネロン室』  笹本稜平  幻冬舎

この小説のテーマはマネーロンダリングの大がかりなカラクリの捜査活動プロセスを描き出すことである。かつ、そのプロセスを通じて、副産物として政財界・警察組織などの組織機構に隠然と内在する利権体質およびそれに加担する一群の人々の存在を描き出す。…

『漏洩 素行調査官』  笹本稜平  光文社文庫

素行調査官シリーズの第3弾。「小説宝石」(2011年4月号~2012年2月号)に連載された後、2012年5月に単行本として刊行され、2015年1月に文庫本化されている。 素行調査官という官職名はない。警視庁の中に設けられた警務部人事一課監察係をここではさしてい…

『白日夢 素行調査官』  笹本稜平  光文社文庫

『素行調査官』シリーズの第2弾。「小説宝石」の2009年10月号~2010年9月号に連載発表され、2010年10月に単行本が出版された後、2013年6月に文庫本化されている。 東北地方の中央部にある都市の駅前の繁華街にほど近いマンションの屋上から一人の男が8月下…

『素行調査官』  笹本稜平  光文社文庫

このタイトルのネーミングに興味を持ち読んで見た。既に一つのシリーズになっているが、これが第1作。2008年に「小説宝石」に連載され、同年10月に単行本が刊行された後、2011年8月に文庫本化されている。 私立探偵を生業にしていたが、高校時代のクラスメ…

『相剋 越境捜査』   笹本稜平   双葉社

越境捜査シリーズ第8弾。「小説推理」(2019年7月号~2020年7月号)に連載された後、加筆、訂正が加えられ2020年10月に単行本が刊行された。著者は2021年11月に70歳で逝去。晩年の作品の一冊になる。また一人、愛読作家が鬼籍入り・・・・・ 合掌。 警察小説とし…

『転生 越境捜査』   笹本稜平  双葉文庫

越境捜査シリーズ第7弾。2019年4月に単行本が刊行され、今年(2022)2月に文庫化されている。 文庫本のカバー表紙折込に記された著者プロフィールの末尾を読み愕然とした。 「21年、逝去」知らなかった! 調べてみると、著者は2021年11月22日に急性心筋梗塞…

『孤軍 越境捜査』  笹本稜平  双葉文庫

越境捜査シリーズの第6弾。「小説推理」(2016年1月号~2017年2月号)に連載された後、2017年9月に双葉社より単行本が刊行された。2020年12月に文庫化されている。 鷺沼友哉は警視庁捜査一課特命捜査対策室特命捜査第二係に所属。強行犯捜査係が取りこぼし…

『偽装 越境捜査』  笹本稜平  双葉文庫

越境捜査シリーズ第5弾。2015年4月に刊行され、2018年11月に文庫化された。 まず、文庫本に付されたオビのキャッチフレーズをご紹介しておこう。「鷺沼&宮野の刑事コンビが仕掛けた罠と殺人犯の裏工作----。」「警察と犯人、騙されたのはどっちだ!?…

『逆流 越境捜査』  笹本稜平   双葉文庫

第10章に次の一節がある。「死ぬ気まではないが、ここが正念場なのはたしかだろう。これまでの相手の仕掛けは用意周到な上に大胆だった。その逆流に押し込まれては、このままなす術もなく退散ということになりかねない。だからといってただ気負いこめばいい…

『破断 越境捜査』  笹本稜平  双葉文庫

越境捜査シリーズの第3弾。『小説推理』(2010年3月号~2011年4月号)に連載された後、2011年10月に単行本が出版され、2014年11月に文庫化された。 最初に主な登場人物を挙げておこう。鷺沼友哉 警視庁捜査一課特別捜査一係所蔵。未解決事件の継続捜査が本…

『挑発 越境捜査』  笹本稜平  双葉文庫

越境捜査シリーズの第2弾。2010年2月に単行本が刊行され、2013年4月に文庫化された。 中心人物は鷺沼友哉。警視庁捜査一課所属、とは言え、継続捜査担当の特別捜査一係。一課の華である殺人班の遊軍というのが実態。しかし、鷺沼は警察組織内に巣くう悪、利…

『越境捜査』 上・下  笹本稜平  双葉文庫

2017年4月27日付で改正刑事訴訟法が成立し、即日施行された時点で、殺人などの時効は廃止された。 この警察小説は2007年8月に単行本、2009年12月にノベルスとして刊行され、2010年11月に文庫本となった。つまり、殺人犯罪に時効が成立した時代のストーリーで…

『駐在刑事 尾根を渡る風』  笹本稜平  講談社文庫

駐在刑事シリーズの第2弾。現時点で単行本あるいは文庫本となっているのはこの第2弾までと思う。単行本は2013年11月に刊行され、文庫本化は2016年10月。 「駐在刑事」のタイトルの由来は最初の『駐在刑事』の読後印象記で述べているので再掲しない。本書も…

『駐在刑事』  笹本稜平  講談社文庫

まずタイトルがおもしろい。駐在といえば駐在所、刑事は刑事、なぜその2つが繋がるのか? そこから始まるストーリーである。 駐在所は東京都の北西端、奥多摩の山里。青梅警察署水根駐在所をさす。刑事とは、警視庁捜査一課第四強行犯殺人犯罪捜査第七係に…

『太平洋の薔薇』 上・下  笹本稜平  光文社文庫

40年近い船員生活を過ごしてきた柚木静一郎は最後の航海に臨んでいた。彼の最後の伴侶となる船がパシフィックローズ号。本書のタイトルはこの船名に由来する。 パシフィックローズ号は船齢24年の不定期貨物船。1万総トン、15,000トン積みでほとんどあらゆる…

『遺産 The Legacy 』 笹本稜平  小学館

いままで読んだことのない作家の作品だが、沈没船の表紙絵とタイトルに引かれて読んだ。水中考古学者とトレジャーハンター会社との間でのスペイン沈没帆船の引き上げ回収をめぐる海洋ストーリーものである。海洋冒険ものの作品は、クライブ・カッスラーの諸…

『恋する組長』  笹本稜平   光文社文庫

『ボス・イズ・バック』を2024年8月に読んだ。その時、本書の方が同じシリーズの初本であることに気づいた次第。そこで順番が逆になるが本書を読んでみた。 本書は「小説宝石」(2002年1月号~2006年12月号)に不定期に短編が掲載され、2010年3月に文庫本が…